2021年11月12日掲載
ワンポイント:ヤダフはインド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)・教授である。2012~2017年に出版された7論文がデータねつ造・改ざんで2017~2019年に撤回された。大学はネカト調査をしておらず、ヤダフは処分されていない。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
ーーーーーーー
●1.【概略】
マヘンドラ・ヤダフ(Mahendra Yadav、ORCID iD:?、写真出典)は、インドのインド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)・教授で、専門は化学(石油化学)である。インド工科大学鉱物科大学院はインド工科大学ダーンバード校(鉱物学)でもある。
2017年3月10日(47歳?)、学術誌・「Corrosion Science」は編集部の判断で、ヤダフの論文を1報撤回した。この時がヤダフにとっては、最初の論文撤回である。本ブログ記事では、この時をネカト発覚の最初とした。
2021年11月11日(51歳?)現在、2012~2017年に出版された7論文がデータねつ造・改ざんで、2017~2019年に撤回されている。
所属するインド工科大学鉱物科大学院はネカト調査をした気配がない。調査報告書も発表していない。
従って、ヤダフは処分されておらず、教授職を保持している:IIT ISM Dhanbad
インド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)は、NIRF の2018年大学総合ランキングでインド第27位の名門大学である。「4icu.org のTop Universities in India | 2021 Indian University Ranking」の大学ランキング(信頼度は?)ではインド第101位の大学である。
インド工科大学(Indian Institute of Technology)。写真出典
インド工科大学(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)。写真出典
- 国:インド
- 成長国:インド
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:インド工科大学(BHU)バラナシ校
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1970年1月1日生まれとする。1999年に講師に就任した時を29歳とした
- 現在の年齢:54 歳?
- 分野:化学
- 不正論文発表:2012~2017年(42~47歳?)
- 発覚年:2017年(47歳?)
- 発覚時地位:インド工科大学鉱物科大学院・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明。「パブピア(PubPeer)」への公益通報と思われる
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②インド工科大学鉱物科大学院は調査していない(推定)
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:調査していない、発表なし(✖)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:7報撤回
- 時期:研究キャリアの中期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:cv.pdf
- 生年月日:不明。仮に1970年1月1日生まれとする。1999年に講師に就任した時を29歳とした
- 19xx年(xx歳):インドのxx大学(xx)で学士号取得:化学
- 19xx年(xx歳):インド工科大学(BHU)バラナシ校(Indian Institute of Technology (BHU))で研究博士号(PhD)を取得:化学
- 1999年4月12日~2001年8月22日(29~31歳?):ベリナグ政府大学院大学(Govt. P.G. College, Berinag)・講師
- 2001年8月23日~2007年3月22日(31~37歳?):アザンガル政府大学院大学(Govt. P.G. College, Azamgarh)・講師
- 2007年3月23日~2010年3月23日(37~40歳?):インド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)・助教授
- 2010年3月23日(40歳?):同大学・準教授
- 20xx年(xx歳):同大学・正教授
- 2017年(47歳?)?:ネカトが発覚
- 2021年11月11日(51歳?)現在:教授職を保持している:IIT ISM Dhanbad
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★経緯
マヘンドラ・ヤダフ(Mahendra Yadav)のネカト発覚の経緯は不明である。
「パブピア(PubPeer)」のコメント投稿日が表示されなくなったので年月がハッキリしないが、「パブピア(PubPeer)」でデータの異常を指摘されたのが発覚の端緒だと思われる。
2017年3月10日(47歳?)、学術誌・「Corrosion Science」は編集部の判断で、ヤダフの論文を1報撤回した。この時がヤダフにとっては、最初の論文撤回である。本ブログ記事では、この時をネカト発覚の最初とした。
→ 2017年3月10日の撤回告知:WITHDRAWN: Indolines as novel corrosion inhibitors: Electrochemical, XPS, DFT and molecular dynamics simulation studies – ScienceDirect
2021年11月11日(51歳?)現在、2012~2017年に出版された7論文がデータねつ造・改ざんで2017~2019年に撤回されていた。
所属するインド工科大学鉱物科大学院はネカト調査をした気配がない。調査報告書も発表していない。
従って、ヤダフは処分されておらず、教授職を保持している:IIT ISM Dhanbad
●【ねつ造・改ざんの具体例】
インド工科大学鉱物科大学院はネカト調査をした気配がない。調査報告書も発表していない。
つまり、どの論文の何がどのようにねつ造・改ざんされたのか、公式発表がない。
パブピアで探った。
★「2014年のActa Metall. Sin.」論文
「2014年のActa Metall. Sin.」論文の書誌情報を以下に示す。2018年10月26日、撤回された。
- Experimental and Quantum Studies on Adsorption and Corrosion Inhibition Effect on Mild Steel in Hydrochloric Acid by Thiophene Derivatives.
Yadav, M., Behera, D., Sinha, R.R. et al.
Acta Metall. Sin. (Engl. Lett.) 27, 37–46 (2014)
撤回告知では、図7a-7dが他の論文の図と同じだと指摘している。以下に図7a-7dを示し、その後、他の論文の図を示した。まったく同じですね。
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/D96A838ECEE5CB4F1A1E6F7BE846B3
以下は他の論文の図。
つまり、異なる化合物なのに別の論文の画像を再使用していた。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★論文数
2021年11月11日現在、マヘンドラ・ヤダフ(Mahendra Yadav)の論文をヤダフの業績リストから探すと、50論文がリストされている。
★撤回監視データベース
2021年11月11日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでマヘンドラ・ヤダフ(Mahendra Yadav)を「Mahendra Yadav」で検索すると、 1論文が訂正、7論文が撤回されていた。
2012~2017年出版された7論文が2017~2019年に撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2021年11月11日現在、「パブピア(PubPeer)」では、マヘンドラ・ヤダフ(Mahendra Yadav)の論文のコメントを「Mahendra Yadav」で検索すると、13論文にコメントがあり、スマット・クライド(Smut Clyde)の検索語である「”m. yadav” OR “mahendra yadav”」で検索すると19論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》不明
マヘンドラ・ヤダフ(Mahendra Yadav)事件では、ヤダフが「どのような状況で、どうして」ネカトをしたのか、見えてこない。これでは、ネカト対策に役立つ点は少ない。
ヤダフは7論文も撤回されているのに、所属するインド工科大学鉱物科大学院がネカト調査をしないのは、ヘンである。
ーーーーーーー
日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓
ーーーーーー
●9.【主要情報源】
① 2019年6月27日のR・プラサド(R. Prasad)記者の「Science Chronicle」記事:Department of Applied Chemistry, IIT Dhanbad has 45 papers with duplicated, manipulated images – Science Chronicle
② 2019年7月10日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Chemistry researcher who studies oil wells is up to seven retractions – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
注意:お名前は記載されたまま表示されます。誹謗中傷的なコメントは削除します