アブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)(英)

2019年6月8日掲載。

ワンポイント:ブリストル大学(University of Bristol)・上級講師で、2007年-2013年、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のスティーブ・ジャクソン教授(Steve Jackson)のポスドクだった。2019年4月(37歳?)、ケンブリッジ大学・ポスドク時代の「2010年のScience」論文と「2013年のNature」論文が撤回された。カイディはネカトを認めた。ブリストル大学でのアカハラ・セクハラも発覚し、2018年9月18日(36歳?)、ブリストル大学を辞職(解雇?)。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説

5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

アブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi、ORCID iD 0000-0001-9411-8912、写真出典)は、英国のブリストル大学(University of Bristol)・上級講師で医師ではない。専門は分子生物学(DNA修復)だった。

ネカト発覚の経緯は不明。

2018年9月18日(36歳?)、ブリストル大学は調査の結果、アブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)にネカトとアカハラがあったと発表した。この発表を受け、カイディはブリストル大学を辞職(解雇?)した。

2019年4月(37歳?)、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のスポークスマンは、「ネカト調査の結果、ポスドクだったカイディ博士は2つの論文でデータねつ造をしたと認めました。データねつ造は、カイディ博士の単独行為で全責任はカイディ博士にあります」と報じた。「2010年のScience」論文と「2013年のNature」論文が撤回された。

ブリストル大学(University of Bristol)。写真出典
  • 国:英国
  • 成長国:英国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ブリストル大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2000年に大学に入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:39 歳?
  • 分野:分子生物学
  • 最初の不正論文発表:2010年(28歳?)
  • 不正論文発表:2010年(28歳?)、2013年(31歳?)、2015年(33歳?)
  • 発覚年:2018年(36歳?)
  • 発覚時地位:ブリストル大学・上級講師
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ブリストル大学・調査委員会。②ケンブリッジ大学・調査委員会。③学術誌・編集部
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:3報、内2報撤回
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:辞職(解雇?)
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Dr Abderrahmane Kaidi – University of Bristol (保存済)

  • 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2000年に大学に入学した時を18歳とした
  • 2000-2003年(18-21歳?):英国のブリストル大学(University of Bristol)で学士号を取得:細胞分子生物学
  • 2003-2007年(21-25歳?):英国のブリストル大学(University of Bristol)で研究博士号(PhD)を取得:がん生物学
  • 2007年8月-2013年7月(25-31歳?):ケンブリッジ大学・ポスドク
  • 2013年(31歳?):ブリストル大学(University of Bristol)・講師で研究室主宰。その後、上級講師
  • 201x年(3x歳):研究ネカトとアカハラが発覚
  • 2018年9月18日(36歳?):ブリストル大学を辞職(解雇?)
  • 2019年4月(37歳?):「2010年のScience」論文と「2013年のNature」論文が撤回された

●5.【不正発覚の経緯と内容】

ネカトとアカハラ・セクハラの発覚の経緯はわからない。

ブリストル大学は、かねてからアブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)のネカトとアカハラを調査していた。

2018年6月22日(36歳?)、ブリストル大学・評議員会のモイラ・ハムリン副議長(Moira Hamlin、写真出典)(カイディのネカト調査委員会・委員長)がブリストル大学のニシャン・カナガラジャ学長代理(Pro Vice-Chancellor Nishan Canagarajah)にカイディのネカトとアカハラ調査についての懸念を手紙した(手紙の出典はレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ)。

カナガラジャ教授殿

私はあなたが生物医学部・細胞分子医学のアブデラメイネ・カイディ博士に対するネカト行為の申し立てについて秘密の調査を行うよう、あなたが任命した調査委員会を代表していくつかの懸念を提起するために書いています。調査に関する正式な報告書は、貴殿に別途送付しました。

で始まる手紙に、カイディ博士の研究グループの3人のメンバーにインタビューしたこと、カイディ博士が非協力で調査が難航したこと、ウソの情報があったり、2人のインタビュー相手に泣かれたり、大変だったと述べている。そして、次のようなアカハラ・セクハラがあったとも述べている。

研究室員の1人(女性)は、実験を完了するため、実験室夜中まで研究していた時の事件の話をした。カイディ博士は、彼女の実験作業に腹を立て、「細胞を凍結させた!」と彼女に怒鳴って、凍結した細胞を取り出し破壊し、出口ドアの前に立って彼女を帰れないようした。 彼女は午前3時から5時間も実験室に閉じ込められた。これは深刻なアカハラ事件です。

研究室員の少なくとも2人(女性)は、レイプの不安を感じた。ただ、レイプの不安を感じたのがどのような状況なのかハッキリできなかった。しかし。不案を感じる環境そのものがセクハラ環境である。

Letter 1 to Nishan

 

2018年7月11日(36歳?)、ブリストル大学のニシャン・カナガラジャ学長代理(Pro Vice-Chancellor Nishan Canagarajah、写真出典)はジョージ・バンティング生物医学部長(George Banting)に、カイディの調査報告書を受け取ったと手紙している(手紙の出典はレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ)。

Letter to Dean 11.07.18

 

2018年9月18日(36歳?)、ブリストル大学は調査の結果、アブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)にネカトとアカハラがあったと発表した。このネカトは未発表論文でのネカトで、後に撤回された2論文とは別である。2撤回論文はケンブリッジ大学時代の論文なので、ブリストル大学はケンブリッジ大学が対処すべき問題だとした。

この発表を受け、カイディはブリストル大学を辞職(解雇?)した。

2019年4月(37歳?)、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のスポークスマンは、「ネカト調査の結果、カイディ博士は2つの論文でデータねつ造をしたと認めました。データねつ造は、カイディ博士の単独行為で全責任はカイディ博士にあります」と報じた。

そして、ケンブリッジ大学・ポスドクの時に出版した「2010年のScience」論文と「2013年のNature」論文が撤回された。この2撤回論文はスティーブ・ジャクソン教授(Steve Jackson)と共著だった。

「2010年のScience」論文は240回も引用され、「2013年のNature」論文は119回も引用されていた。これだけ多く引用された論文が撤回されると、学術界への影響はかなり大きいと思う。

また、スティーブ・ジャクソン教授(Steve Jackson、Stephen Jackson )は科学の巨人である。ジャクソン教授はまたビジネスマンとしても非常に成功していた。DNA修復経路の阻害に特化した彼の会社・クドス・ファーマシューティカルズ社(KuDOS Pharmaceuticals)は、1億2,000万ポンド(約168億円)でアストラゼネカ社に売却されている。

スティーブ・ジャクソン教授(Steve Jackson)(左)とアブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)(右)。出典:http://www.bristol.ac.uk/cellmolmed/news/2017/sir-anthony-epstein-lecture-success.html

【ねつ造・改ざんの具体例】

「2010年のScience」論文と「2013年のNature」論文のどのデータがねつ造・改ざんなのか、調査結果、撤回告示、新聞記事に記載がない。

つまり、どのデータがどのようにねつ造・改ざんされたのか、公式発表がない。

仕方がないので、パブピアで探ったが、パブピアにも記載がない。ただ、パブピアで「2015年のOncotarget.」論文のデータ異常の指摘があった。それを見てみよう。

★「2015年のOncotarget.」論文

「2015年のOncotarget.」論文の書誌情報を以下に示す。ブリストル大学(University of Bristol)所属の論文である。2017年5月9日に訂正されたが、2019年6月7日現在、撤回されていない。

2016年10月25日に、図2の電気泳動バンドが重複使用されている、と指摘された「#1 Unregistered Submission: (commented October 25th, 2016 11:27 AM and accepted October 25th, 2016 3:26 PM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/3D9343562207D08758687F19EC1C36#1

電気泳動バンドの重複使用がわかりやすい。安易なねつ造データですね。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2019年6月7日現在、パブメド(PubMed)で、アブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)の論文を「Abderrahmane Kaidi[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2006~2019年の14年間の17論文がヒットした。内2論文は2019年の撤回告知である。2010~2013年の4論文がスティーブ・ジャクソン教授(Steve Jackson)と共著である。

「Kaidi A[Author]」で検索すると、1995~2019年の25年間の29論文がヒットした。

2019年6月7日現在、「Kaidi A[Author] AND Retracted 」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、「2010年のScience」論文と「2013年のNature」論文の2論文が2019年4月に撤回されていた。2撤回論文はスティーブ・ジャクソン教授(Steve Jackson)と共著だった。

  1. KAT5 tyrosine phosphorylation couples chromatin sensing to ATM signalling.
    Kaidi A, Jackson SP.
    Nature. 2013 Jun 6;498(7452):70-4. doi: 10.1038/nature12201. Epub 2013 May 26. Retraction in: Nature. 2019 Apr;568(7753):576.
  2. Human SIRT6 promotes DNA end resection through CtIP deacetylation.
    Kaidi A, Weinert BT, Choudhary C, Jackson SP.
    Science. 2010 Sep 10;329(5997):1348-53. doi: 10.1126/science.1192049. Retraction in: Science. 2019 Apr 19;364(6437):247.

★撤回論文データベース

2019年6月7日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでアブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)を検索すると、3論文がヒットし、2論文が撤回されていた。Retraction Watch Databaseの上右「Nature of Notice」の右にチェックを入れ、「Retraction」にすると、撤回論文(数)が表示される。

★パブピア(PubPeer)

2019年6月7日現在、「パブピア(PubPeer)」はアブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)の2論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

https://www.thetimes.co.uk/article/top-scientist-dr-abderrahmane-kaidi-quits-after-confessing-to-research-fakery-lvt376d30

《1》腰巾着

スティーブ・ジャクソン教授(Steve Jackson)という科学の巨人にかわいがられた若い研究者のネカトである。

ネカトの定番である。

《2》改善意志

ケンブリッジ大学は調査結果をウェブ上に公表すべきだ。「Science」誌と「Nature」誌は撤回理由をもっと具体的に示すべきだ。

なんだか、「撤回して、ハイ、終わり」という印象を受けた。これではマズイでしょう。今後、ケンブリッジ大学は、ネカトを防ぐにはどうしたらよいのか? 「Science」誌と「Nature」誌はネカト論文を掲載しないようにするにするにはどうしたらよいのか? そういうことが必要でしょう。ッたく。

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●8.【主要情報源】

① アブデラメイネ・カイディ(Abderrahmane Kaidi)に関するレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:(1)2018年9月10日:Abderrahmane Kaidi leaves Bristol after misconduct findings – For Better Science、(2)2018年9月17日:Abder Kaidi fraud and bullying scandal unravels – For Better Science
② 2019年4月11日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Authors have papers in Nature and Science retracted on the same day – Retraction Watch
③ 2019年4月12日のチアイー・フー(Chia-Yi Hou)記者の「Scientist」記事:Nature and Science Retractions Connected to Research Misconduct | The Scientist Magazine®、(保存版)
④ 2019年4月16日のニーノ・カバティンガン(Niño Cabatingan)記者の「ibtimes」記事:Science Journals Withdraw DNA Repair Studies Due To Falsification Of Data、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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