「白楽の感想」集:2018年9-12月

2020年2月3日掲載 

研究者倫理の2018年9-12月記事の「白楽の感想」部分を集めた。

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《1》ネカトは常習性

シュリヴァスタファは「2001年のJ Biol Chem」論文で盗用が指摘された。この時、大学は調査に入らなかった。2002年に「2001年のJ Biol Chem」論文は撤回されたが、盗用実行者は不明のままである。

そして、2012年6月5日(53歳?)にNIHに提出した研究費申請書で盗用が指摘され、この件で、研究公正局から処分を受けた。

しかし、パブピア(PubPeer)は、「2010年のPLoS One」論文や「2010年のClin Cancer Res」論文で画像のねつ造・改ざんを指摘している。

つまり、明白な事実だけで、2001年、2010年、2012年とネカトをしている。12年間も盗用やデータねつ造・改ざんをしてきたのである。

法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

研究公正局はシュリヴァスタファの「2012年のNIH・研究費申請書」しか問題視していないが、他のNIH・研究費申請書や論文にネカトがあることはほぼ確実だ。

大学も研究公正局もネカト追及の意欲がなさすぎである。

http://www.rksrivastava.com/bio_sketch.html

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《1》ネカトが染みついている

2018年12月19日(36歳?)、研究公正局は、米国のシダーズ・サイナイ医療センター(Cedars-Sinai Medical Center )・ポスドクだったウトラ・ラジャマニ(Uthra Rajamani、写真)が、「2017年のNat Commun」論文でネカトをしたと発表した。

ラジャマニは南アフリカ共和国の育ちで、南アフリカ共和国のステレンボッシュ大学(Stellenbosch University)で研究博士号(PhD)を取得し、2012年(30歳?)に渡米した。

パブピア(PubPeer)の指摘によれば、南アフリカ共和国のステレンボッシュ大学(Stellenbosch University)・ポスドク時代の2010年の論文でウエスタンブロット画像をねつ造・改ざんしている。この論文はラジャマニの人生で最初の論文である。

その後、米国のウエストバージニア大学(West Virginia University)・ポスドク時代の「2013年のPhysiol Rep」論文、米国のカリフォルニア大学デービス校(University of California – Davis)・ポスドク時代の「2014年のJ Diabetes Res」論文でも同じようにウエスタンブロット画像をねつ造・改ざんしている。

そして、米国のシダーズ・サイナイ医療センター(Cedars-Sinai Medical Center )・ポスドク時代の「2017年のNat Commun」論文でも、味をしめて、ウエスタンブロット画像のねつ造・改ざんをした。このネカトで研究公正局に通報され、クロ判定をされた。

ラジャマニは、証拠があるだけでも、8年間もデータねつ造・改ざんをしていた。

法則:「ネカト癖は研究キャリアの初期に形成されることが多い」。

多分、ラジャマニのほぼ全部の論文にネカトがあるに違いない。

研究公正局はシダーズ・サイナイ医療センター・ポスドク時代の「2017年のNat Commun」論文しかネカトを指摘していないが、他にもあると予見しただろう。しかし、調査は基本的に被疑者の所属機関が行なう。ウエストバージニア大学もカリフォルニア大学デービス校も1年ほどしか滞在していないポスドクのネカト調査をしたくないだろう。研究公正局はもっとしたくない。それで、追及しない(推測)。

その結果、締め出し期間は1年間である。この処分の軽さだと、ラジャマニは研究界に舞い戻ってくる可能性が高い。困ったもんだ。

《2》ババを引いた

ラジャマニはどのような状況でネカトをしたのか、わからない。しかし、根っからのネカト者としよう。それで、白楽の疑問が解ける。

ラジャマニはポスドクとして1年余りで各大学を転々としている。

  • 南アフリカ共和国のステレンボッシュ大学(Stellenbosch University)に1年間
  • 南アフリカ共和国のワズール・ナタール大学(University of KwaZulu-Natal)に1年5か月
  • 米国のウエストバージニア大学(West Virginia University)に1年1か月
  • 米国のカリフォルニア大学デービス校(University of California – Davis)に1年4か月

思うに、各大学のボスはラジャマニのデータ異常に気が付いていた。それで、通常、ポスドク期間は2~3年間なのに、1年余りでラジャマニを放逐した。あるいは、ねつ造・改ざんがバレそうになって、ラジャマニ本人が自発的に大学を移動したのかもしれない。

米国のシダーズ・サイナイ医療センター(Cedars-Sinai Medical Center )では、どういうわけか、ポスドクを3年間も続けた。それで、ついに、ネカトが明白に発覚した。ボスがねつ造・改ざんをシダーズ・サイナイ医療センターに通報し、研究公正局が出動する事態に至った。

シダーズ・サイナイ医療センターはババを引いたというわけだ。

法則:「ネカトでは早期発見・適切処分が重要である」。

南アフリカ共和国のステレンボッシュ大学の最初の論文で、ボスのファーディル・エソップ教授(Faadiel Essop、写真出典)が、ラジャマニのネカトをしっかり見つけ、注意または処分すべきだった。

《3》若い時に受賞

ラジャマニは2009年の27歳(?)から2012年の30歳(?)まで3報しか論文を出版していないが、以下に示すようにたくさんの賞を受賞した。これらの受賞の対象である研究論文はネカト論文だろう。

  • 2009年:南部アフリカ生理学協会のウィンダム賞(Wyndham Award)
  • 2010年:ステレンボッシュ大学の優秀ポスドク賞(Best award for research as a post-doctoral fellow)
  • 2010年:アストラ・ゼネカ(Astra Zeneca)が口頭発表で第2位と表彰
  • 2010年:「Mail&Guardian」の南アフリカの200人の若手達成者(200 Young South African achievers)の一人に選出
  • 2012年5月:南アフリカのヨハネスブルグのIKUSASAから「非市民の科学への貢献」賞

つまり、ネカトすれば賞がもらえるような内容の論文を書くことができる。これは事実である。

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《1》学術誌の戦国時代

ダニエル・ローパーズ(Daniel Ropers)https://www.boersenblatt.net/artikel-interview_mit_daniel_ropers__ceo_von_springer_nature.1488513.html

ローパーズ「Nature」社長は、結局、あからさまな言葉では、捕食学術誌のことに言及しなかった。将来はオープンアクセス学術誌のさらなる発展を見越して、いくつかの重要な改革をしようとしている。

捕食学術誌を含めオープンアクセス学術誌の急速な拡大を承知している。従来の伝統的な真正学術誌は徐々に衰退していくのか?

ある意味イエス、ある意味ノーだろう。

紙媒体に印刷し冊子にとじ、世界中の大学図書館に売る従来の伝統的な真正学術誌のビジネスモデルは既に衰退している。いずれ消滅するだろう。

シュプリンガー・ネイチャー(Springer Nature)社は、既に、オープンアクセス出版に動き出していて、同社発行の学術誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」が、2017年、「プロス・ワン(PLOS ONE)」誌を抜いて世界第一位になった。

この路線の延長に将来があるとすれば、シュプリンガー・ネイチャー(Springer Nature)社は、数年後には、世界の真正オープンアクセス論文を独占する印象だ。

しかし、真正学術誌はどう頑張っても、本質的に、捕食学術誌の経費より高くなる。質を確保するにはそれなりのコストは必須だからだ。そして、捕食学術誌はコストを削って質の低い論文を出版するので、価格的には捕食学術誌は強い。

そして、最も肝心な点だが、捕食学術誌の需要は真正学術誌の需要よりはるかに高い。質の高い論文を書けない研究者は書ける研究者よりも、はるかに多い。

超一流学術誌の論文採択率が10%未満とすれば、9割の研究者は、それ以外の学術誌に出版するしかない。さらには、超一流学術誌に出版どころか、投稿すらしない研究者は、投稿する研究者より圧倒的に多数だ。その研究界のマジョリティの研究者たちは、自分の論文を出版してくれる学術誌が必要なのである。

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《1》グレーの学術誌

今まで、いくつかの捕食出版社を解説してきたが、ヒンダウィ出版社(Hindawi Publishing Corporation)の学術誌は捕食誌なのか真正誌なのか、判断が難しい。

ヒンダウィ出版社は250誌以上の学術誌を発行している。この250誌以上の学術誌の中に捕食誌と真正誌が混在していると思われる。また、同じ学術誌の中にまともな論文と粗悪論文が混在していると思われる。

編集委員が変われば、捕食誌が真正誌に、またその逆に真正誌が捕食誌に変るかもしれない。

それにしても、基本は、粗悪であれ優良であれ、本来、論文は研究者に責任があり、学術誌には責任がないハズだ。

《2》時代を切り開く? ヒンダウィ出版社の学術誌は、一般的には、捕食ボーダーライン学術誌とされている。しかし、現代は、従来の伝統的な学術誌が廃れ、新しい完全オープンアクセス型の学術誌へと移行する過渡期なのかもしれない。その過渡期に、捕食学術誌がソコソコ誕生し、研究者を餌食にしたととらえるべきかもしれない。

10年後、整理統合が済むとしよう。その時、従来の伝統的な学術誌のビジネスモデルは消滅しているのだろうか? それとも。捕食学術誌が消滅しているのだろうか? しかし、放っておけば悪くなる。改善されない。改善には相当な努力が必要だ。

《3》捕食学術に関する白楽の記事リスト

【捕食学術に関する白楽の記事リスト】

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《1》捕食出版社を取り締る

ジーナ・コラータ(Gina Kolata)https://www.mc.vanderbilt.edu/reporter/index.html?ID=11678

研究者は捕食出版社と知りつつ、捕食論文を出版する。だから捕食学術業者は栄える。

結局、捕食論文を出版した研究者にペナルティを科すしかない。

日本の学術界はこの問題に関してほとんど無知・無策である。

そして、特定の学術誌を、捕食学術誌なのか真正学術誌なのかを判定するのは難しい。 捕食論文問題は、世界中の学術界が腰を据えて取り掛からないと難しい。

《2》日本の博士論文も捕食論文?

日本のメディアでは、毎日新聞の鳥井真平・記者(写真出典)が捕食論文問題を追及し記事にしている。頑張って欲しい。

★2018年12月16日の毎日新聞:粗悪学術誌 掲載で博士号 8大学院、業績として認定
会員限定有料記事(以下は無料部分)

佐藤翔(しょう)・同志社大准教授(図書館情報学)が医学博士論文106本を抽出調査したところ、7・5%に当たる8本にハゲタカ誌への論文掲載が業績として明記されていた。ほとんどの大学が「査読(内容チェック)付き学術誌への論文掲載」を博士号授与の要件としており、要件を満たすためハゲタカ誌を利用した可能性がある。

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《1》捕食論文

白楽は、当初、学術論文全体に占める捕食論文の割合の経年変化を知りたかったが、答えは見つからなかった。

そもそも、「理工医学(STM)レポート」では、捕食学術誌を全部把握していない。オープンアクセス学術誌要覧(Directory of Open Access Journals)など、それなりに信用のおける組織に登録しているオープンアクセス学術誌しか対象にしていない。

また、「捕食」学術誌と断定すると大きな反感を買うから、理工医学(STM)レポートのような、ある意味まともなレポートは特定の学術誌を、ビールのように、「捕食」学術誌と断定しない(できない)。

一方、ビールは、それなりに信用のおける組織に登録してあるオープンアクセス学術誌の中にも捕食学術誌があると指摘している。

学術誌がJournal Citation Reports、オープンアクセス学術誌要覧(Directory of Open Access Journals)、Scopusなどにホワイトリストされてから、捕食学術誌となり、富を得るのを促進している。(7-20.ビールのライフワーク:捕食出版社との闘い

《2》日本

日本の学術出版の全体像はどうなっているのだろう? 理工医学(STM)レポートの日本版はないのだろうか?

日本出版学会(http://www.shuppan.jp/)の部会の1つに学術出版研究部会(http://www.shuppan.jp/bukai1.html)がある。しかし、「理工医学(STM)レポート」の日本版を発表していない。 検索すると以下の文章がヒットしたが、白楽は満足できない。

2003年とデータは古いが、学術誌に日本の全国立大学が払った額は138億円とある。その他に、推察するに、論文掲載料を100億円以上払っているだろう。計・238億円以上。 → 2009年、星野雅英:国立大学図書館における資料費の推移一大学図書館実態調査結果報告から

2018年現在、理工医学(STM)の英語学術誌の年間収入は1兆円とある。米国・科学庁の2018年レポートでは世界の全論文の内、2016年に日本は4.2%出版していた。1兆円の4.2%である420億円程度、日本は外国の学術出版社に払っていると思う(推定)。 → Report – S&E Indicators 2018 | NSF – National Science Foundation

2017年の科研費の総額は2,117億円だった(平成29年度科学研究費助成事業の配分について:文部科学省)ことを考慮すると、420億円は科研費の2割に相当し、かなりの額である。

《3》会議の費用

日本の学会は毎年1回は会議をしている。別途、たくさんの国際会議もある。

捕食学術社は学術誌の出版だけでなく、国際会議も開催している。会議では、会議への参加費だけでなく、参加者の交通費・宿泊費。食費・観光費がかかる。国内でも千人規模の3日間の学会なら、研究費から1人平均5万円の出費として、5千万円である。日本で毎年数千回の研究集会が開催されている。仮に6千回として、3千億円になる。

交通費・宿泊費は研究費で払われるから、毎年、3千億円の研究費が研究集会に使われている。アレ? 科研費総額の2,117億円を超えてしまう。イヤイヤ、別の研究費がある。国立大学には運営費交付金(教員の給料が大半だが、研究費もある)が2017年に1兆971億円支給されている。 → グラフの例:国立大学運営費交付金

一般に、会議の経費は滅多に公表されないが、2006年3月にメキシコで開催し、7日間に2万人が参加した「第4回世界水フォーラム(4th World Water Forum)」の経費は1億5千万ポンド(約210億円)と推定された。 →  2017年8月30日記事:Expensive academic conferences give us old ideas and no new faces | Education | The Guardian

「world cost of academic conferences」で検索しても見つからないが、世界の学術集会ビジネスは数十兆円規模だろう。このうち捕食学術社はどれほど関与しているのだろうか? ーーーーーー

《1》活動が低調?

ダブリュシーズ社(WSEAS:World Scientific and Engineering Academy and Society)は、ビールのリスト (Beall’s List)に載っていて、捕食学術社とされている。

捕食学術業は営業活動が重要である。営業が活発でなければ、餌食となる研究者をたくさん集められない。

だから、活発に宣伝することになる。しかし、ダブリュシーズ社はその勢いが感じられない。

活動が低調なのだろうか?

それとも、カモフラージュが上手なのだろうか?

それにしても日本人の関与を調べると、ダブリュシーズ社は、編集委員、論文発表、会議での基調講演、会議への参加、論文賞の受賞と、日本の学術界にしっかり浸透していることがわかる。

【捕食学術に関する白楽の記事リスト】

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《1》捕食出版社を取り締る

学術誌の編集委員や編集長を依頼されると、多くの研究者はホイホイ応募する。そして、捕食出版社は一度、編集委員や編集長になった人を手放さない。辞任したいと言っても、無視して、名前を使用し続ける。

捕食出版社側に立てば、なかなか、うまい商売だ。

数十億を稼いでいるとのことだが、さもありなん。

手口を見ている限り、犯罪として立件するのは「ネカト罪」などの法律を作らない限り、現行法では取り締まれない。

なんとかしないと、科学は急速に弱体化するだろう。

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《1》腐った大学

マクロにとらえて、捕食出版・捕食学会の世界的な浸透に驚くが、ミクロにとらえても、中規模大学の1つの学科で、教員の3分の2以上が捕食論文を発表しているとなると、なんだか、末期的な気がしてくる。

そういう大学だから、その事実が指摘されると、指摘したデレク・パイン(Derek Pyne)を大学全体がつぶしにかかった。大学が腐ってしまっている。

トンプソンリバーズ大学(Thompson Rivers University)の事件は「Vancouver Sun」紙のダグラス・トッド(Douglas Todd)記者が執拗に報道したから、世間で知られるようになった。しかし、世界のほとんどの大学は、もみつぶしているに違いない。

《2》学問の自由

問題が捕食論文から学問の自由に移行したが、トンプソンリバーズ大学の対応は、この点でも基本的にズレている。

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【捕食学術に関する白楽の記事リスト】

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《1》唖然

捕食学術が電子メールでメチャクチャな勧誘をしているのには驚きました。

まともな学術誌に論文を1つ出版すれば、1年以内に国際会議での講演・オーガナイザーに簡単になれるし、学術誌の編集委員や編集長にもなれる。バナナのたたき売りも真っ青の大安売りで、メチャクチャである。

国際会議での発表は簡単である。学術誌での論文掲載も簡単である。なお、払う金のことは書いてないが、当然、金はもらえるのでなく、払うのである。それも、1論文を掲載してもらうと数十万円という高額である。と言っても、大学教員や研究機関の研究員は研究費から払う。つまり、国民の税金である。唖然とする。

町医者は国際誌に論文発表と宣伝すれば、経費で落としてもお釣りがくる。唖然とする。

《2》捕食学術を取り締まれ!

毎日新聞の鳥井真平記者の記事によると新潟大学が取り締まり始めた。なお、「ハゲタカ」という用語は止めて欲しい。「捕食」です。

「ハゲタカジャーナル」投稿を事実上禁止 新潟大 毎日新聞2018年11月29日 https://mainichi.jp/articles/20181130/k00/00m/040/050000c

国内の大学で、ハゲタカ誌に対する具体策の明文化が明らかになるのは初めて。

具体策は2本柱からなり、(1)研究者はハゲタカ誌に投稿しないよう注意し、論文掲載料の申請書類に投稿先の出版社名や学術誌名の明記を義務付ける(2)部局長や研究室を運営する教授は、研究者や学生がハゲタカ誌に投稿しないよう研究倫理教育を行う--などと定めた。

新潟大の論文投稿チェックリストの概要

・自身または同僚がその学術誌を知っているか
・出版社を特定し、連絡がとれるか
・どのような内容チェックをするか明白か
・学術誌の評価指標は一般的なものか
・料金設定は明瞭か ・料金の内訳や請求時期の説明はあるか
・編集委員会は設置されているか
・出版社は学術出版業界の団体に所属しているか
※新潟大が既存のハゲタカジャーナルチェック用サイトを基に作成

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《1》早急に対処すべき 捕食問題を何度も記事にしているが、調べるたびに、「唖然」とする。日本の学術界は早急に対処すべきだ。 【捕食学術の情報リスト】

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《1》深刻

捕食論文の隆盛さを知るにつけ、ジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)が指摘したように、事態はかなり深刻だと感じる。 → 7-20.ビールのライフワーク:捕食出版社との闘い

白楽は、捕食論文を出版している人は3流の研究者だと勝手に思っていた。しかし、実は、著名な学者もどっぷりつかっていたことをこの論文を読む少し前に知り、驚いた。

本記事のベルント・ショルツ=ライター(Bernd Scholz-Reiter)は、ドイツ研究振興協会(DFG:Deutsche Forschungsgemeinschaft)・副会長をつとめ、現在、ブレーメン大学(University of Bremen)・学長である。

ドイツの学術組織・科学政策の重鎮で、実際その要職に就いてきた人が、捕食学術誌の出版のひどさを知らなかったと言い訳している。よくそれで、学術組織・科学政策の重鎮が勤まると思うが、レオニッド・シュナイダーが指摘しているように、問題を承知しながら利用してきたのである。

ベルント・ショルツ=ライター(Bernd Scholz-Reiter)

ショルツ=ライターは、そういうズルいことをしたから偉くなれた人なのだろう。

ズルをして偉くなれるのは、現代の人材登用システムの大きな欠陥ではあるが、それにしても、捕食論文を取り締まる立場のドイツ研究振興協会・副会長であり、大学長である。

白楽は、ドイツの研究公正は根が腐っていると感じている。例えば、盗博が発覚しても、博士号がはく奪されないケースがたくさんある。 → ドイツの盗博事件一覧(ヴロニプラーク・ウィキ) | 研究倫理(ネカト、研究規範)

ひるがえって日本はどうだろう?

日本のことを悪く言いたくないが、日本では、ドイツに比べて、捕食論文を出版している日本人研究者を糾弾していない。学術界は捕食論文を問題視していない。ドイツよりヒドイというのが現状だ。残念である。

日本の学術界、早く目をさませ!

《2》捕食論文の調査は喫緊の課題 3年前の少しデータが古いが、科学研究出版社(SCIRP:Scientific Research Publishing)の捕食論文の日本の大学ランキングが作られた。 → 2015年12月18日、名古屋大学宇宙地球環境研究所の奥村曉:「まともではない論文誌」への投稿数が最多の日本の大学は? – 宇宙線実験の覚え書き

大学名 捕食論文数

  1. 東京大学 107
  2. 九州大学   99
  3. 東北大学   94
  4. 北海道大学  90
  5. 新潟大学       84
  6. 京都大学       78
  7. 金沢大学       77
  8. 日本大学       72
  9. 大阪大学       71
  10. 名古屋大学  69

日本の代表的な大学が上位からズラーと並んでいる。

東京大学が1位で107論文と少ない。107論文なら全体のわずかである。安心していいいか? イヤイヤ、ねつ造・改ざん・盗用の可能性もある捕食論文である。

科学研究出版社(SCIRP:Scientific Research Publishing)は中規模の捕食学術社だが、捕食学術社は数百社ある。

主要な捕食学術誌に掲載した日本人の全部の論文は一体何万報あるのだろうか?

2018年7月19日の北ドイツ新聞の記事によるとオミックス・インターナショナル社(OMICS International)、ワセット社 (WASET)、Sci-Pub、IOSR Journals、SCIENCEDOMAIN internationalの、5大捕食雑誌に175,000報の論文があり、40万人の研究者が論文掲載していた。 → 2018年7月19日の北ドイツ新聞の記事:More than 5,000 German scientists have published papers in pseudo-scientific journals | NDR.de – Der NDR – Presse

日本人の捕食論文数を調べたデータがないが、5大捕食雑誌の175,000報、40万人の研究者の内、少なく見積もって、1割は日本人だろう。ということは、4万人の日本人研究者が捕食出版社を利用して17,500報の論文を発表したことになる。

1論文の掲載料が20万円として、20万円×17,500報=35億円。35億円の研究費が外国のくだらない出版社に渡り、ロクでもない論文を出版した(推定)。

その捕食論文で、4万人の日本人は本来だったらなかったハズの博士号取得、研究職採用、昇進、研究費受給、受賞という恩恵を受けたに違いない(推定)。

誰かが、まともに捕食論文の調査をすべきである。JSTや学振が調査に乗り出すべきだ。また、学術会議に委員会を設け、まともに対応すべきである。喫緊の課題だ。

《3》世界変動展望

記事をアップしてから、世界変動展望様からコメントをいただきました。以下、世界変動展望様の関連記事の一部を引用します。興味ある方は原文をご覧ください。

★2016年10月28日:世界変動展望:トップの経済学者さえ捕食ジャーナルで出版する!調査で明らかに 出典 → ココ

専門領域のトップ5%と評価される経済学者が捕食ジャーナルでも相当数の論文を発表していた事が調査でわかった。

その調査を行ったのはFrederick Wallace(Gulf University for Science and Technology、クウェート)とTimothy Perri(アパラチア州立大学、USA)で、「専門分野のトップ5%以内と評価される最も著名な経済学者の27人は彼らの論文のほぼ5%を捕食ジャーナルで発表したという[1][2]」。また、「これらの研究者は2015年だけでも31論文を捕食ジャーナルで発表したという[1][2]」

このような学問を食い物にしている悪質なジャーナルの実態調査については以前に詳しく紹介したなぜでたらめな査読を行うかも考察した。詳細はリンク先に譲るとして、虚構論文さえ平気で掲載している極めて悪質で恥ずかしい捕食ジャーナルに、なぜ専門分野でトップ5%以内と評価される著名経済学者が論文を掲載しているのか。

以下略。 世界変動展望様の記事の続き → ココ

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《1》目からウロコ

この論文は、目からウロコでした。

捕食学術誌がこれほどまで研究を破壊していることを、十分、理解していなかった。

《2》日本国民に日本語で無料

白楽も、かつて、オープンアクセス賛同者でした。というか、今でも、思想的にはオープンアクセス賛同者である。

研究者は日本国民の税金を使って研究を行なっている。その研究成果は、金を払ってくれた日本国民に無料で伝えるべきだ。それも、日本語で伝えるべきだ。英語でも良いが、英語だけでは国賊ものだ。日本語は必須だ。

だから、このブログも、日本国民に日本語で無料で伝えている。白楽は現役ではないので、今は、日本国民の税金から研究費・給料を受け取っていない。それでも、年金は税金からいただいている。基本姿勢は変らない。

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《1》どこで線を引く

白楽は、捕食出版社(predatory publisher)、捕食学術誌(predatory journal)、捕食学会(predatory academic society)、捕食会議(predatory conference)など、研究者を食いものにする捕食学術業(predatory academic business)をまとめて理解したいと考えている。

一応、研究者を食いものにする捕食学術業(predatory academic business)と書いたが、従来の伝統的な出版社、学術集会、学会組織も研究者を顧客とし、ある意味、研究者を“食いもの”にしている。

例えば、大学紀要・研究所紀要は、全部ではないが、いい加減な査読で学術的に質の悪い論文を掲載している。他にも質の悪い論文を掲載している学術誌はゴマンとある。原資は、国民の税金である。ある意味、捕食学術誌(predatory journal)ではないのだろうか?

伝統的な学術集会も、国内学会だけで、日本で毎年数千~数万件開催されている(推定)。

大学教員が手弁当で会場の整理やプログラムを作る小さな学術集会もあるだろうが、昔はともかく、今は少ないだろう。国際会議はもちろん、国内学会でも大規模な学術集会や医学系の学術集会では企業が仕切っている。学会ビジネスである。原資は、国民の税金である。研究者を顧客とし、ある意味、研究者を“食いもの”にしている。
→ 学術集会 | コンベンション | 日本コンベンションサービス株式会社 – JCS
→ 学術集会請負業者一覧

本記事では、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)を捕食学術業ととらえ、悪いという視点で書いたが、やっていることは従来の学術業と紙一重である。欠点ばかり指摘されるが(本記事でもそうしたが)、利点もあり、ある意味、新しい動きでもある。

白楽は、現段階では、学術出版と学会ビジネスのあるべき姿を描けていない。従来の学術業にも問題を感じている。

《2》悪いのは投稿者?

捕食学術誌(predatory journal)は質の悪い論文を掲載するから悪いと批判・非難されている。科学を崩壊させると。
→ 捕食出版社、ねつ造医学論文 | 研究倫理(ネカト、研究規範)

チョットまて、「質の悪い論文を掲載するから悪い」という場合、その質の悪い論文は、学者が投稿したのではないのか? 悪いのは、学術誌ではなく学者ではないのか? という思いを、白楽は払拭できない。

《3》需要

日本のほとんどの大学では、博士号申請の重要な要件は「国際学術誌に1報出版」である。こういう要件だから、論文の質が悪くてもとにかく、院生は、1報、出版したい。その欲求が強い。死活問題である。

研究職への採用、助教から准教授への昇格、准教授から教授への昇格にも出版論文数は、重要な判断因子である。死活問題である。

奨学金や研究費の採択でも出版論文数は、重要な基準である。死活問題である。

このように論文出版が死活問題になる状況下では、捕食学術誌はますます栄えるだろう。

《4》捕食学術の情報リスト

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《1》感想

感想の第1は「唖然」である。驚くべき壮大な捕食学術である。ティワリは天才的だ。

《2》感想

感想の第2はレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)の調査力に「唖然」である。驚くべき調査力に感動した。それをブログにアップする勇気もスゴイ。

日本にこのような調査力のあるジャーナリストがいないものか。

育ってほしい。

《3》防ぐ方法

このブログはネカト事件を調べ、ネカト防止の対策立案の一助にしたいのが趣旨である。

しかし、ティワリ事件のような壮大な捕食学術は新しい事態だ。学術界は、まずは、このような事件が起こっていること、また、事件の内容を把握することが入口だろう。

日本の研究者も含め、世界中の著名な研究者が、ティワリにコロッと騙されている。出版社、学会を作り、著名学者を招待するなど、要所要所を押さえているからだ。騙されていることにも気が付かない。という反面、実は、かなりの研究者は、捕食学術であることを知りつつ論文を投稿し会議に参加しているだろう。

学術集会に数百人も参加しているのに、誰も、捕食会議であることに気が付かないわけがない。 研究者が恰好の餌食になっているという見方と、

研究者は承知していて、簡単に論文が増え楽しい会議に参加しているという見方の両方がある。どちらにしろ、低劣な学術活動に国民の税金が無駄に使われていることは事実だ。

なお、捕食学術活動とまっとうな学術活動をどう切り分けるのか、何か基準があるのだろうか?

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《1》捕食学術誌を取り締る

捕食学術誌を適切に指定し、捕食学術誌への投稿を正式に禁止するルールを日本国内で制定すべきだ。

そして、捕食学術誌を監視し、投稿する違反研究者に警告する。

とはいえ、こういう視点でバイオ政治学活動をする組織が日本にはない。文部科学省や日本学術会議ではフットワークが重い。フットワークが軽い組織で、専門的な知識・調査力・活動を行使でき、かつ、研究者が納得する権威のある組織が必要だ。

どうする?

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《1》ネカト者を学術界から排除

米国のアラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham)・ポスドクだったマラビカ・サーカー(Malabika Sarker)が、データ改ざんをし、17年前の2001年5月3日(37歳?)、研究公正局がクロと発表した。

サーカーはバングラディシュで生まれ育ち、医師になったので、裕福な家庭で育ったと思われる。 現在(54歳?)、バングラディシュのブラック大学(BRAC University)・教授である。

バングラディシュでは、有力な研究者に育っている。バングラデシュの性感染症(STD)の予防に大きな貢献をしていると想像される。

しかし、米国でデータを改ざんし、研究公正局にクロと発表された。この時点で、サーカーを学術界から排除すべきだった。

研究ネカト者が研究を続けたケースは少ない。 → 研究ネカト者が研究を続けた | 研究倫理(ネカト)

《2》再犯

サーカーがどのような状況でネカトをしたのか、ウェブ上の情報を読み解いても、わからない。

サーカーはその後、米国からドイツに渡り、研究者を辞めず、バングラディシュに帰国した。一貫して、バングラデシュの性感染症(STD)の研究をしている。

アンケート結果のデータ改ざんはアンケート結果を共同研究者がアクセスできる仕組みにしてあれば別だが、研究者が1人でデータを抱えていたら、他人には検証しにくい。

法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

1999年以降、サーカーはネカトをしていないのだろうか?

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《1》防ぐ方法

セクハラ事件をどうすると防げるのか?

今までセクハラ事件を見てきたが、インダー・ヴェルマもジェフリー・マーシーも学会の重鎮である。そして、その威光を笠に、長年、セクハラをしてきた。本記事のクラウスも学会の重鎮で、長年、セクハラをしてきた。

ネカトに以下の法則がある。

法則:「ネカトでは早期発見・適切処分が重要である」。 法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」 標語:「ネカト者に刑事罰と罰金を!」

セクハラの対処も同じだろう。

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《1》人事

ヴァンデルカ事件のポイントは盗用そのものではない。

つい2年前に盗用が発覚し、その後、暴行事件を起こした人物を、どうして教授に任命したのか?

スロヴァキアの新聞「Spectator」も記事でそう糾弾している。

スロヴァキアの教授は職位というより称号だとある。だから無理して授与する必要はない。専門家としてどれだけ優れていても、人物が高潔でなければならないハズだ。

盗用者に教授の称号を与えると、盗用を肯定することに・・・、イヤイヤ、肯定はしていないだろうが、盗用がバレても処罰を受けないと社会や学術界に伝えていることになる。このメッセージは社会や学術界の人心を腐らせる。害悪である。

しかし、日本でも多いですね。明らかに過去に問題のあった人物を重用する人事が。2018年10月2日発足の第4次安倍内閣に伴う自民党役員人事はどうなっているんでしょう。愕然としました。

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《1》スペイン政治家の連続ネカト

2018年、スペインの政治家にネカト事件が多発している。

本記事はペドロ・サンチェス首相(Pedro Sánchez)の盗博・著書盗用スキャンダルを書いたが以下もある。

スペイン、大丈夫か?

《2》大学の腐敗

盗用研究者のジョナサン・ベイリー(Jonathan Bailey)がスペインの異常を指摘している。

盗用発覚の発端は、2016年のフアン・カルロス国王大学(Universidad Rey Juan Carlos, URJC)のフェルナンド・スアレズ学長(Fernando Suárez)の盗用事件である。
→ 歴史学:フェルナンド・スアレズ(Fernando Suárez)(スペイン)

その後、《1》に記載した「スペイン政治家の連続ネカト」事件が続いた。

そして、これらの事件では米国と比較して大きな特徴があると指摘している。

スペインでは、驚いたことに、大学が政治家のネカトに協力している。発覚しても博士号をはく奪しない。つまり、大学が腐敗側にいるのだ。

これに対し、米国では、大学は反腐敗側にいて、公正を保っている。例えば、米国・上院議員のジョン・ウォルシュ(John Walsh)の盗修が発覚した時、大学は、修士号をはく奪した。そして、ジョン・ウォルシュは次回の選挙で立候補できず、上院議員を失職した。
→ 盗修:政治学:ジョン・ウォルシュ(John Walsh)(米)

スペインは大学のネカト腐敗が高じて以下の事件も起こっている。

2018年9月21日、フアン・カルロス国王大学(Universidad Rey Juan Carlos, URJC)は約500人のイタリア人院生に能力がないのに法学修士号、つまり、“偽”法学修士号を授与した。スペインで法学修士号を取得するのはイタリアで取得するよりも大幅に安く、一度取得すれば、EU内のどこでも弁護士業を営めるのである。
→ 2018年9月21日記事:‘Politicians’ university’ in ‘fake’ master’s scam: Underqualified Italians registered to practise law

スペインの大学のネカト腐敗はひどい。その内、スペインの修士号・博士号は世界に通用しなくなる? そんなことはない?

大学が腐敗し、政治家も腐敗したら、誰がどのように、その国の研究公正を保てるのだろうか?

ただ、いつも思うが、日本も似たような状況があり、スペインを笑えない。

《3》スペイン政界は社交界?

ネカトとは関係ないのだが、以前、スペインの女性政治家はファッショナブルと書いた。以下は同じ文章の再掲載を含む。

マドリード州・知事のクリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)は、ファッショナブルだった。
→ 法学:「経歴詐称」:クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)(スペイン) | 研究倫理(ネカト)

https://smoda.elpais.com/celebrities/vips/cristina-cifuentes-presidenta-comunidad-madrid/
http://cadenaser.com/emisora/2018/04/19/radio_madrid/1524128742_956965.html
https://www.larazon.es/espana/cifuentes-contra-todos-EA17719379
https://www.elle.com/es/extra-elle/revista/news/a675248/cristina-cifuentes-comunidad-de-madrid/

ペドロ・サンチェス首相の率いる閣僚に11人の女性がいるが、会議が終わって閣僚が登場すると、こちらも華やかである。

https://www.heraldextra.com/news/world/spanish-pm-publishes-thesis-to-dispel-plagiarism-allegations/article_2b7cce8b-eb47-5d54-934f-292b5156f572.html

そして、スペインの男性政治家は若くイケメンである。

スペイン政界は社交界?

疑惑を受けたサンチェス首相。

追及するシウダダノス(Ciudadanos)党・党首の38歳のアルベール・リベラ(Albert Rivera)。

アルベール・リベラ(Albert Rivera)。写真By Carlos Delgado投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link

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《1》わかりません

陸軍のそれなりの地位の人が、46歳で、どうして修士号を取得しようと思ったのか? 修士号を取得するのはどういう状況だったのか? そして、どうして盗用したのか? よくわかりません。

軍人の学位論文に盗用が多いという話がある。しかし、本当のところ、軍人の学位論文に盗用が多いのかどうかわかりません。

一般的に、軍人の学位論文の盗用は公表されない。ジョン・ウォルシュ(John Walsh)は上院議員にならなければ、修士論文の盗用は発覚しなかっただろう。つまり、軍人の学位論文に盗用が多いのか、少ないのか、よくわかりません。

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《1》スペイン政治家の連続ネカト

カルメン・モントン(Carmen Montón)。https://www.levante-emv.com/comunitat-valenciana/2015/06/29/carmen-monton-medico-frente-sanidad/1284717.html

本記事のカルメン・モントン(Carmen Montón)が修士論文を提出したのは、2011年6月である。

この4か月前の2011年2月16日、南ドイツ新聞は「グッテンベルク国防相の博士論文は盗用だった」と公表し、ドイツ政界は騒然となった。そして、発覚13日後の2011年3月1日、グッテンベルクは国防相を辞任した。 → 1‐4‐10.ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki) | 研究倫理(ネカト)

このような盗博事件が身近に起こっているのに、カルメン・モントンは、どうして、盗用修士論文を提出したのだろうか?

グッテンベルク事件を知らないハズはない。この無神経・傲慢・不注意はなんなんだろう? 議員や大臣になると、自分は別格、大丈夫と思うようだが、どうして自分は別格、大丈夫と思うのだろうか?

なお、2018年にスペインの政治家にネカト事件が多発している。

スペイン、大丈夫か?

《2》ファッショナブル

ネカトとは関係ないのだが、マドリード州・知事のクリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)は、ファッショナブルだった。 → 法学:「経歴詐称」:クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)(スペイン) | 研究倫理(ネカト)

ペドロ・サンチェス首相が選んだ閣僚17人の内6人が男性で、11人が女性である。以下の写真は、会議が終わって閣僚が出てきた場面である。こちらも鮮やかである。右端が本記事のカルメン・モントン大臣(Carmen Montón)である。

https://www.heraldextra.com/news/world/spanish-pm-publishes-thesis-to-dispel-plagiarism-allegations/article_2b7cce8b-eb47-5d54-934f-292b5156f572.html

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《1》大学と政治家の腐敗

スペインの大学・学長と政治家がグルになってネカト腐敗をしている。

シフエンテス(左)、カサード(右)https://www.elplural.com/politica/espana/imputan-companeras-pablo-casado-master_200568102

本記事のカサード事件に登場するマドリード州・知事だったクリスティーナ・シフエンテスとフアン・カルロス国王大学の学長だったフェルナンド・スアレスはネカトまみれだった。

2018年2月、マドリード州・知事のクリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)は、修士号取得が虚偽だったことが発覚し、2018年4月、53歳でマドリード州・知事を辞任した。 → 法学:「経歴詐称」:クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)(スペイン) | 研究倫理(ネカト)

2016年、フアン・カルロス国王大学(Universidad Rey Juan Carlos, URJC)のフェルナンド・スアレズ学長(Fernando Suárez)は多数の文章を盗用した。 → フェルナンド・スアレズ(Fernando Suárez) | 研究倫理(ネカト)

学長と政治家がグルになった場合、どの組織が不正を調査し糾弾できるのか? スペインは学長と政治家が腐敗していたが、幸いなことに、メディアはまともだった。メディアが学長と政治家のネカトを糾弾した。

ひるがえって、日本は主要メディアが弱い。独自取材が少なく、ほとんどの記事は「大本営発表」の御用記事である。東京大学医学系教授のネカトは東京大学がシロと発表すれば、主要メディアはそれ以上追及しない。スペインを笑えない。

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《1》学長のネカト

学長のネカトはかなり困りものである。ネカト疑惑が生じると、基本的には研究者の所属する大学が調査機関となるが、そのトップがネカトをした場合、大学の調査は機能しなくなる。

日本も東北大学、岡山大学など、学長のネカトで紛糾した(している)。

最近だと、ネカトではなくパワハラをした吉武秀哉・教授の処分で山形大学の小山清人・学長がおかしいと、学長の対応が紛糾している。

このような場合、学長を越える権威、例えば、日本学術会議や文部科学省が乗り出すべきだが、乗り出してこない。それで、長いこと紛糾している。

一方、米国は生命科学系なら研究公正局が乗り出すので、学長のネカトでも紛糾しない。というか、米国で学長のネカトで紛糾した例をあまり知らない。

デビッド・ボルティモアは、そういえば、ロックフェラー大学・学長だった。そして、データねつ造事件でロックフェラー大学・学長を辞任している。しかし、ネカト調査の主体はロックフェラー大学ではなく、研究公正局やシークレット・サービスだった。

基本的に大学がネカトを調査するのは構造的な問題がありすぎる。

提案:「警察庁にネカト取締部を設置し、学術ポリスとして、日本全体のネカトを捜査せよ」

《2》盗用以外の悪事

フェルナンド・スアレズ(Fernando Suárez)はフアン・カルロス国王大学(Universidad Rey Juan Carlos, URJC)の学長として、マドリード州・知事のクリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)の修士号取得に便宜を図ったとも指摘されている。 → 法学:「経歴詐称」:クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)(スペイン) | 研究倫理(ネカト)

シフエンテスはマドリード州議会・議員だった2012年(47歳)、フアン・カルロス国王大学(King Juan Carlos University)で法学の修士号を取得した。そして、2015年(50歳)、マドリード州・知事に就任した。ところが、2018年2月(53歳)、上記の法学・修士号取得は虚偽だったことが発覚した。 左:フェルナンド・スアレズ(Fernando Suárez)。右:クリスティーナ・シフエンテス(Cristina Cifuentes)。写真出典

スアレズはまた、国会議員のパブロ・カサード(Pablo Casado)の修士号取得にもシフエンテスと同様な便宜を図ったと指摘されている。 → 法学:「修士号」:パブロ・カサード(Pablo Casado)(スペイン)

そして、保健・消費・社会福祉大臣のカルメン・モントン(Carmen Montón)の修士号取得でも便宜を図ったと指摘されている。 → 盗修:法学:カルメン・モントン(Carmen Montón)(スペイン)

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https://www.onclive.com/web-exclusives/study-offers-solution-for-her2-resistance-in-breast-cancer

《1》不明だらけ

ルース・ループ(Ruth Lupu)の事件は、23年前の1995年12月6日(35歳?)に研究公正局がクロと発表した事件である。

事件が古く、情報がほとんどなく、ルース・ループはどのような状況でネカトをしたのか、誰がどのように見つけたのか、調査委員会はどこまで調査したのか、ねつ造した手紙は公表されたのか、など、わからない。

《2》珍しい事件

ルース・ループ(Ruth Lupu)の事件は共同研究の手紙のねつ造事件である。研究公正局がクロと判定したねつ造事件としては珍しい。

しかし、一般的に考えると、学術界では、論文以外のネカトは、発覚しないだけで、結構行なわれているのではないだろうか?

ハートザー事件では、架空の論文原稿を研究費申請書に「受理(accepted)」または「印刷中(in press)」と記載する改ざんを行なった。論文以外でのネカトは、発覚しないだけで、結構行なわれているのではないだろうか? と書いたら、世界変動展望・著者様が、この手のネカトは日本でたくさん「発覚している」とコメントしてくれた。 → マイケル・ハートザー(Michael K. Hartzer)(米) | 研究倫理(ネカト)

《3》米国でネカトでも、日本ではネカトではない

ハートザー事件で書いたが、ルース・ループ事件も、米国ではネカトだが、日本ではネカトではない。

以下は→ マイケル・ハートザー(Michael K. Hartzer)(米) | 研究倫理(ネカト)

米国では、研究申請書の関係書類を「ねつ造・改ざん」すると、クロと判定され、処分される。理由は、そのことで研究費が不当に採択されるからだ。

一方、日本では、研究申請書で「ねつ造・改ざん」しても、ネカトで処分されない。

日本では、ネカトを「発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造と改ざん、及び盗用である」と定義しているため、研究申請書は対象外になる。 → 2014年8月26日、文部科学大臣決定「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」。

しかし、しっかり考えて、研究申請書を対象外にしたとは思えない。研究申請書に日本の独自性はないからだ。単に、米国のルールに無知な委員が日本のルールを策定した(と思われる)。困ったもんだ。

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《1》研究ネカトした方が得

日本でも、日本を代表するような大企業(神戸製鋼、自動車会社など)が何十年にも渡って検査データを改ざんしていた。それでも主犯者は逮捕・投獄されないどころか、企業に対してもペナルティはほとんどない。これでは、研究ネカトはなくならない。

不正が明るみに出て、企業は損失を負うが、この損失は、結局は国民の損失である。

本来、二度と起こらないように、主犯者を厳しく処分し、二度と起こせない社会システムにすべきだが、日本はどちらもしない。だから、隠れ改ざん企業は現在もゴマンといるに違いない。

以前記事にしたグラクソ・スミスクライン社(GlaxoSmithKline)のパクシル(Paxil)事件での感想を以下に再掲する。 → 製薬企業:研究329(Study 329)、パクシル(Paxil)、グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)(英) | 研究倫理(ネカト)

30億ドル(約3千億円)の罰金で米国史上最高の罰金額だとある。大変な額で、製薬会社はこれでダメージが大きく、懲りただろう、と、事件を調べ始める前は感じていた。

どころがどっこい、少し調べただけで、グラクソ・スミスクライン社は、1997 年-2006年にパクシル(Paxil)で116億ドル(約1兆1600億円)を売り上げていた。同社の全収益の約10分の1を生み出した。

そして、罰金額は、売り上げ額の26%でしかない。2009年までの訴訟費用の約10億ドル(約1,000億円)を足しても、損害額は売り上げの額の34%でしかない。

売り上げのすべてが収益ではないが、コストを勘案してプラス・マイナスしても、大幅なプラスだろう。製薬会社にとって、研究ネカトした方が得なことが明白だ。見つからなければさらに得だが、見つかっても、十分得になっているのである。

データ改ざん論文の第一著者であるマーティン・ケラー教授、ゴーストライターのサリー・ラデンは処分を受けていない。

こういう事件があるたびに、処分が大甘すぎる、と思う。だから事件は無くならないんですね。社会の支配層は自分たちの利益を守る暗黙の価値観が強い。支配者層の結託論理が働いている。

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《1》青年期の師の重要性

アルサブティの行為は、論文盗用が有名だが、履歴も偽造している。いろいろ盗用する詐称者(impostor)が適切かもしれない。

成長期に、研究のあり方を間違って習得し、また研究者の生き方も間違って身につけたと思える。

アルサブティが研修医として勤めたボストン大学・カーニー病院のスポークスマンは「アルサブティは良い研修医だった」と述べている。モンソワ医学センターの関係者も「彼は、ここでは実験研究をしなかったが、よい内科医だった。患者への対応マナーは優れていて、いつもきちんとした恰好をし、金銭的にも裕福に見え、患者は彼を「グッチ先生」と呼んでいた」と述べている。

研究も臨床も熱心でハードワーカーだったというから、成長期にまともな研究観と人生観を形成していれば、幸福な人生を送れたのではないだろうか。

研究観の形成は、青年期に初めて研究世界に入った時の師がきわめて重要で影響力が大きい。17-20歳の時、イラクのバスラ医科大学でがん研究を学んだ師・アル‐サヤブ(Al-Sayyab)博士が教えるべき立場の人だった。とはいえ、アル‐サヤブ(Al-Sayyab)博士自身が品行下劣な人物だったようで、なんともはやである。

重要な教訓は、「弟子に重要なことは、優れた師を選ぶこと」である。天野 浩は赤崎 勇を師に選んだから、54歳でノーベル物理学賞(2014年)を受賞したのである。

そして、米国に最初に滞在したテンプル大学の微生物学者・ハーマン・フリードマン(Herman Friedman)も悪かったのだと思う。

生命科学がとても貧弱な中東の発展途上国からやって来た若干23歳の青年が、「生命科学の基礎知識」を少しぐらいどころか、かなり知らなくても、仕方ないと考えないのであろうか?

フリードマンは期待しすぎだ。大学は教育機関なので、1か月で追い出さないで、自分の研究室でアルサブティを躾ければ、その後のアルサブティ事件はなかったハズだ。

フリードマンは、発展途上国から来た若者への配慮に欠けていた。アルサブティが突然やって来た1977年9月22日はフリードマンの46歳の誕生日だった。誕生日に突然来訪したのは、フリードマンにもアルサブティにも不運だったに違いない。

そして、翌1978年、フリードマンはテンプル大学からサウスフロリダ大学(University of South Florida)に移籍している。アルサブティがフリードマン研究室に滞在した頃、フリードマンは移籍に忙殺され、余裕がなかったのだろう。

経歴をみると、アルサブティは頭脳明晰で行動も大胆である。臨床医としての勤務態度は優れていたという証言もあり、資質は良いものを持っていたのに違いない。

《2》メディアの過剰さ

アルサブティ事件の解明は、1980‐1982年に詳細に追ったウィリアム・ブロード(William J. Broad) に大きな功績がある。彼の記事や書籍がその後のアルサブティ事件の基本情報になっている。

141211 bill-broad-articleInline[1]ウィリアム・ブロード(写真出典)は、1986年と1987年の2度のピューリッツァー賞、2002年にエミー賞、2007年にデュポン賞を受賞した。それら受賞対象は宇宙科学などネカトとは別の報道だが、米国社会では優れた科学ジャーナリストとして認められている。

しかし、アルサブティの記述に関して言えば、アルサブティを悪者にし、事件をあおっている印象がある。アルサブティに「報道刑」を科している。まあ、そういう記事を書かなければ、記事は売れないし、科学ジャーナリストとして認められない。優れた記事を書くことよりも、売れる記事を書くことが、科学ジャーナリストとして認められる道である。

つまり、100人が心酔して各100回読む濃厚な記事よりも、1万人が1回読む軽いセンセーショナルな記事の方が100倍儲かる。だから、アルサブティを悪者にし、事件をあおってしまうのだ。このメディアの問題をなんとかできないものだろうか。

職業記者ではない人が、無報酬でウェブ発信するのは解決法の1つだろう。我田引水になるが、白楽のここでの記事は、バナー広告はなく、白楽が金銭的に収入を得る意図は全くない。そういうスタンスで白楽は「研究者の事件」を書いている。

研究者が専門知識・情報を国民に伝えるシステムには改革が必要だろう。

《3》ネカト者の職業

アルサブティはネカトをしたことで、臨床医としての資格をはく奪された。ネカト者は、臨床医として不適格か? 研究ネカトは道徳と言うより研究規範の問題なので、医師免許は取り消されなくても良いように思う。「研究」規範と「医療」規範は異なるからである。ただ、人間としての道徳面に問題があれば、大学教授、教員、医師などの職業は不適格だろう。

日本では、研究ネカトや研究クログレイで大学・研究職を辞職しても、医師免許は取り消されないことが多い。医師として勤務し続ける人は多い。大学教授や研究職をし続ける人も多い。

では、ネカト者は、発覚後、何を職業としてはいけないか? 白楽は、「研究」はしてはいけないと思う。また、研究者を育成する「大学教授」はどうだろうか? 否定的である。「医師」は境界線上である。研究ネカトを犯した人のその後の職業は、何が良くて何が悪いか、一度、考えるべき問題だ。

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《1》モッタイナイ

今まで、数件のアカハラ事件を記事にしてきた。今回のシンガー事件もそうだが、どれも、モッタイナイ。

タニア・シンガー(Tania Singer)はこの事件で、もう2度と、優れた研究成果を挙げられないだろう。なんで、こんなことになってしまうのか? もっと早く手を打つことができなかったのだろうか? ドイツにとっても、人類にとっても、大きな損失だ。モッタイナイ。

  • 「アカハラ」:天文学:マルセラ・カロロ(Marcella Carollo)(スイス):女性、52歳?、辞職
  • 「アカハラ」:ナズニーン・ラーマン(Nazneen Rahman)(英):女性、50歳、辞職
  • 「アカハラ」:天文学:グィネヴィア・カウフマン(Guinevere Kauffmann)(ドイツ):女性、50歳、辞職なし
  • 「アカハラ」:タニア・シンガー(Tania Singer)(ドイツ):女性、48歳、辞職なし
  • 「アカハラ」:トーマス・ジェッセル(Thomas M Jessell)(米):男性、66歳
  • 「アカハラ」:ベセル・ヴァン・デア・コルク(Bessel van der Kolk)(米):男性、75歳
  • 「アカハラ」:ニコラス・ロングリッチ(Nicholas Longrich)(英):男性
  • 「アカハラ」:天文学:ライチャード・バウウェンズ(Rychard Bouwens)(オランダ):男性

《2》日本

日本でも研究者のアカハラ事件が報道されている。 → 日本のネカト・クログレイ事件一覧 | 研究倫理(ネカト)

欧米のアカハラ研究者は、今回のシンガー事件もそうだが、《1》のように、著名な研究者が多い。

一方、日本では、こういっては何だが、2流・3流の研究者がアカハラ事件を起こしている。 なんかヘンだ。日本の著名な研究者はアカハラをしていない? スポーツ界を見ればわかるように、日本の一流のスポーツ人がハラスメントをしている。日本の著名な研究者は、今のところ、告発されていないだけなんだろう。

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《1》曖昧

この論文では、医療者教育学(health professions education :HPE)の研究者を対象に研究クログレイ行為の頻度を調査した。

ただ、対象者が多様過ぎて、結論の信頼度が低い。

例えば、米国(26.4%)の研究者とアジア(6.3%)やアフリカ(6.3%)の研究者では、文化習慣の違いが大きく、研究クログレイ行為の許容度はかなり違うと思う。それを一緒にした数値を出しても、その数値のもつ意味が弱い。焦点が絞れない。

研究領域として、社会科学(49.7%)、臨床医学(28.3%)も一緒にしている。

職階も正教授(23.7%)と院生(7.1%)やポスドク(3.9%)では、違いが大きすぎると思う。

また、医療者教育学(health professions education :HPE)の研究者を対象に行なったアンケートだが、医療者教育学という研究分野に特有の回答なのか、他分野でも同じ回答なのか、焦点が絞れない。なお、分野間の比較は興味深いと、白楽は思う。

《2》アンケート

この論文では、1,840人に電子メールを送付し、590人の有効回答者が得られたとある。アンケートで悪い行為を自己申告させる方式は、無理がある。調査が破綻していると思う。

1.悪い行為をしている人は回答したくないので、回答しない。
2.研究倫理に関心のある人は回答するが、研究倫理に関心のある人は、印象としてネカト・クログレイをしていない人が多い。

上記の2点を考えれば、回答しなかった1,250人のネカト・クログレイ行為は回答した590人と異なり、もっと、高頻度でネカト・クログレイ行為をしていると思われる。

となると、有効回答者590人の回答内容を分析しても母集団の実際の状況を反映していないと思われる。

《3》定点観測

《2》でネカト・クログレイ行為のアンケート調査に否定的な意見を書いた。

しかし、日本では、この手の調査が全くない。おざなりの調査はカネの無駄だが、どこかの誰かが本気で日本の実態調査をした方がいい。調査項目として参考になる先行研究は十分蓄積している。

例えば、定点観測、つまり、毎年(あるいは2年や5年に一度)、同じ母集団に対して、同じような質問事項のアンケート調査をすれば、10年、20年経過した時、経年変化は動向としての事実をつかめると思う。

そして、うがった見方だが、アンケート調査を通して、研究者に効率的にネカト・クログレイ教育ができる。白楽は、実は、この教育効果は大きいと思っている。

●5.【関連情報】

① 2018年3月2日のアリソン・マクック(Alison McCook)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:“Ethical shades of gray:” 90% of researchers in new health field admit to questionable practices – Retraction Watch

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《1》人間は多面的

クリスチャン・クレプキー(Christian Kreipke)はウェイン州立大学の助成金詐欺(1億6900万ドル、約169億円)を指摘した正義の告発者である。

一方、その少し前、ねつ造・改ざんデータを論文に発表していた。

世の中に善人と悪人がいるのではなく、1人の人間の中に善悪が混在している。

《2》大学の不正

日本ではあまり問題にしないが、勿論、大学も不正をする。ウェイン州立大学の助成金詐欺は裁判でシロだが、記事で発言している教員たちの証言を読めば、ある程度の不正をしていたと思われる。だからこそ、改善案が検討され、その後、改善された。

経理で不正していたのなら、ネカト調査でも不正している可能性はある。

一般的に、大学のネカト調査結果が最終結論とみなされる。ネカト調査で大学が不正をした場合、欧米や日本は、誰が、どうチェックするのだろうか? そして、ネカト調査に不正があったらどう修正できるのだろうか?

ウプサラ大学のシロ判定をサイエンス誌・編集部が調査し疑念を示し、スウェーデン政府の中央規範審査委員会がクロと判定した。
→ ウウナ・ロンステット(Oona M. Lönnstedt)(スウェーデン)改訂 | 研究倫理(ネカト)

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《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明である。

ネカト防止策は、この事件からは学べない。

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《1》過去の研究費申請書や発表論文

http://www.scbasociety.org/Hepatology/Hepatology.html

研究公正局は、リ・ワン(Li Wang)の9件のNIH研究費申請書にデータ改ざんがあったと発表した。

9件のNIH研究費申請書にデータ改ざんが見つかったが、研究費を使用する前だった。

27件もNIH研究費を受領しているのに、それらの研究費申請書にデータねつ造・改ざんはなかったのだろうか? また、発表論文にデータねつ造・改ざんはなかったのだろうか?

データねつ造・改ざんが指摘してされていないので、過去の研究費申請書や発表論文にネカトはなかったと受け取れる。

にわかには信じがたい。

ネカト研究者は若い時からネカトを繰り返すのが通例である。教授になっていて、既にたくさんの研究費申請が採択されている研究者が、53歳になって初めてネカトをするとは考えにくい。

また、研究費申請書でネカトをした研究者は、論文でもネカトをするのが普通である。

まさか、研究公正局は過去の研究費申請書や論文のネカトを調査しなかったということはないのでしょうね。

《2》研究職を続ける

リ・ワン(Li Wang)の締め出し処分は1年間である。

研究公正局がクロと発表してから約1か月後の2018年9月27日現在、リ・ワンはコネチカット大学(University of Connecticut)・教授に在職し、辞職していない(解雇されていない)。
→ Faculty | Physiology and Neurobiology

多分、研究公正局でクロと判定された後でも研究職を続けられた数少ない研究者の1人になるだろう。
→ 研究ネカト者が研究を続けた | 研究倫理(ネカト)

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《1》処罰されない

コーエン事件は、著名研究者が数十年にもわたりセクハラしてたという困った事件である。

セクハラは犯罪である(sexual harassment is illegal:Sexual harassment – Wikipedia)。

ところが、スティーヴン・コーエン(Steven M. Cohen)は、処罰されていない。ナンカ、おかしくないか? 勿論、大学教授を辞職したが、それだけである。

これではヤリ得である。

《2》「セクハラ」加害者の匿名・顕名:日米差

以下の文章は、著名な生命科学者のセクハラ事件で書いた内容・文章と同じである。
→ 犯罪「セクハラ」:インダー・ヴェルマ(Inder Verma)(米) | 研究倫理(ネカト)

日本と比べると、米国のセクハラ事件は、事件を本気で解決しようとする気合が感じられる。

日本では、セクハラをした大学教員は匿名だから、それと知らずに、他大学が採用してしまう。採用し、解雇し、裁判で負けた。最初から採用すべきではないでしょう。教授1人の年間給与が1000万円として、裁判費用、大学のダメージなどが計1000万円、合計2000万円ほどの損害でしょうか?

 前任校で「セクハラ行為があった」などと認定されたために、新たな勤務先の都留文科大(山梨県都留市)から解雇されたのは不当だとして、同大元教授の40歳代男性が同大に解雇無効などを求めた訴訟で、東京地裁立川支部(太田武聖裁判官)は21日、男性の主張を認め、同大に解雇期間中の賃金の支払いを命じる判決を言い渡した。
判決などによると、男性は宮崎大(宮崎市)を2012年3月に退職、同年4月から都留文科大に勤務していた。男性が宮崎大を退職後、同大は「在職中にセクハラ行為などがあり、懲戒解雇に相当する」と公表。男性は事実関係を争っていたが、都留文科大は宮崎大の公表内容を理由に、男性を解雇した。
(「「前任校でセクハラ」教授解雇、大学に無効判決」、2014年04月22日 Yomiuri Shimbun)

日本の大学では、被害者を守るためという口実でセクハラ教員を匿名にする。そのことで、実際は、加害者を守り、支援し、セクハラ行為の再犯を促進しているかのようである。セクハラ事件を本気で解決し、再発を防ごうとしているようには思えない。
→ 日本のネカト・クログレイ事件一覧 | 研究倫理(ネカト)の【日本の研究者のセクハラ・アカハラ・パワハラ事件一覧】

《3》隠れた被害者

以下の文章は、著名な生命科学者のセクハラ事件で書いた内容・文章と同じである。
→ 犯罪「セクハラ」:インダー・ヴェルマ(Inder Verma)(米) | 研究倫理(ネカト)

スティーヴン・コーエン(Steven M. Cohen)は、8人の女性に、1980年代-2018年(30代-68歳)の30数年間にわたってセクハラをしていた。

この裏に、新聞記事には書かれてない、イヤ、書けない(多分)忌まわしい事実があると思われる。つまり、コーエンの性的欲求に屈した被害女性がかなりいると思えることだ。

セクハラ行為をうまく拒絶できた女性は今回告発できただろうが、拒絶できなかった女性は表に立ちたくないだろう。そういう女性が何十人もいるに違いない。

コーエンが30数年間にわたってセクハラをし続けたということは、その間、失敗よりも成功する回数が多かったからに違いない。ある程度成功したからコーエンはセクハラをし続けたのだろう。ことごとく失敗すれば、途中でやめたに違いない。

ということは、メディアが公表している事態よりも現実は深刻だと思われる。

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《1》研究者の自由と「困ること」

研究クログレイ行為は、度合はいろいろだが、「困ること」が「大」から「小」まである。管理者側が管理しやすいルールを制定し、そのルールに違反した場合を研究クログレイとしている項目もある。

規制が多いと、人間は委縮しがちである。研究には、「自由な雰囲気」と「異常と思えるヤル気」は必須である。できれば、破天荒な発想と研究活動も許容したい。

マンガやコスプレのように、かつて卑下されていた文化が、新しい価値観を生み出す。つまり、規格外の行動であったり、他人には病的と思える思考傾向・振る舞いが、新しい価値観を生み出す。

破天荒な発想をする研究者の行為でも、その結果、「困ること」にならないように折り合いをつける方策が望まれる。基準は時代と共に変化するから、微妙である。ーーーーーー

《1》日本のネカト・バランスシート:下線は訂正後。

日本政府の毎年のネカト経費は3億円+4億円(池上様のコメント:AMED研究公正法務部の年間予算は4億円弱あります) 。大学のネカト研究者の経費が1億円。大学の倫理教育費が全国で1億円。大学はネカト調査に1件1,000万円を使い、全国で毎年80件調査しているとして8億円。総計、日本は国民の税金を17億円使っている。

冒頭の「ワンポイント」の人物名と数字を埋めました。■を残したまま、続けて人物名と数字を赤字で記入した。

日本は国民の税金を毎年■17億円使ってネカト対策し、国民の毎年の損害■兆円分を防いでいる。それでも、毎年■0.108兆円の損害が発生している。分析してみると、日本国民の税金で2018年の政府ネカト対策費■7億円を使ったが、■塚本圭二(文部科学省・研究公正推進室長)さんが■円、■さんが■円、・・・、もらった(ている)。今後、新たに、■さんに■千万円、■さんに■千万円、・・・、を助成すると、国民の毎年の損害は助成額の■倍以上減る。

ゴメン、ほとんど埋まりません。

皆さん、埋められました?

そして、「日本は研究ネカト大国」と世界で評価されたことによる日本国民の損害額は■1兆円です。

白楽は、1兆円、と見積もりましたが、根拠? 聞かないでください。



「聞かないでください」と書いたが、この際、少し言おう。

「日本は研究ネカト大国」で、日本の科学技術はますます衰退する。

日本は観光に力を入れてるが、観光が主力では国は衰退する。ギリシャになってしまう。

台風で関西国際空港のほぼ全域が冠水した。地震で北海道全域が停電。豪雨で西日本は山崩れ。日本に台風、地震、豪雨は毎年くる。それなのに、防御できないオソマツな科学技術力。数十人が死んでも、国土交通大臣の首が飛ばない。

国土保全や治水工事は国の責任でしょう。江戸幕府も明治政府も国土保全や治水対策に熱心だった。3年前の2015年に鬼怒川の越水や堤防決壊し、数十人が死んでも、日本は教訓を学ばない。雨が降れば、相変わらず、堤防決壊で床下浸水。国土交通大臣の首が飛ばない。日本って、なんか、おかしくないか?

一方、膨大なカネをかけてオリンピック。はたまた、カジノ。その上、役に立たない米国の対空ミサイル購入。

観光や娯楽(スポーツ)という短期の享楽的なことにうつつを抜かし、カネを投入する。米国への追従にカネを投入する。偉い人は誰も異議を唱えない。100年の計の教育、基盤の科学技術にカネを投入しない。

「日本は研究ネカト大国」で、日本の科学技術はますます衰退する。で、1兆円。

《2》カネ・かね・金

今回は研究ネカトを金の視点で論じたが、基本的には違和感がある。

規範問題で、カネを論じるのは、本質的に違う気がする。カネではなく、研究者としてのあり方・生きざま・矜持・美学がもっと優先すべきだと思う。

しかし、現代はどう狂ってしまったのか、「世の中カネ・カネ・カネ」と、カネに最大の価値をおいている。研究者も同じでカネ・カネ・カネ。「教育は国家100年の計、科学技術は国の基盤」なのに、国も大学もカネ・カネ・カネである。

《3》得する人も多い

研究ネカト事件では、一般的に社会と研究者はネカト者の「悪」を強調するが、損得やカネで見ると、儲かる人たちがしっかりいる。

もちろん、その人たちは、自分が儲けるために研究ネカトを奨励しているわけではない。しかし、大きなネカト事件が起これば明らかに収入は増える。金銭的にはウレシイに違いない。世の中、両面があって、複雑である。

白楽もネカト研究者で、考えてみれば、現役時代は「研究ネカトでメシを食ってきた」。「他人の不幸でメシを食ってきた」ことになる。本ブログの執筆では収入はないので、現在は、金銭的な利益とは無縁だが、「人の役に立っている」という勝手な自己満足の利益を得ている。

もっとも、「他人の不幸でメシを食う」こと自体は、問題ないと考えている。さらなる不幸を回避するために人は医者や弁護士にカネを払う。医者や弁護士も「他人の不幸でメシを食っている」。

《4》文部科学省は大学を絞めつける

文部科学省はネカトで問題を起こした大学への間接経費を2017年度(?)から削減している。
→ 2017年05月15日記事:研究不正の内部告発、“噂の深層”にどこまで労力をかける?

このペナルティは如何にも「お上の発想」である。このような安易な対処は、ネカト問題の解決をゆがめてしまうだろう。おかしいと指摘する人もいる(以下)。
→ 2017年11月22日記事:「研究不正があったこと」を理由に低評価を与える国立大評価委の姿勢は間違いである – 井戸端会議・瓦版

《5》備考
① 旧版:2014年8月30日記事を2015年8月15日保存:1‐1‐4‐8.研究規範のビジネス化 | 白楽ロックビルのバイオ政治学
② 未読。閲覧有料:Pediatric Research (2015) 78, 482 doi:10.1038/pr.2015.150 「The Cost of Scientific Misconduct : Pediatric Research
③ 2012年、Turnitin社:True Costs of Research Misconduct、2012 iThenticate Report(PDF9ページ)

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《1》根本はなにか

ネカトは「なぜいけないのか?」「何がいけないか?」「何をどうすべきか?」は3点セットなのだが、「なぜいけないのか?」を噛み砕いて説明している論文・文書はとても少ない。

論文・文書は、「研究ネカトは悪い」のを自明のように処理している。根本の議論をしない。どうして、根本の議論をしないのだろう?

《2》「間違い」でも「困ること」はネカトと同じ

ネカトは研究不正で単純に「悪」とされている。ネカト者本人が不正と知りつつ、意図的にネカトをしたと認めた場合、判断は容易で、ネカト研究者はペナルティを科される。

しかし、ネカトではなく「間違い」と本人が主張し、調査委員会が「間違い」と判定した場合、研究者はペナルティを科されない。

実際は、ネカト者が「間違い」と主張し続けた時、「ねつ造・改ざん」なのか「間違い」なのか、第三者が的確にシロクロの線引きをするのは難しい。「盗用」の場合は意図的に盗用したのか、ウッカリ、引用し忘れたのか、これも、第三者が的確にシロクロの線引きをするのは難しい。

しかし、自動車で意図的に人をひき殺しても、「間違って」ひき殺した事故でも、殺された人と家族にとっては死亡で、結果としての被害は同じある。つまり、「間違い」と判定された研究論文でも「困ること」が起こる。その「困る」程度はネカト論文と同等である。

例えば、治療に医薬品1mgが適量のところ10mgが適量と「ねつ造・改ざん」した場合でも、1mgをタイプミスや誤植で「間違って」10mgと発表した場合でも、服薬した患者の死亡率や副作用の上昇という健康被害の程度は同じである。

「困ること」の視点で見ると、「間違い」だったで済ませられない。

研究ネカトが「なぜいけないのか?」を明確に理解していれば、軽々と「間違い」だからお咎(とが)めなし、で済ませてはならない「間違い」もあるということだ。

《3》 研究文書・発表で、「序論」、「材料と方法」は、他人の文章の多量コピペで良し。「盗用」の基準を変える

「盗用」は「盗む」とあり、いかにも「悪い」イメージを与える。小説、短歌などの文学では、表現や文章そのものが命なので、他人の文章を自分の作品のように発表・提出するのはマズイ。創造的価値を「盗む」行為で、小説、短歌など創作活動を破壊し、知的所有権を侵害している。

しかし、研究文書・発表は文学などの芸術とは異なる。他人の文章や表現を盗用しても、アイデア・データ・結果を盗用しなければ、深刻な問題ではない。これは程度問題なのだが、基準を設けて認めるべきだ。

生命科学論文を例に具体的に考えよう。論文は、①論文タイトル、著者名、所属、②要約、③序論、④材料と方法、⑤結果、⑥考察、⑦参考文献、⑧図・表からなるのが一般的である。

このうち、「①論文タイトル、著者名、所属」は当然ながら、「③序論」「④材料と方法」「⑦参考文献」に、表現としての創造的価値はどれほどあるだろうか?

生命科学の例を挙げれば、ウシの血液タンパク質Aの構造を世界で初めて決定し、論文を書いたとしよう。次に、マウスの同じ血液タンパク質Aの構造を決めて論文を書く時、「①論文タイトル、著者名、所属」「③序論」「④材料と方法」「⑥考察」「⑦参考文献」はほぼ同じだ。「②要約」「⑤結果」もほぼ同じ文脈でデータだけが少し違うことになる。

ウシ、マウスの次にヒトを材料に、別の研究者がヒト・血液タンパク質Aの構造を決定しても、「③序論」「④材料と方法」「⑥考察」「⑦参考文献」はほぼ同じで、「②要約」「⑤結果」もほぼ同じ文脈でデータだけが少し違う。こうやって人類社会の知が蓄積されるが、研究のアイデアも手法も同じで、文章も基本的に同じだ。そこには個性を反映した表現は、むしろ、ないことが科学論文としては推奨されている。研究者ごとに表現を変えなさいとするのには無理がある。

生命科学と限らず、科学・技術・学術の全分野でもいい。科学・技術・学術の研究発表(論文、特許、口頭発表など)では、大事なのは発見・発明であって、「新しい」「重要な」「役立つ」発見・発明が1、2、3であり、その他は4、5である。だから、研究発表では、「新しい」「重要な」「役立つ」かどうかで勝負してもらう。文章の類似性はどうでもいい。

「新しい」「重要な」「役立つ」発見・発明はどこに記述するか? 「⑤結果」「⑥考察」である。だから、ここに、「新しい」「重要な」「役立つ」発見・発明の記述がされる。「新しい」部分は、他人の文章の多量コピペでは書けない。その他の部分は、極端なハナシ、「新しい」「重要な」「役立つ」発見・発明の記述とさほど関係ない。だから、「③序論」、「④材料と方法」は、他人の文章を多量コピペ(100%近く利用)しても良いと考える。

例えば、「タンパク質の定量はローリー法で行ないました」という「④方法」の記載は、数パターンの書き方があるだけで、自分の言葉で書こうが、他人の文章を100%利用しようが、利用された先行論文には何も損害はない。その文章には、もともと創造的価値や生産的価値がないからだ。「盗られて」も損害がないので、問題視する方が異常である。

なお、多量コピペ(100%近く利用)してもいいと書いたが、引用はする。行為は「盗用」行為でも、現在のルールでは、引用すれば「盗用」に該当しない。だから、引用すればよい。

「①論文タイトル」は看板なので、全く同じタイトルだと識別できないので、全く同じにしてはいけない。短いので、盗用でなくても、たまたま偶然一致する可能性はある。しかし、過去に例があれば、避けるべきだ。査読者がわかれば注意すべきだ。「①論文タイトル」、全く同じでなければ、「盗用」でもかまわない。

《4》研究での「自己盗用(self-plagiarism)」は、基準を設けて認める

研究成果は、研究者個人の財産というより、発表した時点で、人類共通の財産になる。個人の権利を確保しておきたい場合は特許を申請する。特許を申請する・しないのいずれにしろ、研究者は、なるべく多くの機会を作り、新しい有益な知である自分の研究成果を多くの人々に活用してもらいたい。

だから、同じ研究成果をいろいろな学術誌。学会・研究会で発表する。また、研究の1次情報(原著論文)を、2次情報(研究者向け解説記事)、3次情報(一般人向け啓蒙記事)に利用する。自分の研究文書・発表を同じ言語および異なる言語で「自己盗用(self-plagiarism)」であっても、再発表する。

研究文書・発表を読む・聞く側の人間は、これら「自己盗用(self-plagiarism)」された文書でも、インターネット普及前はほとんど重複して読むことはなかった。特に、英語発表と日本語発表では重複はとても少なかった。インターネットが普及した現在、情報があふれていて、検索することができるので、同じ内容の文書を2度読んでしまうことがある。それでも、メディアを変えることで自分の研究成果が多くの人々に伝わりやすい。

出版業界は、二重出版で損害が少しでる。でも「自己盗用(self-plagiarism)」ではほとんど損害はないだろう。

だから、研究ネカトが「なぜいけないのか?」の視点に立てば、研究での「自己盗用(self-plagiarism)」は「困ること」が少ない。基準を設けて、「自己盗用(self-plagiarism)」をもっと認めよう。

《5》教育での「盗用的行為」は、基準を設けて認める

学部生・院生の実習レポート・授業レポート・卒業論文・修士論文はおおむね学内文書・発表である。これらの文書は通常、非営利であるし、学外で発表する学術出版物とは異質である。博士論文は基本的に学外に出るので、学術出版物と同等とみなすべきだろう。

教育で何かを学ぶ過程は以下の面がある。

「学ぶ=真似ぶ」であり、「習う=倣う」である。師は弟子にいちいち教えることをしていない。弟子は、師の考え・技・スタイルを “盗ん” で育つのだ。“盗用的行為(つまり、「真似る」行為)” は、学習上の必要なスキルだと考えられる。(白楽ロックビル(2011):『科学研究者の事件と倫理』、講談社)

学部生・院生の実習レポート・授業レポート・卒業論文・修士論文は習作である。現状の規則よりも緩やかにし、引用スキルを学習させる過程と考え、実質的に、“盗用的行為(つまり、「真似る」行為)”を認めてよいと考えている。その理由は、学ぶ過程であることと、これらの行為が、知的財産システムを破壊するとは思えないからだ。

それに、研究ネカトが「なぜいけないのか?」の視点に立てば、教育での、“盗用的行為(つまり、「真似る」行為)”は「困ること」が少ない。

これら、学内文書・発表での「盗用」は、基準を設けて認めるべきだろう。基準は、

  1. 上記《3》の適用。主要な部分が盗用されなければ良しとする。判断はカンニングと同じ。
  2. 引用は必須とする。なお、引用すれば盗用ではないので、引用スキルを、卒業までに身につけさせる。
  3. 引用をし忘れたり、間違えても、数回(3回?)までは許容する。これは、物事をすぐには習得できない学部生・院生が多いからだ。

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《1》2018年現在のコスト

素晴らしい分析である。ただ、2000-2005年のコストを2018年現在のコストに換算するといくらになるのだろう? 物価上昇の経年変化をかければいいのだろうか?

《2》タイプ1—調査費用

ギャモンの本論文では、2000–2005年の間、研究公正局が受けたネカト申し立て件数を2000年に173件、2001年に196件などと表3に示している。研究公正局の調査監査部門(Division of Investigative Oversight)の全部の予算をこの件数で割って、1件当たりの調査費を算出している。

しかし、実際には、申し立てられたネカトはみな同じように調査されているわけではない。

研究公正局のローレンス・ローデス(Lawrence J. Rhoades)の論文「ORI Closed Investigations into Misconduct Allegations Involving Research Supported by the Public Health Service: 1994-2003」は、米国・研究公正局の1994~2003年の10年間の分析を記載している。

その10年間に、研究公正局受けたネカト申し立て件数は1,777件である。しかし、調査に入ったのは19%の329件しかない。12%の218件は他省庁の管轄で、69%の1,230件は調査の基準に達していない。つまり、研究公正局受けたネカト申し立ての内81%は最初の軽いチェックで、調査対象外になっている。

これら軽いチェックだけの申し立ての調査は、ほとんど経費がかからない。一方、本調査になったケース、それもクロと判定したケースは、大きな費用がかかったに違いない。この点を、タイプ1—調査費用(Investigative Costs)の「研究公正局の調査費用:ステップ5-ステップ7」で考慮すべきだろう。

《3》17件のネカト事件

ギャモンの本論文では、2000–2005年の間、研究公正局がクロとした17件のネカト事件をサンプルとしてデータを提示している。17件のネカト者は、教授4人、準教授5人、助教授7人、講師1人だった。

しかし、この17件がどのように選ばれたのか論文に説明がないので不明だが、研究公正局が実際に調査した職階の比率とは異なる。

研究公正局のローレンス・ローデス(Lawrence J. Rhoades)の論文「ORI Closed Investigations into Misconduct Allegations Involving Research Supported by the Public Health Service: 1994-2003」は、米国・研究公正局の1994~2003年の10年間の分析を記載している。

その10年間に、研究公正局に研究ネカトの告発が1,777件あり、調査に入ったのが274件である(上記329件と異なる理由はわかりません)。階級別に分類すると、調査に入った274件の内、準教授が55件(20%)で最も多く、次いで、テクニシャンが47件(17%)である。つまり、ギャモンの本論文の17件のネカト事件は実際にネカト調査した職階の比率ではない。クロと結論された職階の比率とも異なる。

階級調査件数割合(%)クロ割合(%)
教授441565
準教授55202416
助教授30111310
ポスドク44162720
研究助手22817

13

院生・学生2281411
テクニシャン47173124
不明13511
274100133100

●5.【関連情報】

① 2011年のエリザベス・ギャモン(Elizabeth Gammon)論文:Gammon E, Franzini L.,: Revisiting the cost of medical student education: a measure of the experience of UT Medical School-Houston. J Health Care Finance. 2011 Spring;37(3):72-86.

エリザベス・ギャモン(Elizabeth Gammon)http://www.ubalt.edu/cpa/faculty/alphabetical-directory/elizabeth-gammon.cfm
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《1》環境ホルモン

スティーヴン・アーノルド(Steven F. Arnold)の事件は約20年前の事件なのに、環境ホルモンという脚光を集めた分野のネカトだったためか、情報がソコソコ残っていた。

それにしても、全データが架空・ねつ造というのもスゴイ。

アーノルドは1995年に5報(全部第一著者)、1996年に11報(4報が第一著者)、1997年の11報(3報が第一著者)と、短期間に多量に出版している。これらもデータねつ造論文ではないだろうか? チャンと調査していない印象だ。

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《1》ユニークな改ざん

マイケル・ハートザー(Michael K. Hartzer)のネカトは、「受理(accepted)」でも「印刷中(in press)」でもない論文原稿、あるいは論文タイトルだけを適当に考えた架空論文を、研究費申請書に「受理(accepted)」または「印刷中(in press)」と記載して、業績の見栄えを良くするという改ざんだった。

誰がこの不正を見破ったのか不明だが、8年間以上、発覚しなかった。

この改ざんは珍しい。今まで数百件のネカトを調べたが、初めてである。なお、「珍しい」と書いたが、この手のネカトは実際は多数行なわれていると思われる。ただ、発覚していない、ととらえる方が正しいと思う。

《2》米国でネカトでも、日本ではネカトではない

米国では、研究申請書で「ねつ造・改ざん」すると、クロと判定され、処分される。理由は、そのことで研究費が不当に採択されるからだ。

一方、日本では、研究申請書で「ねつ造・改ざん」しても、ネカトで処分されない。

日本では、ネカトを「発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造と改ざん、及び盗用である」と定義しているため、研究申請書は対象外になる。
→ 2014年8月26日、文部科学大臣決定「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」。

しかし、しっかり考えて、研究申請書を対象外にしたとは思えない。研究申請書に日本の独自性はないからだ。単に、米国のルールに無知な委員が日本のルールを策定した(と思われる)。困ったもんだ。

《3》世界変動展望・著者様 から以下のコメントをいただきました。長文注意

白楽ロックビル 様

お世話になっております。

貴殿が公表されたマイケル・ハートザー氏の業績改ざんの件を拝見しました。
なかなか良い記事だと思います。米国ではこれがネカトになる事は私にとって新しい知見でした。

この記事の中で
「この改ざんは珍しい。今まで数百件のネカトを調べたが、初めてである。なお、「珍しい」と書いたが、この手のネカトは実際は多数行なわれていると思われる。ただ、発覚していない、ととらえる方が正しいと思う。」

という言及がありました。日本では架空の論文の記載や虚偽記載による業績不正はネカトと扱われていませんが、これまでも何度か発覚しています。日本では業績詐称の一種として扱われています。

(1)アニリール・セルカン氏の大量の業績・経歴詐称
https://archive.is/SiSS

これは日本で発覚した業績詐称系で最も大規模なものだったと思います。貴殿のネカト一覧でも参考文献として紹介されているものです。東大はアニリール氏を懲戒解雇相当としました。

(2)竹内潔氏の業績詐称
http://archive.is/kwG2d

これは貴殿のネカト一覧にもあるもので、架空の業績などを記載して一度懲戒解雇になりましたが、出勤停止60日で和解しました。裁判では架空の業績記載が認められたようです。

(3)山口県立大学学長の業績虚偽記載

http://megalodon.jp/2011-1110-1501-20/www.47news.jp/CN/200510/CN2005101201001873.html

国際文化学部・社会福祉学部の設置認可申請に伴い文部省(文部科学省)に提出した書類に、発表予定として論文を記載したが、発表していなかった。学長は辞任。

(4)高知大学助教授業績詐称事件

http://university.main.jp/blog3/archives/2006/01/post_968.html

高知大学理学研究科の金子雄一助教授(39)助教授昇進審査の際の個人調書に架空の論文を記載し、助手へ降格処分。調書に記載した18本のうち2本は架空で、実際に書いた論文は16本だった。

当時の選考委員長と助手が所属した学科長(選考委員)を戒告に。他の委員3人は訓告、現在の理学部長を文書による厳重注意とした。

2005
9月業績を調査していた教授が研究科の業績を整理しているとき、不審な点に気がつき本人に問いただしたところ、業績詐称を自認。 20051223日に新聞報道。2006123日降格処分。発覚から報道まで約3ヶ月。処分まで約4ヶ月。

この人は2010.12の時点ですでに高知大に名前がなかった。おそらく居づらくなって辞職。

(5)信州大学助教授業績詐称事件

https://web.archive.org/web/20060721023414/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060719-00000014-mai-soci
http://megalodon.jp/2011-0415-0404-37/www.47news.jp/CN/200607/CN2006072001004570.html

信州大学南沢信之助教授が助教授昇進試験の際に自分の論文の学会誌掲載が決定したかのように装った書類を提出した。これが悪質とされ、懲戒解雇。さらに私文書偽造罪で告発。


信州大学(長野県松本市)は20日、教育学部の03年4月の講師採用時と同年11月の助教授昇任時に業績を虚偽申告したとして、南澤信之助教授(42)=学長付=を、21日付で懲戒解雇にすると発表した。論文のねつ造のほか、学会誌の論文採択通知書の偽造などが「極めて悪質な行為」として、通知書偽造は私文書偽造・同行使にあたるとして刑事告発する方針。

 同大の調査では、南澤助教授には盗用を含む教育学関係の論文ねつ造など8件の虚偽申告、4件の論文採択通知書偽造があった。盗用では第三者の論文を丸写しし、業績を信用させるため論文採択通知書を偽造。採用や昇任が有利になるように画策したという。同大によると同助教授は事実関係を認め、「申し訳ない」と話したという。

 勝山努・同大理事は「よもや業績を欺くとは思わず、虚偽を見抜けなかった。大学として管理責任があり心からおわびする」と謝罪。再発防止のため学内に委員会を設置し、全学部の教員選考のあり方を調査する。【武田博仁】

毎日新聞 2006720日 2000

<信州大>助教授、論文盗作や業績ねつ造したと懲戒免に

 信州大教育学部(長野市)の男性助教授(教育学専攻)が、論文の一部盗作や、業績をねつ造したとして同大学から懲戒免職処分を受けていたことが18日、分かった。助教授は大学側に異議を申し立てている。
 大学関係者によると、助教授は執筆した教育に関する複数の論文で、他人の論文の一部を無断引用していたという。さらに、論文誌に論文が掲載されたことを証明する書類をねつ造し、研究業績として大学に報告していたという。架空の専門誌を作り、そこに論文を掲載したとの報告をしていた疑惑も浮上している。採用の際
に助教授が提出した業績報告にも虚偽記載があったとみて、調べている。
 助教授の疑惑に関する情報が寄せられたため、大学は調査を開始。6月に懲戒免職処分とした。
 助教授は87年に信州大を卒業。その後、別の大学で修士号を取得するなどした後、03年4月に信州大教育学部講師、03年11月に同助教授となった。(毎日新聞)

2005
11月二重投稿の内部告発で調査開始。
2006
720日頃業績詐称で懲戒解雇。
調査から処分まで約8ヶ月。

(6)名古屋大学COE業績詐称事件

名古屋大学多元数理科学研究科の藤原一宏教授がCOE予算を取るための業績報告書で掲載予定でない論文を掲載予定と申告。同教授は訓告処分、予算は返上となった。

PDF
の2ページ目
http://megalodon.jp/2011-0415-0355-49/www.math.nagoya-u.ac.jp/ja/archive/report/download/AnnualReport-2004.pdf

(7)信州大学法科大学院設置申請の際の業績虚偽記載

信州大学が法科大学院設置申請時の業績報告書で 5本の論文が完成済みでないのに完成済みと記載した。法科大学院は一旦設置申請が却下となり再度申請して認可された。

関与した教授等は停職3ヶ月(又坂常人教授)、減給2ヶ月等の懲戒処分。

http://university.main.jp/blog2/archives/2005/04/post_896.html
http://university.main.jp/blog2/archives/2005/06/post_1269.html
http://megalodon.jp/2011-0415-0329-11/www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/05112802.htm

(8)鹿児島国際大学虚偽報告事件

3
教授が業績評価報告書に虚偽記載したとして懲戒解雇。しかし、鹿児島地裁で取り消し。最高裁でも勝訴。教授は復帰した。

http://jinken-net.org/saiban/kakokudai/html_form01/keika-union.html
http://jinken-net.org/saiban/kakokudai/

(9)東京海洋大学准教授業績虚偽報告停職処分

採用選考時に業績を虚偽記載。印刷中でないものを印刷中と記載。過失と認定されたが、停職2ヶ月の処分。
後に裁判で一部の事実は認められたが、准教授として採用した事は良いとして懲戒処分取り消しの和解が成立。

http://megalodon.jp/2011-0405-1622-14/www.kaiyodai.ac.jp/topics/2101/15125.html
https://web.archive.org/web/20130601173542/http://www.kaiyodai.ac.jp/topics/2101/15125.html

http://megalodon.jp/2011-0410-2320-12/sankei.jp.msn.com/affairs/news/110405/crm11040512070002-n1.htm
https://web.archive.org/web/20110408141114/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110405/crm11040512070002-n1.htm

おそらく
准教授A(海洋科学部) (30歳代・男性) 停職2ヶ月は中原尚知。
教授B(海洋科学部) (40歳代・男性)   停職14日は婁小波(ろしょうは)
この2人でほぼ間違いない。婁小波は中国人。

教授C(海洋科学部) (50歳代・男性)     戒告 は馬場治。
この人は違う可能性があるが、准教授の公募で取りまとめをしていたのはこの人らしい。
・採用案内の魚拓
http://megalodon.jp/2011-0508-1614-43/www.kaiyodai.ac.jp/koubo/221/226/22517.html

懲戒処分の公表の魚拓
http://megalodon.jp/2011-0405-1622-14/www.kaiyodai.ac.jp/topics/2101/15125.html

で述べられている准教授Aの著書
http://megalodon.jp/2011-0508-1618-09/www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-89290-021-1.html

中原尚知が執筆者、婁小波は編著者。どちらも編著者なのだろう。

・中原尚知、婁小波に論文盗作疑惑があるとする文献
http://rose.hucc.hokudai.ac.jp/~h14306/091124tosakumondai.html
http://megalodon.jp/2011-0508-1622-28/rose.hucc.hokudai.ac.jp/~h14306/091124tosakumondai.html

本田幸子が自身の修士論文の内容を報告書として水産庁に提出。
この報告書の著者は本田氏で中原氏は著者として記載されていなかった。
しかし、後に北日本漁業経済学会に提出された論文は中原尚知、本田幸子の共著として提出され、内容も報告書と同じだった。そこで盗作と判断され論文は掲載取り消しとなった。

婁小波は同学会の指摘後に報告書の執筆に中原が加わったと同学会に書類を提出したが、それが隠蔽工作ととられたようだ。

この件は現在裁判中。

大学の懲戒処分はこのことと関係があるかもしれない。

東京海洋大学の論文取り消し事件は以前に見たが、一度公表された報告書が論文として提出されたので、二重投稿として掲載取り消しになったのではなく盗作疑惑があるので取り消された。

・参考文献
http://himadesu.seesaa.net/article/140391067.html

・情報源
http://megalodon.jp/2011-0508-1639-37/b.hatena.ne.jp/entry/sankei.jp.msn.com/affairs/news/110405/crm11040512070002-n1.htm

・上記准教授らの論文引き写し事件
http://megalodon.jp/2010-0205-1910-49/mainichi.jp/select/wadai/news/20100130dde041040041000c.html

(10)山梨大学業績水増し事件

山梨大学上里正男教授の論文水増しが朝日新聞で報道されたことがある。

フランスの小学校における技術教育の新動向 ( 技術教育研究 ) ( 2001 )

という査読付論文と同じ内容の査読なし論文がが大学の研究者総覧(web)で掲載され二重投稿ではないかと報道された。査読なし論文はどこかの国立研究所の報告書で、内容は同じだがタイトルは少し違う。
こちらの方が査読付論文より後に出た。

大学や教授は報告書は業務報告と考えており論文ではないので問題ないと主張。新聞では「査読なし論文」に載っているので問題だという文調だった。報告書の出版側も掲載できる内容ではなかったとコメントしている。

結局大学の研究者総覧の記載は同じ研究成果が違う研究成果と誤解される恐れがあるとして査読なし論文の記載を削除することのみで決着。懲戒処分等は一切なし。

思うに、大学の研究者総覧で報告書が査読なし論文に分類されていたのは査読付と査読なしの二つしか区分がなかったからかもしれない。ただ、報告書は査読なしの原著論文だからこの分類は正しい。

大学や教授は論文か報告書かという形式的な区別で二重投稿でないと判断したようだが、実態が同じなのに形式面で区別するのは誤り。それに論文とは学術的な成果を伝える文章一般であり、報告書でも立派に原著論文である。また、査読付論文の出版は一般に著作権譲渡契約をしているから、これを出版後は同一内容を無断で発表できないはず。査読なし論文の出版側が問題だといっていたのでおそらく許可は得ていない。本件は二重投稿の可能性が高い。

(11)国補助事業の成果の論文、1割超が重複 文科省が注意

https://web.archive.org/web/20120118052359/www.asahi.com/national/update/1205/TKY201112050171.html

(12)慈恵会医大、業績虚偽記載による研究費申請

文科省や慈恵医大によると、内科医は2014年度分の申請で、科学誌に受理されていない論文を業績欄に記載した。

文部科学省はこの内科医が関わる4件、計約2千万円の申請を却下した。

http://archive.fo/db5SP

(13)岡川梓 国立環境研究所の架空タイトルの業績記載による業績水増し

研究機関の業績評価の業績リストで同一内容の論文を複数出版したのに、その中の一つの論文のタイトル等を架空のタイトル等に変更し、共著を単著に変更。業績リスト上で重複発表や業績水増しがばれないような偽装工作を行った。

http://nieskaizan.doorblog.jp/
http://nieskaizan.doorblog.jp/archives/19862914.html

以上です。

ここ1、2年はこの手の業績詐称は発覚していませんが、度々起こっています。
過失でも懲戒処分を受ける例もあります。悪質なものだと論文の受理証明書の偽造、アニリール・セルカン氏が行ったようなタイトル、著者の変更といった偽装工作を行ったものもあります。
採用や昇進の審査で不正を行うと解雇や降格といった処分になる事もあるようです。
たぶん採用や昇進を無効にするという趣旨だと思います。

データのコピペと同じで、被疑者の方は過失と主張するのが常套手段で、公正に調査しなかった例もいくつかありました。
不正な論文や撤回すべき論文をメガコレクションでごまかして、採用・昇進、研究費申請をしていくのも不正なことだと思いますが、改善していません。

これらも改善が行われるとよいと思います。

世界変動展望 著者

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《1》アカハラ

アカハラが世界の学術界で問題になってきた。白楽も、ネカトブログで、もう少し掘り下げようと思い始めた。

《2》アカハラ研究者の共通項

ネカトブログで記事にしたアカハラ研究者は以下の通りだ。

今回の記事のカウフマン教授は「女性、50歳、天文学、辞職なし」である。上記2人と共通しているのは、「女性、50歳頃、著名な研究者」である。3人の内2人が天文学ということは、たまたまだろうか?

また、女性で50歳頃ということはホルモンが関係した更年期障害の1つなのだろうか? イエイエ、カロロもラーマンも10年以上前からアカハラをしていた。更年期になって急にアカハラをするようになったのではない。

今後記事にするアカハラ研究者は以下の通りなので、「女性、50歳頃、天文学、著名な研究者」が特徴というのは、言い過ぎだろう。あれ? 天文学者がさらに1人いますね。

  • タニア・シンガー(Tania Singer)(ドイツ):女性、48歳
  • トーマス・ジェッセル(Thomas M Jessell)(米):男性、66歳 ←  調べたら、セクハラでした。ゴメン。
  • 天文学:ライチャード・バウウェンズ(Rychard Bouwens)(オランダ):男性

《3》どう防ぐアカハラ

研究室員の研究成果を最大に引き出そうとの言動で、ボスはアカハラと訴えられる。

どうすると防げるか?

ボスが研究室員にしてはいけないことは以下のようだ。
「人前で叱る」「脅す」「欠点を他人に伝える」「ハードワークを求める」「声を荒げる」「解雇すると言う」「博士号を取れないという」・・・言葉の暴力、心理的暴力
「叩く」「殴る」(今回は該当しません)・・・肉体的な暴力

これら「してはいけないこと」を自覚させれば、ボスはアカハラをしなくなるだろうか? もしそうなら、ボスをアカハラ教育すれば、事態は好転する。

そうではなく、ボスの人間性の一部で性格であり修正できないとすると、アカハラ体質の人を研究者に採用しない、現在研究者になっているアカハラ研究者は解雇する、などが問題の解決になる。

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《1》ヒーローは危険

ウィリアム・マクブライドはオーストラリアのヒーローだった。

そういうヒーローは不正をしやすい傾向にある。というのは、周囲がヒーローをあがめるので、周囲も本人も「自分は全知全能で失敗しない」と思いこみやすい。謙虚になれない。誰もが糾弾しにくい。

ところが、一般的に、成功は、本人の能力というよりも、タイミングやウンが良かったという要素が大きい。「サリドマイドによる奇形形成」の発見はごく少数の研究者にしか訪れないタイミングやウンである。1960年代前半の産科医だったら、遅かれ早かれ、サリドマイドの薬害に気が付いただろう。マクブライドは早く気が付く場所にいたというウンの良さがあったのである。まあ、ウンも実力の内という見方もあるが・・・。

大発見はタイミングやウンよりも、本人の能力が大きく寄与するというなら、ノーベル賞受賞者は、研究費も人材もすべて、受賞前の条件より格段と良いのに、再度、ノーベル賞級の研究をすることはマズない(2度受賞者は少しいる)。つまり、ノーベル賞を受賞した大発見も本人の能力よりタイミングやウンが大きいのである。

幸運の女神は何度も微笑んでくれない。

ところが人間は、かつての成功経験と同じパターンを狙い、固執する。柳の下にドジョウが何匹もいない。墓穴を大きく掘ってしまうのである。人間は、自分の研究スタイルを変えられないのである。

本当のところ、人間は、同じ路線でガンバっても大きくは伸びない。別の方向へと変えなければ進歩はない。

同じ路線でガンバって失速した著名な研究者は、野口英世、アレクサンダー・フレミング(ペニシリンの発見者)、江橋節郎(トロポニンの発見者)など、枚挙にいとまがない。

ウィリアム・マクブライドも、同じ路線で失速した。

しかも、ウィリアム・マクブライドの場合、能力は人並みだった。人並みは褒め過ぎかもしれない。論文出版数とオーストラリア奇形学会・会長のビル・ウェブスター(Bill Webster)の批判から判断すると、人並み「以下」だったようでもある。

と批判したが、白楽は、ウィリアム・マクブライドの「サリドマイドによる奇形形成」の発見を素晴らしいと思う。ネカトで困惑したとはいえ、オーストラリアは自国の科学者をもっと顕彰すべきだ。

白楽は、2005年ノーベル生理学・医学賞受賞を受賞したバリー・マーシャル(Barry Marshall)の生まれ育った西オーストラリア州・カルグーリー(Kalgoorlie)を訪問したことがある。カルグーリーはさびれた田舎町だが、バリー・マーシャルのバの字もない。

町営の博物館(Kalgoorlie Museum、以下の写真は入口、2011年3月、白楽撮影)を訪問したが、バリー・マーシャルの功績を1つも展示していない。博物館員にバリー・マーシャルのことを聞いたが、「誰その人?」との返事だった。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。