2018年2月6日掲載。
ワンポイント:グレンツは、ドイツで生まれ育ち、ドイツで医師・研究者になった白人女性。ポスドク時のボスだったホルガー・エルツィヒ(Holger Eltzchig)が米国のコロラド大学デンバー校(University of Colorado Denver)の教授になった時に呼んでもらい、2008年(34歳?)、助教授、後に準教授になった。専門は外科学。「2012年のJ. Clin. Invest.」論文のねつ造・改ざんが、2013年(39歳?)、共著者(エルツィヒ?)の通報で発覚した。2016年(42歳?)、コロラド大学デンバー校がクロと結論し、グレンツは大学を辞職(解雇?)し、研究者を廃業した。大学の調査報告書は黒塗りで調査委員名が不明だが、撤回監視が情報公開法で開示請求し、公表した。損害額の総額(推定)は4億6800万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
アルムット・グレンツ(Almut Grenz、写真出典)は、ドイツで生まれ育ち、ドイツで医師・研究者になった。ポスドクの時のボスだったホルガー・エルツィヒ(Holger Eltzchig)が米国のコロラド大学デンバー校(University of Colorado Denver)の教授になった時に呼んでもらい、2008年(34歳?)、同大の助教授、後に準教授になった。専門は外科学(腎疾患における低酸素および虚血の役割)だった。
2012年(38歳?)、後で問題になる「2012年のJ. Clin. Invest.」論文を発表した。
2013年12月2日(39歳?)、共著者の1人(ボスのエルツィヒ?)が、論文のネカト疑惑をコロラド大学デンバー校に通報した。
2016年(42歳?)、コロラド大学デンバー校は調査の結果、グレンツにねつ造・改ざんがあったと発表した。その発表前に、グレンツはコロラド大学デンバー校を辞職(解雇?)し、研究者を廃業した。
コロラド大学デンバー校(University of Colorado Denver)・オーロラの医学系キャンパス(Anschutz Medical Campus in Aurora)。2013年7月30日 。写真所有者:Cyrus McCrimmon, The Denver Post。出典 https://www.denverpost.com/2017/06/21/university-colorado-anschutz-professor-research-misconduct/
- 国:米国
- 成長国:ドイツ
- 医師免許(MD)取得:ドイツのテュービンゲン大学
- 研究博士号(PhD)取得:ドイツのテュービンゲン大学
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1974年1月1日生まれとする。1998年の医師免許取得時を24歳とした。ドイツで生まれる
- 現在の年齢:50 歳?
- 分野:外科学
- 最初の不正論文発表:2011年(37歳?)
- 発覚年:2013年(39歳?)
- 発覚時地位:コロラド大学デンバー校・準教授・医師
- ステップ1(発覚):第一次追及者は共著者(ボスのエルツィヒ?)で、コロラド大学デンバー校の研究公正官に公益通報
- ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」、「パブピア(PubPeer)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①コロラド大学デンバー校・調査委員会。②研究公正局は調査していない?
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:撤回監視が情報公開法で開示請求し、一部黒塗りだが、公表した。
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:4論文が撤回
- 時期:研究キャリアの中期
- 損害額:総額(推定)は4億6800万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が16年間=3億円2千万円。③院生の損害が1人1000万円だが、損害額は不明で、額は②に含めた。④外部研究費の額は不明で、額は②に含めた。⑤調査経費(大学と学術誌出版局)が5千万円。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。4報撤回=800万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円。
- 結末:辞職(解雇?)
●2.【経歴と経過】
主な出典:①
- 生年月日:不明。仮に1974年1月1日生まれとする。1998年の医師免許取得時を24歳とした。ドイツで生まれる
- 1998年(24歳?):ドイツのテュービンゲン大学(University of Tübingen)で医師免許取得
- 2000年(26歳?):ドイツのテュービンゲン大学(University of Tübingen)で研究博士号(PhD)を取得
- 2004年(30歳?):ドイツのテュービンゲン大学で研修医終了:外科と臨床薬理学
- 2008年(34歳?):ドイツのテュービンゲン大学でポスドク終了:実験医学
- 2008年(34歳?):ボスのホルガー・エルツィヒ(Holger Eltzchig)が米国のコロラド大学デンバー校(University of Colorado Denver)・麻酔科の教授に移籍した時、エルツィヒに招かれ、助教授。その後、準教授
- 2012年(38歳?):後で問題になる「2012年のJ. Clin. Invest.」論文を発表
- 2013年12月(39歳?):コロラド大学デンバー校の研究公正官にネカト疑惑が通報された
- 2016年(42歳?):コロラド大学デンバー校を辞職(解雇?)
- 2016年(42歳?):コロラド大学デンバー校はグレンツはクロと発表した
●3.【動画】
【動画1】
研究のデモ動画:「隔離された腎動脈閉塞のためのハンギングウェイトシステムの利用(Use of a Hanging-weight System for Isolated Renal Artery Occlusion)」(英語)7分29秒。日本語の文字情報がある。
著者:Almut Grenz, Julee H. Hong, Alexander Badulak, Douglas Ridyard, Timothy Luebbert, Jae-Hwan Kim, Holger K. Eltzschig
サイト → https://www.jove.com/video/2549/?language=Japanese
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★ネカト発覚の経緯
アルムット・グレンツ(Almut Grenz)は、ドイツで生まれドイツで育ちドイツで医師・研究者になった。ドイツのテュービンゲン大学のポスドクの時、ボスがホルガー・エルツィヒ(Holger Eltzchig)だった。
2008年(34歳?)、ホルガー・エルツィヒが米国のコロラド大学デンバー校(University of Colorado Denver)・麻酔科の教授に招聘された。この時、エルツィヒがグレンツに助教授の席を用意してくれたので、グレンツも米国に渡った。
それから5年間、グレンツはエルツィヒ教授と共に順調に研究成果を挙げて、2人の人間関係も良好だった。
米国のコロラド大学デンバー校(University of Colorado Denver)の実験室。アルムット・グレンツ(Almut Grenz)(左)とホルガー・エルツィヒ(Holger Eltzchig)(右)。2013年1月28日。出典:http://www.aurorasentinel.com/news/safer-sugery-cu-med-school-team-looks-at-ways-to-decrease-organ-damage-during-surgical-procedures/
2013年12月2日(39歳?)、コロラド大学デンバー校(University of Colorado Denver)の研究倫理官のアリソン・レイキン(Alison Lakin、写真出典)は、グレンツの「2012年のJ. Clin. Invest.」論文に問題があると指摘する電子メールを受け取った。
指摘した人は論文共著者だった。 レイキン研究倫理官は、通報者と話し合い、通報者の主張に理があると判断し、グレンツのパソコンと研究資料を押収した。
「2012年のJ. Clin. Invest.」論文は、結局、2017年6月に撤回されたが、以下の論文である。27人の著者がいる。第一著者はグレンツで最終著者はエルツィヒ教授である。こんなに多いと、論文共著者というだけでは、通報者を推測できない。
- Equilibrative nucleoside transporter 1 (ENT1) regulates postischemic blood flow during acute kidney injury in mice.
Grenz A, Bauerle JD, Dalton JH, Ridyard D, Badulak A, Tak E, McNamee EN, Clambey E, Moldovan R, Reyes G, Klawitter J, Ambler K, Magee K, Christians U, Brodsky KS, Ravid K, Choi DS, Wen J, Lukashev D, Blackburn MR, Osswald H, Coe IR, Nürnberg B, Haase VH, Xia Y, Sitkovsky M, Eltzschig HK.
J Clin Invest. 2012 Feb;122(2):693-710. doi: 10.1172/JCI60214. Epub 2012 Jan 24. Retraction in: J Clin Invest. 2017 Jun 1;127(6):2438.
PMID:22269324
ネカトを指摘した論文共著者を誰だか、論文からは推測できないが、状況から判断して、エルツィヒ教授と思われる。以後、この線で話を進める。
レイキン研究倫理官は、調査を開始する方向で動いた。
2014年2月5日(40歳?)、コロラド大学デンバー校は予備調査委員会を設置した。
2014年10月23日(40歳?)、本調査をすることに決定した。5人の調査委員を選定したが、委員名を公表しなかった。
調査は長引き、2015年1月20日、2015年6月30日、2015年11月3日、2016年1月8日の4回も調査委員会の期限を延長した。
調査委員会は、合計で18回の会合を行ない、10人の研究者とインタビューした。
委員会は、インタビュー記録、実験ノート、コンピュータファイル、論文の資料を分析し、「2012年のJ. Clin. Invest.」論文を含めた5論文に36回の重複した組織像の使用を認めたと結論した。
また、調査で、「2012年のJ. Clin. Invest.」論文に最初に指摘されていなかった深刻な問題も発見した。具体的には、2011年6月28日に査読が開始された後、グレンツは、査読者、学術誌編集者、共著者に知らせずに、「2012年のJ. Clin. Invest.」論文に掲載した21個の図に変更を加えていた。
変更内容は、平均値と誤差バーの変更と多くの図の改訂だった。 これらの変更は、原稿の最初の査読で、査読者が変更を求めたものではなかった。どれも論文の仮説に都合が良い方向での改ざんだった。
2016年4月8日(42歳?)、調査委員会は発足から1年半をかけて調査を終了し、グレンツにねつ造・改ざんがあったが、ネカト行為はグレンツの単独犯と裁定した。つまり、エルツィヒ教授に「間違い」はあったが、ネカト者ではないとした。また、ネカトは「2012年のJ. Clin. Invest.」論文だけだったと結論した。
なお、調査委員会は、多くの元・研究室員から、研究室の雰囲気は、エルツィヒ教授の仮説に合うデータを作成せよという強い圧力をエルツィヒ教授から受ける研究環境だったとの証言も付記した。つまり、グレンツが単独でねつ造・改ざんをしたにせよ、エルツィヒ教授の強い圧力が背景にあったことを示唆したのである。
調査委員会は「2012年のJ. Clin. Invest.」論文を含め数報の論文を撤回するよう勧告した。
撤回監視が調査報告書を情報公開法で開示請求し、入手し、サイトで公表した。通報者や調査委員名が黒塗りである。以下に貼り付けた。
Investigative-Report_1
★事件後の人生
2016年(42歳?)、コロラド大学デンバー校からネカト者と判定される前に、グレンツはコロラド大学デンバー校を辞職(解雇?)した。撤回監視が連絡先を探ったが、その後の行方は不明である。研究者や医師として活動していない。
エルツィヒ教授も、2016年にコロラド大学デンバー校を辞め、テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校(University of Texas Health Science Center at Houston)の一部であるマクガバン医科大学(McGovern Medical School)・教授に移籍した。
マクガバン医科大学のサイトでは、エルツィヒ教授を「周術期医学(perioperative medicine)のナンバーワン医師」とたたえている。しかし、今回の事件でコロラド大学デンバー校から追い出されたとみる方が正しいのではないだろうか?
→ STAR physician scientist recruited to anesthesiology at McGovern Medical School
●【ねつ造・改ざんの具体例】
★「2012年のJ. Clin. Invest.」論文
コロラド大学デンバー校・調査委員会は、「2012年のJ. Clin. Invest.」論文の図1,2,3,5,6,7,8,9、および補足図6と8に改ざんや加工、または裏付けデータがないと報告した。
「2012年のJ. Clin. Invest.」論文の図のネカト点を以下にパブピアで詳しく見よう。
「2012年のJ. Clin. Invest.」論文の書誌情報を以下に再掲する。2017年6月に撤回された。
- Equilibrative nucleoside transporter 1 (ENT1) regulates postischemic blood flow during acute kidney injury in mice.
Grenz A, Bauerle JD, Dalton JH, Ridyard D, Badulak A, Tak E, McNamee EN, Clambey E, Moldovan R, Reyes G, Klawitter J, Ambler K, Magee K, Christians U, Brodsky KS, Ravid K, Choi DS, Wen J, Lukashev D, Blackburn MR, Osswald H, Coe IR, Nürnberg B, Haase VH, Xia Y, Sitkovsky M, Eltzschig HK.
J Clin Invest. 2012 Feb;122(2):693-710. doi: 10.1172/JCI60214. Epub 2012 Jan 24. Retraction in: J Clin Invest. 2017 Jun 1;127(6):2438.
PMID:22269324
どの部分がどのように不正だったのか、パブピアで見てみよう。
ウン? パブピアにコメントはあるが、ネカトデータの指摘はない。
仕方ない。調査委員会の報告書から探ると、同じ組織図を別の図に重複使用しているとある。組織図とはどんなものか、参考に図5Hを以下に示す。
各実験処理したマウスの腎臓をとても薄く切り、染色し、その断面を光学顕微鏡で撮影したのがここでの組織図である。このような組織図を使いまわしていたというわけだ。
★「2012年のJ Immunol.」論文
「2012年のJ Immunol.」論文の書誌情報を以下に示す。2017年7月に撤回された。
- Adora2b adenosine receptor signaling protects during acute kidney injury via inhibition of neutrophil-dependent TNF-α release.
Grenz A, Kim JH, Bauerle JD, Tak E, Eltzschig HK, Clambey ET.
J Immunol. 2012 Nov 1;189(9):4566-73. doi: 10.4049/jimmunol.1201651. Epub 2012 Oct 1. Retraction in: J Immunol. 2017 Jul 1;199(1):363.
PMID:23028059
2017年6月2日に、図3Bの右上の組織図は図3Eの右上の組織図と全く同じだと、Peer 1に指摘された「commented June 2nd, 2017 11:26 PM and accepted June 2nd, 2017 11:26 PM」。
さらに、別の人に図3Cと図3Fの棒グラフはと全く同じだと、Unregistered Submissionに指摘された
パブピアの図は少し見にくいので、上の図は原論文から転載した。組織図に印をつけなかったけど、どの組織図かわかりますよね。
2セットとも、4枚組写真の右上で、見比べると、確かに、明白に同じです。重複使用です。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
2018年2月2日現在、パブメド(PubMed)で、アルムット・グレンツ(Almut Grenz)の論文を「Almut Grenz [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003~2017年の15年間の52論文がヒットした。
「Grenz A[Author]」で検索すると、1992~2017年の26年間の63論文がヒットした。
「Grenz A[Author] AND Eltzschig HK[Author]」で検索すると、2006~2017年の12年間の38論文がヒットした。
つまり、63論文中の38論文がエルツィヒ教授(Eltzschig HK)と共著ということは、2006年以降、エルツィヒ教授の寵愛の弟子だったことが手に取るようにわかる。
2018年2月2日現在、「Grenz A[Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、2011~13年の4論文が2017年6~9月に撤回されていた。全部、エルツィヒ教授(Holger Eltzchig)と共著である。
- Signaling through hepatocellular A2B adenosine receptors dampens ischemia and reperfusion injury of the liver.
Zimmerman MA, Grenz A, Tak E, Kaplan M, Ridyard D, Brodsky KS, Mandell MS, Kam I, Eltzschig HK.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Jul 16;110(29):12012-7. doi: 10.1073/pnas.1221733110. Epub 2013 Jun 28. Retraction in: Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jun 27;114(26):E5279.
PMID:23812746 - Adora2b adenosine receptor signaling protects during acute kidney injury via inhibition of neutrophil-dependent TNF-α release.
Grenz A, Kim JH, Bauerle JD, Tak E, Eltzschig HK, Clambey ET.
J Immunol. 2012 Nov 1;189(9):4566-73. doi: 10.4049/jimmunol.1201651. Epub 2012 Oct 1. Retraction in: J Immunol. 2017 Jul 1;199(1):363.
PMID:23028059 - Equilibrative nucleoside transporter 1 (ENT1) regulates postischemic blood flow during acute kidney injury in mice.
Grenz A, Bauerle JD, Dalton JH, Ridyard D, Badulak A, Tak E, McNamee EN, Clambey E, Moldovan R, Reyes G, Klawitter J, Ambler K, Magee K, Christians U, Brodsky KS, Ravid K, Choi DS, Wen J, Lukashev D, Blackburn MR, Osswald H, Coe IR, Nürnberg B, Haase VH, Xia Y, Sitkovsky M, Eltzschig HK.
J Clin Invest. 2012 Feb;122(2):693-710. doi: 10.1172/JCI60214. Epub 2012 Jan 24. Retraction in: J Clin Invest. 2017 Jun 1;127(6):2438.
PMID:22269324 - Hypoxia-inducible factor-1α-dependent protection from intestinal ischemia/reperfusion injury involves ecto-5′-nucleotidase (CD73) and the A2B adenosine receptor.
Hart ML, Grenz A, Gorzolla IC, Schittenhelm J, Dalton JH, Eltzschig HK.
J Immunol. 2011 Apr 1;186(7):4367-74. doi: 10.4049/jimmunol.0903617. Epub 2011 Feb 28. Retraction in: J Immunol. 2017 Sep 1;199(5):1942. PMID:21357264
★パブピア(PubPeer)
2018年2月2日現在、「パブピア(PubPeer)」はアルムット・グレンツ(Almut Grenz)の6論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.
●7.【白楽の感想】
《1》事件の深堀
若い女性研究者と男性教授のネカト事件は世界中にあるが、若い女性研究者のグレンツは、同じドイツ人で風貌がマリオン・ブラッハ(Marion Brach)と似ていることから(よく見れば似てませんが)、ドイツの有名なヘルマン/ブラッハ事件と重なってしまう。
→ フリードヘルム・ヘルマン(Friedhelm Herrmann)、マリオン・ブラッハ(Marion Brach)(独) | 研究倫理(ネカト)
ヘルマン/ブラッハ事件では、ブラッハは私生活上でもヘルマンのパートナーだった。しかし、最後は、ヘルマンが自己保身に走り、女性のブラッハは見捨てられた。
グレンツも同じように、若い時(30歳頃)から10年以上もエルツィヒ教授(Holger Eltzchig)に尽くした。
グレンツは「研究を愛していて、研究以上に愛する対象は何もない(I love nothing else more than doing research)」と2013年(39歳?)に語ったその年、容色が衰えた39歳はグレンツは、ボスのエルツィヒ教授にネカト行為を個人的に注意されず、大学に通報され、捨てられた(推定)
勝手な推測です。
Dr. Holger Eltzschig and Shelly Eltzschig http://www.chron.com/life/society/article/UTHealth-s-record-breaking-5-6-million-10598674.php#photo-11767538
エルツィヒ教授は、2016年11月4日のパーティでは東洋系の奥様のシェリー(Shelly Eltzschig)と写真に納まっている(上図)。シェリーは長年の妻なのか、1~2年前に結婚したのか白楽は知らない。
ただ、たまたま写真の日付がネカトを大学に通報した2013年12月から3年後なので、その頃、グレンツからシェリーに乗り換えたのかと、3流週刊誌的に邪推してしまった。
というのは、長年尽くしてくれた部下にネカト疑惑が生じたとき、部下を愛していれば、いきなり大学の研究公正官に訴えるだろうか?
白楽は女子大学だったので、長年、女子学生・院生を育ててきたが、自分の学生・院生が何とかよく伸びて欲しいと全身全霊で強く思ってきた。もちろん、うまくいかない(女子学生・院生から嫌われた)こともある。それでも、もし、学生・院生にネカト行為を見つけたら、研究室外に単純に訴えることは決してしないだろう。教師として、本人に何とか修正してもらう方策を取るだろう。
一般的に、どの国の研究者も、人間関係(愛)が崩れていなければ、部下を何とか良い方向にもっていこうとすると思うのだが。
《2》研究公正局
アルムット・グレンツ(Almut Grenz)はコロラド大学デンバー校の準教授で、NIHからも研究費を受領しているはずだ。少なくとも、ボスのエルツィヒ教授は、多額の研究費を受領していた。公開されたコロラド大学デンバー校の調査報告書にNIHからの研究費が記載されている。
なのに、研究公正局が調査し、結果を発表しないのはヘンだ。
コロラド大学デンバー校は2016年4月8日に調査を終了し調査結果を発表している。
2018年2月2日現在、それから1年10か月が過ぎようとしてる。研究公正局がゴタゴタしているのはわかる。しかし、だからと言って、怠慢は許されない。それでなくても「グズ」と叱責されているのに。
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●8.【主要情報源】
① 2017年6月19日以降のアリソン・マクック(Alison McCook)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:You searched for Almut Grenz – Retraction Watch at Retraction Watch
② 2017年6月21日のジョン・インゴールド(John Ingold)記者の「Denver Post」記事:CU professor engaged in research misconduct, investigative committee finds – The Denver Post、(保存版)
③ 2018年2月2日現在、「パブピア(PubPeer)」はアルムット・グレンツ(Almut Grenz)の6論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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