2019年6月23日掲載。
ワンポイント:ギファイは、2010年(32歳)、ベルリン自由大学(Free University of Berlin)で政治学の博士号を取得し、2018年3月14日 (39歳)、第四次メルケル政権の家族大臣に選出された。2019年2月(40歳)、ヴロニプラーク・ウィキに盗博と指摘されたが、2019年6月22日(41歳)現在、博士号ははく奪されていない。家族大臣も辞任していない。盗用ページ率は37.1%。国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。
【追記】
・2021年9月28日記事:ベルリンに女性市長誕生へ 論文盗用疑惑の元閣僚:時事ドットコム
・修士論文でも盗用。2021年8月20日記事:New Plagiarism Allegations Against Franziska Giffey | free press – The Courier
・ギファイの博士号剥奪。2021年6月10日記事:German politician Franziska Giffey stripped of doctorate
・ギファイは家族大臣を辞任。2021年5月19日記事:German family minister resigns after plagiarism accusations
・ギファイは博士の称号使用を止めた。2020年11月13日記事:Family Minister Giffey renounces her doctorate – The Canadian
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.盗用解析
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
フランツィスカ・ギファイ(Franziska Giffey、写真出典)は、2010年(32歳)にベルリン自由大学(Free University of Berlin)で政治学の博士号を取得した。ドイツの政治家になり、2018年3月14日 (39歳)、第四次メルケル政権の家族大臣(家族・高齢者・女性・若者大臣、Bundesministerin für Familie, Senioren, Frauen und Jugend、英語:Federal Minister of Family Affairs, Senior Citizens, Women and Youth)に選出された。
2019年2月(40歳)、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)に盗博と指摘された。ヴロニプラーク・ウィキ の204番目の事件である。
→ 1‐4‐10.ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)
ベルリン自由大学(Free University of Berlin)。写真出典:https://scholarship-positions.com/free-university-berlin-china-scholarship-council-fub-csc-phd-scholarship-program-germany/2018/09/29/
- 不正:盗博(盗用博士論文)
- 国:ドイツ
- 成長国:ドイツ
- 男女:女性
- 生年月日:1978年5月3日
- 現在の年齢:46 歳
- 研究博士号(PhD)取得年月日:2008年7月18日(32歳)
- 研究博士号(PhD)取得大学:ベルリン自由大学
- 分野:政治学
- 博士論文タイトル:Europas Weg zum Bürger – Die Politik der Europäischen Kommission zur Beteiligung der ZivilgesellschaftBearbeiten
(日本語訳):ヨーロッパの市民への道 – 市民社会参加に関する欧州委員会の方針 - 博士論文審査教授: ①Erstgutachterin: Prof. Dr. Tanja Anita Börzel (FU Berlin), ②Zweitgutachter: Prof. Dr. Hartmut Häußermann (HU Berlin).
- 公開: Nachweis und Download Refubium – Freie Universität Berlin Repository及びNachweis und Download Deutsche Nationalbibliothek
- 盗博発覚年月日:2019年2月8日(40歳)
- 盗用ページ率:37.1%
- 盗用文字率:約13.2%
- 研究博士号(PhD)はく奪状況:はく奪なし
- 発覚時地位:ドイツ政府・家族大臣
- ステップ1(発覚):第一次追及者は盗用ハンターの ロバート・シュミット(Robert Schmidt)(詳細不明)でヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)で追及
- ステップ2(メディア):ドイツの多数のメディア
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ベルリン自由大学は調査委員会を設置していない
- 職:事件後に発覚時の地位を続けた(〇)
- 処分: 博士号ははく奪されていない。家族大臣も辞任していない。
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
- 1978年5月3日:ドイツのフランクフルトに生まれる
- 2009年(31歳):結婚
- 2010年(32歳):ベルリン自由大学(Free University of Berlin in 2010)で政治学の博士号を取得
- 2015年(37歳):ベルリン市のノイケルン(Neukölln)区の区長
- 2018年3月14日 (39歳):第四次メルケル政権で家族大臣(家族・高齢者・女性・若者大臣、Bundesministerin für Familie, Senioren, Frauen und Jugend、英語:Federal Minister of Family Affairs, Senior Citizens, Women and Youth)に就任
- 2019年2月8日(40歳):ヴロニプラーク・ウィキに盗博と指摘された
●3.【動画】
【動画1】
「盗用と距離の欠如? ベルリン自由大学・教授はギファイ大臣の辞任を呼びかけている( Plagiat und mangelnde Distanz? FU-Professor fordert Rücktritt von Ministerin Giffey 」(ドイツ語)1分48秒
Epoch Times Deutschが2019/04/03 に公開
https://www.youtube.com/watch?v=2dM1HMNtge4
●4.【日本語の解説】
ネカト事件の日本語解説はみつからなかった。
★2018年4月20日:新井俊三(国際貿易投資研究所・客員研究員):第四次メルケル政権の成立とその課題
総選挙後5ヶ月以上経って、やっと第四次メルケル政権が誕生した。
・・・中略・・・
発表されて注目を浴びた閣僚人事は、フランツィスカ・ギファイ家族相(SPD)である。彼女は市よりさらに小さな行政単位の長であり、中央での政治経験もなかった。前職はベルリン市のノイケルン区の区長だが、ベルリンに12ある区のうち、約33万の人口をかかえるノイケルン区は、住民の4分の1が生活保護であるハルツⅣの受給者であり、移民の出身者も多い。こうした地域の区長としての経験を連邦レベルで生かすことが期待されている(注3)。
★2019年4月22日:Madame Figaro:ブラジャーにヘルメット? ドイツの広告が非難の的に。
ドイツの運輸省は、サイクリストたちの道路上の安全を呼びかけた社会広告に性差別があるとして非難された。英紙「ガーディアン」が報じた。(以下の写真も。出典:半裸のモデルを起用した広告が「性差別」 ドイツ運輸省に非難 – Sputnik 日本)
フランツィスカ・ギファイ氏もまたアンドレアス・ショイアー運輸大臣を批判した。「親愛なるアンドレアス・ショイアーさんへ。しっかり服を着た上で、もちろんヘルメットも被ったほうがよいですよね!」彼女は自転車に乗った自分の写真をコメントとともにFacebookに掲載し、皮肉った。
●5.【不正発覚の経緯と内容】
2010年(32歳)、フランツィスカ・ギファイ(Franziska Giffey)はベルリン自由大学で博士号を取得した。
2019年2月8日(40歳)、博士号取得の9年後、盗用ハンターの ロバート・シュミット(Robert Schmidt)が、ギファイ大臣の博士論文に盗用があるとヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)で指摘した。
2019年2月10日(40歳)、ヴロニプラーク・ウィキのサイトは専門家向けのサイトである。一般国民にはギファイ大臣の盗博が伝わらない。それで、ドイツの新聞「Tag esspiegel」などがギファイ大臣の盗博をドイツ社会に報道した。
→ 2019年2月10日の記事:Plagiarism hunter to the doctoral thesis of Franziska Giffey – Education – Archy Worldys
→ 2019年2月10日の記事:Doktorarbeit der Familienministerin: Wie gefährlich sind die Plagiatsvorwürfe für Giffey? – Politik – Tagesspiegel
記事によると、ギファイ大臣の博士論文205ページのうち49ページ、論文のほぼ4分の1、は盗用の可能性が高い。「盗用と分類される」73か所のうちの36か所は完全な盗用で、ギファイ大臣は引用しないで 他の著者の文章を流用していた。
ウィキペディアの文章から盗用し、欧州議会の文化教育委員会の文書からも盗用していた。
しかし、ギファイ大臣は「博士論文は私の知識と思想で執筆したものです。意図的な盗用はありません」と自分の博士論文の調査を要求している。ギファイは、盗用疑惑を速やかに退けたいのだ。
一方、1979年から2007年までベルリン自由大学・政治学の教授だったピーター・グロティアン名誉教授(Peter Grottian、写真出典)は、盗用だけでなくギファイ大臣の博士論文の質の悪さについても批判している。
盗用ハンターの ロバート・シュミット(Robert Schmidt)は、博士号をはく奪され、教育大臣を辞任しなければならなかったアンネッテ・シャーヴァン(Annette Schavan)と比べて、「ギファイ大臣の盗用は盗用量の点では同程度の盗用だが、参考文献が恣意的なので、ギファイ大臣 の方が悪質度が高い 」と判定している。
→ 盗博VP:アンネッテ・シャーヴァン(Annette Schavan)(ドイツ) | 研究倫理(ネカト、研究規範)
ベルリン自由大学が盗用と結論するにしても、ギファイ大臣は、博士号をはく奪するほど深刻な盗用ではなかったと結論してくれることを願っている。
2016年、ハノーバー医科大学は、同じような盗博をしたウルズラ・フォンデアライエン国防大臣に対して、博士号をはく奪しないと決め、国防大臣を解放した。
→ 盗博VP152:ウルズラ・フォンデアライエン(Ursula G. von der Leyen)(ドイツ) | 研究倫理(ネカト、研究規範)
しかし、フンボルト大学・政治学教授でヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)活動をしているゲルハルト・ダンネマン(Gerhard Dannemann、写真出典)は「ベルリン自由大学は、これまでヴロニプラーク・ウィキが盗博と結論したすべての人の博士号を取り消している」と述べている。
2019年5月上旬、ダンネマンは、ギファイ大臣の論文を調査した結果、この論文は「やや穏やかな」盗用であると発表した。
博士論文205ページのうちの約37パーセントが盗用で、内11ページは50-75パーセントの盗用だった。また、単なる引用違反よりも深刻なのは、ギファイ大臣の博士論文には別の論文を引用した「虚偽の引用」があることだと指摘した。
2019年5月24日(41歳)、ギファイ大臣は沈黙を保っている。また、驚くことに、世間やメディアは騒ぐことなく、辞任を求める要求がほとんどない、とドイツの新聞が伝えている。
→ 2019年5月24日の「Süddeutsche」記事:Giffeys Doktorarbeit – Das rätselhafte Schweigen – Bildung – Süddeutsche.de
2019年6月22日(41歳)、ベルリン自由大学はギファイ大臣の盗博を間もなく判断する、と「Berliner Morgenpost」新聞が伝えている。
→ 2019年6月22日の「Berliner Morgenpost」記事:Plagiats-Vorwurf: Franziska Giffey wartet auf Entscheidung – Politik – Berliner Morgenpost
→ 2019年6月22日の「CRYPTO COIN DISCOVERY」記事:America quotes: Such family Minister Giffey wants to end the scandal of her doctoral thesis | CRYPTO COIN DISCOVERY
●6.【盗用解析】
フランツィスカ・ギファイ(Franziska Giffey)の博士論文のタイトルは 「Europas Weg zum Bürger – Die Politik der Europäischen Kommission zur Beteiligung der ZivilgesellschaftBearbeiten(ヨーロッパの市民への道 – 市民社会参加に関する欧州委員会の方針)」である。
博士論文は266ページ、本文214ページ。発表時点(2019年5月27日、21時45分19秒(UTC + 2))では205ページ中76ページに盗用があり、盗用率は37.1%だった。なお、11ページには50%から75%の盗用が、1ページには75%以上の盗用があった。
盗用文字率は約13.2%と算出された。
なお、上記の元の盗用分析図では、バーコードがページ毎の盗用分析にリンクしている。
★イラスト表示
以下はページ毎に色分けしたイラスト表示である。
盗用の色分けは、灰色= 逐語盗用(コピペ、文献提示なし)、赤色 = 加工盗用(ロゲッティング、文献提示なし)、黄色 =流用部分が曖昧な盗用(文献提示あり)、 青色 = 翻訳盗用、である。
★各ページの盗用分析
フランツィスカ・ギファイ(Franziska Giffey)の博士論文の各ページ毎に盗用分析がされている。盗用があるページは青色で、盗用がないページは薄い黒色である。
なお、元の盗用分析図では、ページが盗用分析にリンクしているので、元の盗用分析図の青色をクリックすると、各ページの盗用比較図が開く(以下の図のリンクは切ってあるので元図にアクセスしてください)。
【44ページ目】
1例として、44ページ目(つまり、044)をクリックした。すると、盗用比較図が出てくる。以下はその1部分を示した。
左側がフランツィスカ・ギファイ(Franziska Giffey)の博士論文で右が被盗用論文である。着色部分の文章が同一である。
●7.【白楽の感想】
《1》正義はどこに?
ギファイ大臣は沈黙を保っている。ドイツの世間やメディアも沈黙を保っている。家族大臣の辞任を求める要求はほとんどない。
2019年6月22日(41歳)現在、ベルリン自由大学が間もなく調査結果を発表するだろうと噂されている。
白楽は、盗博したが博士号ははく奪されないと予測した。
となると、ドイツ、大丈夫だろうか? と心配になる。
盗博したのに博士号ははく奪されないでは、正義はどうなってる? 倫理学で大きな貢献をしてきたドイツの倫理観はどうなってる? メルケルの力が落ち、ドイツの力も落ちるということか?
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●8.【主要情報源】
① ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)のフランツィスカ・ギファイ(Franziska Giffey)サイト:Dcl | VroniPlag Wiki | FANDOM powered by Wikia
② ウィキペディア・ドイツ語版:Franziska Giffey – Wikipedia
③ 2019年5月3日の「SPIEGEL ONLINE」記事:Franziska Giffey: VroniPlag findet gravierende Verstöße in ihrer Dissertation – SPIEGEL ONLINE
④ 2019年5月3日の「DW」記事:German family affairs minister accused of plagiarism | News | DW | 03.05.2019
⑤ 2019年5月12日更新の「celebsnet」記事:Giffey under the suspicion of plagiarism: AKK reminds SPD standards in the case of Guttenberg
⑥ フランツィスカ・ギファイ(Franziska Giffey)の写真サイト:Franziska Giffey – Google 検索
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