2015年5月14日掲載、2025年10月28日(火)更新
チャベディは南アフリカ共和国で生まれ育った(推定)。2000年(30歳?)、米国のニュースクール大学で博士号を取得し、南アフリカ共和国・ヨハネスブルグのウィットウォーターズラント大学・教員(助教授?)になった。4年後の2004年(34歳?)、博士論文が他人の博士論文の丸写しだったことが被盗用者にバレた。被盗用者から知らされたニュースクール大学はチャベディの博士号を剥奪した。ウィットウォーターズラント大学はチャベディを解雇した。国民の損害額(推定)は5千万円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
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●1.【概略】
マークス・チャベディ(Marks Chabedi、Mareka Marks Chabedi、Mareka Chabedi、写真出典)は、米国のニュースクール大学(The New School)で博士号を取得し、南アフリカ共和国・ヨハネスブルグのウィットウォーターズラント大学(University of Witwatersrand)・教員(助教授?)になった。専門は政治学だった。
2000年(30歳?)、チャベディは、米国のニュースクール大学(The New School)・大学院生の時、米国のフロリダ大学(University of Florida)のキンバリー・レイングラン(Kimberly Lanegran)の博士論文をほぼ一字一句盗用した博士論文を提出し、博士号を取得した。
2003年(33歳?)、盗博が発覚した。
2004年(34歳?)、ニュースクール大学は調査の結果、盗博と認定し、チャベディの博士号を剥奪した。また、ウィットウォーターズラント大学はチャベディを解雇した。
米国のニュースクール大学(The New School)、写真出典
南アフリカ共和国のウィットウォーターズラント大学(University of Witwatersrand)
- 国:米国
- 成長国:南アフリカ共和国(推定)
- 研究博士号(PhD)取得:米国のニュースクール大学
- 男女:男性
- 生年月日:1970年1月1日生まれと仮定した。根拠はない。
- 現在の年齢:55歳(?)
- 分野:政治学
- 不正論文発表:2000年(30歳?)
- 不正論文発表時の地位:ニュースクール大学・院生
- 発覚年:2003年(33歳?)
- 発覚時地位:南アフリカ共和国のウィットウォーターズラント大学・教員(助教授?)
- ステップ1(発覚):第一次追及者は被盗用者のキンバリー・レイングラン(Kimberly Lanegran)でニュースクール大学に通報
- ステップ2(メディア):「The Chronicle of Higher Education」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①米国のニュースクール大学
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:大学はウェブ公表なし(含・調査時点で削除されている)(✖)
- 不正:盗博
- 不正論文数:博士論文1本
- 時期:研究キャリアの初期
- 職:解雇
- 処分:博士号剥奪。大学は解雇
- 対処問題:大学隠蔽
- 特徴:2004年の事件で情報がとても少ない
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5千万円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:不明。南アフリカ共和国生まれ(推定)。1970年1月1日生まれと仮定した。根拠はない。
- 2000年(30歳?):米国のニュースクール大学(The New School)に博士論文を提出し、博士号が授与された
- 20xx年(xx歳):南アフリカ共和国・ヨハネスブルグのウィットウォーターズラント大学(University of Witwatersrand)・教員(助教授?)に就任
- 2003年(33歳?):博士論文の盗用が発覚
- 2004年(34歳?):ニュースクール大学から博士号を取り消された
- 2004年(34歳?):ウィットウォーターズラント大学から解雇された
- 遅くとも2014年(44歳?):南アフリカ共和国の米国大使館でフルブライト・プログラムの責任者
- 2025年10月27日(55歳?)現在:所属不明だが南アフリカ共和国でフルブライト・プログラム関連のマネージャー職(推定)
●5.【不正発覚の経緯と内容】
1997年、米国・フロリダ大学(University of Florida)の大学院生だったキンバリー・レイングラン(Kimberly Lanegran、写真出典、2025年現在はコー大学(Coe College)・準教授)は博士論文を提出し、博士号を取得した。
1997年、レイングランは、米国のニュースクール大学の大学院生だというマークス・チャベディ(Marks Chabedi)から電話を受けた。
「あなた(レイングラン)の論文を読み、あなたの研究に興味を持ちました。自分(チャベディ)の研究テーマはアフリカの政治運動・社会運動で、あなたと同じです。あなたの研究の出版物があれば送ってほしい」と。
レイングランは、博士号を取得したばかりで、まだ博士論文を出版していなかった。それで、博士論文の電子ファイルをディスクにコピーし、ディスクをチャベディに送った。
2000年(30歳?)、マークス・チャベディ(Marks Chabedi、写真出典)は、ニュースクール大学に博士論文を提出し、博士号を取得した。論文名は「民主主義を機能させる:市民団体と南アフリカの移行、1979-1995年(Making democracy work : civic associations and the South African transition, 1979-1995)」だった。 → MSU Libraries /All Locations
2003年夏(33歳?)、レイングラン( 当時、フッド大学(Hood College)の助教授)は、チャベディの博士論文に自分の研究がどう引用されているのかという興味で、大学間相互貸出しシステムを利用して、チャベディの博士論文のコピーを入手した。
チャベディの博士論文に自分の論文が引用されていた。よしよし。
次いで、論文をすこし読んだ。すると、チャベディは自分と同じ研究上の問題を共有し、同じ方法で解決していた。よしよし。
さらに論文を読み進めると、驚いたことに、チャベディの博士論文は、ナント、自分の博士論文と全く同じだった。
不自然でないように地名や人名を変えてあるが、文章も内容も一字一句ほぼ同じだった。
驚愕した。「盗用」されたのだ。
レイングランは、すぐに、ニュースクール大学に連絡した。
ニュースクール大学は、直ちに調査を開始した。
レイングランの博士論文の日付けは、チャベディの博士論文より古い。
ところが、ニュースクール大学は、レイングランの告発を疑い、チャベディの博士論文が盗用だと証明するようレイングランに要求した。
日付けが古いだけでは証拠にならないと言われ、自分の博士論文がオリジナルで、チャベディの博士論文が盗用だとどう証明できるのか、レイングランは、非常に困った。
やり取りの過程で、レイングランは、ニュースクール大学から、論文に記載したインタビューのテープや、オリジナル資料を要求されたので送付した。
2004年(34歳?)、結局、ニュースクール大学は、チャベディの盗用を認め、チャベディの博士号を取り消した。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★論文数
マークス・チャベディ(Marks Chabedi、Mareka Marks Chabedi、Mareka Chabedi)の論文数を調べていない。
★撤回監視データベース
2025年10月27日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースで、マークス・チャベディ(Marks Chabedi、Mareka Marks Chabedi、Mareka Chabedi)を「Chabedi」で検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2025年10月27日現在、「パブピア(PubPeer)」では、マークス・チャベディ(Marks Chabedi、Mareka Marks Chabedi、Mareka Chabedi)の論文のコメントを「Chabedi」で検索すると、0論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》 不明点が多い
マークス・チャベディ(Marks Chabedi、Mareka Marks Chabedi、Mareka Chabedi)の情報はほとんど見つからなかった。
事件の詳細もわからない。どうして盗用したのかもわからない。この事件からは、盗用を防ぐ方法も見いだせない。
《2》 盗用は見つかる
何度も書くが、盗用は証拠が明白に残る。原典と照らし合わせれば発覚は容易である。
さらに、最近は盗用検出ソフトが普及してきたので、機械的に盗用を検出できる。
だから、盗用はバレる。盗用は損だ。
しかし、盗用する側は、盗用がバレないと甘く見ているようだ。盗用はバレることを、研究者に徹底的に伝えることで、盗用防止効果があるだろう。
《3》 研究者は常に被盗用になりえる
研究者は盗用された時、被盗用者なのに逆に盗用者の汚名を着せられる可能性がある。
ほとんどの研究者は自分が被盗用になると思わない。しかし、盗用者がいるということは被盗用者がいるということだ。
最悪の場合、盗用者が盗用しているのにオリジナルだと主張した場合、自分の方がオリジナルだという証明が難しくなるかもしれない。
被盗用がいつ発生するかわからない。研究者は常日頃、研究や論文投稿の記録、重要なオリジナル資料を廃棄しないで保管しておく習慣を身につけておいたほうがいい。
《4》 盗用を摘発する体制が必要
盗用者は、「間違い」で盗用することはあり得ない。
他人の10行~20行ほどの文章を流用した場合、また、他人の文章やデータを、自分の文章に組み込んだ場合、盗用と指摘すると、引用符をつけるのを忘れたとか引用元を記載するのを忘れたと言い訳する。
実際、引用符や引用元記載を忘れる場合もあるだろうが、盗用は盗用である。
お金を払うのを忘れて、品物を持って店をでると、「お金を払うのを忘れた」という言い訳が通用するだろうか? しませんね。盗みは盗みである。
だから、大学院生や研究者に、盗用は証拠が残る・バレる・処分が重い、損だとシッカリ伝えることが盗用を防ぐのに有効だろう。
それなのに盗用する人は後を絶たない。
何故かって?
人間だからだ。
客は盗みは犯罪だと知っている。しかし、客は、万引きする。盗む。
研究者は盗用を研究不正だと知っている。しかし、研究者は、盗用する。
他人の文章を引用しないで流用する、他人のデータを自分のデータのように記述する。
万引き・窃盗を監視し摘発する万引きGメンがいて、窃盗犯は、刑事罰が科される。
研究界では盗用を監視し摘発する人々がいないし、盗用犯に刑事罰は科されない。
その上、盗用犯を捕まえても、大学が盗用ではないと捻じ曲げた判定をする。そのデタラメ判定が珍しくない。1つの例 → 5C 名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件:③ 疑惑の証明 | 白楽の研究者倫理
研究者の盗用は減らないだろうなあ~。
●9.【主要情報源】
① 2004年7月2日、キンバリー・レイングラン記者(Kim Lanegran)の「The Chronicle of Higher Education」記事:The Chronicle: 7/2/2004: Fending Off a Plagiarist(保存版)
② 2014年x月x日、Cool way of dealing with plagiarism « Political Science Rumors
③ 2005年7月5日、ジョナサン・ベイリー記者(Jona than Bailey)の「Plagiarism Today」記事:A First Person Perspective – Plagiarism Today
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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