2017年11月17日掲載。
ワンポイント:北東地域科学技術大学(ノース・イースタン・リージョナル科学技術大学、NERIST:North Eastern Regional Institute of Science and Tech)・学長(男性)で、専門は電子工学だった。2007年11月(60歳?)、4論文(うち1論文は学会要旨も)の盗用、さらに1論文の自己盗用が指摘された。科学価値会(SSV, Society of Scientific Values)も盗用と認定した。学生が辞任を要求し、辞任した(推定)。インドのメディアは大騒ぎしたが、記録が少なく、事件の詳細は不明である。損害額の総額(推定)は7億4千万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
カリヤン・クマール(Kalyan Kumar、写真出典)は、インドの北東地域科学技術大学(ノース・イースタン・リージョナル科学技術大学、NERIST:North Eastern Regional Institute of Science and Tech., Itanagar)・学長(Director)で、専門は電子工学だった。
2007年11月(60歳?)、インドの物理学者たちが始めたネカト追放キャンペーンで4論文(うち1論文は学会要旨も)が盗用で、さらに1論文が自己盗用と告発され、学長を辞任した(推定)。
なお、北東地域科学技術大学は、「4icu.org」の大学ランキング(信頼度は?)でインド第289位の大学である(Top Universities in India | 2017 Indian University Ranking(保存済))。
北東地域科学技術大学(ノース・イースタン・リージョナル科学技術大学、NERIST:North Eastern Regional Institute of Science and Tech., Itanagar)。By Renzut – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
- 国:インド
- 成長国:インド(推定)
- 研究博士号(PhD)取得:あり
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1947年1月1日生まれとする。2007年の盗用発覚時を60歳とした
- 現在の年齢:77 歳?
- 分野:電子工学
- 最初の不正論文発表:2000年(53歳?)
- 発覚年:2007年(60歳?)
- 発覚時地位:北東地域科学技術大学・学長
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)はインドの物理学者たち
- ステップ2(メディア): インドの多数のメディア
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①研究ネカトを監視する科学価値会(SSV, Society of Scientific Values)。②北東地域科学技術大学?
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 不正:盗用
- 不正論文数:4論文(うち1論文は学会要旨も)が盗用で、さらに1論文が自己盗用。
- 時期:研究キャリアの中期から
- 損害額:総額(推定)は7億4千万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が30年間=6億円。③院生の損害は不明だが、②に含まれると考えた。④外部研究費の額は不明だが、②に含まれると考えた。⑤調査経費(物理学者たち、科学価値会)が5千万円。⑥裁判なし。⑦論文撤回なし(推定)。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
- 結末:学長を辞任(推定)
●2.【経歴と経過】
ほとんど不明。
- 生年月日:不明。仮に1947年1月1日生まれとする。2007年の盗用発時を60歳とした
- 19xx年(xx歳):xx大学を卒業
- 19xx年(xx歳):xx大学で研究博士号(PhD)を取得した
- xxxx年(xx歳):北東地域科学技術大学(ノース・イースタン・リージョナル科学技術大学、NERIST:North Eastern Regional Institute of Science and Tech., Itanagar)・学長
- 2007年11月(60歳?):盗用が発覚
- 2007年12月(60歳?):学長を辞任(推定)
●5.【不正発覚の経緯と内容】
2007年11月4日、インドの物理学者たちが始めたネカト追放キャンペーンは、研究ネカトを監視する科学価値会(SSV, Society of Scientific Values)の事実確認を受けた上で、北東地域科学技術大学(ノース・イースタン・リージョナル科学技術大学、NERIST:North Eastern Regional Institute of Science and Tech., Itanagar)のカリヤン・クマール学長(Kalyan Kumar)の論文盗用を告発した。
4論文(うち1論文は学会要旨も)が盗用で、さらに1論文が自己盗用である。
以下、多くのリンクが切れているが、【主要情報源】②に記載された被盗用論文と盗用論文の表を貼り付けた。
★「2000年のIEEE International Conference on Industrial Technology」論文
被盗用論文 | 盗用論文 |
タイトル: Hybrid fuzzy logic proportional plus conventional integral-derivative controller for permanent magnet brushless DC motor | タイトル: Improved PID controller using fuzzy precompensated algorithm for PMBLDC motor drive |
著者: B. Singh, A.H.N. Reddy and S.S. Murthy, IIT Delhi | 著者: Prof. K. Kumar, A.K. Singh and P.K.Bordoloi, NERIST, Nirjuli |
Proceedings of the IEEE International Conference on Industrial Technology 2000 Volume 2, 19-22 January 2000 Page(s): 185 – 191 | Published in AMSE Advances in Modelling and Analysis C, Volume 61, number 1-2, January 2006, Page (s) 1-15 ISSN: 1240-4535 |
The abstract may also be seen at Engineering Village by searching for the title of the paper. | |
盗用学会要旨 | |
Title: Hybrid Fuzzy Controller for Permanent Magnet Brushless DC Motor | |
Authors: Prof. K. Kumar, A.K. Singh and S.N. Singh, NERIST, Nirjuli | |
Proceedings of the All India Seminar & Exhibition on Advances in Computer and Information technology (ACIT-2006), Dhanbad, March 2006 | |
★「2007年のElectrical Review」論文
被盗用論文は、横浜大学(横浜国立大学? 横浜市立大学?)の日本人が最後著者の論文である。
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★「2005年のElectrical Review」論文
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★ 辞任要求
2007年11月4日、全アルナーチャル・プラデーシュ州学生団体(All Arunachal Pradesh Student’s Union :AAPSU) は、クマール学長の盗用を受けて、北東地域科学技術大学の総長でもあるアルナーチャル・プラデーシュ州知事にクマール学長の辞任を要求した。
★インドのメディア報道
【主要情報源】②によると、当時、インドのメディアはこの事件をたくさん報道した。現在、多くのリンクが切れているが、全部貼り付けた。
- New Kerala, 2nd Mar 2008
- The Telegraph, 3rd Dec 2007
- The Sentinel, 14th Nov 2007
- The Arunachal Times, 8th Nov 2007
- Assam Tribune, 8th Nov 2007
- Sentinel, 6th November, Cached, Last item on the page
- WebIndia, 5th Nov 2007
- news.oneindia.in, 5th Nov 2007
- The blog at Arunachal Diary
- The Arunachal Times, 5th Nov 2007
- The Dawnlit Post, 5th Nov 2007
●6.【論文数と撤回論文】
省略
●7.【白楽の感想】
《1》学生運動
学長の論文盗用で、学生が強力に抗議し、学長の辞任を要求した。
日本では、学生がネカトに抗議して運動した歴史はない。それに、社会正義のために学生が学内で抗議活動をすることは、現在では、もう考えられない。
《2》記録保存
2007年に発覚した盗用事件で、当時、インドの多くのメディアが報道した。
しかし、10年後の2017年現在、多くの記事のリンクが切れている。また、ウェブ上の情報がほとんどが消去され、わずか10年前の事件なのに、状況がほとんどつかめない。
ネカトの改善方法は、事件から学べることが多い。しかし、記録がほとんど保存されていないと、当時の改革努力を読み取ることができず、水泡に帰してしまう。そして、今日も、世界のあちこちのネカト事件の記録が消えつつある。
ネカト記録の収集・保存をどうするとよいのだろう?
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●8.【主要情報源】
① ウィキペディア英語版:Scientific plagiarism in India – Wikipedia
② 2009年(?)の「Plagiarism Alert」記事群:Plagiarism Alert、(保存済)
③ 2007年11月5日の「Web India」記事:AAPSU demands ouster of NERIST Director、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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