「白楽の感想」集:2017年1-4月

2022年1月12日掲載 

「白楽の研究者倫理」の2017年1~4月記事の「白楽の感想」部分を集めた。

=============

《1》80年前の論文の撤回

80年前の論文を撤回した。

アリエ・クェリド(Arie Querido)。
出典不明

内容が正しいとしても、80年前の論文の内容がそのまま現代に通用すると考える研究者はほとんどいない。

こんなに古い論文の検証や撤回が必要だろうか?

論文には時効を設けるのが現実的だ。例えば、30年以上前の論文は、研究の歴史を語る以外、現在の研究論文の先行研究として引用しない。勿論、現代に通用する特定の論文は除く。例えば、過去5年以内に5回以上引用されているのを特定の論文とする。

《2》面白半分に投稿

22歳の学生たちが面白半分にデタラメ論文を仕上げ、面白半分に投稿した。それが論文として出版された事件だが、何をどうするのが健全なのだろうか?

なんか、元気があって、独創性を試す想像力の勝負でオモシロイ、という気もする。

しかし、ネカト学者としては、動機はどうであれ、データねつ造論文である。他のネカト論文と同じように対処する。それ以上でも以下でもない。

一般論として、科学の歴史では、過去にトンデモないデータねつ造事件があったことに感心する。「全期間ランキング」に記載したビジネス・インサイダーの「歴史的に最も有名な10大科学インチキ」:2016年9月11日、には驚いてしまう。

イグノーベル賞ならぬイグねつ造賞を設けて、素晴らしい発想の科学的インチキを毎年、募集したらどうだろう?

アリエ・クェリド(Arie Querido)。出典不明

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》ネカト問題の主題からズレる

ネカト問題の主題からズレるが、米国の薬物乱用・中毒は深刻である。

米国は麻薬で国力を衰退させていると、感じる。

麻薬の解禁を日本でも主張する人がいるが、麻薬を解禁すれば、麻薬絡みの健康被害や犯罪は減るのだろうか?

酒は生理的にきついので死ぬほど飲み過ぎるのは難しいが、麻薬は簡単に服用し過ぎるので、麻薬を解禁すれば、乱用・中毒者は急増し、危険だろう。

日本では、酒、たばこ、セックスの一部は年齢で制限され、銃、麻薬、セックス(売春)、安楽死、臓器売買などは違法行為で、全く禁止されている。

違法行為を合法に、あるいは逆に現在の合法行為を違法に、大きく変えれば、社会は不安定になる。

しかし、時代は確実に変化している。時代の変化に法律や社会システムを適応させないと社会は衰退する。

日本はオキシコンチンでまだ大きな社会問題が起こっていないようだが(知らないだけで起こっている?)、いろいろな面で、時代の変化をうまく取り入れてほしい。

ネカト対策は現在の日本はすでに破綻している。時代の変化に適応した改革を取り入れないと、悲惨度が拡大していく。白楽は、ネカトを違法とする新しい法律を制定することが賢明だと思う。

《2》ヒドイ、暗澹

過去20年間で、米国人の700万人以上がオキシコンチン中毒になり、20万人以上が死亡した。

ヒドイ、暗澹。

パーデュー・ファーマ社の「虚偽的な販売」(ミスブランド、“misbranding”)を「ねつ造」としたが、しかし、この「ねつ造」だけが、700万人以上のオキシコンチン中毒、20万人以上の薬物死の直接的な原因とは思えない。

社会的規制で、中毒(死)を防御するシステムを作れないのだろうか?

《3》日本

「長時間型の放出製剤であるので、短時間作用の薬剤よりも致命性や乱用性、依存性が低いと主張し」を虚偽的な販売をした(「 」内の出典は【主要情報源】②)。

それで、2007年、パーデュー・ファーマ社は有罪となり、6億ドル(約600億円)の示談金を米国政府に支払った。

一方、日本のバルサルタン事件は、裁判所がデータ改ざんと認定したので、本記事のパーデュー・ファーマ社のオキシコンチン事件より悪質である。それでも、2017年、「論文は広告に当たらない」として、ノバルティスファーマ社を無罪とした。ビックリした。日本の裁判官は全くおかしい。

撤回監視も批判している。世界は、日本の裁判所が異常だと認識する。
→ 2017年5月17日記事:Could bogus scientific results be considered false advertising? – Retraction Watch at Retraction Watch

右の女性が「Los Angeles Times」紙のハリエット・ライアン(Harriet Ryan)記者。左はCNNの編集者マット・レイト(Matt Lait)。写真:Annie Z. Yu / Los Angeles Times。出典。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》詳細不明

アナ・キャラオは学部時代をポルトガルの大学で過ごしていると思われる。その後、ドイツの大学院に入学した。院生時代に、米国に出かけ、最初の論文が出版されている(第一著者ではない)。米国から戻って、半年後、ドイツの大学院で博士号を取得した。

ドイツの大学院も米国の研究室も研究倫理を躾けなかったようだ。

院生時代にフラフラと腰が据わらない印象を受けた。

不明点が多すぎる事件である。

ベルリン自由大学はアナ・キャラオの盗博を調査しているのか・していないのか? していないなら、なぜしないのか?

盗博と指摘されてから3年経過した2017年4月23日現在(39歳)、ベルリン自由大学は博士号をはく奪していない。なぜ?

アナ・キャラオが最後に論文を出版したのは2012年である。それから5年もたった。その間、2014年2月に盗博が発覚した。5年間も論文出版がないということは、もう、研究者を廃業したのだろう。

なお、女性の場合、結婚して姓を変えると、旧姓で検索しても論文がヒットしない。それで、白楽が追跡できないだけかもしれない。

この事件は、2009年に博士号取得と、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。従って、どうすると盗博を防止できるのか、見えてこない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》最初の疑問の答え

  • 【問】:スピーチでの盗用は、部分的? ほとんど全部? 今回だけ? 常習?
     【答】:ほとんど全部。しかし、スピーチで逐語盗用するケースは珍しい。
    常習か今回だけかの記載はない。そのことから、今回だけと思われる。
  • 【問】:そもそも、そんなに非難すべきこと? 論文での盗用と同じ? 違う?
    【答】:新聞記事、院生、大学教員は非難すべきと考えている。院生も大学教員もスピーチ盗用は倫理違反だという意識が強い。しかし、論文での盗用より処分は軽微なので、論文での盗用とは違うようだ。
  • 【問】:誰がどの規定で、どんな処分をしたの?
    【答】:院生が騒いだので、大学上層部が話し合い、学長の判断で、学部長の辞任と4か月の休職になった。大学の研究倫理規定にはスピーチでの盗用を禁止する規定はないと思われる。
    ベイカー医学部長は、結局、居心地悪くなり、翌年、他大学に移籍した。

《2》スピーチでの盗用

スピーチでの盗用を禁止する規則は必要だろうか?

2016年7月18日、ドナルド・トランプ氏のメラニア夫人の共和党全国大会での演説で、ミシェル・オバマ夫人のスピーチを盗用した件で大騒ぎになった。
→ ドナルド・トランプ氏のメラニア夫人、ミシェル・オバマ夫人のスピーチを盗用? 検証してみた保存版

上記のサイトの文章で盗用と指摘された部分を着色して以下に示す。

「両親は私に、子供の頃から、人生に望むものを手に入れるために一生懸命に働くことの尊さを教えてくれました。また、自分の言葉は自分に跳ね返ってくるのだから、言ったことは必ずやり遂げ、約束は守ること、そして人には敬意を持って接することを教え込まれたのです」

“From a young age, my parents impressed on me the values that you work hard for what you want in life; that your word is your bond and you do what you say and keep your promise; that you treat people with respect,

この場合、ほとんどの親は、同じようなことを子供に言うと思う。だから、内容は、オバマ夫人に独占権はない。メラニア夫人がその内容に賛同し、それを、同じ言葉で伝えた。メラニア夫人のスピーチでの盗用は、それほど批難されることだろうか?

メラニア夫人のスピーチでの盗用は、ベイカー医学部長のスピーチでの盗用と、本質的に異なる。ベイカー医学部長は他人に成りすましたのである。

《3》防ぐ方法

ベイカー医学部長はどうして、スピーチで盗用したのだろう?
そして、どうすると防げるのだろうか?

ベイカー医学部長は急に要請されて、準備や原稿なしでスピーチしたのでない。卒業式でスピーチすることを前々から依頼されていた。内容を準備し、計画的にスピーチしたのである。

従って、盗用はアクシデントや間違いではない。意図的である。そして、本人は不正の認識があっただろう。

予防策は、厳しく処罰することで、盗用してはいけないことを例示するしかないだろう。そういう意味では「学部長の辞任と4か月の休職」は本人の損害が小さく、処分は甘すぎだ。

なお、日本の大学に学長・学部長が数千人いますけど、彼(女)らのスピーチは大丈夫ですよね。エッ? 信用できない。それなら、どなたか、日本のスピーチでの盗用を調査していただけませんでしょうかねえ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》データは全くの作り物

ノエル・チアは、論文の根拠となる生データの提出を拒んだために、データねつ造とされた。この判断に何も問題はない。結果として、21論文も撤回するハメになった。

ヘルミー・フェイバーの指摘では、生データを出したマレーシア・PPC共同体は架空の組織で、仲介者とされるエスター・ヤップ(Esther Yap)も架空の人物らしい。

つまり、論文のデータは全くの作り物ということになる。なんだか、「社会心理学:ディーデリク・スターペル(Diederik Stapel)(オランダ)」 とよく似ている。

《2》ネカトに至る経過が知りたい

ノエル・チアは2006年(41歳?)にオーストラリアの西オーストラリア大学(University of Western Australia)で教育学博士(Ed.D、Doctor of Education)を取得した。

しかし、それ以前の経歴が不明である。生まれも育ちも記載がない。新聞記事にシンガポール人とあるので、シンガポールで生まれ育ったのだろう。

なお、教育学博士(Ed.D、Doctor of Education)は専門職学位で、研究博士号(PhD)ではない。ノエル・チアが、どこで、研究ネカトのしつけを習得したのか、逆に言えば、データねつ造のクセを習得したのか、白楽には把握できなかった。

ノエル・チアは、ネカトが発覚する前、シンガポールの子供教育では著名な研究者だった。米国の「教育療法士協会」(Association of Educational Therapists; AET)の公認「教育セラピスト」を取得している。シンガポールでは最初の人である。それに、2010年に1冊、2011年に2冊の書籍を出版している。いくつかの賞も受賞している。

これらのライセンス・賞・著書はネカト論文がベースだと思われる。論文撤回を受けて、調査し、ライセンスや賞をはく奪すべきだろう。著書も廃刊を検討すべきだ。

2017年4月17日現在、チアの撤回論文数は21報で、世界「撤回論文数」ランキング」の第18位である。

長い年月ネカトが発覚しないと、多くの論文や著書を通して、多くの研究者は大きな悪影響を受ける。また、教育・指導される学生・院生の数が多くなる。

事件に関して発表された文書では、ネカトの過程や動機が見えてこない。このような大きな事件は、関係者はもっと詳細に分析し、分析結果を公表し、今後2度と起こらない方策も提示して欲しい。

《3》学術誌の説明が秀逸

【主要情報源】⑤の「JAASEP」の2016年春夏号は、論文撤回の通知だけでなく、事件の過程を説明している。

この説明がスバラシイ。

多くの学術誌は見習ってほしい。

http://news.asiaone.com/news/singapore/research-malpractice-unis-have-safeguards-place

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》女優と博士号

2011年1月25日(26歳)、サラ・コッホは、デュッセルドルフ大学で哲学・博士号取得を取得した時、テレビ・ドラマで主演を演じていた。

女優業に博士号は必要ないと思うが、ドイツでは女優業にも有利だったのだろうか?

必要かどうかではなく、学問の研鑽を積みたかったのなら、サラ・コッホは、まっとうな博士論文を書くべきだった。盗用しなければ博士論文を完成できなかったのなら、博士論文を放棄すべきだったでしょう。

それにしても、博士号取得という余計なことに手を出して、本業の女優業がアウトになってしまった。

なお、この事件は、2011年に博士号取得と、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。従って、どうすると盗博を防止できるのか、見えてこない。出典:http://antoniatoni.beepworld.de/apps/photoalbum?aid=39329450

http://www.ok-magazin.de/sarah-sophie-koch-die-super-nanny-fuer-alleinerziehende-32229.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》権力と科学的真実

アブデルハルデン事件は、1909年発表の研究論文の真偽である。100年以上前の事件は、現代のネカト価値観とは大きく異なり、研究倫理を学ぶケーススタディとして不適当な印象である。

アブデルハルデンが提唱した「防御酵素理論(Abwehrfermente (“defensive enzymes”) theory)」は、現代の生命科学の常識から大きく逸脱してる。大間違いなのは誰の目から見ても明らかである。しかし、酵素や免疫の100年前の概念・知識は、現代ではもう異質に近いほど貧弱で間違いだらけである。

一方、防御酵素に関する研究で、アブデルハルデン自身は数百の論文を発表し、1914年までにドイツで500報余りが、世界では数千報の論文が発表された。つまり、当時、防御酵素に関する研究は生理化学の王道の研究テーマだったのだ。

アブデルハルデン事件から、ネカトを防御するシステムを学ぶことは難しい。

《2》権力と科学的真実

科学界の権力者がまともでない学説を主張する時、科学者は、どう対処できるのか? 往々にして、ズルい学者、間違った学説の提唱者が出世し、権力を握ってしまう。

アブデルハルデン事件では、彼の報復に恐れて、多くの科学者は口をつぐんだ。

1930年代にソビエト連邦で強大な権力を握ったルイセンコの「獲得形質が遺伝するという」学説も、反対した学者は逮捕され、獄死している。

権力を持つ科学者の学説に異を唱える王道はない。異を唱えれば、不当な扱いを受ける。それでも、真実を訴え続ける人は尊敬する。せめての慰みは、それが、研究者としてマットウであるという矜持であろう。

現代の日本では、アブデルハルデン事件やルイセンコ事件とは無縁だと思う人が多いかもしれないが、白楽は、そうは思わない。

ネカトを公益通報した通報者(不正な事実を、事実と言葉に発した人)が、依然として、“堂々と”迫害されている。現代日本のアブデルハルデン、現代日本のルイセンコが、大手を振って、のうのうと、大学・学術界の要職についている。

なんとか、ならないものか?

ドイツのマルティン・ルター大学近くのエミール・アブデルハルデン(Emil Abderhalden)通り。http://www.mz-web.de/mitteldeutschland/streit-um-die-emil-abderhalden-strasse-in-halle-der-schweizer-patient-3040946

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》仮名の著者

論文発表における著者名の仮名・実名問題を整理しよう。

ここでは、名前を以下のように3分類する。

  • 匿名:人物が特定できない。この場合は許容されない。
  • 仮名:人物が特定できるが、実名(戸籍上の名前)ではない。
  • 実名:戸籍上の名前

「2015年のAdvances in Space Research」論文の著者「Den Volokin」と「Lark ReLlez」は上記の分類で仮名である。

白楽は、自分がペンネームを使用していることもあるが、人物が特定できることが重要で、仮名は学術界で一般的に許容されていると考えている。

実際、研究論文の著者名が戸籍上の名前と異なるケースは珍しくない。特に結婚して戸籍名が変わった場合、著者名の統一性が欠けるので、旧姓のまま通す人もいる。旧姓と戸籍姓をハイフンでつなぐケースも多い。

研究論文では少ないかもしれないが、研究界ではニックネームも普通に使われている。本記事のネッド・ニコロフは、正式名は「Nedialko T. Nikolov」だが、ニックネームの「Ned Nikolov」が普通に使われている。

芸能界は芸名、文筆家はペンネーム、など仮名が普通の業界もいくつかある。インターネットの投稿では匿名が多いが、ハンドルネームなどの仮名(人物が特定できる)のケースも多い。

実名のまま有名になると、公的場所で困ることが予想される。

白楽が東大病院の会計受付で待っていた時、「〇〇〇子さん~ん。ご用意ができましたので、〇番受付までお越しください」と有名人が館内アナウンスされたことがある。〇〇〇子は誰もが知っている有名女優である。受付ロビーの椅子に座っていた数百人は、〇番受付に歩いていく派手な美女を一斉に見つめていた。

有名人は見られることに慣れているだろうが、偉い学者が、性病科で実名を呼ばれたくはないだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》わからないこと多し

フランク=ヴァルター・シュタインマイアー(Frank-Walter Steinmeier)の盗用率は低いが、ネカト学者の白楽の判断では、盗博である。

いままで、ドイツの盗博を何件も分析してきた。しかし、どうして盗博したのか、どこに原因があるのか、どうすれば今後の盗博を防げるのか、ドイツ人が分析している文章が見当たらない。ただ、英語の文章はなくても、ドイツ語ではあるのかもしれない。

《2》意図的な不正?

「研究善行基準委員会」の結論はおかしい。

「引用に関して技術的に弱い面があったが(”technical weaknesses” when it came to citations)、意図的な不正の証拠はない(no evidence of “fraudulent intent or academic misconduct” )」ので、シロとした。

この理由が通用するなら、大多数の盗用はシロである。

「引用に関して技術的に弱い」、つまり、盗用規範の知識・スキルがない博士論文でも合格とし、博士号を授与してしまうのはおかしい。

「引用に関して技術的に弱い」なら、博士論文でも学術論文でも基準以下の不良品で、不合格や不採択で、多くの場合、不正行為(盗用)と判定される。

また、「意図的な不正の証拠はない」のは理由になりません。

ネカトでクロと判定された事件の大半は「意図的な不正の証拠」はありません。本人が否定していれば、「意図的な不正の証拠」を示すことはほぼ不可能だからです。

意図的であろうがなかろうが、基準・規範に違反したら不正なんです。

《3》ドイツの精神がゆがむ

シュタインマイアーは、本日の18日前の2017年3月19日(61歳)、ドイツの大統領に就任した。

ドイツにおける大統領の機能は、ドイツ国民の精神的支柱だとある。

「ドイツ国民の精神的支柱」に盗博者を選ぶとは、ドイツはどうなっているんだろう? ドイツの精神はゆがまないのだろうか? もうゆがんでますって?

写真出典不明

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》大学は隠す

パブピアの指摘や「New York Times」の指摘で、画像のねつ造・改ざんは明白である。それなのに、カルロ・クローチェ(Carlo M. Croce)は「誠実な間違い」であると主張し、何も不正していないと強く否定している。

オハイオ州立大学のいままでのネカト調査は信頼できない。テリー・エルトン(Terry Elton)事件では、一度調査した時はシロと判定し、他からの批判を受け、再調査し、データねつ造・改ざんをしたと判定したのだ。
→ テリー・エルトン(Terry Elton)(米) | 研究倫理(ネカト)

オハイオ州立大学は、2014年の・デーヴィッド・サンダース・準教授の告発を受けてクローチェを調査をしたはずだが、調査結果を公表していない。研究公正局も公表していない。

だからこそ、「New York Times」、「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」などのメディアが批判的な記事を書いたのだろう。

メディアの批判的な記事を受けて、オハイオ州立大学は、2017年3月に再調査を始めたようだが、なんかヘンである。

オハイオ州立大学自身の研究公正への姿勢が大いに疑問である。

《2》絵画コレクター

基本的には、個人生活での趣味と研究上のネカトは関係ない。白楽もとやかく言いたくない。

しかし、クローチェのネカト疑惑を報じている「New York Times」紙がクローチェの趣味も報道している。

カルロ・クローチェ(Carlo M. Croce)は個人生活で絵画収集の趣味があり、16- 18世紀のイタリアの絵画を400点も収集しているのだ。費やした金額はわからないが、1枚100万円とすれば、4億円になる。
→ 2009年の記事:High Hopes for a New Kind of Gene | Page 4 | Science | Smithsonian

この金はどこから得ているのだろうか?

クローチェは若い時にイタリアから米国に移住した研究者である。生家が大富豪とは思いにくい。子供が2人いる。1979年生まれ(現・43 歳)だから35歳の時の子供と、1997年生まれ(現・25 歳)だから52歳の時の子供である。離婚・再婚したのだろう。

クローチェは自分の発見を特許にし、3つの会社の共同設立者になった。ここから莫大な収入を得ているのかもしれない。

とはいえ、400枚ものイタリア絵画を収集したお金は莫大な額だろう(1枚100万円として、4億円)。

そのために、金儲けに熱心だったと思われる。本文に記載しなかったが、たばこ業界(Council for Tobacco Research)の顧問になっていたこともある。企業の顧問自体を不正とは思わないが、がんの分子生物学者がたばこ業界の顧問をするのは、一般的には異様に思える。

たばこ業界は著名ながん研究者のクローチェを顧問にすることで、業界に都合のよい宣伝材料に利用したハズだ。クローチェは利用されるのを承知で多額の顧問料を貰っていたに違いない。

研究者が金儲けにいそしんでもいいが、節度と限度がある。たばこ業界への協力は、節度を越えていると思う。400枚ものイタリア絵画の収集は、限度を越えていると思う。クリーンな研究者とは思いにくい。

カルロ・クローチェ(Carlo Croce)の自宅の絵画コレクション。写真出典:Years of Ethics Charges, but Star Cancer Researcher Gets a Pass – The New York Times

《3》予防法

クローチェはネカト者と結論されていない。現在調査中の件でもクロと判定されないかもしれない。しかし、ここ20年ほど、クローチェは金銭的不正疑惑とネカト疑惑にまみれている。

クローチェの不正疑惑を予防する方法はどこにあったのだろうか?

クローチェは研究を出世や金儲けの道具と考えていたとしても、その考え自体は違法でも規範違反でもない。考えただけで学術界から追放することはできないしすべきではない。

しかし、クローチェは、実際に何度も、不正だと指摘されてきた。その際に、大学は的確にかつ厳正にクローチェを処分してこなかった。それで、クローチェはだんだん、ズル賢く生きるスベに磨きをかけてきたように思う。

初期の段階で罰することが重要だ。

初期での処罰を逸したことで、やがて、スター研究者になってしまった。でも、スター研究者だからと言って特別扱いしないことだ。イヤイヤ、特別甘くしないということであって、有名人・権力者・高額研究費受給者を特別厳しくチェックし、平均より厳しく処分するという意味では、特別扱いしてもいい。イヤすべきである。

《4》2017年に受賞予定

ここで述べたようにクローチェは20年以上の金銭的不正疑惑とネカト疑惑まみれである。そして、2017年、「New York Times」紙をはじめ、いくつかのメディアがデータ改ざんと盗用を指摘している。

2017年4月2日現在、オハイオ州立大学はデータ改ざんと盗用を調査中である。

それなのに、本日(2017年4月2日)、米国癌学会(AACR)は、2017年4月1-5日に開催の年会で、クローチェに第11回マーガレット・フォティ賞(11th Margaret Foti Award for Leadership and Extraordinary Achievements in Cancer Research)を授与したという。
→ 2017年3月29日の記事:AACR Margaret Foti Award for Leadership and Extraordinary Achievements in Cancer Research

「撤回監視(Retraction Watch)」が米国癌学会に、オハイオ州立大学がクローチェのデータ改ざんと盗用を調査中であることを知っているのかと問い合わせた。返事は、「知っています。「New York Times」記事も知っています。しかし、授賞の決定を変えるほど重要な知見が提示されておりません。それで、委員会での選考結果を変更しないで進めております」との返事だった。

白楽が思うに、疑惑の研究者に急いで賞を授与する意味はない。疑惑が晴れるのを待って、来年でも再来年でもいいだろう。逆にクロと判定されたら、マーガレット・フォティ賞及び米国癌学会に汚点の歴史が残る。

クローチェは、現状では、米国癌学会が賞を授与して学会員の鑑にするような人物とは思えない。

米国癌学会に、まともな見識を持つ会員・役員はいないのか?

写真出典不明

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》「研究者の事件」枠の外

ハーバード大学に関係した盗用事件、つまり、学術界の盗用らしいと思い調べ・記事にしたが、「研究者の事件」枠の少し外だった。

基本的に本ブログでは扱わないが、中学・高校生や一般社会人、そして、プロのライターである小説家や新聞記者の盗用は、日本を含め世界ではかなりある。

ブレア・ホーンスティン事件は、超優秀な高校生が高校(ムーアズタウン市教育委員会)を相手に裁判を起こし勝訴したので、米国では有名な事件である。その後、盗用が発覚し、人生ジェットコースターになった。

大学入試で提出する作文に盗用があったから、ハーバード大学は入学を取り消した。正しい。

《2》中学・高校からネカト教育

日本では、高校生の盗用文がコンテストで受賞したケースも2010年の記事になっている。中学・高校からネカト教育をすべきなのに、していないことも盗用がはびこる一因だろう。
→ 2010年12月3日の「j-cast」記事:全文表示 | 大学エッセイコンテストで高校生が盗作 「2ちゃんねる」カキコミとそっくり : J-CASTニュース。(保存版

中学・高校でカンニング禁止の規則を教育するのと同時に、ネカト禁止の教育をすべきである。

米国の高校生にネカト教育をしたほうが良いと思える論文が出ている。
→  2017年3月22日:Frederick Grinnell ら「High school science fair and research integrity

日本だけでなく世界中で、論文代行業者が、入学書類(作文)の執筆を請け負っている現実がある。

中学・高校からネカト教育をするとともに、少なくとも日本は速やかに、代行業者を取り締まる法律を作り、論文代行業を禁止すべきである。

ムーアズタウン高校のチアガール。ブレア・ホーンスティンは入っていないが、こういう女子高生を相手に教育するのは、なんていうか、大変だろうなあ。写真出典

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》処分なしの大甘

ナスルラ・ミーモンは博士号がはく奪され、15論文が撤回された。

それでも、デンマークのサザンデンマーク大学(University of Southern Denmark in Odense)はナスルラ・ミーモンを解雇していない、と匿名者が、2016 年11月3日にコメントしている。

ANONYMOUS

15 retractions and still a stable job at SDU’s The Maersk Mc-Kinney Moller Institute:
http://findresearcher.sdu.dk:8080/portal/en/person/memon

どうして解雇しなかったのだろう?

その後、結局、解雇したのだが、サザンデンマーク大学の広報官は次のように述べている。

大学が予算削減の一環としてこの分野を閉鎖し、多くの教職員を解雇しました。その中にナスルラ・ミーモンも含まれています。ただし、解雇は、大学の経済的問題であって、盗博とは全く関係ありません(Danish university revokes PhD of anti-terrorism researcher – Retraction Watch at Retraction Watch)。

どうして、「盗博とは全く関係ない」と主張(弁解)するのだろう?

ナスルラ・ミーモンはデンマーク科学不誠実委員会の調査では、デンマークの弁護士・フレミング・シュロール(Flemming Schroll Madsen、写真同)を雇っている。盗博では解雇しないという示談が結ばれたのだろうか?

《2》グローバリズム

ナスルラ・ミーモンはパキスタン出身である。白楽はパキスタンの事情を理解していない。

しかし、ネカトに、人種、宗教、文化・制度の違い、を持ち込むべきではない。

日本も、「日本は米国とは違う」という日本特殊論をネカトに持ち込むべきではない。

とはいえ、先進国の研究倫理ルール(洗練された高度なルール)を適用される発展途上国の研究者は、大変ですねえ。

http://meta-synthesis.iss.ac.cn/kss2009/presentation/session.jsp?sessionNO=g&sessionName=Session%20V

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》わからないこと多し

シュナイダー=シュトック事件は、エアランゲン大学が調査し、シュナイダー=シュトックにねつ造・改ざんがあったと発表したが、調査内容を公表していない。しかし、論文は4報撤回された。

パブピアの指摘によると、電気泳動バンドを切り貼りしたようだ。この切り貼りは、昔は、ねつ造・改ざんとされなかったが、現代では、データの信頼性を低下させ、ねつ造・改ざん扱いになっている。しかし、間違った結論を誘導する可能性が低いケースもある。

エアランゲン大学はシュナイダー=シュトックの論文にネカトがあったとしているが、2017年3月24日現在、シュナイダー=シュトックを解雇(辞職)していない。

マクデブルク大学・病理のアルバート・レスナー教授(Albert Roessner)が、シュナイダー=シュトックの大学院時代の指導教授のようで、共著論文が多いが(3撤回論文が共著)、レスナー教授の責任もハッキリしない。

わからないことが多く、「ネカトを防ぐ方法」はわかりません。調査が公正だったのかどうかもわかりません。
写真出典

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》医薬品の副作用

製薬企業が医薬品の副作用を適切に記載しない事件は、米国ではいくつも起こっている。

ただ、副作用を適切に示すことは相当むつかしいと思う。

白楽は、長いこと生命科学の実験研究をしてきたが、実験室での実験条件がそろった実験結果でも、再現性が得にくいことがある。もちろん、再現の精度をどこまで求めるかにもよる。

一般的に、インビトロの生化学実験ならまだいいが、培養細胞を用いた細胞生物学の実験では再現性と精度はおちる。ましてや生きたマウスを使う実験ならますますだし、医薬品の場合、摂取するのは人間である。副作用を適切に示すことは相当むつかしいと思う。

医薬品として世に出る前に、フェーズ1・2・3の3段階の臨床試験(治験)があるが、ボランティアの人間を対象に実験する。

フェーズ1・2・3で人間を対象にした医薬品の効果や副作用を「正しく」評価するのは至難だろう。

医薬品の効果や副作用は摂取する人の体質・状況にかなり依存する。大きくずれる可能性のある治験者は最初から除いても、9,999人に有効な化合物が1人には有害かもしれない。

医薬品の製品にもバラつきがあるだろう。1万の錠剤の中に、1錠だけ成分の偏りがあるかもしれない。

だから、医薬品の効果や副作用を「正しく」評価できない、と弁解するわけにはいかない。どんな状況でも、「正しく」評価しなければ、医薬品として承認すべきではないだろう。大変な作業だと思う。

ましてや、苦労を積み重ねて得たそのような貴重な副作用のデータを、「適切」に記載しないなんて、ナンタルことだ。

患者にとって効果は重要だが、副作用も同等に重要な知見である。

《2》日本の医薬記事の貧困

医薬品の事件に関する日本の優れた記事が少ない。どうしてんだろう?

医師免許を持ち、司法試験に合格し、製薬業界に精通している大学教授で、庶民の味方になるジャーナリストは日本に、・・・チョット条件を求めすぎましたね。資格は問いません。日本の医薬業界を大きく改善しようとする気持ちで十分です。是非、活躍してもらいたい。

【主要情報源】④のスティーヴン・ブリル(Steven Brill)の『米国で最も称賛されている法律違反者(”America’s Most Admired Law Breaker”)は、素晴らしい。

15章と長編であるが、この事件を丁寧に記述している。英語だが、無料で読めるのも素晴らしい。

論文、裁判記録、プレジャー少年と家族の写真・ビデオなど、事件を理解する上で重要な資料に無料でアクセスできる。

日本にも、こういうレベルの高い記事を日本語でアップする人が登場して欲しい。

なお、スティーヴン・ブリル(Steven Brill、写真)は弁護士資格を持つ著名なジャーナリストである。2015年に米国の製薬企業の内幕を書いた『米国の苦い薬(America’s Bitter Pill)』(邦訳なし。アマゾン)を出版している。

《3》副作用はある

医薬品の副作用の隠蔽は、健康被害がでる。死ぬ人もいる。人々の健康に貢献するために活動している製薬企業が、副作用を隠蔽し、人々に健康被害をもたらす。動機は明白で、儲けを優先したからである。

では、副作用を隠蔽しないで、正しく公表すればよいか?

そう単純ではない。

大多数の人に良いと思われる医療行為でも、副作用はある。

例えば、ワクチン接種でも副作用がある。

日本は1980年代までワクチン先進国とされていたが、副作用による訴訟が相次ぎ、厚労省とメーカーが開発・販売に消極的になり、ワクチン後進国とされるようになった。日本で接種が徹底されないためにカナダに修学旅行に行った学生が現地では根絶されている麻疹を感染させたためにホテルから外出禁止となり修学旅行打ち切りで帰国になることが報道された。小児用のヒブワクチンは先進国に大幅に遅れて認可されたが、当時アジアで認可されていないのは北朝鮮と日本だけであった。(ワクチン – Wikipedia

厚生労働省のインフルエンザ・ワクチン接種のレポートによると、2014年10月から2015年6月末までの1年間に、日本で5千万人がインフルエンザワクチンを接種したが、99人(0.0002%)が重篤になり、内11人が死亡した。

確率的に少なくても、重篤や死亡した被害者とその家族・知人にとっては、まったく理不尽である。

《4》研究者も企業と同等に処罰せよ

製薬企業が論文内容を改ざんし、裁判で1人当たり数億円の賠償金の支払いが命じられた。健康被害がでたからだ。

ところが、研究者が論文内容を改ざんし健康被害を出しても、刑事・民事裁判にならない。

おかしくないか?

→ 1‐5‐5.研究ネカトは警察が捜査せよ! | 研究倫理(ネカト)

写真出典 By Housed – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11172572

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》イラン人?

ビヤン・ディーア=ザライは、イランのテヘランで生まれ、11歳の時、難民としてイランからドイツにやってきた。

イラン人がドイツに帰化?

イラン人のまま、あるいは二重国籍で、ドイツ連邦議会議員ということはないと思う。

外国出身者がドイツ政界で活躍するには、博士号は有力な武器だ。それで、盗博に走ったのか?

https://web.archive.org/web/20160409184136/http://www.rhein-kreis-neuss.de/de/verwaltung-politik/pressemeldungen/2016/141-djir-sarai-technik-dezernent.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》監視カメラ

カレル・ベゾーシカの不正操作姿が監視カメラに捉えられたのが、動かぬ証拠、イヤ、動画なので、動いている証拠(?)、になった。

こうなると、ねつ造事件とはいえ、行為は犯罪(的)で、調査は犯罪捜査と同じレベルだ。

同じように監視カメラで証拠を上げられた別の事件もあります。
→ ヴィプル・ブリグ(Vipul Bhrigu)(米) | 研究倫理(ネカト)

カレル・ベゾーシカは、ねつ造データをどうしたかったのでしょう?

再現できないことは十分わかっていたでしょうに。バレないように操作することは、身近な実験室ではできても(見つかってしまったが)、世界中のあちこちの実験室ではできない。

「1994年のNature」論文が出版の2年後に、ボスだったテン・フェイジが撤回しようと打診してきた時、どうして応じなかったのか?

「1994年のNature」論文では、データねつ造していなかった? イヤイヤ、ねつ造していたのでしょう。

カレル・ベゾーシカは、病的なデータねつ造者?

《2》共著者の被害補償

以前も書いたが、こういう多数のネカト論文を書いた研究室で博士課程を過ごすと、院生は大きな被害を受ける。

東京大学・分子細胞生物学研究所の加藤茂明・教授の研究室は研究室ぐるみでデータ ねつ造をしていた。数人の院生(教員も)は巻き込まれ、朱に染まざろう得ない。その結果、研究者としての将来を失った。

カレル・ベゾーシカ(Karel Bezouška)の撤回論文が自分の博士論文だったら、院生に落ち度がなくても、博士号がはく奪される可能性がある。

博士号を取得してから5年もたてば、大学はトヤカクいわないかもしれないが、もし、1年後、あるいは、直前だったら、博士号ははく奪されるだろう?

共著者をどうするかという問題は、ほとんど誰も議論しないが、ルールを決めておくべきだろう。

http://technet.idnes.cz/spor-biochemiku-skoncil-smirem-d3c-/veda.aspx?c=A130413_082709_domaci_hv

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》全体

ドイツの研究ネカト・盗博問題は、それなりに調べたものの、ピンとこない。

ドイツの大学で1年ほど研究生活を送らないと肌にしみこんで来ないかもしれない。あるいは、ドイツ語の資料をもっとたくさん読み解かないと、腑に落ちてこないのかもしれない。

ピンとこない点がたくさんあるが、例を1つ挙げよう。

オンブズマン制度をたたえる言葉が目に付く。実は、米国の研究公正局と同等のシステムを作ることができない。しかし、「できない」と言いたくないので、オンブズマン制度の方が優れていると言い張っている気がする。オンブズマン制度がそんなにいいなら、日本を含め、他国がどうして取り入れないのだろう?

ヴロニプラーク・ウィキで盗博とされたのに、ドイツの大学が博士号をはく奪しないケースがたくさんある。例えば、ウルズラ・フォンデアライエンである。ドイツはネカトに対して厳正に対処すると言葉では言うが、いい加減な国だと、強く感じてしまう。厳正に対処しない日本のオマエに非難する資格があるかと問われると、スミマセンとしか言いようがないんですが。
→ 盗博VP152:ウルズラ・フォンデアライエン(Ursula G. von der Leyen)(ドイツ) | 研究倫理(ネカト)

《2》日本はドイツから何を学べるか? ①不正の範囲

ドイツ研究振興会(DFG)は、ネカトだけでなくクログレイも研究上の不正行為としている。

この定義は、日本の定義より、研究現場の実態に沿っていると感じる。つまり、日本より優れている。

ドイツ研究振興会(DFG)は、具体的には以下の行為と定義している。(英語出典:2015年、クリスティーネ・スピッツァ:PDF

① ねつ造・改ざん:misrepresentation (fabrication and falsification of data and research findings)
② 盗用:infringing upon others’ intellectual property
(plagiarism and exploitation of ideas of others)
③ 著者在順:claiming (co-)authorship of others’ work without their consent
④ 研究妨害: sabotaging research activities
⑤ 監督責任:co-responsibility for the misconduct of others (e.g.  gross neglect of supervisory responsibility)
⑥ 審査盗用:misconduct on the part of reviewers (unauthorized use of reviewed theories for own research)

日本では、ねつ造・改ざん・盗用だけである。

研究活動における不正行為 を次のように書いている(下線は白楽)。→ 文部科学省の2014年8月26日「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」p4  http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf

具体的には、得られたデータや結果の捏造(ね つ ぞ う)、改ざん、及び他者の研究成果等の盗用が、不正行為に該当する。
このほか、他の学術誌等に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する二重投稿、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップなどが不正行為として認識されるようになってきている。こうした行為は、研究の立案・計画・実施・成果の取りまとめの各過程においてなされる可能性がある。

つまり、ねつ造・改ざん・盗用だけであるが、二重投稿やオーサーシップも、研究上の不正行為の類ですと述べている。しかし、記述があいまいである。ドイツ研究振興会(DFG)のように、研究上の不正行為であると、はっきり定義すべきだろう。

《3》日本はドイツから何を学べるか? ②研究倫理官

文部科学省の2014年ガイドラインの11ページに「研究倫理教育責任者」を設置するよう述べている。

研究機関においては、不正行為に対応するための体制整備の一環として、一 定の権限を有する「研究倫理教育責任者」を部局単位で設置し、組織を挙げて、広く研究活動に関わる者を対象として研究倫理教育を定期的に行うことが求められる。

各大学は、「研究倫理教育責任者」に誰を任命しているか? 全大学のリストはあるか?

リストはない。各大学を適当に調べよう。

総合研究大学院大学(総研大)では、各部局の長とある。
秋田大学も各部局長である。

「研究倫理教育責任者」は米国の各大学で選任されている「研究倫理官」のような名称だが、各部局長が任命されていては、実質的機能はないに等しい。

ドイツでは、「研究倫理官」に相当するのがオンブズマンで、学長代理、学部長、管理職からは選任されない。

そして、ドイツの大学・研究機関におけるオンブズマンが492人いて、一覧が公表されている(Liste der Ombudspersonen an deutschen Hochschulen und Forschungseinrichtungen・・開いたページの最下段)。

こうすれば、オンブズマンは大学・研究機関の研究倫理向上に機能するでしょう。

日本は、各大学・研究機関にドイツと同等のオンブズマン(=米国の「研究倫理官」)を教授から選任すべきでしょう。名称は、研究倫理官がいいと思う。強い権限も与えましょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》盗博が多い

ドイツの盗博を調べていると、盗博が多いためか、盗博はありふれた行為に思えてくる。

そして、盗博が多いのは、ドイツ社会にとって深刻な問題だと思うが、ドイツ社会が盗博を深く分析し、厳格な盗博予防手段を講じているという文章が見つからない(白楽の探索能力が低いだけかも?)。

マルガリータ・マチオポロスの博士論文は、一度、1990年代に疑念がもたれたのに、証拠がつかめなかったそうだ。それはそれでお粗末だが、2011年7月12日(55歳)にヴロニプラーク・ウィキが動かぬ証拠を揃えたわけだ。

しかし、ドイツの盗博は、一般的に、ヴロニプラーク・ウィキが調査を始めた2011年まで、野放し状態だったのだろうか? そうだとすると、お粗末ですね。

 在ドイツ日本大使・高野紀元(たかの としゆき)(左)、マルガリータ・マチオポロス(Margarita Mathiopoulos)(右)。出典:http://www.mathiopoulos.com/en/tf_pictures_holbrooke.php

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》報道刑と透明性

ネカト疑惑を公表するかどうかは、報道刑と透明性の板挟みになる。

どの段階であろうとも、報道されれば、問題視された研究者の研究キャリアは大きく傷つき、研究に支障がでる。それでもって、調査の結果、シロと判定されても、誰も損害をカバーしてくれない。

一方、早期の報道で、その後の犠牲者を防止できる。調査の透明性が高くなる。知らないで研究室を選ぶ院生、共同研究、研究助成をしてしまう犠牲者を防げる。

今回のサンドラ・ダン事件では、ブリティッシュコロンビア大学は調査の結果、サンドラ・ダンの2005-2012年の12論文に16個のねつ造・改ざんを見つけた。しかし、調査結果を公表しなかった。サンドラ・ダンの名前も公表しなかった。

この場合、クロなのだから、明らかにマズイ。大学の秘匿行為を糾弾し、担当者を処分すべきレベルだ。

ただ、疑惑から決定までのどの段階で発表(報道)するのか? 一般的に、その判断が難しい時もある。

2017年1月19日の記事(【主要情報源】④)では、サンドラ・ダンは次のように批判している。

ブリティッシュコロンビア大学は、予備調査の未熟な段階で間違った結論を下しています。幾つかの実験が再現できないと暗示され、論文に意味ありげな間違い(ねつ造・改ざん)があると結論したのです。

ブリティッシュコロンビア大学の調査の結論は、間違っていたのだろうか?

なお、ブリティッシュコロンビア大学は、ネカト者はサンドラ・ダンですと、いまだに、発表していない。していないが、今となっては、既知となってしまった。

https://web.archive.org/web/20161009025751/http://phoenixmd.ca/

 http://vancouversun.com/news/local-news/scientist-criticized-by-ubc-probe-condemns-investigation-process

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》ランキング入り?

バスラー事件は、「全期間ランキング」に記載した「高等教育界を震撼させた著名人の10大盗用スキャンダル」:2013年1月10日の第7位にランクされた。

それで、白楽は、記事にしようと取り掛かった。しかし、資料を調べ記事にしてみると、単純な盗用である。

しかも、盗用を指摘され、本人は盗用を素直に認めている。アッパレと思うほど誠実である。盗用には政治的背景・社会的背景もない。メディアが大騒ぎしたわけでもない。

「高等教育界を震撼させた著名人の10大盗用スキャンダル」の第7位だが、「高等教育界を震撼させ」ていない。バスラーは助教授で「著名人」でもない。

どうして、「高等教育界を震撼させた著名人の10大盗用スキャンダル」の第7位にランクされたのだろうか?

《2》盗博

2012年、アマースト大学の助教授のテニュア審査で盗用が発覚したが、調べると、約10年前の博士論文でも、バスラーは盗用していた。

博士論文の審査で盗用を発見すべきだった。これが、1回目のチャンスだ。ここで盗用を見つけ、指導あるいは学術界から排除しておくべきだった。

アマースト大学はイェール大学の博士号を信用してバスラーを助教授に採用したに違いない。そういう意味では、イェール大学に根源的な責任がある。

2003年、アマースト大学はバスラーを助教授に採用した。この時、盗用を発見すべき2回目のチャンスだったかもしれない。しかし、イェール大学の博士号を信用するし、採用時での論文の精査は軽いから、盗用を発見できなくても仕方ない。

3回目のチャンスは、助教授に採用した後の約10年間である。いくつもの論文に盗用が見つかったのだから、その間の盗用をもっと早く検出すべきだった。それができなかった責任はアマースト大学にある。

明るい面を見ると、アマースト大学がテニュア審査で盗用を発見した功績は大きい。バスラーは常習的に盗用していたので、ここを通過してしまうと、準教授・正教授まで昇進し、もっと大きな盗用事件になっただろう。

《3》人気の教員

カーリーン・バスラー(Carleen Basler)はアマースト大学の学生・卒業生にとても人気があったようだ。ウェブでの「処分しないで」嘆願サイトに102人が書き込んでいる。
→ petition: Grant Professor Carleen Basler Tenure

盗用したのだから辞職は致し方ないが、アマースト大学は、学生・卒業生に人気のある教員を失うのは痛手だろう。

たくさんのネカト事件を見てきたが、多くの学生・卒業生に人気があるネカト者は珍しい。
写真出典不明

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》政治的?

フォンデアライエンの盗用ページ率の43.5%、盗用文字率の約15%は、決して低くない。

2016年3月9日(57歳)、発覚半年後、ハノーファー医科大学のクリストファー・バウム学長(Christopher Baum)は、「確かに盗博だが、だます意図はなかった。これは間違い(mistake)であって、ネカト(misconduct)ではない」と、フォンデアライエンの博士号をはく奪しなかった。

「盗博なのに、ネカトではない」なら、「盗博で、ネカトである」場合との違いを示してほしい。つまり、博士号がはく奪される場合の盗博とされない場合の盗博の違い、さらに言えば、罰する盗用基準(線引き)を具体的に示してほしい。

ハノーファー医科大学は、政界からの圧力を受けていないだろうが、感じてはいただろう。白楽は、政治的判断を優先したなと感じた。

ドイツ社会は盗博にうんざりし、大学も国民も、博士号をはく奪したくない気分なのかもしれない。しかし、ドイツ社会が盗博ウミを出しているこの機会に大掃除と新しい規範を確立しないと、将来に禍根が残るだろう。

http://www.emma.de/fmt-persons/leyen-ursula-gertrud-von-der

http://www.ursula-von-der-leyen.de/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》闇の中

パヴルリ事件は、イリノイ大学が調査し、マニ・パブルリにねつ造・改ざんがあったと発表したが、調査結果を公表していない。研究公正局は何も発表していない。しかし、論文は3報撤回されている。

何がどうねつ造・改ざんなのか、2017年2月25日現在、闇の中である。

今後、明らかになるのかもしれないが、不思議な事件だ。

University Scholars 2013
Nagamani (Mani) Pavulari
Director, Pediatric Mood Disorders Clinic
Department of Psychiatry

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》代筆(ゴーストライター)

ワイス社のホルモン補充療法の事件の本質は、臨床試験で効果・副作用を確認もしないのに、医薬品の効能を過大に記載し、リスクを記載しなかったことである。

論文代筆問題とは基本的には別問題である。

しかし、製薬会社がお金を出すのは、お金に見合うトクが得られるからである。トクなくしてお金を提供することはない。

だから、ワイス社はお金を出した代筆論文で、その分野の権威の教授の名前でホルモン補充療法の過大宣伝をしたのである。

NIH所長は、代筆は盗用だと明言している。米国では関与した教授を処分した大学はいまのところないが、再考すべきだろう。

一般的に、製薬会社からの研究助成は生命科学研究をゆがめている。米国では、金がらみの行為で、他にもいくつかの事件が発覚し、製薬会社が問題視され、製薬会社が処罰されてきた。

一方、日本は社会一般に医師崇拝の価値観があり、医学部教授に特権意識が強い。製薬企業と医学部教授の癒着は米国よりもヒドく、結局、ディオバン事件などが起こる。それでも、事件解明とシステム改善は不十分で、医学界・薬学界は揺るがない。

しかし、日本の医学界・薬学界は、自分の学問分野の健全な発展のためにも、問題を追及し浄化する努力をもっともっと強く推し進めるべきである。

実際は、自分たちでの修正は不可能なので、外部の人々に監査を受けるシステムを、積極的に導入した方がいい。

《2》代筆者を処分すべし

NIH所長は代筆を盗用だと明言している。読者を意図的にだましているので、白楽も、代筆はねつ造、あるいは、論文の盗用と同等レベルの不正だと思う。

刑事罰も検討すべきだ。

ワイス社のホルモン補充療法事件では、グロリア・バックマン教授は、いけないことと承知していて(多分)、トクだし、罰せられないからと代筆を受け入れている。

グロリア・バックマン教授は2017年2月22日現在、76報の論文を発表している。臨床医学教授としては、論文数が少ない。

驚いたことに、76報の内、23報が総説(Review)で、内15報が単著である。単著だと、論文執筆過程を秘匿しやすい。単著15報の多くは代筆論文だと想像してしまう。つまり、本記事で紹介した代筆行為は1報だけではなく、頻繁に行なっていたと推測される。

ワイス社は、自力で論文を書く能力が劣る臨床医学教授に目をつけて代筆を誘う戦略をとったのだろう。

ワイス社の事件では、論文内容に問題があり、乳がん発症で多数の裁判が発生した。

まず、代筆であろうがなかろうが、バックマン教授は自分が著者として発表した論文の内容に責任を持つべきだ。自分が著者である論文の内容に基づく治療で乳がんが発症したのだから、バックマン教授自身が被告としてい訴えられる可能性もあった。訴えられたら、バックマン教授は、なんて答えるのだろう? 「代筆論文なので、私は内容に責任を持てません」と答えるのだろうか?

代筆は倫理違反とされながら依然として禁止規則が不徹底で、処分された大学教授はおらず、現在の医学論文の1割程度は代筆と推定されている。

基本的に、健康被害の有無の如何を問わず、代筆行為を罰し、研究界から代筆を排除すべきである。ネカト同等の不正である。学術誌も大学も代筆を禁止する規則を作り明示すべきだ。代筆者を解雇すべきだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》若くて優秀な政治家が盗博で失脚

今まで、ヴロニプラーク・ウィキで指摘された盗博者を数人記事にした。

今回のヨルゴ・チャツィマルカキス(Georgios/Jorgo Chatzimarkakis)も、若くて優秀な政治家で、盗博が発覚し政界を去った。

2017年2月4日現在、ヴロニプラーク・ウィキには180人の盗博者がリストされている。政治家だけではないが、ドイツの各界で重要は職に就いている人が、盗博で失脚する。ドイツ社会は脆弱にならないだろうか?

http://g8fip1kplyr33r3krz5b97d1.wpengine.netdna-cdn.com/wp-content/uploads/2015/09/Alberto-Novi_Jorgo-Chatzimarkakis-714×472.jpg

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》盗用はウッカリ?

shervert-frazier1ハーバード大学医科大学院・教授・医師で、NIH・国立精神健康研究所・所長も務めた著名な精神医学者が4論文で盗用していたのだが、その動機は何だったのだろう?

まず、調査委員会の「この4報以外に盗用があるかどうか結論できなかった」という言及から、盗用論文は4論文だけではないのだろうか?

イヤイヤ、この言及は現在では陳腐に聞こえるが、1988年当時、コンピュータは現在ほど発達していない。盗用検出ソフトはない。多数の文献を対象に同じ文章があるかどうかを調査するのは、実質、不可能に近い。単に事実を述べただけで裏の意味はない? 多分、そうでしょう。

フレーザー教授の論文は、パブメドでは48論文しかヒットしないが、もっと多く出版したと思われる。しかし、多作ではない。

盗用論文で業績を増やしたことで、学術キャリアを上げ、つまり、ハーバード大学の教授になれたり、NIH・国立精神健康研究所の所長にもなれたのかどうか?

盗用論文は総説であって、オリジナルな研究結果の報告ではない。この盗用で、キャリアの上昇をしようとしたとは思えない。

他人の論文を自分のノートに記録し、それを論文に使用する時、ウッカリ、自分の文章のように記載してしまったのだろう。

いや、認識が甘い? ウッカリではなく、チャッカリ? いやシッカリ?

《2》調査委員が健全

ハーバード大学医科大学院・教授・医師で、NIH・国立精神健康研究所・所長も務めた著名な精神医学者でも、ハーバード大学・調査委員会は盗用と結論した。委員の人選も委員の判断も健全だ。

それに引き換え、日本の大学のネカト調査委員の人選と委員の判断は、不健全に思える場合が散見する。まっとうな調査をしていないように思える。ナニ、散見ではない? ソーカモ。

shervert1https://www.bostonglobe.com/metro/obituaries/2015/03/11/shervert-frazier-former-psychiatrist-chief-mclean-hospital-and-director-national-institute-mental-health/9IEVrIR43rsQov7cF2HuJO/story.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》78歳で初めての盗用?

http://www.biography.com/people/jane-goodall-9542363

ジェーン・グドールは超有名人である。世界中の人々から尊敬を集め、好意を向けられている。そういう人が、78歳で盗用をした。

正確には、出版前の著者で盗用が見つかり、5か月後、盗用部分を修正して、出版した。この場合、「盗用未遂」と言えるかもしれないが、「盗用したけど、修正した」、つまり。盗用はあったと考えよう。

盗用は78歳で初めてしたのだろうか?

とても信じられない。

以下、憶測だが、盗む行為は盗癖と言われるように、多くの場合、盗用も繰り返し行なわれている。

たくさんの盗用事件を調べてきたが、盗用が発覚したら、それまでのすべての論文や著書に盗用があるかどうか疑って調査するのが王道である。実際、盗用者の過去の論文や著書に多くの盗用が見つかってきている。なぜなら、それがその人の文章スタイルだからだ。

しかし、グドールの他の論文や著書に盗用があったかどうか、調べた話が出てこない。

グドールは超有名人である。そして高齢である。人々は、詮索しないことにしたのだろうか?

グドールは学士号なしで博士号を取得した。博士論文に盗用があった、ということはないのだろうか?

著書リストをみると、135冊もの著書がリストされている。50年間に135冊を執筆したとすると、毎年2.7冊のペースである。多くは科学啓蒙書だが、異常なほどの多作である。他の著書に盗用はないのだろうか?

と、思いもしたが、グドールの著書『Seeds of Hope』での盗用率は1%だった。つまり、99%はオリジナルな文章を書いている。1%なら、盗用する「必要」はなかったハズだ。自分で十分に書けるハズだからだ。

盗用率が50%などの人は、自分で書くのが苦しい人だ。そういう人は他の著作物でも盗用している可能性がある。盗用率が1%程度の人、グドールは、盗用を繰り返し行なっていた可能性はかなり低いだろう。
http://www.nbcnews.com/feature/maria-shriver/five-defining-moments-one-exceptional-life-jane-goodall-n70471

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》盗用の基準

シャーヴァンの盗用ページ率は28.9%とドイツ盗博の中では中程度である(10.77%の記載もある。その場合は、ドイツ盗博の中ではかなり低い)。

ざっと見たところ、逐語盗用もあるが、ロゲッティング、つまり、言葉を言い換えている部分も多い。

シャーヴァンが博士論文を書く状況を想像してみよう。

いろいろと先行論文を調べ「人格と良心」というタイトルで論文を書くことにした。先行論文には、先人が多くの問題点や概念を素晴らしい文章で記述している。

論文なので、自分が研究した新しい発見を書くのだが、このテーマで新しい発見を書くには、それまでの学問的背景を十分に説明する必要がある。それに、新しい発見はそれまで蓄積された知に比べればわずかである。

先行論文の内容が98%で新しい視点が2%だったら、先行論文の文章を「言い換えて」使うしかない。しかし、98%の先行論文を全部引用したら、引用だらけになってしまい、自分の文章とみなされない。

それで、自分なりに先行研究を要約・解説しながら自分の博士論文を完成しようと、シャーヴァンが博士論文の執筆を計画した。と白楽は想像した。

博士論文は1980年に提出していて、この時代、インターネットもパソコンもない。コピペは安易にできなかった。ゼロックスコピー、つまり、紙にコピーした先行論文を、自分の博士論文にタイプしていったハズだ。

さらに、「博士論文を提出した1980年は、他人の文章を逐語ではなく、言い換えて使うなら、盗用ではないとされていた」、とシャーヴァンは主張した。

当時のドイツの学術界で「言い換えて使うなら、盗用ではない」のが「普通だった」かどうか、白楽は知らない。

だから、シャーヴァンは、自分なりに先行研究を要約・解説しながら自分の博士論文を完成したのだろう。

しかし、もし、シャーヴァンの主張「当時、言い換えて使うなら、盗用ではない」が正しければ、後から決めたルールで、盗用だと断罪するのは、納得できない。

また、もし、シャーヴァンの主張が正しければ、1980年頃の博士論文の大半は、盗博と判定されるだろう。

当時のドイツの博士論文の執筆作法は、本当は、どうなっていたのだろう?

《2》防ぐ方法

「博士論文を提出した1980年は、他人の文章を逐語ではなく、言い換えて使うなら、盗用ではないとされていた」、が間違いだったとしたら、シャーヴァンの盗博を防ぐには、どうするとよかったのか?

事件報道では「どうするとよかったのか?」という議論がほとんどない。盗博が生じた状況の説明はほとんどない。

白楽もわかりませんが、もしわかっても、30年以上前の状況が現代に役だつのかどうか、これも、確信はない。

《3》処分が軽すぎ

25歳の時に盗博で不当に博士号を取得し、50歳で、ドイツ連邦議会・議員に当選し、教育研究大臣になった。発覚したのは博士号を取得した32年後である

ズルして博士号を取得した恩恵を32年間も受けてきた。人生のいい時の32年間に、不当に、たくさんの金・地位・名声・知己・名誉を受けてきた。

それが、教育研究大臣を辞職することで、償えるのだろうか?

他の誰かが受けるべき、たくさんの金・地位・名声・知己・名誉を、不当に、奪ってきている。

それをどうしてくれるんだ?

《4》時効

32年前の盗博が指摘され、大学が博士号をはく奪した。57歳の教育研究大臣が辞任した。

盗博に時効がない。

ネカトに時効があっていい気もする。

一般に、ネカトに時効を設けない国が多いが、設けている国もある。処分のあり方とともに、明確な基準が必要に思う。どうしたらいいのか、そのうち、しっかり考えなければ、と思っている。

出典:http://www.faz.net/aktuell/politik/inland/annette-schavan-honoris-causa-12100652.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》いい加減な研究方法

ポール・キャメロン(Paul Cameron)は、学術界からは研究方法がズサンで、自分に都合の良い結論を述べるいい加減な研究者と扱われた。

キャメロンはかつては大学教員だったが、大学教員を辞めてからインチキ学説を発表し始めた。非営利の家族研究所を設立し、そこの所長として発表した。

国からの助成金や大学に依存していない。キャメロンの学説に賛同する人々がキャメロンを支援した。同性愛反対の金持ちはたくさんいる。人気が高かったと思われる。キャメロンが講演している写真がたくさんある。

この場合、インチキ学説の発表をどう取り締まることができるのだろうか?

国・大学・学術誌は処分する術がない。学会は除名処分にしたが、それしか対抗策がない。しかし、一般的に、学会の除名処分は、本人にとってほとんど打撃にならない。

言論の自由が保障される現代社会では、賛同者がいる限りインチキ学説はドウドウと生き残れる。

写真出典 http://wyborcza.pl/51,76842,17550983.html?i=0

写真出典 http://bydgoszcz24.pl/artykul/paul-cameron-homoseksualizm-jest-choroba/zdjecia/1

http://wiadomosci.gazeta.pl/wiadomosci/1,114873,7869689,Paul_Cameron_w_Radiu_Maryja__30_proc__ksiezy_to_geje.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》師と弟子

ポッツ=カントの44論文の内、39論文はマイケル・フォスター教授と共著である。最初の論文は2007年出版で、ポッツ=カントは26歳(?)だった。2007年(26歳?)~2016年(35歳?)の10年間に44論文も書いている。

肺疾患研究グループのフォスター教授研究室のテクニシャンだったポッツ=カントは、2013年に32歳で横領罪に問われ、その後、データねつ造が発覚していく。

博士号もないのに20代後半から30代前半という若さで多数の論文を出版していること、第一著者は1つもないこと、ほとんどがフォスター教授が共著になっていたこと。これらを考えると、横領や杜撰な論文を許容していたフォスター教授が本当の責任者と考える方が妥当だろう。

フォスター教授が多額の研究費を得ていたことを考えると、ワルの黒幕はフォスター教授で、彼が本当の主犯ではないだろうか? ねつ造論文を隠蔽した大学上層部も協力した節がアリアリだ。

全貌がハッキリするのは、ジョセフ・トーマスの起こした裁判結果の公表、デューク大学の調査結果の発表、研究公正局の調査結果の発表、まで待たなければならない。

《2》測定値のねつ造・改ざん

一般的に、パブピアでねつ造・改ざんが指摘される。その指摘は、通常、電気泳動バンドなどの画像加工が多い。

ところが、ポッツ=カントのねつ造・改ざんデータは、棒グラフや折れ線グラフである。

棒グラフや折れ線グラフを見ても、どの部分がどのように不正だったのか、まるでわからない。つまり、測定値のねつ造・改ざんは、内部者にしかわからない。

一般的には、測定値のねつ造・改ざんでも、元データと照らし合わせれば、不正がわかる。

しかし、もし、元データに記帳する段階で数値を変える、あるいは、機器を操作して元データが不正にプリントされるように操作した場合、元データと照らし合わせても、改ざんはわからない。

元データそのものをねつ造した場合も、なかなか見つけにくい。

さらに、元データが正確だとしても、保存してなければ、データのねつ造・改ざんは証明できない。もちろん、測定値を記録していない(記録を保存していない)行為は倫理違反で、そのことでネカトと判定することもできるが、データのねつ造・改ざんそのものは証明できない。

《3》情報が少ない

デューク大学と研究公正局が調査中だからか、事件の情報はウェブ上に少ししかない。

ポッツ=カントの顔写真と経歴は見つからない。2005年にデューク大学がポッツ=カントを雇用したとあったが、この時、24歳(?)で、研究者ではなくテクニシャンである。

それなのに、2007年(26歳?)~2016年(35歳?)の10年間に44論文も書いている。どれも第一著者ではないということは、データを素早く・上手に出す人だったので共同研究の依頼が多かったのだろう。データをねつ造してるのだから、素早く・上手にデータを出せるのは当然かもしれないが。

マイケル・フォスター教授は、2017年2月4日現在すでに、デューク大学を退職し、顔写真と経歴は見つからない。

だから、ポッツ=カントが、どうして横領をしたのか? どうしてネカトをしたのか? どう防ぐのか? ネカト学として何を学べるのか? わかんないっす。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》シロとクロの線引き

ウェスタンオンタリオ大学の調査報告書には意図的な不正があったとの記述がない。図の間違いはあったが、些細な間違いで、論文の第一著者たちは「自分が間違えました」と述べている。

研究室のマネージャーや教授協議会会長が嘆願書を提出して「誠実な間違い」だと主張した。

この事件前、カーマズィン研究室の論文で撤回した論文はない。

これらの状況を総合的に判断すると、白楽は、カーマズィン教授がネカトをしたようには思えない。もちろん、実際に調査にしていないので、外野の印象である。

ところが、ウェスタンオンタリオ大学は、カーマズィン教授がねつ造・改ざんしたとした。

「誠実な間違い」と「ねつ造・改ざん」の線引きはどこにあるのだろう?

毎度のことながら、この線引きが政治的だという印象がある。

ポイントは「誠実な間違い」の「誠実な」だが、これを誰がどう証明するのだろう? なお、本来、研究者の温厚さや人望はネカトをしたかどうかの判定とは別次元である。

issue_130_morris_karmazyn_featured_image
http://www.internationalinnovation.com/build/wp-content/uploads/2014/07/Morris_Karmazyn_Intl_Innovation_130_Research_Media.pdf

《2》嘆願書はとても珍しい

karmazyn
出典不明

研究室員や教授協議会会長が嘆願書を出したことから、カーマズィン教授は、周囲の人にかなり強く慕われている人と思える。

大学が調査の結果、研究ネカトと判定した事実に、研究室員や教授協議会会長が異論を唱えるのはよほどのことだ。

ウェスタンオンタリオ大学はカーマズィン教授を解雇したい別の理由があったのだろうか?

カーマズィン教授は、2012年3月1日にⅠ種・国選研究教授が更新されている。2019年まで毎年20万カナダドル(約2千万円)の研究費を国から助成される。そういう教授を解雇したい理由ってなんだろう?

カーマズィン教授はインドで生まれ育った人である。インド人を排除したい人種差別が根底にあるのだろうか?

《3》不当な告発?

事件の発端は、元・ポスドクのボー・リー(Bo Li)が公益通報したことに始まる。しかし、不思議なことに、モリス・カーマズィン(Morris Karmazyn)研究室でポスドクを完了したボー・リー(Bo Li)は、カーマズィン研究室で発表した論文が1報もない。2年間もポスドクとして在籍し、論文が1報もないのは研究者として失格だ。

ボー・リーはカーマズィン研究室で上手く成果があがらなかった腹いせに針小棒大の告発をしたのではないかと思える。

そして、その後、ボー・リーは研究界から去り保険会社に勤めていると「撤回監視(Retraction Watch)」が記述していたが、LinkedIn (Bo Li | LinkedIn)では、研究関連職を求めている。この人物がいい加減なことは間違いなさそうだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》若くて優秀な政治家が盗博で失脚

今まで、ヴロニプラーク・ウィキで指摘された盗博者を数人記事にした。

先に記事にしたカール=テオドール・グッテンベルクは若くて優秀な政治家(男性)で、将来はドイツ首相と言われていた。
→ 盗博VP:カール=テオドール・グッテンベルク(Karl-Theodor Guttenberg)(ドイツ)

今回のシルヴァーナ・コッホ=メーリン(Silvana Koch-Mehrin)は、女性だが、グッテンベルクと同じように、若くて優秀な政治家という評判だった。しかし、盗博が発覚し政界を去った。

シルヴァーナ・コッホ=メーリンは33歳で欧州議会議員に当選、38歳で欧州議会・副議長に就任した。ということは、将来は欧州議会・議長は確実であり、それ以上の活躍をすると期待されていた。

若くて優秀な政治家が、政治ではなく、盗博で、失脚した。ドイツ政界・欧州政界に痛手だろう。しかし、不正を働いた者は国の要職をになえない、と国民は強く主張し、グッテンベルクもコッホ=メーリンも了承した。

ひるがえって、日本はどうだろう? 不正を働いた要人を国民・メディアがしっかり非難しない、任命者が解雇しない、本人は辞職しない。社会のありようが歪んでいる気がするのは白楽の迷いごとだろうか?

出典:https://www.dw.com/en/plagiarizing-politician-koch-mehrin-outrages-scientific-community/a-15189978

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》知られていない

マティアス・プロフロックの盗博は、ヴロニプラーク・ウィキの2番目だが、プロフロックが有名人ではないため、ドイツではあまり知られていない。

日本では全く記事になっていない。

《2》盗博者の共通項

ヴロニプラーク・ウィキで指摘されている盗博者は、ドイツのいろいろな大学で、男女を問わず、いろいろな分野に分布している。男女のどちらか、特定の大学、特定の分野に盗博が常態化していたのではない。

今回のプロフロックは、ヴェロニカ・サスやカール=テオドール・グッテンベルクと異なり、氏素性が立派というわけではない。
→ 盗博VP1:ヴェロニカ・サス(Veronica Saß)(ドイツ)
→ 盗博VP:カール=テオドール・グッテンベルク(Karl-Theodor Guttenberg)(ドイツ)

ということは、ドイツの盗博は、男女のどちらか、特定の大学、特定の分野、それに今回1例ではあるが、特定の氏素性で行われているわけではない、ということになる。

ドイツ全土に「常識」として蔓延しているのだろうか?

イヤイヤ、盗用しないで博士論文を提出する人も、もちろん、いる。ただ、その割合がわからない。

ドイツの博士論文の中で盗博は0.1%なのか、数割なのか、白楽は数値をつかんでいない。

もし数割なら、どいう人が盗博し、どいう人が盗博しないのだろう?

盗博者は、盗博の価値観をいつ、どこでどうやって、身につけるのだろう?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》指摘されても2回目の盗用

出典:https://webapp4.asu.edu/directory/person/91993

盗用を1回指摘されたら、次は慎重になるのが普通だ。

ウィタカーの場合、2011年に盗用疑惑が発生し、大学が調査に入った。結局、シロとなったが新聞報道もされた。

それなのに、2014年に再度、盗用疑惑を引き起こし、今度は、結局、クロとなった。

盗用を指摘されても、研究者は一般に再犯してしまうのか? ウィタカー事件はマレなケースなのか? どちらにしろ、どうすると抑止できたのだろうか?

《2》有利な条件で示談の不思議

盗用が明白なので、アリゾナ州立大学は単純に解雇すればいいと白楽は思うが、ウィタカーにとってかなり有利な条件で示談が成立した。

ウィタカーの弁護士が誰なのかわからないし、どうして示談になったのかもわからない。

フェニックス市・市会議員のSal DiCiccioはウィタカーを解雇するよう要求していた。
→ 2015年7月12日のカイラ・ホワイト(Kaila White)記者の「AZ Central」記事:DiCiccio wants city to fire ASU professor after plagiarism

《3》ネカトと人種差別

研究ネカト者の処分にしばしば影響するのが人種問題だ。ウィタカーは黒人で正教授になり、専門は歴史学で人種問題も扱う。

そういう教授のネカト判定に、人種問題が持ち込まれた。ウィタカー自身が人種差別だと主張した。

ネカトのシロ・クロ判定は本来、人種問題と無縁である。ところが、1回目の盗用疑惑では、グリーン教授(黒人女性)が指摘したように、大学は、人種問題とネカト問題の両方を天秤にかけ、人種問題の腫物を恐れ、ネカト判定でシロとするよう圧力をかけたと思われる。

それが裏目にでて、ウィタカーはつけあがり、数年後、2回目の盗用を犯した。

大学は、今度は、学外の黒人の歴史学教授(プリンストン大学のキース・ワイルー・歴史学教授)にも調査を依頼し、人種問題にも配慮した。ようやくクロと判定されたが、ウィタカーにかなり有利な条件で示談が成立した。

研究ネカト事件を調べると、ネカトを利用して人種差別をしたと思われる事例がたくさんある。米国で差別を受けるのは黒人だけでなく、中東イスラム出身者、ロシア系、アジア系だ。欧州でも、差別する人種は少し異なるが、ネカトを利用した人種差別がある。

今回は、それを逆手に取った。盗用したのに大学は人種差別で自分を処分しようとしていると、ウィタカーは上手に反撃した。

日本には、今のところネカト関係では表面化しないが、国民大衆だけでなく学術界に人種差別思想がドップリある。欧米白人崇拝、アジア人蔑視観である。

何年か前、アメリカの大学教授(日本人1世)が日本の大学の客員教授として数か月日本に滞在した。白楽の自宅に宿泊してもらい、いろいろ話し合ったことがある。その時、アメリカでは通用しない学術レベルの欧米白人研究者が日本の大学で教授として厚遇されていると、白楽に嘆いた。

学術界に人種差別思想があるうえ、外国人の大学教員、外国人の学生・院生、外国語の授業をすることを文部科学省が強く要求するから、日本の高等教育界は質が低下し、歪んでくる。

出典:http://historynewsnetwork.org/article/156161

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《1》特殊なケース?

ヴェロニカ・サスと同じように、名門の生まれ育ちで、裕福で、家系に有力政治家がいる。「同じように」と書いたが、グッテンベルクの出自はヴェロニカ・サスをはるかに超えている。

30歳で連邦議員に当選し、37歳で経済相としてドイツ史上最年少の閣僚になり、将来は首相になると予想されていた。

ヴェロニカ・サスの記事でも書いたが、そういう人だと、「論文の盗用はイケマセン」と言っても、盗用防止に有効な気がしない。どうするとよいのか?

ヴェロニカ・サスの記事で書いたので、参照してください。
→ 盗博VP1:ヴェロニカ・サス(Veronica Saß)(ドイツ)

https://de.wikipedia.org/wiki/Karl-Theodor_zu_Guttenberg

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーー

日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。