経済学:チェン=ルン・スー(許建隆、Chien-Lung Hsu)(台湾)

2022年6月20日掲載

ワンポイント:スーは徳明財経科技大学(Takming University of Science and Technology)・準教授だった。2016年12月(52歳)、同じ大学のネカトハンターであるジェンチャン・リュー助教授(劉任昌、Jen-Chang Liu)に「2015年8月のScientometrics」論文が盗用と指摘され、論文は撤回、助教授に降格された。ところが、告発者のリュー助教授がカフェで殴打され、その動画がアップされた。スーが暴行を依頼したと思われる。暴行や賄賂もあった台湾の盗用事件だが、日本では全く報道されなかった。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

チェン=ルン・スー(許建隆、Chien-Lung Hsu、Jianlong Xu、ORCID iD:?、写真出典)は、徳明財経科技大学(とくめいざいけいかぎ だいがく、德明財經科技大學、Takming University of Science and Technology)・準教授で、専門は経済学だった。

この事件、最初にお断りするが、白楽、誤解しているかもしれない。情報は多いのだが中国語だし、台湾の事情がわからない上、賄賂や暴行事件もあり、複雑で、イマイチ、把握しにくかった。

2016年12月(52歳)、チェン=ルン・スーは、同じ大学のネカトハンターであるジェンチャン・リュー助教授(劉任昌、Jen-Chang Liu)に「2015年8月のScientometrics」論文が盗用と指摘され、論文は撤回、助教授に降格された。

2018年4月12日、チェン=ルン・スーの盗用騒動が続いている最中、告発者のリュー助教授(劉任昌)が大学前のカフェで殴打された。殴打の動画がユーチューブにアップされた。

徳明財経科技大学(とくめいざいけいかぎ だいがく、德明財經科技大學、Takming University of Science and Technology)の動画(日本語)。出典:https://www.youtube.com/watch?v=UyFG-kluF9o&t=89s

  • 国:台湾
  • 成長国:台湾
  • 研究博士号(PhD)取得:台北大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1964年x月xx日生まれ。仮に1964年1月1日生まれとした
  • 現在の年齢:58 歳
  • 分野:経済学
  • 不正論文発表:2015年(51歳)
  • 発覚年:2016年(52歳)
  • 発覚時地位:徳明財経科技大学・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は同じ徳明財経科技大学のジェンチャン・リュー助教授(劉任昌、Jen-Chang Liu)で、大学、学術誌、文部省、科学技術省に通報
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」、台湾のメディアである「鏡週刊」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②徳明財経科技大学・調査委員会。③文部省、科学技術省
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:盗用、ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:2報撤回
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に大きく降格(▽)
  • 処分:準教授から助教授へ降格処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:【肖像】マスク購入システムの立役者 関貿網路の許建隆董事長 – NNA ASIA・台湾・IT・通信、(保存版

  • 生年月日:1964年x月xx日生まれ。仮に1964年1月1日生まれとした
  • xxxx年(xx歳):xx大学(xx)で学士号取得
  • 2011年(47歳):台北大学(National Taipei University)で研究博士号(PhD)を取得:企業管理学
  • 20xx年(xx歳):徳明財経科技大学(Takming University of Science and Technology)・助教授。後に準教授
  • 2015年8月(51歳):後で問題視される「2015年8月のScientometrics」論文を出版
  • 2016年(52歳):関貿網路社(關貿網路公司)の会長。2017年8月という記述もある。この時、準教授に昇格した
  • 2016年12月(52歳):盗用が発覚。その後、助教授へ降格処分
  • 20xx年(xx歳):中国文化大学・教授
  • 2022年6月19日(58歳)現在:中国文化大学・教授:徐建龍、(保存版

●3.【動画】

【動画1】
告発者のリュー助教授がカフェで殴打される動画:「鏡週刊 新聞內幕》暴走教授四處檢舉遭毆 惡咒關貿董事長被告 – YouTube」(中国語)2分23秒。
鏡週刊(チャンネル登録者数 38.8万人)が2018/05/15 に公開

●4.【日本語の解説】

★2002年4月30日:NNA(聞き手=菅原真央):【肖像】マスク購入システムの立役者 関貿網路の許建隆董事長

事件の記事ではない

出典 → ココ、(保存版) 

世界的に注目される台湾の新型コロナウイルス感染症対策の中でも、特に独自の進化を続けているのがマスクの実名制購入制度だ。3月12日からはマスクのオンライン予約購入システム「eMask 口罩預購系統」の運用を開始し、薬局の長蛇の列は消えつつある。わずか5日で同システムを構築した関貿網路(トレード・バン・インフォメーションサービス)の許建隆董事長が、「国家級」プロジェクトにかける思いを語った。

<プロフィル>
許建隆氏
1964年生まれ。2011年に台北大学で企業管理学の博士号を取得。徳明財経科技大学での教職を経て、16年に関貿網路の董事長に就任した。

関貿網路
台北市南港区に本拠を置く。2000年にインターネット関連企業として初めて店頭市場に当たる上櫃(グレタイ)市場に公開し、11年末に上場。10年には中国上海市に全額出資子会社、貿鴻信息技術(上海)を設立した。資本金は20億台湾元(約71億円)。

続きは、原典をお読みください。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★企業と学術界の二股

チェン=ルン・スー(許建隆、Chien-Lung Hsu)は2011年に台北大学で企業管理学の博士号を取得したが、その時、47歳だった。

どの大学・学部を卒業し、その後、どのような人生を送ってきたのか、情報がなく、白楽は把握できなかった。

2016年(52歳)、関貿網路社(関馬ネットワーク社、關貿網路公司、Guanmao Network Company)の会長になっている(写真出典)。

つまり、チェン=ルン・スーは企業と学術界の二股人生を送っている。大学・学部を卒業後、ずっと学術界でキャリアを積んだ人ではない。

本件の事件後に中国文化大学・教授に就任し、2022年6月19日(58歳)現在、同・教授職を維持している:徐建龍保存版)。

★台湾のネカトハンター

台湾の徳明財経科技大学(とくめいざいけいかぎ、Takming University of Science and Technology)のジェンチャン・リュー助教授(劉任昌、Jen-Chang Liu、写真出典)は、台湾のネカトハンターである。

本事件の少し後だが、リュー助教授は「2017年7月のSSRN」論文を出版した。その論文で、他大学の教員であるカルヴィン・ウェン(Calvin S. Weng)らの「2010年11月のInternational Journal of Services Technology and Management」論文(書誌情報は以下)はデタラメだと批判している。 → The Fabrication of “The Isomorphic Development of Insurance—The Perspective of Social Network Analysis” by Jen-Chang Liu, Mark Yeats :: SSRN

  • The Isomorphic Development of Insurance—The Perspective of Social Network Analysis
    November 2010
    International Journal of Services Technology and Management 13(1):85-104
    DOI:10.1504/IJSTM.2010.029672

★発覚の経緯

2016年12月(52歳)、ネカトハンターのリュー助教授(劉任昌)は、同じ大学のチェン=ルン・スー準教授(許建隆、Chien-Lung Hsu)が第一著者の「2015年8月のScientometrics」論文は盗用だと、新聞記事で批判した。 → 劉任昌觀點:SSCI是學術品質的保證?還是學術舞弊的掩護?-風傳媒

なお、2016年(52歳)にチェン=ルン・スーは関貿網路社(關貿網路公司)の会長に就任したが、会長職の条件として、大学・準教授の資格が必要だった。つまり、この時、準教授に昇進したばかりだった。

「2015年8月のScientometrics」論文の書誌情報は以下で、白楽が論文タイトルを日本語に訳すと「金融危機研究:書誌分析」である。

2017年5月(53歳)、リュー助教授(劉任昌)は、スーの論文盗用について「論文では他人の写真をそのまま使用しており、盗用の結論は出ている」と、盗用を徳明財経科技大学、編集者、文部省(Taiwanese Ministry of Education)、科学技術省に通報した。

学術誌「Scientometrics」は直ぐにネカト調査を始めた。アンドラス・シューベルト編集員(András Schubert、写真出典)は「撤回監視(Retraction Watch)」に次のように答えている。

特別編集委員会を設け調査しました。リュー助教授(劉任昌)とスー博士およびチェン博士から提供をうけたすべての文書を調査しました。

調査は2017年7月13日に終了しました。

結果を調査報告書にまとめ、当事者に送信しました。

調査報告書の結論は、以下のようです。

「「借りた」資料を自分の結果として明示的に示すという深刻な盗用ではありませんが、盗用はありました。データねつ造は、少しデリケートです。論文データは一貫性がなく再現不能ですが、意図的にデータを操作したという明確な証拠はありませんでした。これらは不注意なデータ管理の結果だと思われます。また、論旨と矛盾するデータをそのままコピぺしたという盗用の副作用という可能性もあります。

この論文には、著者が英語を十分に理解できず、基礎となる資料を批判的かつ建設的に使用できなかったという問題もあります。全体として、非常に非倫理的で誤った情報を与える要素が多数含まれているため、論文撤回を強く勧告します」。

両当事者は、報告書とその結論を理解し、認めました。

調査報告書の提案に基づいて、ヴォルフガング・グランゼル編集長(Wolfgang Glänzel)は論文撤回の作業を進めた」。

2017年8月3日、論文は撤回された。 → 撤回公告:Retraction Note to: The financial crisis research: a bibliometric analysis | SpringerLink

★賄賂事件

学術誌がネカト調査をしている間、告発者のリュー助教授は、文部省(Taiwanese Ministry of Education)への告発を引き下げる代わりに、第一著者であるチェン=ルン・スーから、3万台湾ドル(約13万円)の商品券を受け取った。

リュー助教授は、「撤回監視(Retraction Watch)」に次のように述べている。

  • チェン=ルン・スーが私にお金を受け取るよう主張しました。
  • 私は論文が撤回されると確信していたので、私に対する彼の敵意を和らげるためにそれを受け取りました。
  • 商品券は学生に配布しました。
  • 私の親しい同僚は、それが賄賂または恐喝とされる可能性があると述べました。

リュー助教授は、この商品券を学生に配ったとのことだが、商品券はあとで賄賂とされた。

2017年6月20日、チェン=ルン・スーは、リュー助教授(劉任昌)に、5項目の声明に署名するよう強く求めた。なお、この声明には法的効力はない。

リュー助教授(劉任昌)は3万台湾ドル(約13万円)の商品券を受け取った手前、チェン=ルン・スーの申し出を無下に断ることはしなかった。しかし、「研究者倫理に違反していない」という項目が削除されない限り、署名はできないと拒否した。

公表されている声明書はオリジナル版(中国語)、改定版(中国語)、英語版があって、その差が、白楽にはよくわからなかった。

以下は、オリジナル版(中国語)。

 

以下は、改定版(中国語)。

英語版は省略する。

なお、贈賄側のチェン=ルン・スーはリュー助教授(劉任昌)への贈賄を否定している。「撤回監視(Retraction Watch)」に次のように答えている。

私たちは、リュー助教授(劉任昌)に何も贈り物をしていません。 彼がなぜ贈り物をもらったと主張したのかはわかりません。 しかし、私たちが贈り物をしていないことを、どのように証明できますか?

私たちが今やりたいのは、人と争うことなしに、論文を改訂することだけです。ご理解していただければ幸いです。

★文部省と徳明財経科技大学

2017年7月25日、文部省と徳明財経科技大学は、チェン=ルン・スー(許建隆)の「2015年8月のScientometrics」論文には改ざんや盗用の疑いが指摘されたが、最終的に、「研究倫理の違反はない」と結論した。(以下の書類出典。文部省公式文書)

2019年(?)、盗用発覚の2年後、科学技術省はチェン=ルン・スーを盗用と結論した。徳明財経科技大学はチェン=ルン・スーを準教授から助教授に降格し、1年間の停職処分を科した。処分した年月日は「2018年2月1日」という記載もある。

なお、チェン=ルン・スーは、科学技術省の盗用との判定を拒否し、異議を唱えている。

★殴打事件

2018年4月12日、チェン=ルン・スーの盗用騒動の最中、告発者のリュー助教授(劉任昌)が大学前のカフェで殴打された。

以下、その殴打場面の画像。次いで、アップされている動画。

リュー助教授を殴打した犯人は捕まっていないが、チェン=ルン・スーが依頼したと思われる。もちろん、チェン=ルン・スーは否定している。

★脅迫事件

リュー助教授は、殴打された後、チェン=ルン・スーに、「また、私を殴る計画を立てています?」と尋たり、 「二人の息子が自殺し、家族全員が自殺しますよ」などの脅迫文を送った。

台北地方裁判所は、告発者のリュー助教授が、チェン=ルン・スーを罵倒し、脅迫してカネを得ようとしたとして、名誉毀損と脅迫の罪で、100日間(「9か月」の報道もあり)の懲役刑を科した。また、10万台湾ドル(約43万円)の罰金を言い渡した。

懲役刑を言い渡されたリュー助教授は、もちろん、自分が不当な扱いを受けたと主張している。

【ネカトの具体例】

★「2015年8月のScientometrics」論文

「2015年8月のScientometrics」論文の書誌情報を以下に示す。2017年8月3日、撤回された。 → 撤回公告:Retraction Note to: The financial crisis research: a bibliometric analysis | SpringerLink

撤回公告によると、「2015年8月のScientometrics」論文は以下の論文からの盗用があった。

  • Ho, Scientometrics (2014) 98:137–155
  • Bhanot et al., Journal of Banking & Finance (2014) 38:51–63
  • Mink & de Haan, International Money and Finance (2013) 34:102–113
  • Wang & Yao, Applied Economics (2014) 46:14, 1665–1676
  • Tsai & Yang (Journal of Medical Library Association (2005) 93(4):450–458

また、盗用だけでなく、データのねつ造・改ざんもあり、結果として図や結果の再現性がなかった。

論文は閲覧有料なので、ネカト図表をココに示せない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

研究分野が生命科学ではないので省略。

★撤回監視データベース

2022年6月19日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでチェン=ルン・スー(許建隆、Chien-Lung Hsu)を「Chien-Lung Hsu」で検索すると、本記事で問題にした論文とは異なる以下の「2016年10月のScientometrics」論文が懸念表明、そして2020年12月17日に撤回されていた。

  • Bibliometric study of Electronic Commerce Research in Information Systems & MIS Journals
    Lin, A.J., Hsu, CL. & Chiang, CH.
    Scientometrics 109, 1455–1476 (2016).
    https://doi.org/10.1007/s11192-016-2142-8

撤回理由は盗用とデータねつ造・改ざんである。

「2015年8月のScientometrics」論文は撤回されているが、このデータベースに記載されていない。

★パブピア(PubPeer)

2022年6月19日現在、「パブピア(PubPeer)」では、チェン=ルン・スー(許建隆、Chien-Lung Hsu)の論文のコメントを「authors: “Chien-Lung Hsu”」で検索すると、本記事で問題にした「2016年10月のScientometrics」論文・1論文にコメントがあった。

「authors: “Chien-Lung Hsu Dr.”」と「authors: “Chien-Lung Hsu Dr”」ではヒットしなかった。

●7.【白楽の感想】

《1》殴打や賄賂 

チェン=ルン・スー事件は盗用とデータねつ造・改ざん事件だが、告発したジェンチャン・リュー助教授(劉任昌、Jen-Chang Liu)がカフェで殴打されている。約10万円もらったという賄賂疑惑もある。

出典:https://www.mirrormedia.mg/story/20180516soc004/

ネカト事件でネカト者が逆恨みして暴力を振るった有名な事件は、米国で発砲事件を起こしたヘンジュン・チャオである。しかし、事件としては多くない。珍しい。 → 「ネカト」と犯罪「殺人未遂」:ヘンジュン・チャオ、晁恒軍(Hengjung Chao)(米) | 白楽の研究者倫理

ただ、コクハラや脅迫、そして裁判で訴えるなど暴力以外の報復はかなり多く報告されている。

報告されないまでも、何らかの方法でネカト者が告発者を報復したネカト事件は多い。

告発活動をほとんどしていない白楽でも、脅迫や裁判で訴えるなど通知を何度も受けている。

実は、ネカト事件では賄賂が絡むケースがソコソコあると思っていた。カネで事件のもみ消しをはかるのは多くの人が行なう手段だ。しかし、賄賂は表面化しにくい。白楽ブログで記事にしたのは、今回の事件が初めてだと思う。

世界中のネカト事件で、暴力、コクハラ、脅迫、裁判で訴える、見返り、利益強要など、表に出にくいいろいろな行為はかなりの件数あると思う。でも、どうすると実態を知ることができるのか?

《2》「やり過ぎる」必要がある

ジェンチャン・リュー助教授(劉任昌、Jen-Chang Liu)は台湾のネカトハンターである。

今回は、チェン=ルン・スー(許建隆、Chien-Lung Hsu)の盗用をハントして糾弾した。

リュー助教授は、基本的に、「ネカト者を追求・糾弾する」行為を誇りに思い、学術界への貢献の1つと見なしている。今回の事件以前に、東華大学の別の教授を繰り返し批判していた。

それは、OKである。善行である。

ただ、リュー助教授は東華大学の教授の糾弾で、教授に1000万台湾ドル(約4300万円)の補償を求めた。

1件のネカト事件で、国民の損害額は平均すると1000万台湾ドル(約4300万円)を超えると思うが、金銭的補償を求めた事で、リュー助教授はネカト者を恐喝したと批判された。

金銭的補償を求める行為は微妙である。ネカトハンティングには膨大な時間が掛かるので、その対価を金銭として求めるのは正論という気もするが、ネカトハンター個人が金銭を求めのは、現状では社会が許容しないだろう。

大学や研究助成機関が仕事としてネカト調査を行なえば、1件、数千万円はかかる。 → 7-17.研究ネカトのコスト:1件5千万円 | 白楽の研究者倫理

ネカトハントは個人が善意で行なっているボランティアだが、「ネカト者を追求・糾弾する」行動の基準はない。基準がないので個人の裁量で行なっているけれど、行動によっては、やり過ぎる(白楽の基準で)場合がある。

ただ、ここ数十年のネカト事件では、大学・学術界・出版社・国などの体制側はネカト者(不正者)を不当に支援する場合が多かった。つまり、研究者や市井の国民が普通にネカトを指摘し、告発・抗議しても、多くの場合、無視・軽視される。だから、ネカトハンターがやり過ぎる程強く行動しないと、ネカト行為が是正されないという現実がある。

誤解を恐れずにハッキリ言うと、「やり過ぎる」ほど「ネカト者を追求・糾弾」しなければならない。ただ、重要なターゲットは「ネカト者」個人ではなく、研究不正を許している日本の「規則」と「文化」である。つまり、その「規則」と「文化」を構築・維持している人々である

日本の事件だが、長崎大学の盗用事件、名古屋大学の盗用事件では、明白な盗用なのに大学は大きく曲解し、隠蔽をし、横暴で強権的である。
 → 5C 長崎大学の盗用事件:②異常な調査と判定 | 白楽の研究者倫理
 → 5C 名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件:③ 疑惑の証明 | 白楽の研究者倫理

研究不正をただす姿勢が両大学にはないと感じた。研究不正を許している日本の大学・学術界・政府を「やり過ぎる」ほど追求・糾弾しないと、日本の研究不正大国は改善されない。と、白楽は思った(思っている)。

《3》ネカト追求・糾弾

チェン=ルン・スー事件では追求したリュー助教授(劉任昌)は正義感が強く、盗用告発を正義と考えて行動している。

今回の記事を書いていて、白楽は、自分の活動を「正義」と思っているか? と、自問してみた。

白楽は、自分の行動を「正義」と意識したことは、ほとんどない。

実際は、「ソコソコ正義」なんだろうが、普段思うことは、「日本が良くなってもらいたい」という思いである。

外国のネカト事情・事件を調べて、日本に伝えるから「日本が良くなってもらいたい」。

日本の研究者が誤解している点・間違っている点を指摘するから「日本が良くなってもらいたい」。

そう思って、1999年頃から研究してきた。

しかし、研究者倫理の研究を23年間続け、白楽ブログを8年間書いても、日本の「研究界の研究公正と研究者の倫理」は、「良くなった」実感がない。
 → 白楽の卓見・浅見13【毎日新聞記者のインタビューでショックだったこと】

ではどうするか?

1つは、研究不正を許している日本の大学・学術界・政府を「やり過ぎる」ほど追求・糾弾する。白楽はこの活動をほとんどしていない。

もう1つは、「賢く」行動することだが、バカな白楽はこれができない。

毎日新聞に「「ネカト許さない文化を」 告発続ける75歳 日本は研究不正大国」と紹介されたけど、23年間続けても「日本は良くならない」ので、もう止めようかと、時々思う。75歳なので、あと数年でできなくなるだろうとも、時々思う。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

中国人の名前は「姓・名」順もある。
① 2015年1月7日のキャット・ファーガソン(Cat Ferguson)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:“[A]nonymous accusation…is procedurally immoral and irresponsible,” says researcher fighting allegations – Retraction Watch
② 2017年9月7日のミーガン・スデラリ(Megan Scudellari)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Did the author of a now-retracted article bribe a critic to silence him? – Retraction Watch
③ 2018年5月15日のチェン・ルーユ(陳柔瑜)記者の「鏡週刊」記事:【檢舉魔人挨揍】他以檢舉論文為樂 這次真的被揍了…
④ 2018年5月20日のチェン・ルーユ(陳柔瑜)記者の「鏡週刊」記事:【全文】暴走教授四處檢舉遭毆 惡咒關貿董事長挨告
⑤ 「鏡週刊」の関連記事群:德明財經科技大學 – 鏡週刊 Mirror Media
⑥ ◎2020年3月9日のテイ・クオチュアン(鄭國強)記者の「信傳媒」記事:關貿董事長許建隆論文抄襲疑雲 教育部、科技部見解大不同
⑦ 2020年6月5日のサン・ユシャン(孫于珊)記者の「ETtoday新聞雲」記事:控關貿董座博士論文抄襲…恐嚇「讓你全家人自殺」 德明科大教授下場慘 | ETtoday社會新聞 | ETtoday新聞雲
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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