2019年5月21日掲載
ワンポイント:米国の政治家で、2009~2017年の副大統領。現在、次期大統領の有力候補である。1965年(23歳)、シラキュース大学法科大学院(Syracuse University College of Law)・院生の時、授業に提出するレポートで盗用をした。国民の損害額(推定)は100億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
ジョー・バイデン(Joseph Robinette “Joe” Biden, Jr.,、写真出典)は、米国の政治家で、2009~2017年に副大統領だった。現在、次期大統領の有力候補の1人である。1965年(23歳)、シラキュース大学法科大学院(Syracuse University College of Law)・院生の時、盗用をした。
本ブログは上記のネカト問題だけを扱う。その後、政治家として、スピーチの盗用問題、セクハラ問題もおこしているが、政治家として起こした事件なのでここでは扱わない。
1965年(23歳)、バイデンは、シラキュース大学法科大学院の1年生の時、他人の論文から5ページ、引用せずに流用した。授業での提出レポートでの盗用だった。
大学は、その科目の単位をとり消したが退学処分を科さなかった。バイデンは、翌年、単位を取得した。
シラキュース大学法科大学院(Syracuse University College of Law)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:米国
- 専門職学位取得:法務博士号(Juris Doctor):シラキュース大学法科大学院
- 研究博士号(PhD)取得:なし
- 男女:男性
- 生年月日:1942年11月20日
- 現在の年齢:81歳
- 分野:法学
- 最初の不正論文発表:1965年(23歳)
- 発覚年:1965年(23歳)
- 発覚時地位:シラキュース大学法科大学院・院生
- ステップ1(発覚):第一次追及者は授業担当教授(推定)
- ステップ2(メディア): 「New York Times」など
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①シラキュース大学法科大学院(Syracuse University College of Law)・調査委員会
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:現在はなし。過去にはあった
- 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表、現在はなし(△)
- 不正:盗用
- 不正論文数:1報の授業レポート
- 盗用ページ率:率は不明だが、5ページ
- 盗用文字率:
- 時期:キャリアの初期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:単位なし
- 日本人の弟子・友人:
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は100億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
- 1942年11月20日:米国で生まれる
- 1965年(22歳):デラウェア大学で学士号取得:歴史学と政治学
- 1965年(22歳):シラキュース大学法科大学院(Syracuse University College of Law)入学
- 1965年(23歳):盗用事件を起こす
- 1966年8月27日(23歳):結婚
- 1968年(25歳):シラキュース大学法科大学院(Syracuse University College of Law)で法務博士号(Juris Doctor)を取得
- 1972年(30歳):上院議員・当選
- 2009年1月20日-2017年1月20日(66-74歳):副大統領
- 2019年5月(76歳):大統領候補
●3.【動画】
【動画1】
ニュース動画:「ジョー・バイデン—盗用者(JOE BIDEN — PLAGIARIST) – YouTube」(英語)2分1秒。
blastforthが2008/09/20 に公開
●4.【日本語の解説】
シラキューズ大学のロースクールに進学。在学中は、1年目に法律評論誌の記事(全15ページ)から5ページにわたって論文を盗用したとして、学校から処分を受けたことがある。この事件についてバイデンは、「引用についての正確なルールを知らなかったことによる不注意で起こしてしまったものだ」として、悪意があったことを否定している。
●5.【不正発覚の経緯と内容】
1965年(23歳)、バイデンは、シラキュース大学法科大学院の1年生だった。科目「法律的手法(legal method)」の提出レポートで、以下の論文から5ページ、引用せずに流用、つまり、盗用をした。
- 「1965年5月のFordham Law Review」論文
「製造物責任訴訟の裁判管轄の根拠としての不法行為(Tortious Acts as a Basis for Jurisdiction in Products Liability Cases)」
発覚の経緯は不明だが、授業担当の教授が見つけたと思われる。
大学は、その科目「法律的手法(legal method)」の単位をとり消したが退学処分を科さなかった。バイデンは、翌年、単位を取得した。
1987年9月18日(44歳)、盗用から22年後、バイデンは、上記の盗用を公式に認め、シラキュース大学法科大学院に謝罪し、民主党の大統領候補指名・立候補を取りやめた。この時、成績表などを含めた65頁のファイルが公表されたらしい。現在、白楽はこのファイルをウェブ上で見つけられなかった。
盗用を公式に認めた時、報道陣に、「私は間違っていましたが、悪意で盗用したのではありません」、と述べている。
「引用についての正確なルールを知らなかったことによる不注意で起こしてしまったものだ」として、悪意があったことを否定している。(出典:ジョー・バイデン – Wikipedia)
なお、リュボミル・ジャッキ(Ljubomir Jacić)は、以下に示すように、2014年8月8日のブログでバイデンの盗用を「10大有名盗用」の6番目にあげている。(白楽の感想:盗用行為の悪質度はとても小さい。ただ、重要な政治家だからリストされた)
★スピーチの盗用
1987年、ジョー・バイデンは大統領キャンペーンのスピーチでも盗用をした。この盗用が非難され、1987年9月23日に大統領候補指名を降りた。政治家の政治活動での盗用は本ブログの主題ではないので、これ以上は述べない。
★セクハラ
2019年3月29日、バイデンのセクハラ疑惑が写真付きで報道された。政治家の政治活動でのセクハラも本ブログの主題ではないので、これ以上は述べない。
→ 2019年3月29日記事:BREAKING: Penn Professor Biden Accused of Sexual Misconduct | The UPenn Statesman
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
省略。
●7.【白楽の感想】
《1》若気の至り
性犯罪を含めた性的行動、そして、カンニングやネカト行為を若い時にする。この若気の至りに対して社会はどう対処するのが妥当なのだろうか?
- 悪い芽を初期に摘まないと大人になったら大きな事件を起こす → 厳罰にする。
- 若い時の一過性なので、大人になったらやめる → 寛大な処分をする。
ここ何年も、政治家や宗教家の10代・20代の昔の性犯罪まがいの行為が、30-60年後に糾弾されている。
バイデンも23歳、院生1年生の時に軽い盗用をした。処分は軽かったので、その後、法務博士号を取得し、弁護士になり、議員、副大統領になった。
厳しい処分を科していれば、副大統領に至るキャリアは積めなかっただろう。
一方、処分が甘かったために(というわけではなく、本人の資質だと思うが、厳罰しておけば修正できていた可能性もある)、その後、スピーチで盗用し、大統領候補を降りている。最近はセクハラ疑惑が勃発し、再度、大統領候補を降りる羽目になるのかもしれない。彼の倫理のゆるさが、自分のキャリアを傷つけ、米国民に多大な損害を与えている。
研究者も同じ人間なので多分、若気の至りがある。自慢じゃないが、白楽にも若気の至りがある。イヤイヤ、「中気(ちゅうげ)の至り」も「老気(ろうげ)の至りも」、至ってばかりである。
白楽の事はさておき、研究者の若気の至り、例えば学部生・院生のネカトや犯罪をどう処分すべきなのか? 犯罪の種類によると思うなら、どんな犯罪ならどんな処分が適切か? その理由は?
ネカトを研究していると、本人が更生できそうなのか、無理なのか、カネト者個人が置かれた状況とネカト行為を働いた状況がわかると、ある程度類推できる(気がする)。
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい。正直者が得する社会に!
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●8.【主要情報源】
① ウィキペディア日本語版:ジョー・バイデン – Wikipedia
② 1987年9月18日のディオンネ(E. J. Dionne Jr)記者らの「New York Times」記事:Biden Admits Plagiarism in School But Says It Was Not ‘Malevolent’ – The New York Times、(保存版)
③ 2017年5月13日のトム・マース(Tom Murse)記者の「Thought co」記事:Joe Biden Plagiarism: Why He Quit His 1988 Campaign、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●9.【コメント】
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