7-128 蝕(むしば)まれている論文データベース・スコーパス(Scopus)。被乗取学術誌リストの公開

2023年10月23日掲載

白楽の意図:インターネット時代、論文データベースのスコーパス(Scopus)は被乗取学術誌に適切に対応できていない。その状況を解説した2論文と被乗取学術誌リストを開設した1論文。①モハメド・アル=アムル(Mohammed Al-Amr)の「2020年9月のRetraction Watch」論文、②アンナ・アバルキナ(Anna Abalkina)の「2021年5月のRetraction Watch」論文、③「撤回監視の被乗取学術誌リスト(Retraction Watch Hijacked Journal Checker)」を公開したアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の「2022年5月のRetraction Watch」論文を読んだので、紹介しよう。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.日本語の予備解説
2.アル=アムルの「2020年9月のRetraction Watch」論文
3.アバルキナの「2021年5月のRetraction Watch」論文
4.オランスキーの「2022年5月のRetraction Watch」論文
7.白楽の感想
9.コメント
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【注意】

学術論文ではなくウェブ記事なども、本ブログでは統一的な名称にするために、「論文」と書いている。

「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。

記事では、「論文」のポイントのみを紹介し、白楽の色に染め直し、さらに、理解しやすいように白楽が写真・解説を加えるなど、色々と加工している。

研究者レベルの人が本記事に興味を持ち、研究論文で引用するなら、元論文を読んで元論文を引用した方が良いと思います。ただ、白楽が加えた部分を引用するなら、本記事を引用するしかないですね。

●1.【日本語の予備解説】

★2020年(?)。著者名不記載(滋賀大学・図書館員?):2020年度医学総合特論

出典:ココ保存版

スコーパス(Scopus)の説明。以下はその一部分。全体は、原典をお読みください。

★被乗取学術誌

「被乗取学術誌(ひのっとり がくじゅつし)(hijacked journals、画像出典)」は、乗っ取られた学術誌(ハイジャックされた学術誌)のことで、サイバー詐欺師が本物の学術誌を乗っ取り、あたかも、本物の学術誌のように運営している「なりすまし」学術誌である。「クローン学術誌(cloned journals)」とも言う。

もちろん、「なりすまし」学術誌に論文投稿してくる研究者からカネ(論文投稿料+)を得るためである。場合によると、その時のクレジットカードの番号・パスワードなどを使って不当にカネを得ることもする。要するに、新手の不正カネ儲けビジネスである。

不正にカネ儲けするという目的としては、捕食学術誌(predatory journal)も同じだが、捕食学術誌は本物の学術誌を乗っ取ってはいないので、手段が異なる。

なお、捕食学術誌を「ハゲタカ学術誌」と呼ぶ人がいるが、この呼称は動物差別用語、ヘイトスピーチなので使用しないように。あなたが、ハゲタカを蔑視する意図はないと主張しても、悪徳で粗悪の象徴として「ハゲタカ」を使えば、ハゲタカを蔑視しているわけです。

「被乗取学術誌(hijacked journals)」に掲載された論文は、普通の論文もあり得るのだが、査読がない(または・大甘な)ので、データねつ造・改ざん論文、盗用論文、デタラメ論文、ニセ論文が多い。

★2021年12月01日:Sunaina Sinha(エディテージ・インサイト):ハイジャックされた「クローン学術誌」に要警戒

出典 → ココ、(保存版) 

学術誌ハイジャックの略史

学術誌ハイジャックという現象は、Mehdi Dadkhah氏を中心とするイラン人研究者らによって2011年に初めて注目されました。Dadkhah氏のグループはその後も追跡を続け、偽学術誌の事例を報告しています。偽サイトは非常に精巧にできているため、文献データベースや論文の評価指標を提供する企業さえも、被乗取学術誌(以下、クローン学術誌)にだまされてしまうことがあります。

続きは、原典をお読みください。

★2022年06月02日:著者名不記載(カレントアウェアネス・ポータル):ハイジャックジャーナルのチェックツール“Retraction Watch Hijacked Journal Checker”(記事紹介)

出典 → ココ、(保存版) 

2022年5月29日、論文撤回監視サイトRetraction Watchに、ハイジャックジャーナルのチェックツール“Retraction Watch Hijacked Journal Checker”を紹介する記事が掲載されました。

ベルリン自由大学のAnna Abalkina氏がRetraction Watchとの協力のもと作成したツールです。正規のジャーナルのタイトルやISSN等のメタデータを許可なく模倣したジャーナル等のリストがまとめられています。内容を継続的に更新することが予定されており、情報提供や寄付の募集が行われています。

続きは、原典をお読みください。

●2.【アル=アムルの「2020年9月のRetraction Watch」論文】

★読んだ論文

●【論文内容】

本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。本ブログでは統一的な名称にするため論文と書いた。

★スコーパス(Scopus)

エルゼビア社のスコーパス(Scopus) は世界最大級の抄録・引用文献データベースである。

スコーパス(Scopus)の日本語サイトに以下の説明がある。

Scopus: 世界最大級の抄録・引用文献データベース
Scopus(スコーパス)は、エルゼビアが提供する世界最大級の抄録・引用文献データベースです。全分野(科学・技術・医学・社会科学・人文科学)、世界7,000社以上の出版社、逐次刊行物(査読誌・業界誌・ブックシリーズ)28,000タイトル以上、会議録151,000イベント以上、書籍303,000タイトル以上からの9,100万件以上の文献を収録しています。1800年代からの抄録に加えて、1970年以降の論文は参考文献も収録しています。豊富なデータ量と使いやすさにより、文献検索から評価分析や教育ツールまで、さまざまな用途で活用されています。(出典:Scopus | 査読済み文献の最大データベース| Elsevier

しかし、著者のアル=アムルは、彼自身の経験から、そのキュレーション(Curation)には何らかの工夫が必要だと指摘している。

なお、「キュレーション(Curation)」とは、
インターネット上の情報を、特定の視点を持って収集、選別、編集することで新しい価値を持たせ、それを共有することを意味する言葉。(出典:キュレーションとは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ

★「Transylvanian Review」

2019年10月、アル=アムルは、スコーパス(Scopus)が索引付けしている学術誌「Transylvanian Review」に多数のネカト論文が含まれていることを見つけた。

見つけた切っ掛けは、その数年前、学術誌「Transylvanian Review」が乗っ取られたことを知っていたからだ。

学術誌「Transylvanian Review」に掲載されていた論文の多くはイラクの研究者が著者になっていた。

★スコーパス(Scopus)の対処

アル=アムルは、スコーパス(Scopus)のサポート チームに、被乗取学術誌「Transylvanian Review」の論文が採録されていると通報した。

すると、スコーパス(Scopus)のコンテンツ・サービス・デスク(Content Service Desk)のプラヴィーナ(Praveena S)から次の返事が来た。

学術誌 「Transylvanian Review」ISSN: 1221-1249E に関する調査と、その品質について詳細を教えて下さり、ありがとうございます。ご存知のとおり、この学術誌は スコーパス(Scopus)の索引付け学術誌に選ばれましたが、オンラインではまだ公開しておりません。

スコーパス(Scopus)の質に対して問題点があると私たちに連絡して下さったと理解しています。それで、弊社内の学術誌選択担当者にこの学術誌の質を再評価するよう要請しました。

再評価は間もなく行なわれますが、劣悪な学術誌であることが判明した場合、スコーパス(Scopus) は確実に契約を打ち切ります。また、あなたの連絡先を伝えましたので、さらなる情報が必要な場合、ご連絡させていただくかもしれません。

アル=アムルは、この件について学術誌「Transylvanian Review」の発行元であるルーマニア文化財団(Romanian Cultural Foundation)にも伝えたが、返答はなかった。

2020年7月、通報から9か月が経過した。

しかし、何も起こらなかった。

つまり、学術誌「Transylvanian Review」の サイトスコア(CiteScore) 2019以前の値は、ニセ論文がカウントされているため、不適切に計算されている。

なお、「サイトスコア(CiteScore)」とは、
CiteScore(サイトスコア)は、Scopusデータに基づいたジャーナル評価指標です。あるジャーナルに出版された論文が平均で何回引用されたかを示すCiteScore値のほか、各分野におけるジャーナルのランクやパーセンタイルなど、ジャーナルの引用パフォーマンスを把握するための多彩な指標を提供します。(出典:エルゼビア社のCiteScore

アル=アムルは、スコーパス(Scopus)のプラヴィーナ(Praveena S)が適切に対処しないので、今度は、スコーパス(Scopus)製品部長(Scopus product manager)のトレイシー・チェン(Tracy Chen、写真出典) に伝えた。

彼女は次のように返答してきた。

フィードバックをお寄せいただきありがとうございます。同僚から、この問題は解決され、非正規の学術誌の論文はすべて削除された、連絡がありました。社内で再確認させていただきます。

12日後、トレイシー・チェンは次のように書いてきた。

スコーパス(Scopus)に索引付けされた非正規の学術誌の論文に関するフィードバックをいただきまして、重ねて御礼申し上げます。ご指摘の学術誌を排除しました。現在索引付けされている論文は正規のものです。

アル=アムルは、2018年から2020年にかけて公開された112本の論文がスコーパス(Scopus)から削除されていること確認した。

しかし、その数日後、新しいニセ論文がスコーパス(Scopus)データベースに追加されていたことを見つけた。

アル=アムルは、再度、トレイシー・チェンに連絡した。

すると、今度は、彼女から次の返事がきた。

フィードバックをお寄せいただきありがとうございます。当方が不注意でした。本当にごめんなさい。同僚に、この非正規の論文を確実に削除するよう伝えます。

指摘した論文は数日後に削除された。

しかし、スコーパス(Scopus)のデータベースには 2017 年以前に出版したニセ論文がまだ多数含まれている。

スコーパス(Scopus)の管理者は、索引付けされた論文を1つずつチェックするのではなく、特定の年のニセ論文をごそっと削除しただけだった。

つまり、サイバー犯罪者は、簡単にニセ論文をスコーパス(Scopus)のデータベースに追加でき、スコーパス(Scopus)はそのニセ論文を削除しない・できないのである。

アル=アムルは、データベースの信頼性を確保するために、もっと適切な対処をするようエルゼビア社に強く求めている。

●3.【アバルキナの「2021年5月のRetraction Watch」論文】

★読んだ論文

  • 論文名: How hijacked journals keep fooling one of the world’s leading databases
    日本語訳:被乗取学術誌がどのように世界有数のデータベースを騙し続けるか
  • 著者:Anna Abalkina
  • 掲載誌・巻・ページ:Retraction Watch
  • 発行年月日:2021年5月26日
  • サイト:https://retractionwatch.com/2021/05/26/how-hijacked-journals-keep-fooling-one-of-the-worlds-leading-databases/
  • 著者の紹介:

    アンナ・アバルキナ(Anna Abalkina、写真出典)は、2004年にロシア連邦政府傘下の金融大学(Финансовый университет при правительстве Российской Федерации)で研究博士号(PhD)(国際経済学)を、2016年にイタリアのペルージャ大学 (Università degli Studi di Perugia)で研究博士号(PhD)(経済学)を取得した。2021年4月以降、ドイツのベルリン自由大学(Freie Universität Berlin)の研究フェロー(出典: Anna Abalkina | LinkedIn

●【論文内容】

本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。本ブログでは統一的な名称にするため論文と書いた。

★はじめに

最初の論文、アル=アムルの「2020年9月のRetraction Watch」論文で述べたように、学術誌「Transylvanian Review」は乗っ取られ、世界有数の学術文献データベースの 1つであるエルゼビア社のスコーパス(Scopus)に、数百のデタラメ論文が索引付けされていた。

学術誌「Talent Development and Excellence」も学術誌「Test Engineering and Management」も同じように乗っ取られ、デタラメ論文がスコーパス(Scopus)に索引付けされていた。

サイバー詐欺師たちは、エルゼビア社のスコーパス(Scopus)の脆弱性を悪用し、実際の学術誌になりすました被乗取学術誌で、違法に、何百万ドル(数億円)も儲けていたのであある。

研究者は、学術誌に論文を出版することで研究キャリアを積むのだが、被乗取学術誌は無知な研究者を餌食にしている。

★「ルーマニア細胞生物学会年報(Annals of the Romanian Society for Cell Biology)」

学術誌・「ルーマニア細胞生物学会年報(Annals of the Romanian Society for Cell Biology)」も乗っ取られた。

このことは、ロシアの学者ドミトリー・ドゥブロフスキー(Dmitry Dubrovsky、写真出典)が見つけた。

信じられほどデタラメなのだが、「ルーマニア細胞生物学会年報(Annals of the Romanian Society for Cell Biology、略してAnnals of R. S. C. B.)」は、細胞生物学を専門とする学術誌なのに、2021年、細胞生物学とは全く関係ない、「大祖国戦争(1941年のドイツ侵攻に対するソ連の抵抗)に関する論文」を掲載した。著者はロシアの大学所属である。以下はその論文の冒頭部分である。出典:https://annalsofrscb.ro/index.php/journal/article/view/2478/2081

それで、アバルキナは学術誌「Annals of R. S. C. B.」のウェブサイト(Annals of the Romanian Society for Cell Biology)を分析した。

なお、2023年10月22日に白楽がこのウェブサイトを見ると、以下の学術誌のデータが記載されていた。

アバルキナが調べ、気になった第1点は、元の学術誌は長年活動しており、2009 年からスコーパス(Scopus)にカバーされていた。しかし、ドメインは 2020年10 月に匿名で登録されていたことだ。

2023年10月22日に白楽がドメイン「annalsofrscb.ro」を調べると、以下のようだ。Whois annalsofrscb.ro

Domain Name: annalsofrscb.ro
Registered On: 2020-10-13
Expires On: 2025-10-12
Registrar: Marcaria.com Inc.
Referral URL: www.marcaria.com

ドメインを登録しているのはドメイン売買企業の「marcaria.com」である。つまり、実際の登録者は表に出てこない。

アバルキナが気になった第2点は、ISSN ポータルによると、正規の学術誌の「ISSN 1583-6258」は、印刷用のISSNである。「ルーマニア細胞生物学会年報(Annals of R. S. C. B.)」は、公式ホームページを持っていない。正規の学術誌の「ISSN 1583-6258」を使用するのは、公式ホームページを持っていない学術誌を乗っ取る典型的な方法である。

第3点は、この学術誌は論文掲載料の支払い完了後 30 日以内に論文を出版するとしている。被乗取学術誌は通常、査読を行なわず、迅速な出版を保証している。ますます、被乗取学術誌臭い。

第4点は、被乗取学術誌は通常、本物の学術誌のアーカイブを複製せず、すでに出版されたテキストを再利用するか、アーカイブにアクセスするための架空のペイウォール(Paywall、アクセスする際に課金するシステム)を作っている。

この学術誌は、すでに出版されたテキストを再利用しないで、「これらのコンテンツにアクセスするには学術誌にメールしてください」というメッセージを表示している。

ということで、アバルキナは「ルーマニア細胞生物学会年報(Annals of the Romanian Society for Cell Biology、略してAnnals of R. S. C. B.)」を被乗取学術誌と認定した。

★スコーパス(Scopus)

被乗取学術誌の論文がスコーパス(Scopus)に浸透している。

2021年1月~2021年5月中旬の5か月半で、スコーパス(Scopus)は被乗取学術誌の約3,200本の論文を索引付けした。

過去5年間に索引付けした論文は年間100本未満だったので、わずか5か月半でこれほど多くの論文が索引付けされたのは、驚くほどの急成長だった。

この急成長は、非常に積極的なマーケティングと、おそらくは国際学術誌への迅速な出版を提供する仲介業者が関与していると思われる。

この被乗取学術誌の論文の著者は主にインド、イラク、ウズベキスタンなどの発展途上国の研究者である(以下の図)。

★汚染

被乗取学術誌は学術論文の世界を汚染している。

被乗取学術誌に掲載された論文の一部は、「PLoS One」や「Journal of Supercomputing」などの正規の学術誌で引用されている。

学術誌を乗っ取るビジネスは百万ドル(億円)規模のビジネスになっている。「ルーマニア細胞生物学会年報(Annals of the Romanian Society for Cell Biology)」は、論文1本出版する毎に14,700rs (200 ドル、約2万円) を請求している。

2021年にはすでに5,000本以上の論文を「出版」しているので、その収入は5,000x2万円=1億円である。

なお、この学術誌の正規の発行者を見つけられなかった。

以前の発行者であるヴァシル・ゴルディス・ウェスタン・アラド大学(Vasile Goldis Western University of Arad)に連絡すると、ヴァシル・ゴルディス・ウェスタン・アラド大学はこの学術誌をもう発行していないとのことだった。

この被乗取学術誌の編集長はルーマニアのワーヘニンゲン大学・研究(Wageningen University & Research)のリョン・オエレン(Ryon Oelen)となっている。

しかし、リョン・オエレンという人物は実在していない。

インターネットでリョン・オエレン(Ryon Oelen)を検索すると、彼はエンジニアリングを専門とする別の被乗取学術誌「Converter」の編集長だった。

この被乗取学術誌「Converter」もスコーパス(Scopus)で索引付けされている。

被乗取学術誌がスコーパス(Scopus)の索引付けされているのは異常である。

しかし、違法論文の国別割合には驚く。

2021年にウズベキスタンの著者による非正規の論文は、スコーパス(Scopus)に索引付けされウズベキスタンの全論文の41.5%を占めていた。イラクではその割合は8.4%で、インドでは1.5%だった。[白楽注:日本では・・・・、わかりません]

学術誌が乗っ取られてすでに10年以上経過している。これまで少なくとも数百の学術誌が乗っ取られた。それらに掲載された論文は削除されるべきである。

研究者はまた、国際的な論文データベースに被乗取学術誌の論文が掲載されていることにも、注意する必要がある。

そして、学術界および学術出版界はこれらの問題に早急に対処すべきである。

●4.【オランスキーの「2022年5月のRetraction Watch」論文】

★読んだ論文

●【論文内容】

本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。本ブログでは統一的な名称にするため論文と書いた。

★データベースがむしばまれている

正規の出版物の学術誌名、ISSN、その他のメタデータが許可なく乗っ取られた被乗取学術誌(Hijacked Journals)について聞いたことがありますか?

多くの大学や国が学術誌の品質の尺度として使用しているクラリベイト社の「Web of Science」 や エルゼビア社の「スコーパス(Scopus)」などの評判の高いデータベースに、被乗取学術誌が侵食し、論文の索引付けに成功していることを撤回監視は何度か記事にしてきた。

それで、私たちは最近、「撤回監視の被乗取学術誌リスト(Retraction Watch Hijacked Journal Checker)」を立ち上げた。

また、今後、被乗取学術誌のケースを伝える記事を定期的に掲載します。

★「撤回監視の被乗取学術誌リスト(Retraction Watch Hijacked Journal Checker)」

「撤回監視の被乗取学術誌リスト(Retraction Watch Hijacked Journal Checker)」を作成・公開した。

2023年10月14日時点で、231誌の被乗取学術誌がリストされている(以下、最初の10誌)。2023年10月22日時点も同じ。 → Retraction Watch Hijacked Journals Checker.xlsx – Google スプレッドシート

従って、あなたが、学術誌に疑惑を感じたら、このリストに掲載されているかどうかチェックしてください。

なお、白楽がリストを調べると、2023年10月22日現在、日本の学術誌はリストにのっていない。

学術誌が被乗取学術誌かどうか見分ける方法も示されている(英語ですけど) → Methods – Retraction Watch

あなたが、このリストにない学術誌が被乗取学術誌だと気がついたら、通報して下さい。リストに加えます。 → 通報方法:Submit a Title to the Retraction Watch Hijacked Journals Database

●7.【白楽の感想】

《1》学術体系の崩壊 

被乗取学術誌、フェイク学術誌、捕食学術誌、など、学術誌レベルでおかしな事態になっている。

論文工場が活発だし、架空著者もアチコチ目にする。

これらの学術誌に掲載されている論文の大半(全部?)は、ニセ論文である。

この現実に直面すると、データねつ造・改ざん、盗用など、可愛いもんだと感じてしまうほどである。

こんな現実なのに、学術界も出版界もまともな対策を立てていない。学術界の秩序が崩壊している印象がある。

このことは、以下の「7-127 被乗取学術誌に関する2つの古典的論文」で書いた。

7- 127 被乗取学術誌に関する2つの古典的論文

白楽は、現役の研究者ではないけど、もし、現役だったら、この状況で論文を出版し、他の研究者の論文を引用するのに、不安を感じる。

研究を進める上で、どの論文を信用していいいのかわからないのは、異常である。

論文を投稿する時は、従来の信用が置ける学術誌だけに論文を投稿すればよいかもしれないが、他の研究者の論文を引用する時、困惑するだろう。

学術界も出版界もまともな対策を、早急に立てるべきである。

国民の税金が学術研究費として使われ、その学術研究費のそこそこの割合が論文出版・購読経費に使われている。日本国民のウン十億円(もっとズッと多い?)のお金が、悪徳な出版詐欺師に渡っているのである。国民も関心をもって欲しい。あなたのおカネです。

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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●9.【コメント】

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