2019年1月21日掲載
ワンポイント:素性が不確かだが、米国のアトランタ大学(University of Atlanta)・教授と思われる。2014年(51歳?)、学術誌「Poétique」の編集長・ミシェル・チャールズ(Michel Charles)がバーネットの盗用を見つけた。2019年1月29日現在、トータル26論文が撤回され、「撤回論文数」世界ランキング、(保存版)の第21位である(The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch、(保存版))。国民の損害額(推定)は6億3,300万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
リチャード・バーネット(.Richard L E Barnett、Richard Lawrence Etienne Barnett、R.-L. Etienne Barnett写真出典)は、素性が不確かだが、米国のアトランタ大学(University of Atlanta)・教授という記載があるので、そうしておく。専門は文学(フランスの詩)だった。なお、アトランタ大学は営利目的の遠隔教育を行なう私立大学である。
2014年(51歳?)、学術誌「Poétique」の編集長・ミシェル・チャールズ(Michel Charles)が投稿されたバーネットの論文原稿に盗用を見つけた。自分で調べ、1999 年-2014年のバーネットの18論文に盗用・自己盗用がある連続盗用者だと指摘した。
結局、1999 年-2014年のトータル26論文が撤回された。この撤回論文数は、2019年1月29日現在、「撤回論文数」世界ランキング、(保存版)の第21位である(The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch、(保存版))。
アトランタ大学(University of Atlanta)・ Iverson Business School。写真:By WobblyOne – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
- 国:米国
- 成長国:フランス(推定)
- 研究博士号(PhD)取得:?
- 男女:男性
- 生年月日:1963年、フランス生まれ。仮に1963年1月1日生まれとする
- 現在の年齢:61歳?
- 分野:文学
- 最初の不正論文発表:1999年(36歳?)
- 発覚年:2014年(51歳?)
- 発覚時地位:アトランタ大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は学術誌「Poétique」の編集長・ミシェル・チャールズ(Michel Charles)
- ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌「Poétique」の編集長・ミシェル・チャールズ(Michel Charles)。②プリンストン大学のフォルカー・シュレーダー準教授(Volker Schröder)
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:発表なし(✖)
- 不正:盗用
- 不正論文数:26論文が撤回
- 盗用ページ率:不明
- 盗用文字率:不明
- 時期:研究キャリアの中期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)がどうなったか不明。
- 処分:不明
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は6億3,300万円。内訳 ↓
- ①研究者になるまで5千万円。研究者を辞めたと思う。損害額は5千万円。
- ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。在職年数は不明だが、10年として、10x4500万円=4億5千万
- ③外部研究費。外部研究費の助成を受けた研究でネカトをした場合、その研究費が無駄になる。不明。0円とする。
- ④調査経費。第一次追及者の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円だが調査していない。学術出版局は1件の学術誌あたり100万円で6学術出版局なので600万円。小計で700万円
- ⑤裁判経費は2千万円。裁判はなかったので損害額は0円。
- ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文(共著者がいない)は26報なので損害額は2,600万円。
- ⑦アカハラ・セクハラではない。損害額は0円。
- ⑧研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
- ⑨健康被害はない。損害額は0円。
●2.【経歴と経過】
ほとんど不明
- 1963年:フランス生まれ。仮に1963年1月1日生まれとする
- xxxx年(xx歳):アトランタ大学(University of Atlanta)・教授(多分)
- 2014年(51歳?):盗用が発覚
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★素性
本記事ではリチャード・バーネットと書くが、論文著者名では.Richard L E Barnett(Richard Lawrence Etienne Barnett)と使うときと、R.-L. Etienne Barnettと使うときがある。
そして、出身大学が不明でというだけでなく、所属大学もあやふやである。アトランタ大学(University of Atlanta)・教授ということになっているが、アトランタ大学のサイトにはリチャード・バーネットの名前がなかった。
ただ、2008年8月にアトランタ大学が新しい学術誌「Virtualities: International Review of Distance Learning」の発行を宣伝するポスターで編集委員に名前を連ねている。その時は、アトランタ大学・教授だったのだろう。
リチャード・バーネットは後述するミシェル・チャールズ(Michel Charles)にあてた手紙の中で、フランス国立科学研究センター(Centre national de la recherche scientifique、CNRS)に所属していると主張した。その証拠として、バーネットは、学術誌「American International Journal of Biology」の編集委員であることを示した。しかし、この学術誌「American International Journal of Biology」はジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)が捕食学術誌と指摘しているので、信用できないシロモノである。
プリンストン大学のフォルカー・シュレーダー準教授(Volker Schröder)は架空の人物ではないかと疑ったそうだが、ウェブ上で以下の写真を見つけ、実在の人物と判定した。
→ 2018年6月13日のフォルカー・シュレーダー準教授(Volker Schröder)の「Anecdota」記事:Barnett redivivus | Anecdota
★発覚
2014年(推定)、リチャード・バーネットは詩の学術誌「Poétique」に論文を投稿した。学術誌「Poétique」の編集長だったミシェル・チャールズ(Michel Charles)は、「何かがおかしいと」と感じた。
「何かがおかしいと」のは、文章の中に前後の文脈と一致しない奇妙な表現があったからだ。
これらの奇妙な表現は訂正が必要あるいと感じた。それで、偶然、この奇妙な表現の別のバージョンがあるかどうか調べたとこっろ、1つ見つかった。それは、2009年に発行されたJacques Poirierの論文だった。
調べていくと、リチャード・バーネットの18論文に盗用が見つかった。
●【盗用の具体例】
★盗用のリスト
2014年11月、ミシェル・チャールズ(Michel Charles)は、結局、リチャード・バーネットの1999 年-2014年の18論文が盗用だと指摘した。全部、リチャード・バーネットの単著論文である。
2つだけ示す。
- リチャード・バーネットの1999年の論文「“The inaugural sham”, Symposium , 53/2, 1999」と2000年の論文「“Semiotics of Camusian opening” Revista Letras , 53, 2000」は.Jean-Louis Cornilleの「“White, pretend and reality” Literature , 23, 1976」と「Romane Review , 11/2, 1976 (Camus)」の盗用だった。.
- リチャード・バーネットの2000年、2006年、2010年の3つの論文「“Poetic margins,” Revista Letras , 54, 2000」「“Das palavras if calaram” Agulha-Revista de cultura , 52, 2006」「“Autopsies center” Neohelicon , 37/2, 2010」は、.Jan Baetens,の「“False and true marginal margins,” The Creator Spirit , 38/1, 1998」を盗用していた。
- 以下省略
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
論文数はとパブピアは省略。
撤回論文は一部、上述した。
「撤回監視(Retraction Watch)」のデータベースで「Barnett, Richard Lawrence Etienne」を検索すると、1999 年-2014年の26論文が撤回されていた。全部、リチャード・バーネットの単著論文である。
●7.【白楽の感想】
《1》連続盗用
リチャード・バーネット(Richard L E Barnett)は連続盗用者で、1999 年-2014年のトータル26論文が撤回されている。
こうなると、根っからのネカト者との烙印が押されるが、初期にネカトが発見されていれば、26論文も盗用しなかった(できなかった)ハズだ。
多量にネカト論文を出版したネカト者を見るにつけ、ネカト行為の再発を防ぐ早期発見システムと厳罰化の導入が必須だと痛感する。
法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい。正直者が得する社会に!
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●8.【主要情報源】
① 2014年11月20日のキャット・ファーガソン(Cat Ferguson)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Tracking down lit crit plagiarism leads to “discourses of madness” – Retraction Watch、(保存版)
② 2014年11月x日のミシェル・チャールズ(Michel Charles)の「Fabula,」記事:Fabula, Atelier littéraire : Plagiat sans fard、(保存版)
③ 2018年6月13日のフォルカー・シュレーダー準教授(Volker Schröder)の「Anecdota」記事:Barnett redivivus | Anecdota、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント