サンジーブ・サフー(Sanjeeb K. Sahoo)(インド)

2018年2月12日掲載。

ワンポイント:1999年(31歳?)に熊本大学でポスドクをしたサフーは、2005年6月(37歳?)にインド政府の生命科学研究所(Institute of Life Sciences)・助教授(Scientist B)、その後、事件当時は講師(Scientist D)になっていた。専門はナノテク(薬物輸送)である。11ジゲン(11jigen) の通報(推定)で、2013年2月(45歳?)、ねつ造・改ざん・自己盗用が発覚し、4論文が撤回された。生命科学研究所はネカト調査をしなかった。2018年2月11日現在(50歳?)、17論文にねつ造・改ざんが指摘され、7論文が撤回されているが、サフーは生命科学研究所の処分を何も受けず、準教授(Scientist E)に在職している。損害額の総額(推定)は5億400万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

サンジーブ・サフー(Sanjeeb K. Sahoo、Sanjeeb Kumar Sahu、写真出典)は、インドのブバネーシュワル(Bhubaneswar)にあるインド政府の生命科学研究所(Institute of Life Sciences)・講師(Scientist D)だった。医師ではない。専門はナノテク(薬物輸送)である。

2013年(45歳?)、11ジゲン(11jigen)がネカトを指摘したことが発端(推測)で、学術誌・編集部が調査し、データねつ造・改ざん、自己盗用を確認し、学術誌「Acta Biomaterialia」がサフーの5論文を撤回した。

生命科学研究所はネカトの通報を受けたハズだが、調査せず放置した。

2018年2月11日現在(50歳?)、17論文にねつ造・改ざんが指摘され、7論文が撤回されたが、生命科学研究所はサフーを処分せず、準教授(Scientist E)に在職させている。

日本との関係では、日本学術振興会(JSPS)の経費で、サフーは、1999年8月- 2001年8月(31歳? -33歳?)、日本の熊本大学・医学部の前田浩(Hiroshi Maeda)研究室でポスドクをしていた。

なお、インドの国立研究所の研究員は給与表の等級でランクが決まっている。ランクの等級はわかりにくいので、大学教員の格に対応させた。
参考:①Pay Scale for Scientists in Government jobs、②Academic ranks in India – Wikipedia
• Scientist B grade: Rs. 15600-39100 plus grade pay of Rs. 5400・・・助教授
• Scientist C grade: Rs. 15600-39100 plus grade pay of Rs. 6600・・・助教授
• Scientist D grade: Rs. 15600-39100 plus grade pay of Rs. 7600・・・講師
• Scientist E grade: Rs. 37400-67000 plus grade pay of Rs. 8700・・・準教授
• Scientist F grade: Rs. 37400-67000 plus grade pay of Rs. 8900・・・教授
• Scientist G grade: Rs. 37400-67000 plus grade pay of Rs. 10000・・・教授
Professor (HAG) Rs 67000-79000・・・殊勲教授

インドのブバネーシュワル(Bhubaneswar)にあるインド政府の生命科学研究所(Institute of Life Sciences)。写真出典http://learnof.freshersworld.com/in/college/institute-of-life-sciences-ils-bhubaneswar-orissa-other/13918

  • 国:インド
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:デリー大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1968年1月1日生まれとする。1990年の大学卒業時を22歳とした
  • 現在の年齢:50 歳?
  • 分野:薬物輸送
  • 最初の不正論文発表:2009年(41歳?)
  • 発覚年:2013年(45歳?)
  • 発覚時地位:インドのブバネーシュワル(Bhubaneswar)にある生命科学研究所(Institute of Life Sciences)・講師(Scientist D)
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は11ジゲン(11jigen)(?)でウェブサイトにネカト実態をアップした
  • ステップ2(メディア): 「11jigen」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌「Acta Biomaterialia」。②生命科学研究所は調査していない
  • 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していないので。
  • 研究所の透明性:発表なし(✖)
  • 不正:ねつ造・改ざん・自己盗用
  • 不正論文数:17論文にねつ造・改ざんが指摘され、7論文が撤回
  • 時期:研究キャリアの中期。初期からかもしれない
  • 損害額:総額(推定)は5億400万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円だが、研究者をやめていないので損害額はゼロ円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が20年間==4億円。③院生の損害が1人1000万円だが、院生数は不明なので、額は②に含めた。④外部研究費の額は不明で、額は②に含めた。⑤調査経費(学術誌出版局)が5千万円。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。7報撤回=1400万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)。生命科学研究所の準教授(Scientist E)に在職している
  • 処分:なし

●2.【経歴と経過】

主な出典:Institute of Life Sciences

  • 生年月日:不明。仮に1968年1月1日生まれとする。1990年の大学卒業時を22歳とした
  • 1990年(22歳?):インドのユトカル大学(Utkal University)で学士号取得:化学
  • 1994年(26歳?):インドのデリー大学(University of Delhi)で修士号取得:化学
  • 1999年(31歳?):インドのデリー大学(University of Delhi)で研究博士号(PhD)を取得:化学。博士論文タイトル「Studies of nanometer size hydrogel particles as drug delivery systems」。指導教授:Prof. Amarnath Maitra
  • 1999年8月- 2001年8月(31歳? -33歳?):日本の熊本大学・医学部の前田浩(Hiroshi Maeda)研究室でポスドク。日本学術振興会(JSPS)の経費
  • 2001年9月- 2005年6月(33歳? -37歳?):米国のネブラスカ大学オマハ校(University of Nebraska, Omaha)でポスドク。
  • 2005年6月(37歳?):インドのブバネーシュワル(Bhubaneswar)にある生命科学研究所(Institute of Life Sciences)・助教授(Scientist B)、その後、助教授(Scientist C)になった
  • 2010- 2015年(42- 47歳?):同研究所・講師(Scientist D)
  • 2013年2月(45歳?):ネカトが発覚し4論文が撤回された
  • 2016年‐2018年2月現在(48‐50歳?):生命科学研究所(Institute of Life Sciences)・準教授(Scientist E)

●4.【日本語の解説】

★2013年5月8日:11ジゲン(11jigen)の記事「Dr. Sanjeeb Kumar Sahoo」

正確には「日本語の解説」ではなく、英語である。11ジゲン(11jigen)のサイトは日本発なので、このカテゴリーに入れた。

出典 → ココ、(保存版

17論文に画像のねつ造・改ざんがあると指摘している。

SUMMARY of alleged image manipulation

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★発覚の経緯

発覚の経緯は不明であるが、11ジゲン(11jigen)(またはそのサイトに投稿した人)がネカトを見つけウェブ上で指摘し、学術誌に通報したと思われる。

2013年6月、学術誌「Acta Biomaterialia」がサンジーブ・サフー(Sanjeeb K. Sahoo)の5論文を以下の理由で撤回した。
→ Retraction notice to “Enhanced cellular uptake and in vivo pharmacokinetics of rapamycin loaded cubic phase nanoparticles for cancer therapy” [Acta BioMaterialia 7 (2011) 3656–3669] – ScienceDirect

サンジーブ・サフーの論文群に、自己盗用、データ操作、および結果の改ざんを含めた非常に非倫理的な不正行為が見つかり、編集長の要請により論文を撤回した。

【ねつ造・改ざんの具体例】

生命科学研究所はネカトの通報を受けたハズだが、調査せず放置した。

それで、調査した当局は学術誌だけである。学術誌のネカト箇所の説明は具体性に欠けるので、11ジゲン(11jigen) のサイトでの指摘を以下に使用する。
→ 2013年5月8日の11jigenの記事:Dr. Sanjeeb Kumar Sahoo(保存版)

1例しか示さないが、多くの撤回論文で、ほぼ同じスタイルのネカト(自分の画像の再使用によるデータねつ造)をした。

★「2011年のMol Vis」論文

「2011年のMol Vis」論文の書誌情報を以下に示す。2013年6月6日に撤回された。

11ジゲン(11jigen) のサイトは、「2009年のBiomater.」論文の図1cの一部を切り取り、図5として自己盗用したと指摘した。
→ 学術誌側の撤回理由も同じである:Withdrawal: Enhanced in vitro antiproliferative effects of EpCAM antibody-functionalized paclitaxel-loaded PLGA nanoparticles in retinoblastoma cells

「2009年のBiomater.」論文の書誌情報は以下のサフーの論文である。サフー以外に両論文にリストされた著者はいない。

つまり、自分の発表データを別の論文に再使用した。

なお、両図とも抗体を表面コートしたナノ粒子の走査型電子顕微鏡図である。白い粒子1つが1つのナノ粒子である。その表面に抗体があるのだが、この手法では抗体は見えない。従って、どんな抗体をコートしても、走査型電子顕微鏡の画像は同じような画像になる。

しかし、試料が変われば、「同じような画像」とはいえ「同じ画像」になる可能性はゼロである。それが「同じ画像」なので、画像を再利用したことが明白というわけだ。

自分の論文の図の自己盗用だが、データとしてはねつ造になる。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年2月11日現在、パブメド(PubMed)で、サンジーブ・サフー(Sanjeeb K. Sahoo)の論文を「Sanjeeb K. Sahoo [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2017年の16年間の57論文がヒットした。

「Sahoo SK[Author]」で検索すると、1979~2018年の40年間の324論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者の論文ではない論文が多いと思われる

2018年2月11日現在、「Sahoo SK[Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、以下の7論文が撤回されていた。

  1. Antiglioma activity of curcumin-loaded lipid nanoparticles and its enhanced bioavailability in brain tissue for effective glioblastoma therapy.
    Kundu P, Mohanty C, Sahoo SK.
    Acta Biomater. 2012 Jul;8(7):2670-87. doi: 10.1016/j.actbio.2012.03.048. Epub 2012 Apr 4.
    Retraction in: Acta Biomater. 2013 Jun;9(6):7074.
    PMID:22484149
  2. Transferrin-conjugated curcumin-loaded superparamagnetic iron oxide nanoparticles induce augmented cellular uptake and apoptosis in K562 cells.
    Dilnawaz F, Singh A, Sahoo SK.
    Acta Biomater. 2012 Feb;8(2):704-19. doi: 10.1016/j.actbio.2011.10.022. Epub 2011 Oct 22.
    Retraction in: Acta Biomater. 2013 Jun;9(6):7077.
    PMID:22051236
  3. Enhanced cellular uptake and in vivo pharmacokinetics of rapamycin-loaded cubic phase nanoparticles for cancer therapy.
    Parhi P, Mohanty C, Sahoo SK.
    Acta Biomater. 2011 Oct;7(10):3656-69. doi: 10.1016/j.actbio.2011.06.015. Epub 2011 Jun 15.
    Retraction in: Acta Biomater. 2013 Jun;9(6):7078.
    PMID:21704741
  4. Composite polymeric magnetic nanoparticles for co-delivery of hydrophobic and hydrophilic anticancer drugs and MRI imaging for cancer therapy.
    Singh A, Dilnawaz F, Mewar S, Sharma U, Jagannathan NR, Sahoo SK.
    ACS Appl Mater Interfaces. 2011 Mar;3(3):842-56. doi: 10.1021/am101196v. Epub 2011 Mar 3.
    Retraction in: ACS Appl Mater Interfaces. 2014 Mar 26;6(6):4595.
    PMID:21370886
  5. Epithelial cell adhesion molecule targeted nutlin-3a loaded immunonanoparticles for cancer therapy.
    Das M, Sahoo SK.
    Acta Biomater. 2011 Jan;7(1):355-69. doi: 10.1016/j.actbio.2010.08.010. Epub 2010 Aug 19.
    Retraction in: Acta Biomater. 2013 Jun;9(6):7076.
    PMID:20727991
  6. Enhanced in vitro antiproliferative effects of EpCAM antibody-functionalized paclitaxel-loaded PLGA nanoparticles in retinoblastoma cells.
    Mitra M, Misra R, Harilal A, Sahoo SK, Krishnakumar S.
    Mol Vis. 2011;17:2724-37. Epub 2011 Oct 19.
    Retraction in: Mol Vis. 2013;19:1258.
    PMID:22065926
  7. Enhanced antiproliferative activity of carboplatin-loaded chitosan-alginate nanoparticles in a retinoblastoma cell line.
    Parveen S, Mitra M, Krishnakumar S, Sahoo SK.
    Acta Biomater. 2010 Aug;6(8):3120-31. doi: 10.1016/j.actbio.2010.02.010. Epub 2010 Feb 10.
    Retraction in: Acta Biomater. 2013 Jun;9(6):7075.
    PMID:20149903

★パブピア(PubPeer)

2018年2月11日現在、「パブピア(PubPeer)」はサンジーブ・サフー(Sanjeeb K. Sahoo)の論文にコメントがない:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》インドはバラバラ

インドのネカト事件を調べていると、インドではネカト事件の対処に大幅なバラツキがあることに驚く。米国に比べると日本もバラツキが大きいが、インドはもっと大きい。

サンジーブ・サフー事件では、7論文がねつ造・改ざんで撤回され、17論文が疑念視されている。ネカトは誰の目から見てもハッキリしている。つまり、質量ともに申し分のないネカトである。決定的である。

ところが、サフーの所属する生命科学研究所はサフーのネカトを調査しない。従って、サフーの処分はなく、現在も在職している。

では、第3者機関で、研究ネカトを監視する科学価値会(SSV, Society of Scientific Values)は、サフーを調査したかというと、その気配はない。

インド科学アカデミー(Indian Academy of Sciences)の研究倫理委員会も動かない。

サフー事件の数年前のゴパル・クンドゥー(Gopal Kundu)事件では、それらは全部稼働した。
→ ゴパル・クンドゥー(Gopal Kundu)(インド) | 研究倫理(ネカト)

どういう違いなのだろう? 違いが判らない。

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注:写真はサンジーブ・サフー事件と関係ありません。ニューデリーの町。2008年。白楽撮影。

●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Scientific plagiarism in India – Wikipedia
② 2013年2月27日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:“Highly unethical practices” force four retractions for nanotech researcher – Retraction Watch at Retraction Watch
③ 2013年5月8日の11ジゲン(11jigen)の記事:Dr. Sanjeeb Kumar Sahoo(保存版)
④ 2013年5月15日以降の「撤回監視(Retraction Watch)」記事群:You searched for Sanjeeb Kumar Sahoo – Retraction Watch at Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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