化学:「博士号はく奪?」:スヴィ・オーア(Suvi Orr)(米)


2017年5月6日掲載。

ワンポイント:フィンランドに生まれ、フィンランドのオウル大学で修士号を取得後、2003(24歳?)に米国・テキサス大学オースティン校の大学院に入学した女性。2008年(29歳?)に研究博士号(PhD)を取得し、米国・ファイザー社の研究員になった。2012年(33歳?)、ところが、かつての指導教授がオーアの博士論文にデータ改ざんがあると指摘し、2014年(35歳?)、テキサス大学は博士号をはく奪した。オーアはすぐに裁判を起こし、博士号を取り戻した。2016年(37歳?)、再度、テキサス大学が博士号をはく奪しそうになったが、裁判ではく奪をやめさせた。損害総額(推定)は1億1千万円。

ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
ーーーーーーー

●1.【概略】

スヴィ・オーア(Suvi Orr、写真出典)は、フィンランドに生まれ、フィンランドのオウル大学で修士号を取得後、2003(24歳?)に米国・テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)の大学院に入学した。2008年(29歳?)に研究博士号(PhD)を取得し、米国・ファイザー社の研究員になった。専門は有機化学(有機合成)である。

2014年(35歳?)、テキサス大学オースティン校は、スヴィ・オーアの2008年の博士論文にデータ改ざんがあったと認定し、博士号をはく奪した。

オーアはすぐに裁判を起こした。裁判所が介入した調停で、テキサス大学は問題の解決が見られるまで、はく奪した博士号をオーアに戻すことに同意した。

2016年2月(37歳?)、テキサス大学は、再度、スヴィ・オーアに授与した博士号をはく奪する方向に動いて、2016年3月4日に聴聞会を開催すると通告した。

オーアはすぐに裁判を起こした。「博士号をはく奪しないよう」テキサス大学オースティン校を裁判に訴えた。2回目の裁判である。

2016年2月(37歳?)、裁判所の調停で、テキサス大学は博士号はく奪の聴聞会を無期限で延期した。結局、博士号ははく奪されなかった。

2017年4月20日(38歳?)、テキサス州裁判所(3rd Court of Appeals)は、テキサス大学がオーアの博士号をはく奪することを禁じると裁定した。

米国・テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:フィンランド
  • 研究博士号(PhD)取得:米国・テキサス大学オースティン校
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1979年1月1日生まれとする。1997年高校卒業時を18歳とした。フィンランドで生まれる
  • 現在の年齢:38 歳?
  • 分野:有機化学
  • 問題の論文発表:2008年(29歳?)
  • 疑念発覚年:2012年(33歳?)
  • 発覚時地位:ファイザー社・研究員
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は院生時代の指導教授・スティーブン・マーティン(Stephen F. Martin)の大学への公益通報
  • ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」、「American-Statesman」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①テキサス大学・調査委員会。②裁判所
  • 不正:改ざん
  • 不正論文数:撤回論文は少なくとも1報
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 損害額:総額(推定)は1億1千万円。主な内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円。③院生の損害が1人1000万円。④グラント。⑤調査経費(大学と研究公正局)が3千万円。⑥裁判経費が2千万円x2回=4千万円。⑦研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 結末:博士号はく奪なし、辞職なし

●2.【経歴と経過】

主な出典:https://www.linkedin.com/in/suvi-orr-590b131/

  • 生年月日:不明。仮に1979年1月1日生まれとする。1997年高校卒業時を18歳とした。フィンランドで生まれる
  • 1994 – 1997年(15 – 18歳?):フィンランドの高校・Karjasillan Lukio
  • 1997 – 2002年(18 – 23歳?):フィンランドのオウル大学(University of Oulu)・学部・修士
  • 2001 – 2003年(22 – 24歳?):米国のトランステック・ファーマ社(TransTech Pharma)・研究助手
  • 2003 – 2008年(24 – 29歳?):米国・テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)の院生。有機化学専攻。指導教授はStephen Martin
  • 2008年(29歳?):米国・テキサス大学オースティン校から研究博士号(PhD)が授与された
  • 2008年7月(29歳?) ‐ 2017年5月5日(38歳?)現在:米国のファイザー社(Pfizer Inc. La Jolla, California)・研究員
  • 2014年(35歳?):テキサス大学オースティン校は、2008年にスヴィ・オーアに授与した博士号をはく奪した
  • 2014年2月(35歳?):スヴィ・オーアは、「博士号をはく奪しないよう」テキサス大学オースティン校を裁判に訴えた
  • 2014年(35歳?):裁判所の調停で、テキサス大学は博士号をスヴィ・オーアモ戻した
  • 2016年2月(37歳?):テキサス大学は、再度、スヴィ・オーアに授与した博士号をはく奪する聴聞会を開催すると通告した
  • 2016年2月(37歳?):スヴィ・オーアは、「博士号をはく奪しないよう」テキサス大学オースティン校を裁判に訴えた。2回目
  • 2016年2月(37歳?):裁判所の調停で、テキサス大学は博士号はく奪の聴聞会を無期限で延期した
  • 2017年4月20日(38歳?):裁判所は、テキサス大学がオーアの博士号をはく奪することを禁じると裁定した。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★博士号取得

2003年(24歳?)、スヴィ・オーアはフィンランドのオウル大学(University of Oulu)・学部・修士を終えて、米国のテキサス大学オースティン校の大学院に入学した。指導教授はスティーブン・マーティン(Stephen F. Martin、写真出典)で、アルカロイドのルンズリンB. (lundurine B、ランドリンB)の有機合成の研究に取り組んだ。

ルンズリンBは癌細胞を特異的に殺すので、癌の化学療法に有効な医薬品ではないかと期待されている。ところが、有機合成にはまだ誰も成功していなかった。

右図はルンズリンB(lundurine B)の構造:出典http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200907015148519959

オーアはルンズリンBを有機合成する研究に取り組んだ。19段階で合成する方法を考案し、各段階の化合物の試作品を合成した。試作化合物が、期待した合成品かどうか、4つのテストで確認する必要があった。4つのテストとは、水素核磁気共鳴、質量分析、炭素核磁気共鳴、赤外である。オーアは4つのテストで確認した。

しかし、さらに信頼性の高いテストであるX線分析をすることが望ましかった。しかし、マーティン教授は、分子を結晶化できれば、X線分析をした方がいいが、分子を同定するのに4つのテストで十分だと主張した。オーアは、マーティン教授から分子を結晶化する方法についての指針をほとんど与えられなかったので、結局、X線分析をしなかった。

ということで、合成途上の化合物P、Q、Rが正しく合成できたという確信は得られなかった。それで、その後の段階で合成される化合物S、T、U、Vの合成には実験を進められなかった。つまり、合成目的の最終品であるルンズリンBは合成できなかった。

しかし、博士論文提出期限もあり、オーアは、博士論文をまとめる必要があった。

オーアは、マーティン教授と話し合い、彼女の合成方法ではルンズリンB を合成できないので、今後の合成研究では別の方法が望ましいと、博士論文にまとめたい、と提案した。

マーティン教授は彼女の提案に同意した。もちろん、マーティン教授の了承がなければ、博士論文を書いたところで、オーアは、博士論文審査委員会に博士論文を提出できない。

2008年(29歳?)、スヴィ・オーアは博士論文を提出し、テキサス大学オースティン校から研究博士号(PhD)を授与された。同時に、米国・カリフォルニア州にある製薬企業・ファイザー社(Pfizer Inc. La Jolla, California)の研究員になった。

★2014年:1回目の博士号はく奪

2009年(30歳?)、マーティン教授はスヴィ・オーアが合成に失敗したルンズリンBの有機合成実験を放棄していなかった。「ルンズリンBの有機合成」を、新しくきたポスドクの研究テーマにした。オーアはその事を知らなかった。

2011年(32歳?)、オーアはマーティン教授の誕生パーティで、新しくきたポスドクが「ルンズリンBの有機合成」の研究をしていることを初めて知った。

さらに、予想外だったことは、マーティン教授が、オーアの博士論文に基づいたルンズリンB合成結果を論文出版する気だったことだ。

オーアは、研究は不完全で、合成は失敗したと考えていたため、論文の共著者になることを最初は断った。しかし、結局、マーティン教授が第一著者になり、ポスドクが実験を再現でき、ポスドク自身の研究成果として発表するならという条件で、彼女は、しぶしぶ、学術論文として出版することを認めた。

ところが、実際に出版された「2011年のOrganic Letters」論文は、オーアが第一著者で、ポスドクが2番目と3番目で、マーティン教授は最後著者だった(以下の論文)。

  • Novel Approach to the Lundurine Alkaloids: Synthesis of the Tetracyclic Core
    Orr, Tian, Niggemann, and Martin
    Organic Letters, 2011 13 (19), pp 5104–5107

オーアは訴状で、ポスドクは化合物P、Q、Rに関してはオーアと同じか類似の結論に達したが、計画した化合物だったかどうかの確認をオーアの期待した方法で十分分析していなかった、と述べている。

2012年(33歳?)、研究室の院生が「2011年のOrganic Letters」論文とポスドクのデータが再現できないと、マーティン教授に指摘した。マーティン教授は、そのことで、オーアに苦情を言った。つまり、論文にはいくつかの「間違い」か、「不正確さ」(ねつ造・改ざん)があった、と。

2012年8月(33歳?)、スヴィ・オーアが第一著者の「2011年のOrganic Letters」論文が撤回された。

撤回理由は、図式の6と7が再現できなかったからだ。この論文は、スヴィ・オーアの2008年の博士論文をベースに出版した論文である。

オーアはネカトを否定した。

「化合物P、Q、Rは、副生成物や溶媒による汚染、また、バックグランドのノイズが大きいため分析は困難だった。それに、ルンズリンBの合成が完成できなければ博士号は取得できないというものではない」と、オーアは述べている。

オーアの実験上の間違いは、院生の能力不足・経験不足であって、誤った解釈は科学的過程の一部にすぎない。オーアが試作合成した化合物P、Q、Rは実際はどんな化合物だったのか、ハッキリしない。

マーティン教授がオーアに苦情を言った後、テキサス大学はネカト調査委員会を設置し、調査を開始した(結論が出るまでに15か月かかった)。ただし、この調査委員会は「不公平と偏見」に満ちた委員会だった。

「不公平と偏見」に満ちた調査と議論の末、調査委員会は、オーアがネカトをしたと結論した。ただし、委員の1人は、その結論に反対し、「間違いであって、不正確さは、意図的ではない」と反対票を投じた。

2014年(35歳?)、テキサス大学オースティン校は、スヴィ・オーアの2008年の博士論文に再現性がないのはネカト(データ改ざん)があったからだと結論し、2008年にスヴィ・オーアに授与した博士号をはく奪した。

2014年2月(35歳?)、スヴィ・オーアはその通告を受けて、弁護士・デイヴィッド・セルジ(David Sergi、写真出典)を雇い、テキサス大学オースティン校の博士号はく奪を無効にするよう、テキサス州トラヴィス郡地方裁判所(District Court in Travis County)に訴えた。

訴状では、スヴィ・オーアは、オーアが博士号を取得して長い年月が経つが、調査委員会はオーアに弁明の機会も与えずに博士号をはく奪した。この行為は、オーアの権利に関する規則に大学が違反しており、博士号はく奪は無効であると訴えた。また、調査委員会は、彼女の元指導教授、マーティン教授に大きく依存していて、マーティン教授は、機会があればオーアをイジメようとしている人だと、オーアは主張した。

裁判所の審問の過程で、原告・被告は「テキサス州民事訴訟規則の11条(Rule 11 agreement under the Texas Rules of Civil Procedure)」の合意に達し、被告であるテキサス大学は問題の解決が見られるまで、はく奪した博士号をオーアに戻すことに同意した。

★2016年:2回目の博士号はく奪

2016年2月4日(37歳?)、スヴィ・オーアは、テキサス大学オースティン校が博士号をはく奪しないように、テキサス州トラヴィス郡地方裁判所(District Court in Travis County)に訴えた。博士号はく奪騒動での裁判は、2014年に次いで、今回が2回目である。
訴状 → (PDF)

2014年(35歳?)、裁判所の調停で、テキサス大学は、はく奪した博士号をオーアに戻したが、その時、問題は終結していたわけではなかった。「問題の解決が見られるまで、はく奪した博士号をオーアに戻すことに同意した」、だけである。

2016年2月、テキサス大学は、3人の学部生と2人の教員が委員を務める聴聞会を、2016年3月4日に開催するとオーアに通告してきたのだ。

オーアの訴状では、テキサス大学は化学合成のデータを十分理解できない学部生を委員に入れた「いかさま裁判(“kangaroo court”)」で、オーアを審理しようとしている、とオーアは主張した。

新聞記者の質問に、テキサス大学のスポークスマンであるゲイリー・ススウェイン(Gary Susswein、写真出典)は、「大学は個人的な学生の学業成績やそれに関連する問題について議論することを連邦プライバシー法によって禁じられています。大学は、これらの申し立てに対して、裁判所で適切に対応いたします」と電子メールで答えている。
→ 連邦プライバシー法は、「家族の教育権およびプライバシー法(Family Educational Rights and Privacy Act: FERPA)」のことだ。

オーアの弁護士、デイヴィッド・セルジ(David Sergi)は、「大学には博士号をはく奪する能力がないと考えています。依頼人のスヴィ・オーア氏は学術上の違法行為をしていないと激しく否定しています。私たちは、有機化学を十分理解できる委員が、 スヴィ・オーア氏のネカト疑惑を正当に審査してくれることを望んでいます」と述べた。

訴訟では、「テキサス大学は学位を取り消す法的権限がなく裁判所の許可が必要だということ。また、マーティン教授が、大学院生の指導、化学研究者、論文執筆で、彼自身の誤りや欠点を認めないこと。さらに、テキサス大学はマーティン教授をかばうためにオールを “犠牲の子羊(the sacrificial lamb)”にしている」と主張した。

2016年2月10日(37歳?)、テキサス大学の反論が裁判所に提出された。
→ PDF

テキサス大学は、オーアが分子の合成に失敗し、研究データを改ざんしたと非難した。 彼女の弁護士・デイヴィッド・セルジは、「彼女は単にデータを誤解しただけだ」と反論した。

「改ざん行為はなかった」とセルジ弁護士は主張した。

テキサス大学の化学専攻の名誉教授・フィリップ・マグナス(Philip Magnus、写真出典)は、オーアを擁護していた。マグナス名誉教授はオーアの院生時代の研究に詳しく、オーアの博士論文審査委員の1人で、オーアを「優れた院生(stellar student)」と呼んでいた。オーアは「最高の研究公正さをもって研究していた」と陳述した。

マグナス名誉教授はまた、化学科の学生でもない学部生と一緒に行なうテキサス大学聴聞会は不公正だとテキサス大学を指弾し、 「博士号の取り消しは非常に厳しい罰である。博士号取得に化合物の合成成功は必要ではない」と語った。

「マーティン教授は、一度論文を出版し、すぐに撤回しているが、そもそも、マーティン教授はそのような論文を出版すべきではなかったのだ」、とマグナス名誉教授は指摘した。

新聞記者がテキサス大学にコメントを求めると、テキサス大学は「大学は個人的な学生の学業成績やそれに関連する問題について議論することを連邦プライバシー法によって禁じられています。大学は、これらの申し立てに対して、裁判所で適切に対応いたします」と電子メールで述べた。

新聞記者がマーティン教授にコメントを求めても、マーティン教授は電話または電子メールによるコメントを返してこなかった。

2016年2月17日(37歳?)、裁判が行なわれた。
→ PDF

オーアの弁護士・デイヴィッド・セルジは、テキサス大学はオーアの博士号はく奪の審議を中止するよう主張した。また、弁護費用として95,099ドル(約95万円)支払うよう新たに要求した。

裁判長は次のように述べた。

私は、テキサス大学が、適切な委員を見つけようとする努力を期待しています。適切な委員とは、公平な判断を下すために十分な教育と経験を持っている人で、研究データを見て、それが改ざんかどうかを判断できる人です。 そして、テキサス大学が選んだ聴聞会委員はそのような人ではなく、潜在的に利益相反の可能性がある人と思われます。

3月4日は絶対必要な日付ですか? 皆さんにとって都合のよい日まで延期したらどうでしょう。

テキサス大学は2016年3月4日に予定していた聴聞会を無期限に延期した。

2017年4月20日(38歳?)、テキサス州裁判所(3rd Court of Appeals)は、テキサス大学がオーアの博士号をはく奪することを禁じると裁定した。オーアの勝利である。
→ 2017年4月21日の「my Statesman」記事:Court grants Ph.D. graduate a reprieve from UT disciplinary hearing保存版
→ 2017年4月21日の「撤回監視」記事:Chemist wins injunction against university trying to revoke her degree – Retraction Watch at Retraction Watch

cv17-164.injunction

●6.【論文数と撤回論文】

本ブログで記述したが、以下の「2011年のOrganic Letters」論文は、2012年に撤回された。

  • Novel Approach to the Lundurine Alkaloids: Synthesis of the Tetracyclic Core
    Orr, Tian, Niggemann, and Martin
    Organic Letters, 2011 13 (19), pp 5104–5107

他の論文や論文数を網羅的に調べていないが、スヴィ・オーアは、以下の論文を出版していて、事件後も研究者として活躍している。

  • Small structural modifications of the imidazopyridine diacylglycerol acyltransferase (DGAT2) inhibitors produce an improved safety profile
    Med Chem Comm
    出版日 2016年11月22日
  • Discovery of 1-{(3R,4R)-3-[({5-Chloro-2-[(1-methyl-1H-pyrazol-4-yl)amino]-7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl}oxy)methyl]-4-methoxypyrrolidin-1-yl}prop-2-en-1-one (PF-06459988), a Potent, WT Sparing, Irreversible Inhibitor of T790M-Containing EGFR Mutants
    Journal of Medicinal Chemistry
    出版日 2016年1月12日
  • Discovery of 2-(6-(5-Chloro-2-methoxyphenyl)-4-oxo-2-thioxo-3,4-dihydropyrimidin-1(2H)-yl)acetamide (PF-06282999): A Highly Selective Mechanism-Based Myeloperoxidase Inhibitor for the Treatment of Cardiovascular Diseases.
    Journal of Medicinal Chemistry
    出版日 2015年11月
  • Discovery of an in vivo tool to establish proof of concept for MAP4K4-based antidiabetic treatment
    ACS Med Chem Lett
    出版日 2015年10月6日

その他の論文は省略。

●7.【白楽の感想】

《1》教授の執拗な嫌がらせ?

テキサス大学は、どうしてスヴィ・オーアの博士号はく奪にそんなに固執したのだろうか?

1度はく奪し、それを戻し、さらに、2回目にはく奪しようとした。しかも、2回とも裁判で訴えられている。2回とも裁判で負けている。

大学上層部と指導教授だったスティーブン・マーティン教授(Stephen F. Martin)がヘンで、舵を切り間違えたのだと思われる。

また、記事では、記者の質問に、スティーブン・マーティン教授はノーコメントである。事件を説明しようという誠意が感じられない。コマッタ人である。

この事件への読者コメントには、指導教授のスティーブン・マーティン(Stephen F. Martin)を非難する意見がとても多い。1例を以下にあげる。

彼女は絶対に正しい。 院生は指導教授の無能または過失の代価を支払うべきではありません。 さらに、院生は博士課程要件の部分を充足すれば、博士論文を提出できます。 その後、誠実な誤りが見つかっても、それが、博士号のはく奪を正当化するものではありません。(出典:http://retractionwatch.com/2016/02/09/chemist-sues-university-of-texas-again-to-keep-phd/#comment-963959

白楽も、マーティン教授がかなりおかしいと思う。ただ、どうしてマーティン教授がヘンなのか、報道された記事からはわからない。

《2》白楽はへそ曲がり

スヴィ・オーアの事件は、テキサス大学の対応と、マーティン教授の対応に異様な執拗さを感じる。また、オーアが、即、裁判に訴えたのも、なんかヘンである。

そして、メディアがオーアの味方になっていて、全体的な論調は、オーアに有利に進んだ。

白楽はへそ曲がりだから、メディア全体の一方向の動きが、なんかヘンだと感じる。頭のどこかで警告ランプが点灯している。

冷静に考えてみよう。

スヴィ・オーアの博士論文に、本当に、データ改ざんはなかったのだろうか? 「間違い」だったのだろうか?

伝えられる事件内容はスヴィ・オーアの主張だけである。大学の調査委員会がデータ改ざんと結論した報告書は公表されていない。大学側はほぼ黙秘している。

もっとも、調査委員会の報告書が公表されても、白楽自身が実験ノートを検証できないので、何とも言えない。

ただ、博士号はく奪で大騒ぎしていて、データ改ざんの調査内容の正否の検討がかすんでしまった。

オーアの弁護士・デイヴィッド・セルジが優秀で、メディアをオーアの味方にしてしまったようだ。

ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー

●8.【主要情報源】

① 「撤回監視(Retraction Watch)」記事群:〈1〉2014年4月22日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の記事:Scientist found to have falsified data in thesis sues to keep her PhD – Retraction Watch at Retraction Watch、〈2〉2016年のシャノン・パルス(Shannon Palus)の記事:Chemist fighting to keep PhD asks University of Texas to pay $95k in legal fees – Retraction Watch at Retraction Watch、〈3〉2016年のシャノン・パルス(Shannon Palus)の記事:Chemist sues University of Texas (again) to keep PhD – Retraction Watch at Retraction Watch
② 2016年2月9日のライアン・コシアン(Ryan Kocian)記者の「Courthouse News Service」記事:Courthouse News Service 保存済
③ 2016年の「American-Statesman」記事群:〈1〉2016年2月5日のRalph K.M. Haurwitz記者の記事:UT grad sues second time to retain Ph.D. amid allegation of…保存版)。 2016年3月18日のマリーアン・ローザー(Mary Ann Roser)記者の記事:Ex-student asks judge to stop UT’s attempts to revoke her degree保存版
④ 2016年2月11日のジェフ・アキスト(Jef Akst)記者の「Scientist Magazine」記事:Chemist Sues University Again | The Scientist Magazine®保存版
⑤ 本文中に引用した裁判記録
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です