企業、国際機関:除草剤・ラウンドアップ(Roundup)=グリホサート(glyphosate)、モンサント社(Monsanto)(米)、国際がん研究機関(IARC)(仏)

2017年11月20日掲載。

ワンポイント:【長文注意】。農薬・種子企業のモンサント社(Monsanto)の主力製品である除草剤・ラウンドアップ(Roundup)(主成分はグリホサート(glyphosate))の安全性をめぐる「改ざん」「ねつ造」「代筆」という複数のネカト・クログレイ事件である。1つ目は、モンサント社が解釈の「改ざん」をし裁判で有罪となった事件。2つ目は、モンサント社の改ざん事件と代筆事件。3つ目は、2017年、国際がん研究機関(IARC)の2015年の「グリホサートに発がん性の恐れがあるとする報告書」を国際がん研究機関の委員(氏名不明)が、「改ざん」した事件。3つ目・4つ目は、2015年に裁判所に提出されたモンサント社の電子メール・文書で、モンサント社は「代筆」を依頼していたことが発覚した事件。5つ目は、モンサント社は「グリホサートに発がん性があるかどうかの実験をしていない」のに、今まで安全だと主張していた「ねつ造」事件。2017年11月19日現在、ラウンドアップをめぐるモンサント社と国際がん研究機関(IARC)のネカト・クログレイ事件のいくつかは紛争中である。なお、このネカト・クログレイ事件で死者や健康被害者は報告されていないが、ラウンドアップで死亡した、あるいは健康被害を受けたと主張する人たちはいて、裁判になっている。多くの裁判は決着がついていない。損害額の総額(推定)は、2017年にモンサント社がバイエル社に買収された額が約6兆6千億円なので、1兆円としておこう。

【追記】
・2018年1月13日。国際がん研究機関は、「2017年ネカト世界ランキング」に記述した「「科学と健康米国協議会(American Council on Science and Health)の2017年10大ガラクタ科学」:2017年12月19日」の第1位である。
・2018年6月19日記事:Man vs. Monsanto: First Trial Over Roundup Cancer Claims Set to Begin
・2018年6月26日記事:Monsanto’s ghostwriting and strong-arming threaten sound science—and society
・2018年8月11日記事:除草剤で末期がんに、米裁判所 モンサントに約320億円の支払い命じる(AFP=時事) – Yahoo!ニュース
・2019年4月19日記事:ドイツの伝統企業バイエル社が「訴訟連発」で深刻な危機を迎えていた(川口 マーン 惠美) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
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●1.【概略】

モンサント社(Monsanto)は米国・ミズーリ州に本部を置く世界規模の大きな農薬・種子企業である。

有名な製品に除草剤・ラウンドアップ(Roundup、写真出典)がある。

1970年に主要成分である化学物質・グリホサート(glyphosate)が発見され、1974年に市販された。2000年に特許が切れ、日本を含め、世界中に純正品と多数の類似品が出回っている。

論争点は大きく分けて2つある。
1つ目:ラウンドアップの安全性
2つ目:ラウンドアップのデータや文書の「改ざん」「代筆」「ねつ造」

概要は以下のようだ。

1つ目の「ラウンドアップの安全性」は、ラウンドアップは環境やヒトに安全かという問題である。
→ 例えば危険とする意見。2002 年8月24日の「Greenpeace International」記事:WANTED: Monsanto for crimes against the planet | Greenpeace International

安全性の議論は長いこと論じられてきた。研究論文には、ラウンドアップは危険だとする結果と安全だとする結果の両方が多数ある。

しかし、各国の認可当局が安全と認定し、ラウンドアップは日本を含め世界中で多量に使用されてきた。

なお、製品の安全性・危険性に関する研究成果を素直に信じることはできない。巨額なカネが絡み、助成金バイアスがかかり、政治が絡み、信念が絡む。そこに、研究者の欲得やメンツも盛り込まれ、事態は複雑である。この場合、一般的に、研究論文、研究文書、説明文書、企業の広告にネカト・クログレイが潜むことが多い。

2015年3月、今までヒトの健康に安全とされていたラウンドアップだが、世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関(IARC)が、「ラウンドアップに発がん性の恐れがある」とする報告書を発表した。

ラウンドアップを機械でまく。https://news.nationalgeographic.com/2015/04/150422-glyphosate-roundup-herbicide-weeds/

2つ目の論争は、ラウンドアップのデータや文書の「改ざん」「代筆」「ねつ造」である。

2つ目の論争は2段階ある。

2つ目の論争の1段目。今回の記事ではあまり立ち入らない。

モンサント社はラウンドアップは「生分解性」なので「土壌はきれいになる」と宣伝していた。

2007年、フランスの最高裁判所はモンサント社が解釈を改ざん(虚偽広告)したとし、モンサント社に数百万円の罰金を科した。

2つ目の論争の2段目。

今回の記事の主要部分である。

2015年3月20日、前述したように、世界保健機関(WHO)内の半独立したグループである国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)が、グリホサートを「おそらく人に対する発がん性を有する」とする「グループ2A」に入るという評価を発表した。

この評価をめぐって、国際がん研究機関とモンサント社が攻防戦を繰り広げ、2017年11月19日現在、決着はついていない。

問題が大紛糾したのは、2017年8月1日、訴訟中の弁護士(Baum, Hedlund, Aristei and Goldman法律事務所)が、モンサントの電子メールと内部文書を公開したからである。

その電子メールと内部文書に、モンサント社のラウンドアップに関するデータや文書の「改ざん」「代筆」「ねつ造」の証拠が記載されていた。

なお、「改ざん」はモンサント社が「改ざん」したという指摘と、逆に、モンサント社に不利になるように国際がん研究機関(IARC)の専門委員が「改ざん」したという両面の指摘がされている。

2017年11月19日現在、モンサント社と国際がん研究機関(IARC)は、研究者とメディアをまきこんで、「改ざん」「代筆」「ねつ造」のバトルを展開している。

本記事はネカト・ブログの記事なので、2つ目の論争の2段目の「改ざん」「代筆」「ねつ造」に焦点を絞る。ただ、その背景として、1つ目の論争であるラウンドアップの安全性を少し理解する必要があるので、前半にそれを記載した。

なお、除草剤・ラウンドアップ(Roundup)の主成分はグリホサート(glyphosate:英語ではグライホセイトと発音)で、N-(phosphonomethyl)glycineという低分子量169.07の有機化合物である。

ラウンドアップは商品名でグリホサートは化学物質名である。以後、記事ではあまり深く考えずに、ラウンドアップとグリホサートの両方の用語を混用する。

なお、除草剤・ラウンドアップ(グリホサート)の「改ざん」「代筆」「ねつ造」で死者や健康被害が出たことは科学的に証明されていないと、白楽は推察した。しかし、ラウンドアップで死亡、あるいは健康被害を受けたと主張する人たちはいて裁判になっている。また、個々の被害は微弱で気が付きにくく、しかも広範に及んでいるために、自分が被害者だと思わない可能性もある。

モンサント社(Monsanto)。写真出典

国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)。写真出典

国際がん研究機関の「改ざん」も指摘されているが、以下の事件箇条書きリストでは省略した。ネカト・クログレイが複数回指摘されているモンサント社だけを事件箇条書きリストにした。

  • 国:本社がある米国としたが世界企業で、欧州と米国で大きく問題視された
  • 集団名:モンサント社
  • 集団名(英語):Monsanto Company
  • ウェブサイト(英語):https://monsanto.com/
  • 集団の概要:1901年設立。アメリカのミズーリ州 クレーブクール(Creve Coeur, Missouri)に本社を持つ多国籍バイオ化学メーカー。2005年の売上高は62億ドル(約6200億円)、2008年の売上高は110億ドル(約1兆1千億円)、遺伝子組み換え作物の種の世界シェアは90%。研究費などでロックフェラー財団の援助を受けている。著名な除草剤であるラウンドアップを開発した企業であり、現在ではこの除草剤に耐性をもつ種苗(遺伝子組み換え作物)を開発し、除草剤とセットで販売している。バイオ化学メーカーとしては世界屈指の規模と成長性を誇り、ビジネスウィーク誌が選ぶ2008年の世界で最も影響力があった10社にも選ばれた。従業員数は21,400 (2010年8月) 。(モンサント (企業) – Wikipedia
    2017年9月、ドイツ医薬品・化学大手のバイエル社(Bayer AG)に660億ドル(約6兆6千億円)で買収されると発表した。(バイエルがモンサント買収で合意、660億ドルに引き上げ)。
  • 日本の集団名:日本モンサント株式会社。1957年設立。2017年現在、従業員数約30人。ウェブサイト:http://www.monsantoglobal.com/global/jp/whoweare/Pages/our-locations.aspx
  • 事件の首謀者:ー。
  • 分野:農薬・種子製造
  • 不正年:今回の主要事件では、2015年
  • 発覚年:今回の主要事件では、2017年
  • ステップ1(発覚):カリフォルニア州の連邦裁判所にモンサントに対し損害買収請求の訴訟をしていた原告側弁護士(Baum, Hedlund, Aristei and Goldman法律事務所)が、証拠として提出したモンサントの電子メールと内部文書を公開した。
  • ステップ2(メディア): 「フォーブス紙」「ロイター紙」「ニューヨーク・タイムズ紙」「撤回監視(Retraction Watch)」など多数
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ): ①国際がん研究機関。②欧州食品安全機関(European Food Safety Authority)。③米国・環境保護庁(Environmental Protection Agency)。④欧州化学物質庁(European Chemicals Agency)。⑤各国の裁判所
  • 不正:改ざん。代筆。ねつ造
  • 不正論文数:―
  • 被害(者):除草剤・ラウンドアップ(グリホサート)の「改ざん」「代筆」「ねつ造」で死者や健康被害が出たことは科学的に証明されていないと、白楽は推察した。
  • 損害額:総額(推定)は約1兆円。多くの裁判の決着がついていない。損害額の総額(推定)は、2017年にモンサント社がバイエル社に買収された額が約6兆6千億円なので、1兆円としておこう。
  • 結末:現在も抗争中

●2.【日本語の解説】

日本語の解説は多数ある。それらを「修正」引用する。

まず、本記事のかなりの部分を日本語にまとめたGIGAZINEの文章を示す。

そのあとに、ラウンドアップ(グリホサート)の予備知識の日本語動画と文章を引用した。

★2017年08月14日:GIGAZINE、「ラウンドアップ除草剤の発がん性を否定するための論文作りに製造メーカー・モンサントの科学者が大きく関与した可能性」

出典 → ココ(保存版)

世界で最も売れていると言われる除草剤「ラウンドアップ」の主成分は発がん性を有する、とする国際機関の発表に反論するために、ラウンドアップの製造メーカーのモンサントが、独立した専門家による委員会の作成した反論目的の論文に大きく関与し、その関連性を疑われないよう隠蔽していたという実態が裁判の中で明かされています。

モンサントが1970年に開発したグリホサートを主成分とする除草剤「Roundup(ラウンドアップ)」は、植物の種類を選ばずに除草効果を発揮する非選択型の農薬で、1974年の発売以降、農家だけでなく一般家庭でも広く使われています。

そのラウンドアップの安全性について、危険だという声が大きくなったのは、2015年にWHOの下部組織の国際がん研究機関(IARC)が、グリホサートについて「おそらく人に対する発がん性を有する」とする「グループ2A」という評価を下したのがきっかけです。この発表は、ラウンドアップが世界中で一般的な除草剤として使われている大ベストセラーであることから大きな反響を呼びましたが、論文の根拠となるサンプル数の小ささなどに対して科学的な妥当性がないとする研究者の反対意見が多数出されるなど、グリホサートの発がん性については議論が紛糾しています。

モンサントはラウンドアップの安全性を証明してIARCの発表に反駁(ばく)するべく、コンサルタント会社Intertek Group Plcと契約した上で、研究者などからなる専門家委員会を立ち上げました。2016年9月、専門家委員会は、科学誌Critical Reviews in Toxicologyに「完全にモンサントなどの利害関係者から独立して書かれた論文」として、IARCがデータを見落として誤った解釈をしているという内容の論文を発表していました。なお、IARCはこの調査委員会の論文に対して、データに不備はないと再反論しています。

ラウンドアップの発がん性を巡っては、2015年にラウンドアップが原因でがんを発症したという原告が、モンサントに対して損害買収請求訴訟をカリフォルニア州の連邦裁判所に提起していました。この訴訟の原告側弁護士が、2017年8月上旬に、証拠として訴訟に提出したモンサントの電子メールと内部文書を発表しました。

この内部文書によると、モンサントのウィリアム・ヘイデンス博士ら複数の科学者が、外部の専門家によって提出された論文の草案の整理や内容編集に大きく関わっていたとのこと。これに対してモンサントのグローバル戦略担当副社長のスコット・パーリッジ氏は、「モンサントは論文の整形のみを行っており、専門家らの結論を変更するような実質的な関わりを持っていません。利害関係者による『文言の選択』は理想的とはいえませんが、科学的な内容を変えるものではありませんでした」と述べています。

また、内部文書によると、モンサントの主席毒物学者のドナ・ファーマー博士がグリホサートの副作用に関して書かれた2011年の論文の共同著者から名前が削除されたことも明らかになっているとのこと。この論文は、グリホサートの有害性に関する主張への反論として出されたもので、ファーマー氏の名前を論文に出さないことで、モンサントによる関与を否定する狙いがあったと考えられます。

ラウンドアップの人体に対する有害性を示す主張に対して反論する論文の作成に、モンサントによる影響力が大きく及んでいたとするならば、「ラウンドアップが有毒でない」という主張で常に挙げられていた、「独立した第三者機関による科学的な検証」というモンサントによる定番の主張は意味をなさなくなりそうです。

なお、カリフォルニア州は2015年9月からラウンドアップの主成分のグリホサートを有害な化学物質に認定するとモンサントに通知しており、モンサントはこの内容を争って、裁判所に差止訴訟を提起していました。モンサントの訴えは棄却され、2017年6月26日に、カリフォルニア州はグリホサートについて2017年7月7日から発がん性物質のリストに加えると発表されています。発がん性リストに掲載されたことから、カリフォルニア州で販売するグリホサート系農薬のパッケージには発がん性に関する警告表示が義務づけられることになります。モンサントは依然としてこの処分を争っています。

===== 以下、ラウンドアップ(グリホサート)の予備知識の日本語動画と文章を引用した ========

★ラウンドアップ(グリホサート)の除草能力の検証ビデオ

【動画】
「除草剤 ラウンドアップ マックスロードを買ってみた!【商品レビュー】」(日本語)5分26秒。
makoto4473jpが2016/05/20に公開

散布の2週間後。(日本語)1分23秒。

★日本モンサント社の圃場

2013年8月20日の手島奈緒の「ほんものの食べもの日記」記事:日本モンサント社の圃場見学に行ってきた。

以下の写真1枚は上記サイトから借用。

★2017年11月13日閲覧:ラウンドアップ – Wikipedia

出典 → ココ

虚偽広告の判決

1996年、ニューヨークで、モンサントのグリホサート製品のラウンドアップ除草剤に関し、「ラウンドアップが生分解性で土壌に蓄積されません」「安全で人や環境への有害な影響を引き起こすことはありません」といった一連の安全性に関する広告が、虚偽かつ誤解を招く広告と判決された。

フランスの最高裁は、ラウンドアップの主な成分のグリホサートは、欧州連合(EU)が環境に危険だと分類しているため争われていた裁判で、生分解性できれいな土壌を残すという広告を虚偽広告と判決した。

★2015年3月24日:日本経済新聞、「米モンサント開発の除草剤に発がん性の恐れ」

この記事は、グリホサートの安全性の報道である。

出典 → ココ 、(保存版)

【ワシントン=共同】世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(本部フランス・リヨン、IARC)は23日までに、米モンサントが開発した除草剤「グリホサート」に発がん性の恐れがあるとする報告書を公表した。

 グリホサートは「ラウンドアップ」の商品名で知られる除草剤の主成分。日本を含む多くの国で使われている一方、安全性を懸念する声も強い。

 IARCは、人での発がん性を示す証拠は限られているものの、動物実験や薬理作用などの研究結果に基づいて判断したと説明。5段階分類で上から2番目にリスクが高く「人に対する発がん性が恐らくある」ことを示す「2A」にグリホサートを位置付けた。

 報告についてモンサントは「グリホサートは人の健康に安全だ」と反論している。

★2015年3月27日:松永和紀、「ラウンドアップに発がん性?  簡単、わかりやすいニュースに踊らされる前に、もっと詳細をみてみよう」

この記事は、グリホサートの安全性の議論である。

出典 → ココ(保存版)

国際がん研究機関(IARC)が3月20日、5つの有機リン系農薬について、評価の結果を公表しました。殺虫剤のマラチオン、ダイアジノン、除草剤グリホサートがグループ2A「probably carcinogenic to humans(おそらく、人に発がん性あり)、殺虫剤のパラチオンとテトラクロルビンホスがグループ2B 「possibly carcinogenic to humans(人に発がん性がある可能性あり)」です。Lancet oncologyという学術誌でもニュースとして報告されました。

 とくにグリホサートは、モンサント社のラウンドアップの成分名であり、世界でもっとも多く使われている除草剤。そして、遺伝子組換え技術を用いた除草剤耐性作物とセットで用いられています。そのため、欧米で大騒ぎとなっており、日本でも、時事通信、テレビ朝日等が報道しました。これから、ほかのマスメディアやネットメディアにも広がるでしょう。

 えっ、これらの農薬でがんになるの? いえ、IARCの分類や発表の意味はかなり異なります。それに、科学者の間で、IARCに対して猛批判が巻き起こっています。ところが、科学的な意味が誤解されて欧米でも報じられているのです。

以下略

★他の日本語の解説

日本語の解説は多数ある。以下は網羅的ではない。

●3.【事件の経過と内容】

【事件の背景】

★除草剤・ラウンドアップ(Roundup)=グリホサート(glyphosate)

除草剤・グリホサート(glyphosate)は、1970年にモンサント社の化学者・ジョン・フランツ(John E. Franz、写真出典)が発見した除草剤で、モンサント社が1974年にラウンドアップ(Roundup)という名称で販売を開始した。
→ 2007 年9月記事:Inventor of the Week: Archive

フランツはこの発明で、たくさんの賞を受賞した。そして、2007年、全米発明家殿堂(National Inventors Hall of Fame、略称:NIHF)に入った。

グリホサートの特許は2000年に切れているので、その後、他社から多数の類似品が製造・販売されている(ジェネリック製品)。

「glyphosate」は、英語ではグライホセイトと発音する。グリホサートはN-(phosphonomethyl)glycineという低分子量169.07の有機化合物である。除草剤データベース(Pesticide Properties Database) → glyphosate

化学構造は以下のようだ。

グリホサートは、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS)阻害剤で、植物体内での5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸の合成を阻害し、ひいては芳香族アミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン)やこれらのアミノ酸を含むタンパク質や代謝産物の合成を阻害する(シキミ酸経路参照)。接触した植物の全体を枯らす(茎葉)吸収移行型で、ほとんどの植物にダメージを与える非選択型。(ラウンドアップ – Wikipedia

グリホサートが阻害するシキミ酸経路は、多くの微生物と植物にあるが、動物にはないので、動物の代謝は阻害されず、無害である。バクテリアにもシキミ酸経路があるので、多くのバクテリアは死滅する。

グリホサートをまくと、植物の葉や茎からグリホサートが吸収され、植物全体に回る。植物は生育に必要なアミノ酸が合成できないので、1年生植物は約4~7日、多年生植物は約14~30日で枯れる。なお、土にまかれたグリホサートは不活性化されるので、土壌中のグリホサートが植物を枯らすことはない。
→ 早坂利将、脇森裕夫、「除草剤グリホサートの作用点と作用機構(農薬の作用点と作用機構 (1) 」、Journal of pesticide science 6(1), 111-113, 1981

モンサント社の計画はとても巧みである。グリホサートを販売した次のステップで、グリホサートに耐性の作物を遺伝子組み換え技術で作成した。これらの作物を、ラウンドアップレディー (Roundup Ready) と総称する。

ラウンドアップレディー は、日本ではダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、テンサイ、アルファルファ、ジャガイモのラウンドアップレディー品種の一部の一種使用が認可されており、世界的にはベントグラスやアブラナやコムギの耐性品種も開発されている。(ラウンドアップ – Wikipedia

つまり、畑にラウンドアップレディーをまいて、その後、除草剤・ラウンドアップをまけば、ラウンドアップレディー以外の植物(つまり雑草)は全部枯れるので、除草作業の手間が大幅に低減する。

★ラウンドアップの利点・欠点・新しい問題点

利点

  • 安価
  • 毒性が低い
  • 雑草除去に効果的
  • 一般人は住居周辺、農家では畑の雑草除去が楽
  • 不耕起農法(ふこうきのうほう=農地を耕さないで作物を栽培する)が可能で、土壌流出を大幅に防げる。
  • 有毒雑草の農作物への混入を減らせる

欠点

  • 遺伝子組換え作物の健康に及ぼす安全性への不安

新しい問題点

防護服を着てラウンドアップをまく。 人体に有害なの?https://theintercept.com/2016/05/17/new-evidence-about-the-dangers-of-monsantos-roundup/

★モンサント社に反対する団体

モンサント社に反対する団体がいくつもある。以下に大きな組織を挙げる(網羅的ではない)。しかし、モンサント社に反対する団体が、どうしてこんなにたくさんあるのだろう?

反モンサント大行進(March Against Monsanto)。2014年、カナダのバンクーバー(?)。出典

★グリホサートを使わない農家

【動画】
ドキュメンタリー:「グリホサートとは? 危険なのでイタリアの農家は使わない(What is glyphosate. The Italian farmers who don’t use it because of its risks)」(イタリア語、英語字幕付き)9分35秒
LifeGate が2016/05/04 に公開
以下のリンクが切れた時 → 保存版

★欧州はグリホサートを禁止?

【動画】
2017 年4月5日、欧州市民イニシアチブ(European Citizens’ Initiative (ECI) )が欧州委員会の経済社会評議会(European Economic and Social Committee)にグリホサートの使用禁止を求める会議風景:「欧州市民イニシアチブはグリホサートを禁止する?(ECI “Ban glyphosate” ? ICE interdiction du glyphosate)」(英語)1時間13分53秒
European Economic and Social Committee が2017/04/07 に公開
以下のリンクが切れた時 → 保存版

【モンサント社の改ざん事件①】

★グリホサートの生分解性は改ざん

2001年、フランスの環境および消費者権利運動家は、モンサント社に対して、ラウンドアップの環境への影響について、一般市民を誤解させたと訴えた。

モンサント社はラウンドアップは「生分解性」なので「土壌はきれいになる」と宣伝していた。

ところが、欧州連合(EU)は、グリフォセートは「環境に対して危険」で「水生生物に対しては毒物である」と認定した。

2007年、フランスの最高裁判所は、「生分解性」なので「土壌はきれいになる」と宣伝していたのを解釈の改ざん(虚偽広告)とし、モンサント社に15,000ユーロ(約180万円)の罰金を科した。

モンサント社のフランスでの販売会社・スコッツ・フランス社(Scotts France)にも15,000ユーロ(約180万円)の罰金を科した。

さらに、損害賠償として、ブルターニュ水道河川協会(Brittany Water and Rivers Association)に5,000ユーロ(約60万円)、消費・住居・生活環境連合(CLCV: Confédération de la Consommation, du Logement et du Cadre de Vie)に3,000ユーロ(約36万円)を支払うよう命じた。
→ 2007 年1月26日記事:Monsanto fined in France for ‘false’ herbicide ads

モンサント社は控訴したが、裁判所は前判決を支持した。

モンサント社は再びフランス最高裁判所に上訴したが、2009年、最高裁判所も前判決を支持した。
→ 2009年10月15日の「BBC NEWS」記事:BBC NEWS | Europe | Monsanto guilty in ‘false ad’ row

【モンサント社の改ざん事件②と代筆事件①】

★2015年3月20日:グリホサートに発がん性

2015年3月20日、世界保健機関(WHO)内の半独立したグループである国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)が、グリホサートを「おそらく人に対する発がん性を有する」とする「グループ2A」に入るという評価を下した。

http://gmwatch.org/en/news/archive/2015-articles/16015-glyphosate-is-probable-human-carcinogen-who-s-cancer-agency

このチームの責任者は国際がん研究機関の「エビデンス合成と分類(Evidence Synthesis and Classification)」室のクルト・ストライフ室長(Kurt Straif)である。

ストライフ室長(写真以下)は1987年にドイツで医師免許を取得し、2001年に米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California Los Angeles)で疫学の研究博士号(PhD)を取得している。

国際がん研究機関の「エビデンス合成と分類(Evidence Synthesis and Classification)」室のクルト・ストライフ室長(Kurt Straif)。フランス、リヨン。 2016年。REUTERS/Robert Pratta。写真出典

「2015年のランセット」論文に「グループ2A」に入る評価を下した要点を発表した。評価した人は11か国の17人の専門家とあるが、論文著者は、以下に示す9人しかリストされていない。最後著者はクルト・ストライフ室長(Kurt Straif)である。

「2015年のランセット」論文の元となる国際がん研究機関の「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」は「いくつかの有機リン系殺虫剤および除草剤(Some organophosphate insecticides and herbicides)」というタイトルの464ページからなる報告書(英語)である。
→ PDF(11.7 MB):「International Agency for Research on Cancer Volume 112: Some organophosphate insecticides and herbicides: tetrachlorvinphos, parathion, malathion, diazinon and glyphosate. IARC Working Group. Lyon; 3–10 March 2015. IARC Monogr Eval Carcinog Risk Chem Hum」

グリホサートに関する記述は312-412ページ部分で、101ページもあり、白楽は、チラ見しただけで読んでいません。

代わりといってはナンですが、2ページに要約したPDF「IARC Monographs Volume 112: evaluation of five organophosphate insecticides and herbicides」を以下にアップしておきます。

MonographVolume112

 

なお、国際がん研究機関の「ヒトに対する発がん性(化学物質、混合物、環境)」の評価は簡単に示すと以下の4グループに分類されている。

グループ1発癌性が認められる (Carcinogenic)
グループ2A:発癌性がおそらくある (Probably Carcinogenic)
グループ2B:発癌性が疑われる (Possibly Carcinogenic)
グループ3:発癌性を分類できない (Not Classifiable as to its Carcinogenic)
グループ4:発癌性はおそらくない (Probably Not Carcinogenic)
→ 参考:IARC発がん性リスク一覧 – Wikipedia

チョット簡単に示し過ぎた。日本の農林水産省の「表・IARCによる発がん性の分類(2017年6月18日時点)」を以下に示そう。
→ 国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について:農林水産省

グループ1
(120種類)
ヒトに対する発がん性がある。 (Carcinogenic to humans)
例)アルコール飲料、ベンゾピレン、ベンゼン、アフラトキシン等
・ヒトへの発がん性について十分な証拠がある場合
グループ2A
(81種類)
ヒトに対しておそらく発がん性がある。 (Probably carcinogenic to humans)
例)アクリルアミド、亜硝酸塩等
・ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合
グループ2B
(299種類)
ヒトに対して発がん性がある可能性がある。 (Possibly carcinogenic to humans)
例)わらび、漬けもの、鉛等
・ヒトへの発がん性については限られた証拠があるが実験動物では十分な証拠のない場合  ・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかないあるいは証拠はないが、実験動物は十分な発がん性の証拠がある場合
グループ3
(502種類)
ヒトに対する発がん性について分類できない。 (Not classifiable as to its carcinogenicity to humans)
・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかなく、実験動物についても不十分又は限られた証拠しかない場合
・他のグループに分類できない場合
グループ4
(1種類)
ヒトに対する発がん性がない。 (Probably not carcinogenic to humans)
・ヒトへの発がん性はないことを示す証拠があり、かつ実験動物についても同様な証拠がある場合

国際がん研究機関が、グリホサートを「おそらく人に対する発がん性を有する」とした評価は、グリホサートの規制や裁判に大きく影響した。多くのメディアが取り上げた。

★2017‎年‎8月1‎日:モンサント社の文書公開

2017年8月1日、カリフォルニア州の連邦裁判所にモンサント社に対する損害買収請求の訴訟をしていた原告側弁護士(Baum, Hedlund, Aristei and Goldman法律事務所)が、証拠として提出したモンサントの電子メールと内部文書を公開した。
→ 2017年8月9日記事:Monsanto Was Its Own Ghostwriter for Some Safety Reviews – Bloomberg
→ 電子メールと内部文書一覧表(約200件?):Index of /pdf/monsanto-documents

★2017‎年‎8月‎9‎日:モンサント社の反撃

2017年08月14日のGIGAZINEの記事「ラウンドアップ除草剤の発がん性を否定するための論文作りに製造メーカー・モンサントの科学者が大きく関与した可能性」を再引用しながら話を進める。
→ ココ(保存版)

元記事 → 2017‎年‎8月‎9‎日のピーター・ウォルドマン(Peter Waldman)記者、ティファニー・ステッカー(Tiffany Stecker)記者、ジョエルローゼンブラット(Joel Rosenblatt)記者の「Bloomberg」記事:Monsanto Was Its Own Ghostwriter for Some Safety Reviews – Bloomberg(保存版)

モンサントはラウンドアップの安全性を証明してIARCの発表に反駁(ばく)するべく、コンサルタント会社Intertek Group Plcと契約した上で、研究者などからなる専門家委員会を立ち上げました。2016年9月、専門家委員会は、科学誌Critical Reviews in Toxicologyに「完全にモンサントなどの利害関係者から独立して書かれた論文」として、IARCがデータを見落として誤った解釈をしているという内容の論文を発表していました。

科学誌Critical Reviews in Toxicologyの「完全にモンサントなどの利害関係者から独立して書かれた論文」の書誌情報は以下である。下線の著者は後述。

16人の著者の所属は順番に以下の通りでモンサント社に所属している人はいない。

  1. Department of Pathology , New York Medical College , Valhalla , NY , USA ;
  2. Marilyn Aardema Consulting, LLC , Fairfield , OH , USA ;
  3. Department of Clinical Epidemiology , Aarhus University , Aarhus , Denmark ;
  4. Department of Pathology, Queen Mary, University of London , London , UK ;
  5. Toxicology Consultant , Bumpass , VA , USA ;
  6. Boston Children’s Hospital , Boston , MA , USA ;
  7. Department of Pathology , Botucatu Medical School, São Paulo State University, UNESP , São Paulo , Brazil ;
  8. Department of Occupational Medicine and Epidemiology, EpidStat Institute, University of Michigan , Ann Arbor , MI , USA ;
  9. Department of Toxicology and Environmental Hygiene , Technical University of Munich , Munich , Germany ;
  10. Private Consultant , Buena Vista , CO , USA ;
  11. Kirkland Consulting , Tadcaster , UK ;
  12. Department of Biostatistics , Center for Occupational Biostatistics & Epidemiology, Graduate School of Public Health, University of Pittsburgh , Pittsburgh , PA , USA ;
  13. Centre for Toxicology, University of Guelph , Guelph , ON , Canada ;
  14. Department of Occupational Epidemiology , University of Birmingham , Birmingham , UK ;
  15. Intertek Regulatory & Scientific Consultancy , Mississauga , ON , Canada ;
  16. DLW Consulting Services, LLC, University of New Mexico School of Medicine , Albuquerque , NM , USA.

★2017年8月上旬:モンサントの電子メールと内部文書

2017年08月14日のGIGAZINE、「ラウンドアップ除草剤の発がん性を否定するための論文作りに製造メーカー・モンサントの科学者が大きく関与した可能性」の再引用

ラウンドアップの発がん性を巡っては、2015年にラウンドアップが原因でがんを発症したという原告が、モンサントに対して損害買収請求訴訟をカリフォルニア州の連邦裁判所に提起していました。この訴訟の原告側弁護士が、2017年8月上旬に、証拠として訴訟に提出したモンサントの電子メールと内部文書を発表しました。

Monsanto email communications

 

この内部文書によると、モンサントのウィリアム・ヘイデンス博士(William Heydens、写真右出典)ら複数の科学者が、外部の専門家によって提出された論文の草案の整理や内容編集に大きく関わっていたとのこと。

これに対してモンサントのグローバル戦略担当副社長のスコット・パーリッジ氏(Scott Partridge、写真左出典)は、「モンサントは論文の整形のみを行っており、専門家らの結論を変更するような実質的な関わりを持っていません。利害関係者による『文言の選択』は理想的とはいえませんが、科学的な内容を変えるものではありませんでした」と述べています。

また、内部文書によると、モンサントの主席毒物学者のドナ・ファーマー博士がグリホサートの副作用に関して書かれた2011年の論文の共同著者から名前が削除されたことも明らかになっているとのこと。この論文は、グリホサートの有害性に関する主張への反論として出されたもので、ファーマー氏の名前を論文に出さないことで、モンサントによる関与を否定する狙いがあったと考えられます

★2017年10月12日:環境健康の4団体の「2016年のCritical Reviews in Toxicology」論文撤回要求

2017年10月12日、全米の環境健康の4団体の科学者が、「2016年のCritical Reviews in Toxicology」論文を撤回するよう要請した。
→  2017‎年10月12‎日の「Center for Biological Diversity」記事: Scientists to Journal: Retract Pesticide Review After Revelations of Monsanto Funding, Influence

米国の環境健康団体の4団体とその科学者は以下の4人・団体である。

  1. ネイサン・ドンリー(Nathan Donley):生物多様性センター(Center for Biological Diversity)
  2. ビル・フリーセ(Bill Freese):食品安全センター(Center for Food Safety
  3. エミリー・マルケス(Emily Marquez):農薬行動ネットワーク(Pesticide Action Network North America
  4. キャロライン・コックス(Caroline Cox):環境健康センター(Center for Environmental Health

要請文を以下に貼り付けた。

Retraction_letter_to_Critical_Reviews_in_Toxicology

 

撤回要請理由は以下の通りだ。

「2016年のCritical Reviews in Toxicology」論文は前述したように、「完全にモンサントなどの利害関係者から独立して書かれた論文」として発表された。確かに論文の16人の著者の所属は論文では、モンサント社に所属している人はいない。

しかし、モンサント社は、記事を執筆した科学者の少なくとも2人に直接お金を支払っていて、「完全にモンサントなどの利害関係者から独立して書かれた論文」になっていない。論文が出版される前に、その2人が論文内容を大幅に編集していたのだ。

1人は、ジョン・アクワベラ(John Acquavella、写真出典)で、30年間も民間企業(アムジェン社?)の社員だったが、デンマークのオーフス大学(Aarhus University)教授に移籍した人物である。

ジョン・アクワベラはグリホサートの評価の件でモンサント社のために2015年8月に働いた分として、20,700ドル(約207万円)の請求をしていた(以下)。

25-Invoice-Showing-Monsanto-Paid-$20000-to-Expert-Panel-Member-Dr-John-Acquavella

 

生物多様性センター(Center for Biological Diversity)のネイサン・ドンリー(Nathan Donley)は、「「Critical Reviews in Toxicology」編集部が論文を撤回しないなら、その非倫理的行為を公然と非難します。 人々と環境に対する農薬の脅威を理解するには、業界の影響から研究が本当に独立していることが重要です」と述べている。

なお、2017‎年11月19‎日現在、「Critical Reviews in Toxicology」編集部は「2016年のCritical Reviews in Toxicology」論文を撤回していない。

【国際がん研究機関の改ざん事件】

★2017‎年10月19‎日:「ロイター」紙記事が「国際がん研究機関(IARC)の改ざん」を指摘

→ 2017‎年10月19‎日のケイト・ケランド(Kate Kelland、写真出典)記者の「ロイター」紙記事:Glyphosate: WHO cancer agency edited out “non-carcinogenic” findings

前述したように、2015年、国際がん研究機関(IARC)は「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」で、グリホサートが「グループ2aの発癌物質で、おそらく人々の癌を引き起こす物質」と結論付けた 。

ロイター紙は、自社の調査で、この「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」に改ざんがあると指摘したのだ。

「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」の草案を、米国の訴訟手続の一環としてモンサント社が取得した。

その草案と発表された「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」を比べ、国際がん研究機関(IARC)の委員は「草案の重要な点を10か所変更して報告書(モノグラフ)に発表した」とロイター紙は報道した。

報告書の草案ではグリホサートは「グループ2aの発癌物質」となっていなかった。ところが、国際がん研究機関の委員は「グループ2aの発癌物質」と結論したいがために、その結論に合わない研究事実を取り上げなかったと指摘したのだ。

一般的に、文章の「編集」の仕方によって、結論が異なる可能性は大いにある。

「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」では、草案に記載されていたグリホサートの発癌性についての否定的な部分が削除され、中性または陽性のものに置き換えられていた。

2つの例が示されている。

【文書1】

草案では、22-26行目で腎臓癌の発生率のデータを示した後、「研究を行なった病理学者はこの研究での腎臓癌は化合物(白楽注:グリフォセート)と関係ないと述べていて、PWGリポートは研究を行なった病理学者の意見に強く同意している」と記載されている。

しかし、発表された「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」では「 」の部分は「癌の発生は、グリフォセートの用量に依存して有意に上昇していると、ワーキンググループは考えた」になっていた。

確かに発癌性に否定的な部分を「編集」し、陽性のものに置き換えている。

以下に対比部分の原文を示す。

出典:https://www.reuters.com/investigates/special-report/who-iarc-glyphosate/

【文書2】

草案では、3章15-18行目で腎臓癌の発生率のデータを示した後、「雄ラットへの高容量グリフォセートの投与は、対照に比べ皮膚角化細胞腫の有意な増加は認められなかった。雌ラットへの低・中容量グリフォセートの投与は、対照に比べ乳腺線維腺腫の有意な増加は認められなかった(スプラーグ・ドーリー・ラットではグリフォセートに発癌性はないと著者は結論した」との記述がある。

しかし、発表された「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」では( )の部分(白楽が下線を引いた)は「ワーキンググループは、論文中の実験データと補足情報が限定的なので、この研究結果を評価できなかった」になっていた。

確かに発癌性に否定的な部分を「編集」し、中性のものに置き換えている。

以下に対比部分の原文を示す。

出典:https://www.reuters.com/investigates/special-report/who-iarc-glyphosate/

ロイター紙は、報告書からは、誰が変更を行ったのかを判定できなかった。国際がん研究機関に問い合わせても、報告書の変更に関する質問に答えてもらえなかった、と述べている。

ロイター紙は、さらに、ワーキンググループの全16名の科学者に連絡を取り、編集と削除について質問した。11人の返事はなかったが、5人は草案に関する質問には答えられないと返事してきた、と述べている。

結局、変更を行った委員の名前、それに、なぜ変更し、いつ変更したのかについては、誰も、答えてくれなかった。

一方、国際がん研究機関は、ロイター紙の質問の後、ワーキンググループの全科学者に連絡を取り、ロイター紙の質問に対応しなくても「プレッシャーを感じないように」と伝えた。

モンサント社・グローバル戦略担当副社長のスコット・パージリッジ(Scott Partridge)は、「国際がん研究機関のメンバーがデータ改ざんし結論をゆがめた」と非難した。

多くの国内および国際機関がグリホサートの安全性を検討していて、 「グリホサートは発がん性物質」と宣言したのは国際がん研究機関だけだった。米国環境保護庁(Environmental Protection Agency)、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority)、欧州化学物質庁(European Chemicals Agency)は、グリホサートを安全としている。

「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」の草案、そして、国連とWHOのパネルによるその後の分析では、食物中のグリホサートが、ヒトに癌リスクをもたらすとは考えられないと結論づけていた。

さらに、他機関と比較し、国際がん研究機関の透明度が問題視された。

国際がん研究機関は「グリホサートは発がん性物質」とした評価過程を公表していない。 どのように評価し決定に至ったかについての詳細(つまり草案などの文書)を知るのは、ほとんど不可能なのだ。

一方、欧州食品安全機関(EFSA)は、除草剤の評価での科学的意思決定プロセスは「最初から最後まで追跡することができる」。欧州食品安全機関の農薬部門の責任者、ホセ・タラソナ(Jose Tarazona)は、「誰でも欧州食品安全機関のウェブサイトにアクセスでき、どのように評価が進んだのかを見ることができる。 専門家がそれぞれの研究を評価し、公的なコメントがどのように評価に組み入れられたかを明確に知ることができます」と述べている。

米国の環境保護庁は、科学諮問パネル会議がグリホサートの発がん性に関する継続的な評価を行なったが、2016年12月に1,261ページの報告書にまとめ、全文を公開していた。

ところが、国際がん研究機関は「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」では、審議過程の記録を公表していない。

「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」の結論によって、政治的に大きな影響がでている。モンサント社は、それ以来、除草剤が癌を引き起こしたと主張する多くの人から米国で訴訟を起こされている。

欧州連合(EU)では、EU加盟国のグリホサート販売ライセンスを更新するかどうかを決定する投票が予定されている(投票の年月日を白楽は把握していない)。投票が否定的な結果になると、2018年 1月1日からグリホサートは欧州連合(EU)では禁止される。

★2017年10月24日:国際がん研究機関(IARC)の反論

国際がん研究機関(IARC)はケイト・ケランド記者の質問に「ロイター」記事では答えていないが、自分のサイトで「ロイター」記事に反論している。

白楽が思うに、これは賢い。一般的に、インタビュー記事や質問への回答では執筆者が都合のよいところを抽出して記事にするからだ。

→ IARC rejects false claims in Reuters article (“In glyphosate review, WHO cancer agency edited out “non-carcinogenic” findings”)
文書はココだが、クリックしても文書につながらず、国際がん研究機関サイトが出る → http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/pdf/IARC_Response_Reuters_October2017.pdf

国際がん研究機関は、「ケイト・ケランド記者はロイター記事で、国際がん研究機関が非発癌性の部分を「編集(改ざん)」し、「おそらく癌を引き起こす」という結論にしたと述べているが、ロイター記事はトンチンカンで虚偽だ」と主張した。

要約すると、「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」で示した発癌性のグループ分類は、利益相反のない独立した科学者のワーキンググループが純粋に科学的に精査した結果である。つまり、データの編集や取捨選択は改ざんではなく、科学的根拠に基づいた作業である。

得られた結論は、ワーキンググループとして合意した結論である。科学論文を批判的に分析し評価し全ワーキンググループメンバーが合意したものである。つまり、特定のメンバーが、自分の利益のために変更したのではない。

評価を導く原則、手順、科学的基準は、「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」の序文に記載してある。

IARC_Response_Reuters_October2017

 

2017年11月19日現在、白楽は、国際がん研究機関の改ざん疑惑は決着がついていないと思う。

【モンサント社の代筆事件②】

★2015年11月3日:ジョン・アクワベラ(John Acquavella)

ジョン・アクワベラ教授(John Acquavella、写真出典)は、「2016年のCritical Reviews in Toxicology」論文の著者の1人でデンマークのオーフス大学(Aarhus University)として前述した。

そのジョン・アクワベラ教授は、2015年11月3日の電子メールでモンサント社の役員(ウィリアム・ヘイデンス、William Heydens、前出)に電子メールを送り、「論文発表でウソの著者になることはできません。それは代筆(ghost writing)で、非倫理的です」と述べている。

この電子メールだけでは、どの論文の「代筆」を示しているのか具体的には書かれていないが、モンサント社の役員(ウィリアム・ヘイデンス)が誰かに代筆を打診したわけだ。

2015年11月3日という年月日とジョン・アクワベラ教授の電子メール「私のパネリストは了承するとは思えない」という文面から推測するに、「2016年のCritical Reviews in Toxicology」論文の執筆陣パネリストに打診したのだろう。

「2016年のCritical Reviews in Toxicology」論文は公表時に16人の著者がいた。「完全にモンサントなどの利害関係者から独立して書かれた論文」と公式に記述してある。そのウソは、ジョン・アクワベラ教授が20,700ドル(約207万円)の請求をしていたことから、すでにバレていることを前述した。

ここでは、さらに、ジョン・アクワベラ教授を含めた16人の著者に「代筆」を打診したことで、ここでもウソがバレてしまった。実際には、何人が「代筆」を受諾したのかわからないが、複数人(15人?)いたのではないだろうか(推測)。

【モンサント社の代筆事件③】

★2015年3月20日:「フォーブス」誌とヘンリー・ミラー(Henry I. Miller)

2017年8月1日、モンサント社は、遺伝子組み換え食品賛成派のスタンフォード大学・特別研究員(Fellow)のヘンリー・ミラー(Henry I. Miller、写真出典)の「代筆」をしていたことが発覚した。
→ 2017年8月1日の「ダニー・ハキム(Danny Hakim)」記者の「New York Times」記事:Monsanto Emails Raise Issue of Influencing Research on Roundup Weed Killer – The New York Times
→ 2017年8月30日の「ゲイリー・ラスキン(Gary Ruskin)」記者の「U.S. Right to Know」記事:Why you can’t trust Henry I. Miller

また、2015年2月、モンサント社の役員・ウィリアム・ヘイデンス(William Heydens、前出)は、実際、科学研究の一部をゴーストライティングするように要請する電子メールを従業員に送信していた。

モンサント社とヘンリー・ミラーとの関係が暴露された電子メールもあり、2017年11月現在、一般市民は、モンサント社のニュースと研究成果の両方に不信感を抱いている。

ヘンリー・ミラー(Henry I. Miller)という人物を少し説明しよう。

ヘンリー・ミラーは医師免許をもち、1979年–94年の15年間、食品医薬品局(FDA)に勤め、食品医薬品局で遺伝子食品の評価を最初にした職員だと言われている。1995年に食品医薬品局を退職し、以後、コンサルタントや執筆生活を送っている。

ヘンリー・ミラーは危険な製品の規制緩和を主張してきた人物である。彼は、ニコチンは「特に悪いことはない」と主張し、低レベルの放射線は健康に有益であり、殺虫剤DDTの再導入を繰り返し求めている。つまり、科学界では少数意見派である。

彼は、遺伝子組み換え食品の最も有力で最も有名な賛同者でもある。その主張を、ウォールストリートジャーナル、ニューヨークタイムズ、ロサンゼルスタイムズ、フォーブスなどにしばしば寄稿している。

そのヘンリー・ミラーとモンサント社の環境/社会/経済主幹のエリック・ザックス(Eric Sachs、写真出典)が、「学術誌編集者や一般に公開されていない方法で、モンサント社に有利になるような活動をしよう」と電子メールでやり取りしていたことが暴露された(以下に貼り付けた)。

22-Internal-Email-Demonstrating-Monsanto-Ghostwriting-Article-Criticizing-IARC-for-Press

 

ヘンリー・ミラー(Henry I. Miller)は、国際がん研究機関(IARC)の「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」を攻撃する論説を2015年3月20日に「フォーブス」誌に書いた。

しかし、実は、この論説は、モンサント社の人間が書いた文章にヘンリー・ミラーが名前を貸した「代筆」だったことが発覚した。
→ 2015年3月20日、ヘンリー・ミラー(Henry I. Miller)の「フォーブス」論説(「フォーブス」誌のサイトからは削除されている):March Madness From The United Nations – Forbes#4813b4db2e93

2017年8月、「フォーブス」誌のグローバル通信担当上級副社長のミア・カーボネル(Mia Carbonell、写真出典)は激怒した。そして、「フォーブス」誌のサイトからヘンリー・ミラーが著者とされた文章をすべて削除した。

ヘンリー・ミラーが執筆契約に違反したため、ヘンリー・ミラーのすべて記事を削除し、彼との関係を終わらせたと、撤回監視の質問に、ミア・カーボネル副社長は以下のように答えている。

「フォーブス」誌のすべての執筆者は、可能性も含めすべての利益相反を開示することと、執筆者のオリジナルな内容を投稿すること、という契約書に署名しています。 ヘンリー・ミラー氏がこれらの契約に違反したことが判明致しましたので、私たちは、「フォーブス」誌のヘンリー・ミラー氏の記事をすべて削除致しました。

ヘンリー・ミラーは、「「フォーブス」誌が記事を削除する決定に自分はなんら関与させてもらっていない。その決定に同意もしていない。 私は、科学的な問題で情報が欲しいと思った時、モンサント社から情報を貰っただけで、カネは貰っていない」と抗議している。

【モンサント社のねつ造事件】

今回の記事は、すでにかなり長文である。しかも「改ざん」「代筆」が幾重にも登場している。しかし、事件はまだ終わっていない。

グリホサート(glyphosate))の安全性に関して、モンサント社が「ねつ造」をしたという指摘がある。
→ 2017年8月2日のタイラー・ダーデン(Tyler Durden)記者の「Zero Hedge」記事:New Monsanto Emails Raise Questions On Safety Of RoundUp Products | Zero Hedge

2017年8月1日、モンサント社の文書が公開された。
→ Index of /pdf/monsanto-documents

その文書の1つに以下の記述がある。

【文書1】

米国の環境保護庁(EPA)の基準では、製剤化された製品(ここではラウンドアップ)については、ヒトへの健康被害データの提出は必要ない。代わりに、環境保護庁は有効成分(ここではグリホサート)に関する研究結果とそのデータのみが必要である。その結果、環境保護庁が審査した科学論文の主体は、業界が提出した論文で、ラウンドアップの化学成分の一部しか審査していない。

上記の文章に続いて、モンサント社の毒物学主幹のドナ・ファーマー(Donna Farmer、写真出典)は、「ラウンドアップが癌を引き起こさないとは言えません。なぜなら、モンサント社はラウンドアップの発癌性に関する研究を行なっていないからです」と。

上記に意訳で示した内容の文書1を以下に示す。赤点線で囲った部分の意訳を上記に示した。

http://www.zerohedge.com/news/2017-08-02/new-monsanto-emails-raise-questions-safety-roundup-products

モンサント社はラウンドアップは安全だと主張してきた。「食卓の上の食塩よりも安全」と宣伝してきた。それが、「ラウンドアップの発癌性に関する研究を行なっていない」とは大ウソつきもいいところだ。これは、ねつ造である。

【文書2】

ドナ・ファーマー(Donna Farmer)は、2009年9月21日の電子メールでも「ラウンドアップの発癌性に関する研究を行なっていない」と記述している。

以下の赤点線枠の文章に「ラウンドアップが癌を引き起こさないと言えません。なぜなら、モンサント社はラウンドアップの発癌性に関する研究を行なっていないからです」とある。

http://www.zerohedge.com/news/2017-08-02/new-monsanto-emails-raise-questions-safety-roundup-products

【モンサント社に対する訴訟】

モンサント社に対する訴訟がとても多い。件数が多く内容を検討していない。

 

サンフランシスコ地方裁判所だけで、モンサント社に対する270件以上の訴訟が係属中だそうだ。
→ The Monsanto Papers

もちろん、米国以外でも訴訟が起こっている。
1例としてインドでの訴訟。
→ 2017年10月30日記事:It’s time for India to say no to Monsanto: 20 years of corruption and fraud is enough, says Vandana Shiva

●4.【白楽の感想】

《1》遺伝子組み換え食品事件

遺伝子組み換え食品の賛成・反対は、賛成にしろ反対にしろ、金まみれ、政治まみれ、信念(宗教)まみれで、何が正しいのかを判断しにくい。

このネカト・ブログでも遺伝子組み換え食品の研究ネカト/クログレイを少し記事にしてきた。

何が正しいのかを判断する基準はどこにあるのだろう?

《2》頻度と防ぐ方法

企業のねつ造・改ざんや代筆はどれほど普通に行なわれているのだろう?

これらの不正は、大学と比べて、かなり多いのか、めったにないのか、企業は不正を隠蔽するので、誰も把握できない。実際は、企業内のネカトやクログレイは、かなりの件数起こっているのかもしれない。

一般に、企業は激しくコクハラする。不正者をコッソリ解雇する。不正の隠蔽が難しいと判断した時だけ、最低限の情報を発表する。このような体質なので、気が付いたときは不正が巨大化している。

現在、欧米も日本も企業のネカトやクログレイの件数を把握できていないが、企業内のネカトやクログレイを防ぐ有効な手段を企業は持っているとは思えない。根本的な改善をしようともしない。

しかし、企業の研究文化とシステムを変え、有効な改善法を確立しないと、東芝や神戸製鋼やニッサンのように屋台骨を揺るがすような大事件になり、コストが高くつくことになる。従来通りの謝って手直しする程度の修正では効果がないことを学んでいるはずだ。

《3》買収

2017年、モンサント社はドイツ医薬品・化学大手のバイエル社(Bayer AG)に660億ドル(約6兆6千億円)で買収されることになっている。

この買収と今回のラウンドアップ発癌性での「改ざん」「代筆」「ねつ造」事件と関係あるのか、ないのか、白楽は把握できていない。

《4》権威ある機関でも誠実に

ロイター紙のケイト・ケランド(Kate Kelland)記者は、2015年の国際がん研究機関(IARC)の「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」は草案と比べて、内容が異なるので、委員が「編集」したと指摘した。

この「編集」という言葉でケイト・ケランド記者が言いたいことをはっきり言えば、「改ざん」である。つまり、国際がん研究機関の委員が改ざんしたと言いたい。もちろん、国際がん研究機関は改ざんしていないと否定している。11か国からの17人の利益相反のない専門家が科学的見地で検討した結果であると批判を突っぱねている。

「編集」と「改ざん」の判断は難しい。

一般的に、当然ながら、実験したデータを論文には全部掲載できない。必ず取捨選択する。この取捨選択の基準は、「結論に都合のいいデータ」を選ぶである。

しかし、この取捨選択を改ざんとは言わない。だから、国際がん研究機関の「編集」を「改ざん」呼ばわりするのは、過剰攻撃だろう。

しかし、国際がん研究機関(エンブレム。画像出典不明)はエライ国際機関だからか、高慢で態度がでかい、と白楽は感じる。「改ざん」ではなく「編集」だと、丁寧に誠実に説明すべきだ。

ただ、もし、万が一ですよ、国際がん研究機関の委員が改ざんしていたらどうなるんだろう。今回の対処では、「改ざん」を隠蔽していることになる。

国際がん研究機関の「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」は学術誌に掲載した論文ではない。ということは、「2015年の報告書(モノグラフ)112巻」のネカト疑惑を調査し、シロまたはクロと結論できる当局は一体どこなんだろう? 現状では、国際がん研究機関がシロと言えばシロで通る。それに対抗できるのは、メディアだが、メディアはシロ・クロの判定を下せる当局ではない。

写真出典不明

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●5.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Monsanto legal cases – Wikipedia
② ウィキペディア日本語版:ラウンドアップ – Wikipedia
③ 2009年10月15日の「BBC NEWS」記事:BBC NEWS | Europe | Monsanto guilty in ‘false ad’ row、(保存版
④ 2017‎年3月15‎日のエド・ミエズウィンスキー(Ed Mierzwinski)記者の「HuffPost」記事:Monsanto Manufactured Scientific Studies And Then Used Those Studies To Influence EPA, Other Regulators | HuffPost、(保存版
⑤ 2017‎年‎8月‎9‎日のピーター・ウォルドマン(Peter Waldman)記者、ティファニー・ステッカー(Tiffany Stecker)記者、ジョエルローゼンブラット(Joel Rosenblatt)記者の「Bloomberg」記事:Monsanto Was Its Own Ghostwriter for Some Safety Reviews – Bloomberg(保存版)
⑥ 2017‎年10月19‎日のケイト・ケランド(Kate Kelland)記者の「Reuters」記事:Glyphosate: WHO cancer agency edited out “non-carcinogenic” findings、(保存版
⑦ 2017年10月23日のカリー・ブラウン(Kalee Brown)記者の「Collective Evolution」記事:Monsanto Caught Ghostwriting Its Own GMO Safety Reviews For A Stanford Scientist – Collective Evolution、(保存版
⑧ 2017年10月24日のアレックス・ベレゾウ(Alex Berezow)記者の「American Council on Science and Health」記事:Glyphosate-gate: IARC’s Scientific Fraud | American Council on Science and Health、(保存版
⑨ 2017‎年10月19‎日のローズマリー・メイソン(Rosemary Mason)記者とコリン・トッドハンター(Colin Todhunter)記者の「Global Research」記事:The Global Food and Health Crisis: Monsanto’s Science Is Bogus | Global Research – Centre for Research on Globalization、(保存版
⑩ 2017‎年10月12‎日の「Center for Biological Diversity」記事: Scientists to Journal: Retract Pesticide Review After Revelations of Monsanto Funding, Influence、(保存版
⑪ 2017年10月23日のジェフリー・カバット(Geoffrey Kabat)記者の「Forbes」記事:IARC’s Glyphosate-gate Scandal#144181371abd、(保存版
⑫ 2017年8月10日のアンドリュー・ハン(Andrew P. Han)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Unearthed emails: Monsanto connected to campaign to retract GMO paper – Retraction Watch at Retraction Watch
⑬ 2017年(?)、「Baum, Hedlund, Aristei and Goldman」法律事務所のモンサント社関連資料:Monsanto Papers | Secret Documents – Baum Hedlund、(保存版
⑭ モンサント社の電子メールと内部文書一覧表(約200件?):Index of /pdf/monsanto-documents、(保存版

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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