「白楽の感想」集:2019年5-8月

2019年12月20日掲載 

研究者倫理の2019年5-8月記事の「白楽の感想」部分を集めた。

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《1》見事な盗用 

ショウガをアスパラガスに変えただけで、他人のショウガ論文を自分のアスパラガス論文として出版した、という単純で見事な盗用である。

このような全盗用は昔からある。1980年に発覚したアルサブティ事件はとても有名だ。それから40年近く経過した2018年でも通用していることに驚いた。ネカト対策が機能していないということなのだ。
 → エリアス・アルサブティ (Elias Alsabti)(米)

ファヒム・ウッラは、パキスタンから中国の南京農業大学(Nanjing Agricultural University)・大学院に入学して、撤回された「2018年2月のFood Sci Nutr」論文を出版した同じ年(2018年)の12月に博士号を取得している。

ファヒム・ウッラの博士論文に盗用があると思えるが、南京農業大学は調査している様子がない。他の論文にもネカトがあると想定して、調査すべきでしょうね。

南京農業大学は知らないかもしれない? 

それは、マズないでしょう。

ネカト通報は、ネカト研究者の所属する大学に通報するのが基本である。学術誌は論文を撤回する前に大学に伝えたハズだ。

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《1》防止策

世界的に著名な研究者で大学教授・医師が部下の家族の当時10歳の女の子に性的暴行をした。それも、60歳になってからである。しかも5年間もである。

暗い気持ちになる。被害者の子供は地獄である。なんとも救いがたい。

しかし、フレンチ・アンダーソン(French Anderson)という人間が極めて特殊ということはないだろう。人間は性欲がある。しかし、それをコントロールして社会で暮らす。アンダーソンは、地位・名誉・富のほぼすべてを手中にしていた。優しく美しい妻もいた。反社会的行為をすれば、それらを失うことはわかりきっていた。それなのに、児童性愛(しょうにせいあい)に手を出した。

児童性愛(しょうにせいあい)は、

子供をセックスの対象に選ぶ異常性欲。ジャーナリズムなどでは,よく変質者として取扱われている。子供は同性であっても,いろいろな点で異性的でもある。ペドフィリア(児童性愛)で,性行為にいたるものはむしろまれで,体をなでたり,抱いたり,キスをしたりする行為がよくみられる。知的障害,ある種の異常性格,老年痴呆 (ちほう) ,アルコール依存症などの精神医学的疾患をもつ者に,このような行為に出る者が多いといわれている。実際には,子供だけをセックスの対象に選ぶ例はむしろ少く,適当な異性を求めえない場合に,子供が選ばれることが多いようである。(出典:ペドフィリアとは – コトバンク

上記の説明だと、「適当な異性を求めえない場合」とあるが、優しく美しい妻がいた。もし、妻と不仲なら、地位・名誉・富をもつアンダーソンなのだから、大人の異性を同意のもとに求めることは難しくなかっただろう。

なお、アンダーソン事件と同様な事件はソコソコ多いと白楽は思う。しかし、公表されない。

また、アンダーソンは60歳になってからの児童性的虐待を始めたことになっている。

しかも、その裁判で性的暴行を否定している。つまり、反省の気持ちがない。

思うに、アンダーソンは、この手の性的暴行を、もっと若い時から常習的に行なってきたのではないだろうか? エライ学者だから、表沙汰にならなかった、ということはないのだろうか?

そう思って記事を読むと、1980年代、つまり40代に、NIHのあるメリーランド州の警察に児童性的虐待で訴えられたとの記載があった。不起訴になったそうだ。

このような事件、つまり、著名な研究者が部下の子供に性的暴行をするのを、どう防ぐことができるのだろうか? 厳罰に科すという警告しかないのだろうか?

《2》遺伝子治療

遺伝子治療の分野にノーベル賞が授与されてもおかしくないと思う。そして授与されるなら、「遺伝子治療の父」と呼ばれているのだから、アンダーソンは第1候補だろう。

しかし、犯罪者にノーベル賞を授与できない。

この事件のためにアンダーソンが存命中は、遺伝子治療の分野は授賞対象から外される。

重要な発見をした研究者が反社会的行為で刑罰を受ければ、ノーベル賞などの科学賞は授与されない。

しかし、研究上の業績が優れていることと、その人物の道徳・善行とは無関係である。

日本社会は、どういうわけか、研究上の業績が優れている人を道徳を含めすべての点で優れているとみなす傾向がある。おかしいよ。

フレンチ・アンダーソン(French Anderson)。William French Anderson, physician, geneticist, molecular biologist and pioneer of gene therapy. Here he is shown looking at a DNA sequencing gel sheet. https://www.statnews.com/2018/07/23/w-french-anderson-father-of-gene-therapy/
フレンチ・アンダーソン(French Anderson)。https://www.statnews.com/2018/07/23/w-french-anderson-father-of-gene-therapy/

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《1》ピンとこない?

クリストファー・ワンジェク(Christopher Wanjek)がケイト・ローレンス事件を「フェイクニュース:2018年の5大撤回科学論文」に選んだ理由が、しばらく、ピンとこなかった。

フェイクではないし、「5大」というほど大きな事件でもないしなあ。

登場人物であるケイト・ローレンス(Kate Lawrence)、ジャンネット・ハイド(Jeannette Hyde)、デュアン・メラー(Duane Mellor)、の3人ともそれほど有名人でもない。

しかし、何度も調べ、何度も考えると、学部長のフィリップ・ブース教授(Philip Booth)の声明が少し腑に落ちてきた。研究って、シロ・クロはハッキリしていない場合もある。従来の「研究のあり方」も完全というわけではない。研究方法がおかしいけど、それは論文に書いてある。撤回する必要はなかった。・・・。

まてよ、対照群(コントロール)がないこと、盲検法ではないことが論文に書いてあっても、結論が信用できないので、やっぱり、この論文は撤回が妥当ですかね?

皆さん、どう思います?

《2》ズサン

それなりの研究経験のあるケイト・ローレンス(Kate Lawrence)がなぜ、こんなズサンな論文を発表してしまったのだろうか?

試験参加者を複数のグループに分け、それぞれに異なる食事を与える介入試験(intervention study)は、既に確立された方法である。それなのに、・・・。

最初から希望する答えがあって、共著者のジャンネット・ハイド(Jeannette Hyde)の意向が強く、それに沿った試験をしてしまったのだろうか?

《3》賢い

ネカト疑惑が起こると、通常、被疑者(研究者)は大学から査問を受ける。今回はケイト・ローレンス(Kate Lawrence)が、セント・メアリーズ大学から査問を受ける状況である。

ところが、ローレンスは賢かった。

上司で学部長のフィリップ・ブース教授(Philip Booth)を味方につけてしまった。こうして、悪いのは学術誌であって、ローレンスは被害者、という立ち位置を確保してしまった。

論文執筆では賢くないのに、「ピンチをチャンス」に変えた身のこなしは超賢い。

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《1》セクハラ発言で解雇。それも女性準教授が

https://reason.com/2015/06/30/lsu-prof-fired-for-telling-jokes-is-late/

テレサ・ブキャナン(Teresa Buchanan)は女性の準教授で、授業でのセクハラ発言で大学から解雇された。

女性教員が性的発言をするのと男性教員がするのでは、女性学生の嫌悪感(ショック度)は異なるのだろうか?

米国では男女差別への言動が厳しく規制されるから、ブキャナン事件のメディア報道でこのような議論はない。しかし、白楽が思うに、同じ性的発言でも、女性教員の性的発言に女性学生は過敏に反応する印象がある。

なお、メディアはあまり報道しないが、ブキャナンは、セクハラ発言騒動中に離婚話が進行していた。精神的にはダブルパンチだったろう。

写真は2人の息子と一緒の写真である。大人の息子2人と同居してたのかどうかわからないが、おとなレベルの性的ジョークを息子2人とは日常的に会話していたのかもしれない。それで、授業でも性的ジョークを使っていたのかもしれない。

日本の大学の講義で性的ジョークを言う教員がどれほどいるか知らないが、白楽自身はしたことはない。自分が受けた授業でも聞いた記憶はない。

しかし、性的ジョークではないセクハラ発言は、大学ではかなり耳にした。日本の女性教員も「男のくせに」的なセクハラ発言をする。ただ、それをセクハラと不快に思う人は少なく(白楽は何度も言われたが不快に思ったことはない)、訴える人は少ない(と思う)。

そして、ブキャナンが発した程度のセクハラ発言で大学から処分されるのは日本では珍しい(と思う)。なお、日本ではセクハラ行為で解雇されることはほとんどないが、処分はある。

米国では、セクハラで解雇されるのは珍しくない。セクハラと判定されれば、通常の範囲の処分である。

出典:https://business-textbooks.com/harassment32/

《2》米田満樹(よねだ みつき)

京都大学・発生生物学の教授だった米田満樹さんは2010年7月12日に80歳で亡くなった。かつて、お茶の水女子大学の教授だった。

白楽は、米田満樹さんと師弟の関係でも先輩後輩の関係でもないのだが、名古屋大学の院生の頃から、仲がよく、学会であったりすると、研究のことも含め、友人のようにいろいろな話しをした。

1985年9月1日、白楽は筑波大学・講師からお茶の水女子大学・助教授に移籍した。その10数日前、日航機が御巣鷹山に墜落した。

発令初日にお茶の水女子大学の発生生物学の能村堆子(のむら たいこ)・教授研究室に伺うと、米田満樹さんがたまたま遊びに来ていた。そして、次のように言った。

「お茶大では女子学生にバカって怒鳴ってもいいけど、ブスって決して言ってはならん」。

就任への祝辞である。

なお、能村堆子・教授の研究室の狭いお茶のみ場に、その時、米田満樹さんは、7人-8人の能村研の若い女性学生(21- 24歳頃)に囲まれていた。

その7人-8人 の若い女性学生は身を乗り出すようにして、新任の男性助教授である白楽を興味深げに見つめていた。ウッカリすると、手を伸ばして触られそうな雰囲気だった。白楽は、膝突き合わす近さで21- 24歳頃 の7人-8人 の若い女性学生 に囲まれてドギマギした。

能村堆子・教授がすかさず、白楽に「女子大の印象はどう? ハーレム? 修道院?」と発した。

それから34年も経つのに、発令初日の言葉として忘れられない。

2019年の現在だと、研究室の21- 24歳頃の女性学生を前にこういう言葉を発するとセクハラになるんでしょうね。昭和はおおらかなものだった。

ブキャナン事件で米田満樹さんと能村堆子・教授の発言を思い出したので、記念にココに書いた。そして、ウェブで米田満樹さんの写真を探したが見つからなかった。17年前の自前の写真を以下にアップした(左が米田満樹さん)。白楽(右)も若いですね。

《3》防ぐ方法

ブキャナンのセクハラ発言を防ぐには、どうすればよかったか?

1つ目は、セクハラは性格・思考・習慣なので、セクハラ傾向のある教員を採用しないことである。しかし、採用時にセクハラ傾向のある人物なのかどうかわからない。採用後、セクハラ言動が出たら、なるべく早く対処することだろう。

2つ目は、ブキャナン自身が次のように述べている(本文から再掲)。

それまで、1人の学生も1人の教員も、彼女の授業での性的発言に対して不平不満を述べていなかった。もしこれらの苦情を聞いていたなら、彼女は彼女の教え方を変えたと主張している。

つまり、教員・研究者がセクハラ発言をした時、なるべく早く注意・警告をすることだ。

なお、注意・警告は3段階対処が望ましい。初犯で解雇するのはヤリすぎと思われる。例えば、1回目は処罰ナシの軽い注意、2回目は軽い処罰アリの強い注意、3回目は解雇などの3段階対処だ。

《4》支援組織

ブキャナンの性的ジョークや下品な言葉をセクハラ発言として大学が処分したことに、異を唱える人が多い。そして、ブキャナンを支援する組織があった。以下の2つの組織がブキャナンを支援した。

「教育における個人の権利財団(Foundation for Individual Rights in Education:FIRE)」が、「訴訟スピーチに立ち上がるプロジェクト(Stand Up For Speech Litigation Project)」の活動の1つとして、ブキャナン元準教授の裁判の支援に乗り出した。
→ Louisiana State University – Stand Up For Speech Lawsuit – FIRE

全米大学教授協会(American Association of University Professors
American Association of University Professors – Wikipedia

こういう、支援組織があって、それなりの力がある。こういう社会って健全だなあ~て、白楽は思う。

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《1》日本の事件で処罰ナシ 

ホセイン・ホセインカーニ(Hossein Hosseinkhani)は、台湾の副教授だったので、海外の事件だと思い、調査を始めたら、7撤回論文の内の7論文とも、日本から出版した論文だった。

つまり、日本のネカト事件だった。

京都大学も物質・材料研究機構もホセインカーニのネカト調査をしていない(と思う)。編集長の権限で7論文が撤回されたが、他の論文、つまり、2002~2019年の18年間の71論文の大半がネカト論文かもしれない。2002年の博士論文もネカト論文かもしれない。

しかも、処罰されておらず、研究職を続けているので、現在もネカト論文を発表し続けている可能性が高い。

《2》物質・材料研究機構の小林尚俊

ホセイン・ホセインカーニ(Hossein Hosseinkhani)のネカト行為は院生として過ごした京都大学の田畑泰彦・研究室で既に始まっていた。博士号取得後、筑波の物質・材料研究機構の小林尚俊・研究室のポスドクとして過ごし、そこでの2論文もネカトで撤回された。

ホセインカーニのネカト癖は京都大学ですでに身に着けてしまっていたから、物質・材料研究機構の小林尚俊・上席研究員の研究室での2撤回論文は、小林尚俊・上席研究員に余り責任がないだろう。

しかし、小林尚俊・上席研究員は別の事件であるアシュトシュ・ティワリ捕食論文事件でかなり重要な脇役を担っている。
→「捕食」:材料工学:アシュトシュ・ティワリ(Ashutosh Tiwari)(スウェーデン)

小林尚俊・上席研究員は、たまたま運が悪いのか、脇が甘いのか、どっちなんだろう?

《3》ネカトハンター

白楽はネカトハンターではないので、研究者のネカトを見つけ、研究者が所属する各国の大学や調査機関に告発し、かつメディアに資料を送付することをしていない。

2019年4月21日に、「材料工学:シャオシン・イエ、叶肖鑫(Xiaoxin Ye)(中国)」の記事を掲載した。中国の大学で取得したシャオシン・イエの博士号がはく奪されたことを記述した。

中国で博士号取得後に日本の大阪大学のポスドクになり、1年半の間に大阪大学から11報の論文を出版した。大阪大学の指導教授もわかるように実名を記載した。

その時、ブログ読者から、大阪大学に通報すべきだとの指摘を受けた。

白楽は大学の在り方として以下のように考えている。

大学の研究公正担当者は自分の大学の研究公正を調査・維持・改善するのが職務である。職務の一環として、自分の大学の教職員・研究者・学生のネカトを自発的にチェックし、調査する。これが本来のあるべき姿だと思う。学内外の他人から指摘されないと調査しないのでは、システムがおかしい。指摘されても調査しないのはもっとおかしい。言語同断です。

しかし、それから4か月経過した。

大阪大学が調査に乗り出したと聞こえてこない。調査に乗り出したならそのことを公表し、大阪大学は研究公正であると、日本国民に伝えてほしい。そうしなければ、研究公正は地に落ちる。大阪大学の評判は悪くなる。

実は、多くのブログ読者から、日本の大学は通報しても調査しない。文部科学省に通報しても当該大学に伝えるだけだ。だから、日本ではネカトを訴えて正当に調査してもらえる場所・機関がない。このような不満を、たくさん聞いている。

社会の機能(権限)として、本来、大学は研究・教育機関であって、捜査機関ではない。だからネカト調査・捜査は捜査機関である警察に任せるべきだと、白楽は、主張しているが、それに賛成する大きな動きはない。

それで、現システムでは、当該大学がネカトを調査することになる。しかし、大学人は調査・捜査の素人で知識も技術も劣るし、捜査権力がほとんどない。それに、大学にとっては余計な仕事である。

白楽のネカト・ブログは、海外のネカト事件・事情・システム・問題を読み解くことで日本の研究者倫理の改善に役に立てたいという意図である。日本の事件は白楽以外の人にお任せしたい。

しかし、日本の事件を調べ・告発する人がメッキリ少なくなってしまった。調べ・告発しても何の得はない。その上、脅し・非難・危険がくる。これでは、調べ・告発する人はいなくなるだろう。

日本人が日本で犯したネカト事件の分析・洞察でも、日本語で書ける日本人がおらず、外国人が英語で書いている。
 → 2018年8月17日の「Science」記事:Researcher at the center of an epic fraud remains an enigma to those who exposed him 
 → 2019年6月18日の「Nature」記事: What universities can learn from one of science’s biggest frauds  

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《1》若い美人女性

https://twitter.com/rominagirotti?lang=fi

研究者になった若い美人女性は何かと大変だな、というのが最初の感想である。

美人であることと研究成果は無縁なのだが、人間社会のなかで、若い美人女性は特別扱いされる。実力以上に優遇される。例えば、以下の写真のように大きな看板でロミナ・ジロッティ(Romina Girotti)がマンチェスター大学の研究の宣伝に使われている。

実力以上の扱いなのだから、体面を保つために研究成果が追い付かない。チョットしたことでネカトをしてしまう。また、研究室内では嫉妬による激しい嫌がらせを受けるという話もある。

https://forbetterscience.com/2019/06/18/manchester-research-misconduct-concerned-only-one-member-of-the-research-group/

《2》冤罪?

実は、真犯人はロミナ・ジロッティ(Romina Girotti)ではなく、リチャード・マレ教授かもしれない。英国のマンチェスター大学が調査の結果、ロミナ・ジロッティ(Romina Girotti)をネカト犯と発表したので、本記事ではその線で書いている。

リチャード・マレ教授の評判はすこぶる悪い。疑惑は、別の記事にする(予定)。

《3》ネカト疑惑で動転

ロミナ・ジロッティ(Romina Girotti)は2016年に英国から帰国後、アルゼンチンのアルゼンチン企業大学(Argentinean Enterprise University)・教授になり、研究は生物実験医学研究所(Institute of Biology and Experimental Medicine (IBYME))・ガブリエル・ラビノビッチ教授(Gabriel Rabinovich)の研究室で行なっている。

2019年5月にレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)がラビノビッチに問い合わせると、ラビノビッチは研究室のウェブサイトを完全に閉鎖した。

それで、シュナイダーがアーカイブしたコピーを付けてラビノビッチにツイートしたら、今度は、ジロッティの個人用ツイッターのプロフィールが削除された。ツイッターは。 2018年7月10日以降書き込みはない → María Romina Girotti (@rominagirotti) | Twitter

ラビノビッチは自分の研究室のネカト騒動でもないのに動転し過ぎである。このような挙動はいかにもネカトに関与しているように思われる。プラスにならない。どういうノミの心臓なんだろう?

なお、2019年8月12日現在、ラビノビッチは研究室のウェブサイトを再掲している。 → Team | Rabinovich Lab

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《1》マジック 

白楽はインド人研究者への偏見が払拭できない。そういう人間の感想だと思って以下を読んでいただきたい。

ルーシ・タリヤーカン(Rusi Taleyarkhan)は根っからのペテン師だという印象をもった。

タリヤーカンは最初からバブル核融合をねつ造したのだ。ネタがバレないように、そして、トリックを巧妙に仕込んだマジックなのだ。

だから、多くの研究者は、トリックを見破れなかった。でも、マジックなので、そのまま追試したら実験結果が再現できなかった。種と仕掛けがあるに違いない。

こうなると、研究公正ってなんだろう?

2008年7月(53歳?)に大学が「改ざん」と結論した11年後の2019年8月9日(64歳?)現在、パデュー大学・教授職を維持している(Faculty & Staff Directory – Nuclear Engineering – Purdue University)。

タリヤーカンは人びとから好かれ、物理学の知識が豊富で、誠実な印象を与える人物でなのだろう。そして、バブル核融合では決してボロを出ささない人なのだろう。

《2》昔の話 

動画に映るタリヤーカンは好人物である。タリヤーカンが悪い人かどうか、白楽はわからないが、以下の経験を思い出した。なお、以下の文章でタリヤーカンを悪い人と暗示させる意図はありません。

最初に、一般的に、悪い奴は好人物である。もちろん、悪人顔などしていない。という教訓を書いておく。

昔の話だが、白楽は、欧州を妻と一緒に旅行したことがある。

その時、ソコソコ有名なお城に行った。

街からお城に向かう坂を歩いて上る時、若い好青年が前になったり後ろになったりした。青年と笑顔を交換した。

中腹の遺跡がある場所に出てきたので妻と白楽が眺めていた。すると、その好青年が写真を撮ってくれとカメラを白楽に手渡した。写真を撮って、カメラを青年に返した。

その瞬間、屈強な3人の悪人顔男がバラバラと、白楽の前に出てきた。首領格の男が、「我々は、国際麻薬捜査官だ。今、この男に麻薬を渡しただろう!」と言った。白楽はビックリ仰天である。そして首領格は、「パスポートと荷物の中身、ポケットの中身をここに全部だせ!」と命令した。

この時、白楽は70万円近くの現金(ユーロ)をズボンのポケットにいれていた。

動転した。

しかし、国際麻薬捜査官とは思えない。

白楽は「警察に行こう」と叫んで、元来た道の方に走った。首領格の男が「俺たちが警察官だ!」と叫んだ。それで振り返ると、妻が屈強な3人の悪人のそばにノホホンと立っていた。

白楽はあわてて、「早くこっちにこい」と妻に叫んだ。妻はようやく気が付いて、白楽の方に走ってきた。妻と共に坂道を駆け下りた。

結局、3人の悪人顔男は追ってこなかった。しかし、明らかに、前になったり後ろになったりして一緒に坂道を上ってきた好青年が手引きしたのである。

それ以来、白楽は、好青年(若い女性、中高年でも)が海外で寄ってくると体内警報機が赤く点滅する。

さて、その事件は以下のお城に向かう途中で起こりました。どこでしょうか?

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《1》防ぐ方法

ヨゲシュヴェル・シュクラ(Yogeshwer Shukla)は、17歳で大学を卒業し、24歳で研究博士号(PhD)を取得した天才である。35年間の研究人生のすべてをインド毒性学研究所で過ごしている。外国にポスドクに行ったわけではないし、外国での研究発表も少ししかしていない。つまり、インドで純粋培養された研究者である。

パブピアは、2004年から2018年(40-54歳)の15年間に出版した50論文にデータねつ造を指摘した。推定だが、20歳代の研究キャリアの初期からネカトをしていたと思われる。インド毒性学研究所の前所長・現所長もネカト調査されていることから、研究公正の倫理観は薄く、ネカトをして研究者として昇進することがこのインド毒性学研究所の研究風土なのだろう。

そういう状況で、どうするとネカトを防げるか?

インド毒性学研究所の内部からはとても無理だろう。

マスメディアが批判し、それを受けた国民と政府が改革に立ち上がるしか道はないように思えた。

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《1》防ぐ方法:盗用

ザイーム・アスラム(Zaeem Aslam)が、タイトルを変えただけで、他人の論文を全文逐語盗用し、編集長から指摘されたら、自分の論文がオリジナルで、自分の論文が査読中に盗用されたのだと主張した。

このような主張をする盗用者の盗用行為をどうすると防止できるのだろうか?

「盗人猛々しい(ぬすっとたけだけしい)」人に、もちろん、「盗用はイケマセン」と指導する意味は全くない。

所属していたラホール工学技術大学がむち打ちの刑(?)などの手痛い処罰を科すべきである。授与した修士号は当然はく奪すべきである。ところが、ラホール工学技術大学は調査している気配がない。従って、むち打ちの刑(?)を科した気配はない。

パキスタンでは修士号保持者は上級国民だろう。白楽は、パキスタンに滞在したことがないので勝手な妄想だが、パキスタンの巷ではネカトがひれ伏すような立派な不正が横行しているに違いない(妄想です)。

このような国の研究公正をどうするといいのだろうか?

《2》防ぐ方法:学術誌編集長

ザイーム・アスラム事件で学術誌「Solar Energy Materials and Solar Cells」の編集長が不適切な対応をした。

どんなアホだ、顔を見てみたいと、あなた、思います? 学術誌のサイトに写真がありました。編集長はベルギーのイワン・ゴードン(Ivan Gordon)です。
→ Ivan Gordon – Editor-in-Chief – Crystalline Silicon and Silicon Thin Film Solar Cells – Solar Energy Materials & Solar Cells

編集長への就任は2018年とある。ザイーム・アスラム事件で前・編集長がヤメて、後任として就任したのかもしれない。

イエイエ、イワン・ゴードン(Ivan Gordon)は2018年1月に編集長に就任し、ザイーム・アスラム事件に対処しています。就任したばかりですが、その対処を見ると、「イワンのバカ」ってところでしょうか。

トルストイの「バカのイワン」は純朴愚直でも最後は幸せをつかむのですが、編集長のイワンは、「純朴」かどうか知りませんが「愚」ではあります。そして、不評をつかんでます。

(今日の白楽はどうしたんでしょう? むち打ちの刑だのアホだのバカだの不穏当な発言が目立ちます。冗談っぽく書いたんですが・・・、熱中症でしょうか?)

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《1》スパイ疑惑事件

本ブログでは以下の1件しか記事にしていないが、2014年以降、米国で起こった中国系研究者のスパイ疑惑事件はたくさんある。

  • 水文学:シェリー・チェン、陈霞芬(Xiafen “Sherry” Chen)(米)。
    シェリー・チェンは、2014年10月20日(58歳)、国家インフラに関するデータを違法にダウンロードしたことで逮捕された。しかし、2015年3月(59歳)、裁判の1週間前、政府は、理由をほとんど説明することなく、シェリー・チェンに対するすべての訴訟を取り下げた。

2019年7月28日現在、ウィキペディアに中国系研究者31人がリストされている。その31人の中にシェリー・チェンはリストされているが、本記事のジーフェン・ウーはリストされていない。 → List of Chinese spy cases in the United States – Wikipedia

《2》外国人研究者

ウーの活動程度でスパイの嫌疑がかけられると、中国人だけでなく、多数の外国人研究者にスパイ嫌疑がかけられそうである。

かつて、ドイツがユダヤ人科学者を排除したように、米国が外国人研究者を排除したら米国科学界は崩壊するのではないだろうか?

外国人研究者は自分が生まれ育った出身国に何らかの恩返しをしたいと思うのは人情だ。それをスパイだと決めつけるのは、どんなもんでしょう。

米国はスパイ行為の規準を明確にすべきである。

なぜそうしないのか?

その方が米国にとって得なのだろう。曖昧な基準の方が、FBIは権限が強くなり、相手に恐怖を与えられる。捜査官の一存でイジメたい外国人研究者をイジメられる。今のところ、おびえるのは中国系在米研究者である。

日系在米研究者は大丈夫ナノだろうか? 例え大丈夫でも、このような人種(国籍)差別はいかがなもんだろう?

しかし、米国は人種(国籍)差別にピリピリしているが、日本を含めほとんどの国は、平然と人種(国籍)差別している。

《3》千人計画

中国は2008年12月から「世界各地の最前線で活躍する中国人の研究者や技術者を選んで中国の科学技術の発展に貢献させる」という千人計画(出典 :ココ(中国語:千人计划、http://www.1000plan.org.cn/Thousand Talents Program – Wikipedia)。

国益を重視した素晴らしい政策である。

一方、日本は1979年に「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」とおだてられ、日本経済の黄金期だったのに、無策で、千人計画に匹敵するような政策は皆無である。

むしろ、悪政がたたり、その後、経済も科学技術も低迷し、2019年現在、日本の科学技術に「将来はない」状況である。 → 2018年9月13日 のNHK記事:“科学技術強国”中国の躍進と日本の厳しい現実 |NHK NEWS WEB

勿論、日本が育成した中国人研究者も千人計画に応募し、中国に帰国してしまった。

例えば、以下に4人挙げるが、もっと沢山(?)いる。

  • 周豪慎(シュウ ゴウシン / zhou, hao-shen):産業技術総合研究所/電力エネルギー部門/主任研究員 → 南京大学
  • 郑国庆:大阪大学・博士、岡山大学・教授 → 中国科学院
  • 吴智深:名古屋大学工学博士、茨城大学教授 → 東南大学
  • 朱敦尧:東京大学工学博士 → 武漢大学

《4》日本のおかしいバカな政策

中国系米国人科学者にスパイ疑惑をかける米国を見て、日本の政策はおかしいバカじゃないかと思っていたことを思い出した。

日本はかつて「留学生10万人計画」で日本の国費を使って、外国人留学生(主としてアジア人)を受け入れた。日本の留学生政策は、常々、おかしいバカじゃないかと、白楽は思っていた(いる)。以下、乱暴だが、印象を書こう。

何故、こうなるのか? 政治のトップに理工医学出身者がいないからだ。官僚にもほとんどいない。だから、基本的に科学技術がわからない。

  • マーガレット・サッチャー:オックスフォード大学の化学科出身
  • アンゲラ・メルケル:ライプツィヒ大学の物理学科出身
  • 習近平:清華大学の有機合成化学出身

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《1》大学院・研究初期

大学院・研究初期で、研究のあり方を習得するときに、研究規範を習得させるべきだ。

ダニエル・アントワーヌ(Daniel Antoine)の場合、英国・リバプール大学(Liverpool University)の指導教員であるケビン・パーク教授(Kevin Park)が規範をしっかり躾けていれば、「研究上の不正行為」をしない研究人生を過ごしたかもしれない。

《2》研究室内部

アントワーヌの場合、質量分析データのねつ造・改ざんである。生データを見ないとどこがどうねつ造・改ざんされたのかわからない。つまり、研究室内部の人しかネカトを指摘できない。

この場合、指摘された論文以外にもネカトがあるように思う。アントワーヌは論文が多作で、2007~2018年の12年間に78論文も出版している。いつからネカトを始めたかわからないが、これらの大半の論文は信頼できない気がする。

博士論文もネカトではないのだろうか?

2007年からネカトをしていたとすれば、ネカトの知識・スキル・経験を積み、なかなか発覚しにくい巧妙なネカトをしている可能性もある。

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《1》所属大学

チャオ・シオン(Chao Xiong)(左から3人目)。http://news.cz001.com.cn/2017-05/18/content_3326047.htm

今回問題なった論文はチャオ・シオン(Chao Xiong)が34歳(?)の時の2018年の論文である。被盗用者である インドのルパリ・バードワジ助教授が自分の論文の被盗用に気が付いて学術誌に通報した。

盗用は加工盗用(ロゲッティング)なので、盗用検出ソフトで検出されない。

学術誌が調べ、盗用と判断し、撤回した。ところが、盗用論文はルパリ・バードワジ助教授が指摘した論文だけではなかった。そして、2018年1~2月に学術誌「MTAP」で発表した計7論文が盗用だと判明し、編集長の判断で論文を撤回した。

このネカト事件で、チャオ・シオン(Chao Xiong)の所属する常州工科大学に学術誌は連絡しているハズだが、常州工科大学はネカト調査を行なっていない。中国のメディアは何も記事にしていない。

撤回論文が2018年1~2月に学術誌「MTAP」に発表した7論文ということは、学術誌「MTAP」が調査した結果だ。常州工科大学はネカト調査を行なっていないので、「MTAP」以外の学術誌に発表したシオンの論文のネカトを誰も調べていない。

法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

なお、2018年1~2月の「MTAP」7論文以外にも、シオンが25歳(?)の時に出版した2009年の論文が撤回されている。撤回理由は書かれていないが、「出版ルールに違反」とあるので、ネカトだろう。
→ 撤回告知:Notice of Retraction: Tracking Moving Vehicle Based on Mean Shift Algorithm – IEEE Conference Publication

ということは、シオンは2009年、25歳(?)の時から10年もネカトをし続けている可能性がある。誰かが調査しないとマズイだろう。

現状では常州工科大学が調査すべきだが、ネカト調査を所属大学に任せているのは異常である。大学にとって利益相反で、子供の悪行を親が調査するみたいで、正当に調査されない。文句を言われなければ隠蔽したいだろう。

《2》中国

中国のネカトは深刻で、2019年2月、中国・教育省の広報官・シューメイ(Xu Mei、写真出典)は学術界のネカトを厳罰で挑むゼロ・トレランス方式(zero tolerance)で行なうと発表している。
→ 2019年2月15日記事:Education ministry vows zero tolerance for academic misconduct – People’s Daily Online

しかし、掛け声倒れにならないだろうか? 中国のネカト対策は過去にも同じような厳罰方針が表明されたが、なかなか上手に運用されない。

国家の統治体制として中国が民主集中制を採用している限り、大きな不正や腐敗は除去できても、ネカトのような上級国民の小さな不正は除去しにくいだろう。

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《1》日米比較

セクハラ(Sexual Harassment)の規則・言動例で、日本と米国の大きな違いがある。

日本は、文部科学省をはじめ、言動例を細かく記載している。一方、米国は言動例を記載していない。

この違いは何なんだろう?

と思えば、日本の研究助成機関はセクハラ(Sexual Harassment)について何も記載がない。

一方、米国の研究助成機関はセクハラのウェブサイトを設け、セクハラに関する研究に研究費を支給し、セクハラを犯した研究者に研究助成しない。全米アカデミーはセクハラ者を会員から除名する。

この違いは何なんだろう?

《2》文化風習

世界の例として米国を中心に調べたが、日本がシステムとしてセクハラ対策を導入する時、米国から学ぶのは正しいのだろうか?

モチロン、世界の先進国の「高等教育界(含・学術界)のセクハラ」を十分知る必要はある。そうしないと、日本の学部生・院生・ポスドク・教員が、日本の大学・研究機関で受けたセクハラ教育・研修のまま、世界の先進国に留学あるいは国際共同研究をし、日本流に振舞うと、とんでもないことになる。

しかし、日本の性に関する文化風習は世界の先進国の文化風習とは大きく異なる。冒頭に述べたように、欧米では、挨拶の時、あるいは親しみの感情表現として、「握手・ハグ・チークキス・身体を触る」文化風習がある。日本にはない。

日本は、中国・韓国などの東アジア圏の文化風習との共通点が多い。しかし、セクハラに関して中国・韓国などの東アジア圏の国々は日本より遅れているので、それらの国のシステムを導入する意味はない。日本が和洋折衷のシステムを作る必要があるだろう。

《3》お茶の水女子大学は文部省訓令違反

「文部省におけるセクシャル・ハラスメントの防止等に関する規程(文部省訓令第4号)」別紙1の「指針」に、

成人に対して、「男の子」、「女の子」、「僕、坊や、お嬢さん」、「おじさん、おばさん」などと人格を認めないような呼び方をすること

はセクハラだとある。

ということは、成人である女性を「女の子」に相当する「女子」と呼ぶのは文部省訓令違反である。白楽の勤めていたお茶の水女子大学は、お茶の水「女性」大学と改名すべきだ。

英語だって、Ochanomizu Girl’s Universityではなく、Ochanomizu Women’s Universityになっているではないか? と、思いました?

イヤイヤ、公式には、「Girl’s」も「 Women’s 」もなく、単に、Ochanomizu Universityなんです。

他の大学を見ていくと、日本女子大学はJapan Women’s University、昭和女子大学 はShowa Women’s University、東京女子大学はTokyo Woman’s Christian Universityなど「 Women’s 」が入っている。そして、お茶の水女子大学に対する関西の国立大学である奈良女子大学は、ナント、 Nara University ではなく、Nara Women’s University だ。Nara Universityの英語名は、1969年に私立の奈良大学が設置され、使われている。

お茶の水女子大学の英語名に「 Women’s 」が入ってないのは、日本では別格扱いである。但し、前身の東京女子師範学校が明治8年(1875年)に創設された時は、英語でTokyo Women’s Normal School、つまり、「Girl’s」ではなく「 Women’s 」だった。

1949年の国立学校設置法でお茶の水女子大学が新設され、東京女子師範学校が包括された時、賢い人がコッソリ(かどうか知りません)、「 Women’s 」の入らないOchanomizu Universityという英語名にしたのだ。

しかし、文部省訓令違反だし、そろそろ、約150年の明治8年に命名した「女子」を150年ぶりに「女性」と変えたらどうですか。

ついでに言うと、日本が全国に工学部を拡充した時、どうして、お茶の水女子大学に工学部をつくらなかったのか? 医学部がたくさんできたとき、どうして医学部を作らなかったのか? そして、法学部も経済学部もどうして作らなかったのか?

つまり、女性の少ない分野に女性の人材を育てるのが国立のお茶の水女子大学の役目なのに、文学部、教育学部、家政学部はあってもいいけど、それらが主体ということはないでしょう。

工学部、法学部、経済学部を作っておけば、現在、日本の産業界や政界で活躍する女性が、女性社長・女性重役が、もっと確実に増えていたハズだ。日本の現在の社会の様子が違っていたと思う。

白楽、お前は教授だったのだから、そういう提案を内部からしろって? ハイハイ、しました、しました。ケンもホロロの反応でしたね。工学部を作る話は、経産省と産業界から打診されたが、省益がぶつかると文科省に反対され頓挫したよと、コッソリ、教えてくれた人もいました。

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《1》境界線

「身体を触る、ハグする、頬にキスする」などの行為と性的発言をしたことで、アヤラはセクハラで有罪とされた。

しかし、ローズ・マクダーモット教授(Rose McDermott)が「不適切な言動と本物のハラスメントの境界線の位置は、女性自身も意見がまちまちです。境界線上の言動は折り合いをつけるのが難しくなっています」と述べているように、セクハラの線引きは難しいと白楽は思った。

文化・習慣に大きく影響されるだろう。

米国で、挨拶として両頬にキスするのをしばしば見た。白楽も相手の女性が顔を近づけてきたときは観念しておとなしく受け入れた。一般的だと思う。

なお、読者はご存じだと思うが、挨拶で両頬にキスをする時は、お互いの頬を触れ、唇を頬につけづに、チュッという音を立てる行為である。

ハグも米国では一般的だと思う。ただ、日本では一般的ではない。

お茶の水女子大学時代の弟子で、日本で医師になり、スウェーデンで研究者になっている女性がいる。大柄で妖艶な女性だが、8年前、日本に来た時、研究室を訪ねてきた。10数年ぶりに会ったアラフォーの大柄で妖艶な女性が、会った最初に、「先生、ハグして、ハグ」と両手を広げて駆け寄ってきたときは、さすがの不肖・白楽、タジタジと後ずさりした。ゴメン、ハグしてあげられなくて。けど、スウェーデンではハグは一般的なんでしょうね。

女性から両頬にキスする挨拶を受け入れたことがあると書いたが、外国人(欧米ではない)の男性にされた時はとまどった。頬をグイグイと白楽の頬に押し付けられビックリした。ただ、その国の男性同士の挨拶として頬をグイグイ押し付けてくるのは友情のあかしで、むしろ好感すべきなのかもしれない。

文化習慣の背景が異なるので、アヤラのセクハラ言動の悪質度が白楽にはイマイチわかりません。

また、文字で「身体を触る」と書いてあっても、性的な触り方なのか、そうでない触り方なのか、わからない。ましてや、相手がどの程度嫌がっているのか(好んでいるのか)、わからない。

ただ、大学はアヤラにセクハラ言動をやめるよう警告していたのに、その警告を無視して、アヤラはセクハラ言動を続けていたのは大きな問題だろう。

《2》56年間

アヤラのセクハラ事件が表沙汰になったのは2017年に被害女性が大学に訴えたからである。

アヤラはその時、83歳である。

そして、「私がヨーロッパの紳士の良いマナーとして常に考えてきたこと、それは、女性の同僚に温かい挨拶をし、両頬にキスをして美しさに賛美することでした」と弁解した。

ということは、1961年にアヤラが27歳で米国に移住して以来ズッーーーと、56年間もそのマナー(セクハラ行為)をしてきたことになる。挨拶だから、不快だと感じた被害者は4人どころか、4百人、4千人、イヤ4万人というレベルでいたでしょう。

誰かがもっと早く、つまり、アヤラがまだ若い偉くない時、「境界線上の言動」だと軽くでも、しっかり伝えるべきだった。ただ、「境界線上の言動」を注意するのは難しいけど。

また、大学はアヤラのセクハラ行為期間を2004-2017年(70-83歳)の13年間と公表したが、実際はもっと前からではないでしょうか?

《3》死ぬまで研究

アヤラがセクハラ事件でカリフォルニア大学アーバイン校・教授を辞任したのは、2018年6月28日で、アヤラが84歳の時である。米国には定年がないとはいえ、84歳で現役の教授というのも、なんというか、米国はスゴイですね。

セクハラ事件を起こさなくても、トットと辞職したらどうでしょう、と思いました。

白楽が、1980年代・1990年代、米国に滞在した時、テクニシャンのダティ(女性)がアラフィフでNIHを退職した。3歳年上の実兄が病気で亡くなり、このまま自分も働いていると、仕事をしたまま死んでしまう。もう老後の生活に困らないお金があるので、人生をエンジョイするために退職するとのことだった。つまり、ハッピー・リタイアメントという人生の生き方である。

ビルゲイツのようにお金がたまれば仕事を辞めて好きなことをする。このハッピー・リタイアメントという老後の生き方の概念が米国にはあるのだなと実感した。

ところが、「老後の生活に困らないお金がある」アヤラは84歳で現役の教授。ハッピー・リタイアメントの生き方はどこ行った?

そういえば、白楽の米国時代の直属のボス、ケネス・ヤマダ(Kenneth M. Yamada)は、1944年9月生まれなので2019年7月16日現在、75歳だが、まだNIHの部長で現役の研究者である。

白楽のボスのボスのアイラ・パスタン(Ira Pastan)は1931年6月1日生まれなので2019年7月16日現在、88歳。それなのに依然として、NIH・国立がん研究所・分子生物学部の現役の研究者である(Ira Pastan, M.D. | Center for Cancer Research – National Cancer Institute)。

セクハラの概念が30年前と変わったように、老後の生き方の概念も変わったようだ。30年前は若くしてハッピー・リタイアメントが米国人の望む生き方だったが、現代では、死ぬまで現役で研究するのが米国の研究者の望む生き方のようだ。

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《1》判断が難しい

https://www.lepoint.fr/futurapolis/futurapolis-sante-un-vent-d-optimisme-22-10-2017-2166448_427.php

多くの記事は、キャサリン・ジェシュス(Catherine Jessus)が画像のねつ造・改ざんをしたと報道している。ところが、フランス国立科学研究センター(CNRS)とソルボンヌ大学の調査委員会は、「クロをシロと結論した」と記載している。

電気泳動バンドが重複使用だと指摘されたパブピアの議論を、白楽なりに読んでみた。

すると、同じ条件なので同じ画像でも良い場合や、電気泳動バンドの切り貼りがOKだった昔の論文だったり、クロと断定するのが難しい画像もあると思った。

つまり、フランス国立科学研究センター(CNRS)とソルボンヌ大学の調査結果は正しいかもしれないと思った。

《2》「クロをシロ」と結論した

10歩譲って、「クロをシロ」と結論した流れでジェシュス事件を見ると、フランス国立科学研究センター(CNRS)とソルボンヌ大学の対応は、お粗末すぎる。

ただ、その対応に、フランス国内の多勢の研究者が強く反発したのは救いである。

振り返って、日本では、東京大学・医学部教授たちのネカト調査は「クロをシロと塗り替えられた」印象だが、日本国内の主要な研究者が大きく反発したというニュースを聞かない。日本は死んでいる。

《3》フランス以外

ジェシュス事件は大きな事件だと思うが、フランス以外では報道されていない。日本のメディアはもちろん報道していないが、米国の著名なネカト・サイトの「撤回監視(Retraction Watch)」もまったく触れていない。

論文撤回はないが、「クロをシロと塗り替えた」印象があり、ネカト事件としてはイロイロ考えさせられる事件だと白楽は思うのだが。

ネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)が攻撃的なのは確かだ。しかし、ジェシュスもそうだが、ネカト者は通常、強大な権力に守られている。「クロをシロと塗り替えてもらえる」ほど強大な権力に守られている。その権力の分厚い壁に風穴を開けて真実を引っ張り出すには、シュナイダーのような激しいネカトハンター活動は貴重だと思う。「ル・モンド」新聞も、偉い!

「撤回監視(Retraction Watch)」は事件を知ってるはずだが、競合していると思うのか、同業者であるシュナイダーを軽視している。シュナイダーは「撤回監視(Retraction Watch)」の記事を引用しているのに、なんかヘンだ。

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《1》訂正でおとがめなし?

チャールズ・アームストロング(Charles Armstrong)は、2013年に出版した自分の著書『弱者の暴政』が、2016年に盗用と指摘された。

盗用との批判を受けて、アームストロングは80箇所を訂正し、2017年に再版した。

これで、おとがめなしなら、全く、完璧に、絶対、チョー、おかしくないですか?

盗用は指摘された部分を訂正すれば、おとがめなし? うっそー。

じゃ、ねつ造・改ざんも指摘された部分を訂正すれば、おとがめなし? 嘘でしょ。

盗んだ品を返せば、おとがめなし、なんてあり得ない。

訂正すれば、おとがめなしなら、世界はネカト天国で、研究公正は機能しない。指摘された時に訂正すればいいだけだから、みんなネカトする。

日本では、国会議員が金を不正に支出しても、会計報告書の訂正で済んでしまう。返金すれば済んでしまう。言っておきますが、コレって、100%おかしいですから。

《2》沈黙

著名な教授の盗用をコロンビア大学は調査中なのかどうかを含め、告発から2年以上経つのに依然として沈黙を保っている。

当然ながら、沈黙は非難されている。

このような大学の態度は米国でも珍しくはないが、少しこじれれば、学長の首が飛ぶ。それなのにどうしてコロンビア大学は沈黙を保っているのか?

コロンビア大学の学長は、2002年から弁護士で法学部教授だったリー・ボリンジャーLee C. Bollinger、写真出典)が務めている。かれこれ、17年間も学長をしていると腐敗してくる。英断できないだろう

アームストロング教授はトランプ大統領(または政権内部の要人)と特別な関係があるのだろう。安倍首相のお友達は重要な記録を廃棄しても、女性記者をレイプしても、罪に問われない。同じことが米国でも起こっているのだろう。つまり、コロンビア大学の学長はトランプ大統領に忖度している(のだろう)。米国政府が北朝鮮問題の政策を練る時、アームストロング教授はそれほど重要な人物ということだ。

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《1》詳細不明

トーマス・ジェッセル(Thomas Jessell)のセクハラ事件は、詳細が報道されていない。つまり、セクハラの具体的行為は「研究室員と性的関係」だが、性的関係に至る状況や、性的関係した相手の名前は報道されていない。これだけの著名人で詳細が報道されないのは、米国ではとても珍しい。

どうしてなんだろうか?

コロンビア大学の特徴なんだろうか? 2019年7月7日現在、コロンビア大学では13件のセクハラが発覚している。しかし、白楽はコロンビア大学の他の事件を調べていないので、コロンビア大学の特徴かどうか判断できない。

考えられる理由が他に3つある。

1つ目は、ジェッセルのセクハラは「研究室員(院生?)と数年に渡り性的に関係」があったことだ。推定だが、両者の合意の性的関係、つまり、不倫だろう。不倫なら、コロンビア大学の規則違反であっても、性不正(sexual misconduct)に該当しない。だから悪質度が小さい。それで、詳細に報道されない。 → 3‐1‐1.性不正の分類・規則 | 研究者倫理

2つ目は、ジェッセルの妻・ジェーン・ドッド(Jane Dodd)が同じコロンビア大学の神経科学科・教授ということだ。妻・ドッドはジェッセルの不倫相手を知っているハズだ。しかし、事実を具体的に公表すれば、妻・ドッドが教授職を続けるのは耐え難いだろう。それで、コロンビア大学は事件の詳細を公表しなかった。公表すれば、妻・ドッドに訴えられる危険がある。

3つ目の理由は、セクハラ騒動が勃発してから1年数か月後、ジェッセルは進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy, PSP)で亡くなっている。つまり、セクハラ騒動の最中に既に症状が現れていた、あるいは病状が悪化していた。となると、調査は十分できず、本人の反論もまともにはできない。だから、コロンビア大学は調査不十分のまま何らかの結論を出さなくてはならなかった。しかし、調査不十分のまま具体的に発表するとツッコまれる。それで、詳細を隠蔽した。

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《1》性不正

米国の高等教育・学術界でここ1~2年急浮上してきた問題はセクハラや性的暴行・レイプを中心とする性不正(sexual misconduct)である。一方、日本は問題を矮小化して、「セクハラ」「アカハラ」を中心に扱っている。それで、日本の知識と感覚では米国の高等教育・学術界の性不正(sexual misconduct)事件を把握できないと感じていた。

今回、そのあたりを整理し、ようやく、米国の状況がつかめてきた。

本文に書いたが、性不正は「日本の常識、世界の非常識」である。

勿論、鵜浦裕が指摘するように、キャンパス事情は米国と日本では異なる。
→ 鵜浦裕:現代アメリカの大学の性的暴行―現状報告―

100歩譲って、日本の現状で良しとしよう。

しかし、日本の学部生・院生・ポスドク・教員が、日本の大学・研究機関で受けた性不正の教育・研修のまま、海外(米国・英国など)に留学や滞在し、日本流に振舞うと、とんでもないことになる。

文部科学省や学術会議が対応すべきだと、痛感します。

《2》禁止法

1986年、リハイ大学(Lehigh Univ)の19歳の女性学生・ジャンヌ・クラリー(Jeanne Clery)が大学でレイプされ殺された。その事件からわずか4年後、連邦法であるキャンパス安全法(クラリー法、Clery Ac)が制定された。

この素早さに、感心した。「白楽が思うに、議員の娘さんも大学に行くからね」と書いたが、日本の議員の息子さんも大学に行く。娘さんも大学に行く。

日本の議員の息子さんが学部性・院生になって女性に性的暴行を加える(こともあるだろう)。

どうして、日本の議員は大学での性不正防止法をさっさと作らないのだろう? なに、議員の息子さんは強姦してももみ消してもらえる? 困ったもんだ。

じゃ、議員の娘さんが学部性・院生になって大学教員からセクハラ・性的暴行を受ける(こともあるだろう)。セクハラ・性的暴行を受けたらどーすんの。トラウマになって一生引きずるという話もある。セクハラ防止法をさっさと作りなさい。

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《1》スピーチでの盗用

スピーチで他人の言葉を引用せずに使用することと、学術論文などに他人の文章を引用せずに使用することは次元が異なる、と白楽は思っていた。

今回のアンドレア・ミラー(Andrea Lewis Miller)のスピーチは、オスティーンにクレジットすべきだったと思うが、許容範囲だと思っていた。

しかし、日本の著作権法10条1項に「講演その他の言語の著作物」を著作物としている。

そして、スピーチを文章に「固定」しなくても、スピーチそのものが日本では著作物だそうだ。

なお、「映画の著作物」を除き、著作物とされるためには、「固定」(録音、録画、印刷など)されている必要はありませんので、「原稿なしの講演」や「即興の歌」なども保護の対象となります。(文化庁:著作権なるほど質問箱)。

だから、スピーチの盗用は日本の著作権法ではアウトである。白楽自身がスピーチをすることはもうないと思うが、皆さんは注意してください。

なお、米国ではスピーチそのものは著作物ではない、と聞いたが、しっかり調べていない。

ここまで書いて誤解を与えるといけないので次も書いておく。

今回のようなスピーチでの盗用は、日本の著作権法ではアウトだが、文部科学省のネカト規則ではセーフである。

文部科学省の「研究活動の不正行為等の定義」では、「発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造と改ざん、及び盗用」である(研究活動の不正行為等の定義:文部科学省)。

つまり、入学式のスピーチは「発表された研究成果」ではない。従って、スピーチで他人の言葉を流用しても「研究活動の不正行為」として処分されることはない。

《2》他の事例

欧米の学術界でスピーチの盗用が糾弾されることは珍しいが、「2011年、アルバータ大学・医学部長(男性)(61歳?)が卒業スピーチで他人のスピーチを使い、学部長辞任、4か月休職の処分を受けた。教授職は保持できたが、結局、他大学に移籍した」事件を記事にした。
→ フィリップ・ベイカー(Philip Baker)(カナダ) | 研究倫理(ネカト、研究規範)

「スピーチは、自分の妻は2回流産し、初めて生まれた赤ん坊は動脈疾患を抱えていた。それを救ってくれたのが医学だった、という内容だ。とても、個人的な内容だが、実は、その話はベイカー医学部長自身の経験ではなかった。つまり自分の妻や子供ではなく、被盗用者のガワンディ外科教授の妻や子供のことだったのだ」(出典:上記)。

この場合、日本の文部科学省のルールではセーフでも、社会通念としてはアウトだろう。

一応、スピーチでの盗用として話を進めたが、自分の話ではないのに自分の話のように語っている。つまり、ねつ造というかウソ・虚偽の内容だからである。

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《1》ウ~ン?

シーケー・ガンセイラス(C. K. Gunsalus)らは、本論文で、研究助成機関、研究者、全米の研究大学・研究機関の3者が統一的なネカト・クログレイ基準を設け、一貫した施策を実行するための討議をする研究政策委員会が必要だと主張している。

どうだろう? その委員会の設置で、米国のネカトは改善されるのだろうか?

時代は、性不正・アカハラをネカトに含めるよう急速に動いている。性不正の一部は従来から警察が介入していた。この際、ネカトも犯罪とみなす方がネカト対策は効果的で、調査(捜査)は、警察がすべきではないのだろうか?

犯罪なら、ネカト・クログレイ基準は全米で統一されるだろう。

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《1》ネカト文化

クェンフォン・チン、陳昆鋒(Kuen-feng Chen)、チョンワイ・ シィアォ、蕭崇瑋(Chung-wai Shiau)が、米国で研究を学んだ教授は同じ台湾出身のオハイオ州立大学(Ohio State University)のチンシー・チン教授(Ching-Shih Chen)だった。しかし、チンシー・チン教授がそもそも、ネカト者だった。
→ チンシー・チン、陳慶士(Ching-Shih Chen)(米) | 研究倫理(ネカト、研究規範)

3人が偶然ネカトを犯したのではなく、ネカト文化をお互いに学ぶ、というか、お互いにネカト行為の影響を受けあったのだろう。つまり、朱に交わって赤くなった。

人間の行動や価値観は周囲から影響を受け、また周囲に影響を与える。

だからこそ、学術界にネカトフリーの研究環境を保つことが、ネカト防止に役立つのだ。

《2》ネカト被災者

研究室のボスがネカトを犯して研究室が閉鎖された時、学部生・院生・ポスドク・研究員の被害は相当大きい。かなりの人が研究キャリアをあきらめる。あきらめなくても、数年間の研究がパアになって、やり直さなくてはならない。共著の論文が撤回されれば博士号取得が怪しくなる。業績が減るので研究職への就職にもマイナスである。

いつも思うのだが、この人たちの補償はどうなっているのだろう?

後ろは、チン研究室またはシィアォ研究室の学部生・院生・ポスドク・研究員(推定)。httpd://tw.appledaily.com/headline/daily/20190110/38228500/

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《1》正義はどこに?

ギファイ大臣は沈黙を保っている。ドイツの世間やメディアも沈黙を保っている。家族大臣の辞任を求める要求はほとんどない。

2019年6月22日(41歳)現在、ベルリン自由大学が間もなく調査結果を発表するだろうと噂されている。

白楽は、盗博したが博士号ははく奪されないと予測した。

となると、ドイツ、大丈夫だろうか? と心配になる。

盗博したのに博士号ははく奪されないでは、正義はどうなってる? 倫理学で大きな貢献をしてきたドイツの倫理観はどうなってる? メルケルの力が落ち、ドイツの力も落ちるということか?

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《1》詳細が不明

マルコム・ピアース(Malcolm Pearce)事件は詳細が不明である。資料はロンドンの公文書館に保存されているようだが、インターネットでは閲覧不能である。

事件の詳細が不明だと、「どんな人が、どの状況で、どうして?」がわからない。

そして、論文に「架空の患者」を記載するねつ造事件は、その後も発生している。

《2》無策

ピアース事件は1994年の事件、つまり、25年前の事件である。

25年前の研究技術や研究環境は現在とかなり異なる。

しかし、2019年6月19日現在も多くの研究者がネカト事件を起こしていて、研究者がネカト事件を犯す動機と状況は同じに思える。つまり、25年もの間、ネカトに関しては学術界は変っていない。抜本的で有効なネカト防止策は依然として立案・実施されていない。

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ウィリアム・クルックシャンク(William W. Cruikshank)、2013年:National Academy of Inventors Announces Fellows » Boston University Medical Campus | Blog Archive | Boston University

この事件の詳細は不明です。

非常に最近の事件なのに、状況をつかめる情報がない。ネカト防止策は、この事件からは学べない。

ただ、締め出し期間が5年間で、処分された時、クルックシャンクは64歳(?)なので、研究職に復帰する可能性はないだろう。

それにしても、2014年にネカトが発覚したのに、研究公正局がクロと発表したのはその5年後の2019年5月21日である。研究公正局の調査は遅すぎだ。

ただ、クルックシャンクはいつボストン大学医科大学院を辞職(解雇?)したのかわからないが、2014年の時点で実質的な処分が科されていたのかもしれない。また、2015年以降、NIH研究費を受給できていない。問題の「2011年のJ Clin Invest.」論文も2014年に撤回されている。それで、研究公正局がグズグズと調査しても、実害はほとんどない。これが、グズグズ調査の原因と理由?

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《1》規則

https://www.harvardmagazine.com/2018/03/jorge-dominguez-investigation-retirement

ドミンゲス事件で、ドミンゲスは1979-2015 年(34-70歳)の37年間にも渡ってセクハラ行為を繰り返して、新聞記者が特定した被害者だけで18人に及ぶ。

少なくとも18人に大きな不快感を与え、彼女らの学業習得を大きく阻害し、人生を曲げてしまった。

ところが、ハーバード大学はドミンゲスにペナルティを科していない。正確に書くと、名誉教授の称号をはく奪した。しかし、コレって、ペナルティというようなシロモノではない気がする。

そして、刑事事件にもなっていない。

事件を調べると、「セクハラはやり得」という印象だ。

74歳の爺さんにペナルティを科すなら、刑務所や財産没収でしょう。

《2》大学の責任

ドミンゲスのセクハラ事件が公になったのは、2018年2月27日、トム・バートレット(Tom Bartlett)記者とネル・グルックマン(Nell Gluckman)記者が「Chronicle of Higher Education」記事として報道したからだ。ドミンゲスが73歳の時である。

しかし、1979年、ドミンゲスが34歳の時、学部生のシャルナ・シャーマン(Charna Sherman)へのセクハラがハーバード大学・文理学部(FAS: Faculty of Arts and Sciences)に訴えられた。この時、大学は調査も処分もしていないようだ。

さらに、 1983年、ドミンゲスが38歳の時、同僚の女性・テリー・カール助教授(Terry Karl)への2年に渡るセクハラ行為を、ハーバード大学・文理学部に訴えられた。この時は、大学は調査し、ドミンゲスをセクハラで有罪とした。しかし、処分はドミンゲスの解雇でなく、管理職から3年間、外すという軽微なものだった。

つまり、1 979年、さらに 1983年に、ドミンゲスを解雇しておけば、その後の10数人のセクハラ被害者はいなかったことになる。解雇でなくても2度とセクハラ行為をしないレベルの厳罰でも10数人の女性を救えただろう。

しかし、大学の対処が悪かった。

結果として、ハーバード大学はオオカミを飼い、餌食となる女性を提供していたことになる。ドミンゲスは味をしめ、一層巧妙に、何度も何度も女性学生・教員を性的に襲ったのである。万一、発覚しても、受ける処分よりも快楽の方がメリットがあると、自分の経験で学んだのである。

性的犯罪は麻薬と同じで常習性がある(推定)。また性癖、つまり癖(クセ)なので、悪いと知りつつも再犯を重ねる。

この事件では、ハーバード大学の責任は大きいと思う。

そして、ハーバード大学に限らず、一般論として、大学の責任は大きい。

日本のセクハラ事件に対する大学の処分は、米国よりもズッと軽い。大学教員を解雇せず停職処分で復職させる。そしてセクハラ教員を匿名のままである。結果として、セクハラ性癖を持つ教員が平然と学内に闊歩し、女性学生を指導する。宿泊を伴う学外調査もする。

日本の大学はセクハラ性癖を持つ教員を抱え、それを女性学生に隠している。当然、セクハラ事件が再発する。大学に責任があると思うが、日本では、この事を誰も指摘しない。おかしくないか?

《3》隠れた被害者

以下は、「「セクハラ」:インダー・ヴェルマ(Inder Verma)(米) | 研究倫理(ネカト、研究規範)」の修正再掲である。

ホルヘ・ドミンゲス(Jorge I. Domínguez)は、ハーバード大学・公共政策学科(Department of Government Harvard University)で、1979-2015 年(34-70歳)の37年間に女性学生・女性教員にセクハラ行為を繰り返していた。その被害者は少なくとも18人もいた。

この裏に、新聞に書いてない、イヤ、書けない(多分)忌まわしい事実があると思われる。つまり、ドミンゲスの性的欲求に屈した被害女性がかなりいると思えることだ。

セクハラ行為をうまく拒絶できた女性は今回告発できただろうが、拒絶できなかった女性は表に立ちたくないだろう。そういう女性が何十人もいるに違いない。

ドミンゲスが37年間にわたってセクハラをし続けたということは、その間、失敗よりも成功する回数が多かったからに違いない。ある程度成功したからドミンゲスはセクハラをし続けたのだろう。ことごとく失敗すれば、途中でやめたに違いない。

ということで、メディアが公表している事態よりもドミンゲス事件の真相は深刻だと思われる。

《4》メディアの威力

ドミンゲスのセクハラ事件が公の問題になったのは、2018年2月27日、トム・バートレット(Tom Bartlett)記者とネル・グルックマン(Nell Gluckman)記者が「Chronicle of Higher Education」記事として報道したからだ。

大学の調査結果でもない、警察の調査結果でもない。新聞記者が取材を重ね、綿密でダイナミックな記事を書いたのだ。

そして新聞報道のために大学は調査をし、軽微とはいえドミンゲスを処分した。

日本の新聞にこういう機能(パワー)がない。社会の木鐸になっていない。これでいいんだろうか?

一方、週刊誌の文春や新潮がこの機能を果たしている。しかし、週刊誌の記事は芸能スポーツと政治ネタが中心である。学術界のネカト事件をまともに扱わない。

だから、日本では残念だけど、学術界のネカト事件のメディア報道は表面的で、問題の解決にあまり役立たない。

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《1》モンテネグロ

ムベラ・クルペヨヴィッチ(Mubera Kurpejović) http://www.mpin.gov.me/ministarstvo/kabinet/Mubera_Kurpejovic/

欧州の小国・モンテネグロ、なかなかヤリマスネ。学術公正では大国と呼んでいいですね。

それにしても、ムベラ・クルペヨヴィッチ(Mubera Kurpejović)は27歳で教育省・高等教育局長に就任している。大学も首席で卒業。超優秀なんですね。

《2》盗用禁止法

記事のタイトル「Montenegro just made plagiarism illegal」、つまり、「モンテネグロは盗用を違法にした」だったので、盗用だけを禁止する法律を制定したと、最初は勘違いした。

日本や米国では法律として著作権法がある。時々、白楽は、「著作権法」と「研究倫理での盗用」の守備範囲がどうなっているのだろうと不思議に思うことがある。どうして、すべての盗用を著作権法で調査・処罰しないのか? と。

なお、盗用禁止法は、2018年7月、インドが世界で最初に導入している。インドでは現在盗用検出ソフトで院生の修士論文・博士論文の盗用、研究者の論文の盗用をチェックしている。

今回の記事を読むと、モンテネグロの学術公正法は、盗用に限らずネカト全般、さらにはクログレイも禁止している。違反すると刑事罰を与える法律で、インドの盗用禁止法よりもかなり前進、というか、次元が異なるほど斬新である。

モンテネグロの学術公正法のように刑事罰を与える学術公正法を日本に導入すると(気配はみじんもありませんが・・・)、「研究不正大国」と呼ばれている日本は、一転して、「研究公正大国」と呼ばれるだろう。

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https://www.thetimes.co.uk/article/top-scientist-dr-abderrahmane-kaidi-quits-after-confessing-to-research-fakery-lvt376d30

《1》腰巾着

スティーブ・ジャクソン教授(Steve Jackson)という科学の巨人にかわいがられた若い研究者のネカトである。

ネカトの定番である。

《2》改善意志

ケンブリッジ大学は調査結果をウェブ上に公表すべきだ。「Science」誌と「Nature」誌は撤回理由をもっと具体的に示すべきだ。

なんだか、「撤回して、ハイ、終わり」という印象を受けた。これではマズイでしょう。今後、ケンブリッジ大学は、ネカトを防ぐにはどうしたらよいのか? 「Science」誌と「Nature」誌はネカト論文を掲載しないようにするにするにはどうしたらよいのか? そういうことが必要でしょう。ッたく。

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《1》不明

日本人のトオル・オオウチがネカト者ではないことを願うが、本記事ではトオル・オオウチ、大内徹(Toru Ouchi)がネカト者だという想定で、状況を読み解いた。

2019年6月4日現在、撤回した論文のデータねつ造・改ざんに関して、ロズウェルパーク癌センターも研究公正局も誰がネカト者なのか調査結果を発表していない。

それにしても、ネカト調査は迅速にすべきだろう。また、クロでもシロでも調査結果をウェブ上に公表して欲しい。

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《1》グズ 遅すぎる

2012年(50歳?)、ネカトハンターのポール・ブルックス(Paul Brookes)がサム・リー(Sam W. Lee、写真出典)のネカトを研究公正局に通報した。

それから7年も経っているが、研究公正局はサム・リーのネカトを調査中で、結果を発表していない。

調査が遅すぎる。

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《1》盗用

盗用は数種類ある。

しかし、確かに、盗用を逐語盗用(コピペ:copy and paste、一字一句同じテキストを流用。引用符なし、文献提示なし)に限定しがちだ。

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《1》微妙

タイソンのケティン・アラーズ準教授への振る舞いは写真だけではセクハラ行為なのかどうか、白楽には、判断が難しい。但し、写真だけでもタイソンはアラーズ準教授の左腕をしっかり触っている。アラーズ準教授が「とても気味悪く感じた」のだからセクハラなのだろう。

一般的に、行為を示しただけでは、セクハラ行為かどうか微妙な場合がかなりあると思われる。

その微妙な場合、加害者は、相手がセクハラと感じているのかどうかを判断するのは難しいと思う。

例えば、女性が、普段と明らかに違う豪華な服を着てきたとき、「素敵ですね」と褒めていいのかどうかというレベルで難しい。

さらに、例えば、未婚の男性教授(タイソンは既婚者だから別)が若い女性に純粋に求愛する時、求愛の進め方によっては、相手が不快に思う可能性もある。相手が不快に思うとセクハラになるかもしれない。

ハラスメントの意図がない純粋な求愛でも、女性が秘書・院生・ポスドク・助教授・準教授だったら、セクハラでアウトになる可能性がかなりある。また、そのような人と恋愛中の喧嘩、あるいは恋愛の破局を迎えた時、セクハラでアウトになる可能性が高い。

みんな、困っていないのだろうか?

《2》セクハラ閾値

米国の有名学者のセクハラ行為が多数糾弾されているが、日本の有名学者のセクハラはほとんど報道されていない。

どうしてか?

ねつ造・改ざん・盗用の場合も、閾値(不正認定のレベル)が国によって異なるが、ねつ造・改ざん・盗用はそのユレ幅はかなり小さい。

しかし、セクハラ閾値の高低は国によって大きく異なる。

米国以上に日本にはセクハラ行為が多いと思うが、米国でセクハラと訴えられる行為が、日本では訴えられない。両国の女性(と社会通念)の間でセクハラと感じる閾値が異なる。つまり、セクハラ閾値が日本はかなり高い気がする。

だから、日本の院生・研究者が日本と同じ感覚で米国で性的言動をすると、セクハラで訴えられる可能性がでてくる。ただ、現在は、セクハラで訴えられる米国の研究者は、ほとんどが高齢の偉い人で、若い普通の研究者ではない。

いずれ、米国でも若い普通の研究者がセクハラで訴えられるようになるだろうが、そうなると、日本から米国に研究留学している若い普通の研究者が訴えられるようになるだろう。日本の感覚で言動するからである。

《3》若気の至り

「法学:ジョー・バイデン(Joe Biden)(米)」で述べたが、「性犯罪を含めた性的行動、そして、カンニングやネカト行為を若い時にする。この若気の至りに対して社会はどう対処するのが妥当なのだろうか?」。

タイソンのアメット・エルマートへのレイプ事件は、1984年のタイソンが25歳の時である。アメット・エルマートは2014年のブログで述べている。その時点で、既に30年前である。

被害者は、30年もトラウマになっていた。人生が大きく狂ってしまった。確かに、タイソンのレイプ行為は許しがたい。

でも、30年も前、タイソンが25歳の時である。多くの人間は、若い時は、清廉潔白に生きていないと思う。人間社会としては、「若気の至り」で犯した許しがたい犯罪行為をどうするといいのだろうか?

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《1》微妙

パブピア(PubPeer)が指摘した画像の改ざんは、画像を操作したのかどうか、微妙である。

操作したなら、加工は巧妙である。

フランス科学アカデミー(French Academy of Sciences)の調査結果が、6件の「改ざん」を含む22件の不正行為と判定したのだから、「改ざん」なんだろう。白楽は、調査報告書を精査していない。

《2》嫉妬

アンヌ・ピーロシュ(Anne Peyroche)は45歳(?)でフランス国立科学研究センター・暫定総裁に就任した。論文を調べると、全部で、1996~2014年の19年間に12論文しか出版していない。

白楽は、研究業績が優れている人が組織の長にふさわしいとは全く思っていない。むしろ、ふさわしくないと思っている。ただ、研究業績が普通の人が組織の長の就任するのを強く嫉妬する日本人はとても多い。

フランスの嫉妬文化はどのようなのか、白楽は、よくは知らないが、ピーロシュも嫉妬され、身体検査され、叩かれ、ほこりが出てきたのだろう。結局、3か月で暫定総裁をクビにされた。

もちろん、マクロン大統領を含め、ピーロシュを取り巻く政治抗争もあったに違いない。ピーロシュをめぐるスランス政界の抗争を、白楽は、調べていません。

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《1》若気の至り

性犯罪を含めた性的行動、そして、カンニングやネカト行為を若い時にする。この若気の至りに対して社会はどう対処するのが妥当なのだろうか?

  • 悪い芽を初期に摘まないと大人になったら大きな事件を起こす → 厳罰にする。
  • 若い時の一過性なので、大人になったらやめる → 寛大な処分をする。

ここ何年も、政治家や宗教家の10代・20代の昔の性犯罪まがいの行為が、30-60年後に糾弾されている。

バイデンも23歳、院生1年生の時に軽い盗用をした。処分は軽かったので、その後、法務博士号を取得し、弁護士になり、議員、副大統領になった。

厳しい処分を科していれば、副大統領に至るキャリアは積めなかっただろう。

一方、処分が甘かったために(というわけではなく、本人の資質だと思うが、厳罰しておけば修正できていた可能性もある)、その後、スピーチで盗用し、大統領候補を降りている。最近はセクハラ疑惑が勃発し、再度、大統領候補を降りる羽目になるのかもしれない。彼の倫理のゆるさが、自分のキャリアを傷つけ、米国民に多大な損害を与えている。

研究者も同じ人間なので多分、若気の至りがある。自慢じゃないが、白楽にも若気の至りがある。イヤイヤ、「中気(ちゅうげ)の至り」も「老気(ろうげ)の至りも」、至ってばかりである。

白楽の事はさておき、研究者の若気の至り、例えば学部生・院生のネカトや犯罪をどう処分すべきなのか? 犯罪の種類によると思うなら、どんな犯罪ならどんな処分が適切か? その理由は?

ネカトを研究していると、本人が更生できそうなのか、無理なのか、カネト者個人が置かれた状況とネカト行為を働いた状況がわかると、ある程度類推できる(気がする)。

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《1》有名人

俳優、政治家など研究が本業ではないのに箔をつけるために博士号を取得する。しかし、片手間で博士論文を書けるほど博士論文は簡単ではない。それでネカトをする。バレて、本業まで危なくなる。

博士号は本業に必要ないのだから、取得しようと思わなきゃいいのにと、白楽は思う。人間の業(「ズルして得したい」)なんですかね。

《2》不明

ティエンリン・ジャイのどの論文が盗用なのか、ハッキリつかめなかった。博士号を得るための事前の論文の2つの内の1つが盗用だったとあるが、博士論文そのものに盗用はないのか? 修士論文の盗用は調査されたのか、これら全部の論文が盗用なのか、なんか、わかりませんでした。

単語の流用率が20%以下なら盗用ではないという基準はいつどこが決めたのかも、わかりませんでした。

《3》監督責任

ティエンリン・ジャイの指導教員だったイー・チェン教授(Yi Chen)も処分された。中国は欧米的かと思ったが、ネカトでは日本と同じように監督責任を科す文化のようだ。

《4》中国

中国はここ数年、急速にネカト取締りに乗り出している。ネカトに対してゼロ・トレランス方針(全く許さず、違反した場合は厳罰処分)を宣言している。日本は、10数年後、イヤイヤ数年後かもしれない、ネカト対策でも中国に追い抜かれるだろう。

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《1》市場

白楽は盗用検出ソフトの中心的な技術である「ブラックボックス」アルゴリズムを理解できていない。それで、文章の同一性をどのように検出しているのか、理論的には理解できていない。自分でソフトの開発もできない。

それでも、デボラ・ウェバー=ウルフ(Debora Weber-Wulff)が盗用検出ソフトはそれほど完ぺきではありませんと指摘したのを、納得した自分がいる。一方、いずれ、開発が進み、もっともっと完成度が上がるのか、それとも現状がほぼ最終技術なのか、判断できない自分がいる。

ただ、世の中には、「Turnitin(ターンイットイン)」以外にもたくさんの盗用検出ソフトが出回っていて、この市場は数千億円の市場なんだと認識している。

多くの大学は不完全な盗用検出ソフトをダマされて購入し、検査の結果の盗用度の数値に安心しているだけなのだろうか?

不完全な盗用検出ソフトに巨額のお金を払わないで、大学にネカト専門家を雇用した方が賢い気もする。そうすれば、盗用だけでなく、ねつ造・改ざん・セク・アカハラを減らし健全な教育・研究環境を構築できるでしょう。

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サントシュ・カティヤール(Santosh Katiyar)(右から2人目)https://www.uab.edu/reporterarchive/59939-grape-seed-shows-promise-in-fight-against-lung-cancer

《1》調査報告書

大学の調査報告書は秀逸である。

こういう書類は積極的に公開した方がよいと思う。

《2》大学が自主的に調査

アラバマ大学バーミンガム校は、「撤回監視(Retraction Watch)」記事を読んで、自分の所属教員の論文撤回を知り、自発的にネカト調査に入った。

このように、他からの通報を受けずに大学が自発的にネカト調査をするのはとても珍しい。でも、これが本来のあるべき姿だと思う。

多分、パム・ブネリス研究公正官(Pam Bounelis)が自発的調査を始めた人だと思うが、米国の大学には少なくとも1人の研究公正官がいる。だから、大学は所属する教職院・研究者・院生・学部生のネカトを自主的に管理できる。

日本には研究公正官がいない。どうして設けないのだろう? 専従職員でなくて、教授と兼職でもいいのに。

《3》またしてもインド出身

米国でネカトを犯した研究者に占めるインド出身者の比率はかなり高いと思われる。

インド出身者を対象にしたネカト防止策は?

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《1》ポール・タッカー(Paul D Thacker)

ポール・タッカー(Paul D Thacker)の活動に心を打たれた。エライ!

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《1》監督責任

日本のネカト事件のデータを集計したのを別の記事で書いた。その記事で、ネカト事件で日本は監督責任で処分されるが、世界には監督責任という処分はない、と書いた。

2001年‐2018年の18年間の339件のネカト・クログレイ事件のうち、27件が監督責任で処分を受けている。日本以外の世界(欧米だけではなく世界)は、「不正行為に関与していない」教員を処分することはない。(1‐1‐1.ネカト・クログレイ事件データ集計(2019年):日本編 | 研究倫理(ネカト、研究規範)

米国・NIHのスタンリー・ラポポート室長(Stanley Rapoport)の事件では、研究室の3人がネカトを行なった。ラポポートは2005年~2013年のトータル21論文が撤回されたが、しかし、ラポポートは監督責任で処分された形跡はない。
→ スタンリー・ラポポート(Stanley Rapoport)(米) | 研究倫理(ネカト、研究規範)

今回のシルビア事件も研究室の室員2人が別々にネカトを犯した。そして、1999年~2009年の13論文を撤回している。つまり、11年間も研究ネカトをしていたことになる。

シルビアはネカト者ではなかった。

「データを改ざんしたのはシルビア研究室にロシアから来たロシア人ポスドク・カップルのエレーナ・ブラノバ(Elena Bulanova)とヴァディム・ブダジアン(Vadim Budagian)である。シルビアには研究室員の監督責任があった」。

シルビアはネカト通報を3か月も放置し、2010年2月に腰を上げるのだが、その5年前の2004年にウェスタン・ブロット像が酷似していると指摘されていた。その時も、シルビアはまともに対処しなかった。指摘されながら5年間、2回目は3か月、も放置していては、ネカト黙認が過大で、単なる監督責任よりも重いだろう。ネカト黙認は全室員にいずれ伝わるだろうから、ネカト共犯とは言わないが、同等レベルのズサンな研究室管理である。

米国とドイツでは監督責任の考えは違うかもしれないが、シルビアは、監督責任という名目で、研究室縮小、大学院生・ポスドク受入れ禁止、3年間の研究費申請不可、研究費審査委員不可の処分を受けた。

上記のネカト黙認的な態度だったので、この程度の処分を受けるのは当然だと思う。但し、ネカト者ではないためか、ドイツでは解雇された(辞職?)が、英国・マンチェスター大学医学部・免疫学では教授に採用された(夫が同じ大学だから、夫のパワーが効いているだろうが)。そして、そこで研究活動を維持している。

撤回された最古の論文は1999年の論文である。この時、シルビアは34歳だった。この時に発覚し適正な処分を科していれば、その後のネカトは防げたはずだ。研究ネカトは「早期発見・厳罰対処」が重要だ。

《2》スケープゴート

ブルフォーネ=パウスがネカト者で、ロシア人ポスドクはスケープゴートにされた、とみなす人もいる。

白楽も同様な印象を「少し」受ける。

調査内容の詳細がわからないので、これ以上はなんとも言えません。

《3》他の論文の信頼度

2011年に事件の渦中にあったシルビアだが、その後、メゲズニ以下の数の論文を発表している。

2012年に4報
2013年に3報
2014年に1報
2015年に2報
2016年に2報
2017年に2報
2018年に4報
2019年に3報

研究成果をあげることは望ましいが、これらの論文は信頼されるのだろうか?

《4》ポスドクの人生

研究ネカトとは別問題だが、ポスドクの人生も考えさせられる。

ネカト者とされたエレーナ・ブラノバ(Elena Bulanova)はロシア人ポスドクだが、シルビア研究室で、1999年~2010年の12年間、シルビアとの共著論文が23報ある。その内、第一著者は6報もある。11年間もポスドクだったことになる。

仮に、最短コースの研究者人生として、27歳でロシアで博士号を取得し、すぐにシルビア研究室に来て、1年後から論文を発表したとする。1999年で28歳。2010年では39歳である。論文は毎年2報出版している。論文数から判断すると、かなり有能である。しかし、39歳でもポスドクのままではかわいそうだ。そのような有能な人を、正規研究者に登用しないのは、研究者の人材育成システムに問題があるのではないか?

こんなに長期間ポスドクとして使っていないで、どこかに独立した研究室を持つように、シルビアは助力すべきだったのではないだろうか?

ドイツでは外国人(ロシア人)研究者は、研究室を主宰しにくいような差別があるのだろうか? そういえば、シルビア自身も外国人(イタリア人)で、差別を受けていたのだろうか?

振り返って考えると、日本では外国人ポスドクに独立した研究室を持たせるシステムや文化をもっていない。日本の方が差別が強い。外国人留学生に日本語を教えないで英語だけでOKにしているので、彼らは日本に就職できない。

《5》ポスドクの研究ネカトと教授の責任

「《1》監督責任」をもう一度、考える。

大学院生やポスドクが研究ネカトをしたとき、教授の責任をどうとらえるといいのだろう?

論文で大きく得をする人は、第一著者と教授である。

米国では、テクニシャン(技術員、有給)のメラニー・ココニス(Melanie Cokonis)がデータねつ造で有罪とされても、上司は責任を問われなかった。

日本では、大阪大学医学部の下村伊一郎教授、竹田潤二教授、医学生のデータねつ造事件があった。論文の筆頭著者である医学生(無給)が単独でねつ造したとされた(本人は後で否定)。責任著者である両教授は監督不意行き届きで軽微な処分だった。

院生(日本では無給、欧米では有給)やポスドク(有給)と教授との関係が、国によって幾分異なる。有給なら研究者として責任を負わせて良いと考えるか?

そうではなくて、力関係が重要だろう。教授は院生やポスドクよりかなり権限が強い。その場合、教授の責任の方が重い。教授が室員にネカト行為を強制すればもちろんだが、室員のネカト行為を見て見ぬふりすれば、ネカトを許容したととらえる。監督責任というより共犯だろう。

シルビア・ブルフォーネ=パウス:写真出典Allergieforschung in Borstel

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《1》大学院・研究初期

順調に研究キャリアを積んでいた大学・準教授も普通の人間である。性欲があって「当たり前だのクラッカー」(昭和のギャグです)。同性愛もあれば三角関係もある。人間はみな狂気である。1人の中に聖人と悪魔が共存している。

ただ、研究者はセクハラ事件がいくつも報道されるように、性的事件報道が多い印象はある。

研究者の性的事件は他の職業人に比べて多いのか? それとも、同じ頻度だが、被害者が訴える頻度が多いのか、あるいは、メディアが多く報道するため多いと感じるのか、ハッキリしない。

研究者の性的事件が他の職業人に比べ多いなら、その原因をしっかり考え、防止対策をするべきだ。