2020年3月22日掲載
ワンポイント:2014年10月31日(54歳?)、発覚から8年後(遅いですね)、研究公正局は、NIH/国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所(NIH・NIAMS)・部長だったアフヴァーズィに、論文画像のねつ造・改ざんがあったと発表した。2014年10月7日から2年間の締め出し処分を科した。撤回論文は2報。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ビジャン・アフヴァーズィ(ビヤン・アフバジ、Bijan Ahvazi、ORCID iD:、顔写真は見つからなかった)は、米国のNIH/国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所(NIH・NIAMS:National Institute of Arthritis and Musculoskeletal Skin Diseases)・エックス線結晶部(Laboratory of X-ray Crystallography)・部長で、医師ではない。専門はタンパク質結晶学である。
この事件は不明だらけである。アフヴァーズィの出身国、受けた教育、ネカト発覚の経緯、ネカト行為状況が不明である。
Bijan Ahvaziという名前はマレー語由来なので、マレー人の多い国から米国に来たのかもしれない。
2014年10月31日(54歳?)、研究公正局は、アフヴァーズィの2004-2006年(44-46歳?)の2年間の2報の発表論文と1つの投稿論文に、5つの画像のねつ造・改ざんがあったと発表した。
不採択になった「2006年のJ. Biol. Chem」投稿原稿の画像がねつ造・改ざんだと指摘されているので、発覚時期は、2006年(46歳?)だろう。
不採択になった投稿原稿にネカトが見つかっていることから、査読者がネカトを発見し告発したと思われる。本記事ではそう記載したが、論文の共著者が発見し告発したのかもしれない。
研究公正局は、2014年10月7日(54歳?)から2年間の締め出し処分を科した。2年間の締め出し処分は軽い処分である。
2015年1月26日(55歳?)、「撤回監視(Retraction Watch)」は、ビジャン・アフヴァーズィ(Bijan Ahvazi)がNIH を辞職し、2008年から米国特許庁(USPTO)の特許審査官になっていたと暴露した。
2020年3月21日(60歳?)現在、米国特許庁(USPTO)の特許審査官を辞職していない(推定)。
- 国:米国
- 成長国:不明
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:xx大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1960年1月1日生まれとする。顔写真なく、根拠なし
- 現在の年齢:64 歳?
- 分野:タンパク質結晶学
- 最初の不正論文発表:2004年(44歳?)
- 不正論文発表:2004-2006年(44-46歳?)の2年間
- 発覚年:2006年(46歳?)
- 発覚時地位:NIH/国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所・部長
- ステップ1(発覚):第一次追及者は論文の査読者(?)
- ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①NIH・調査委員会。②研究公正局
- 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 研究所の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:2報の発表論文と1つの投稿論文。2報の撤回論文
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
- 処分:NIHから 2年間の締め出し処分
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
全く不明。ジョージタウン大学(Georgetown University)やカナダのマギル大学(McGill University)に所属していたらしいが、確かではない。
- 生年月日:不明。仮に1960年1月1日生まれとする。顔写真なく、根拠なし
- xxxx年(xx歳):xx大学で学士号を取得
- xxxx年(xx歳):xx大学で研究博士号(PhD)を取得
- xxxx年(xx歳):NIH/国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所(NIH・NIAMS)・部長
- 2004年(44歳?):後で問題となる論文出版
- 2006年(46歳?):ネカトが発覚
- 2008年(48歳?)(推定):NIH/国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所(NIH・NIAMS)を辞職
- 2008年(48歳?):米国特許庁(USPTO)・特許審査官
- 2014年10月31日(54歳?):研究公正局がネカトと発表
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究費
採択研究費を調べると、2004年から「ZO1」を取得しているので、2004年にNIH/国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所のエックス線結晶部(Laboratory of X-ray Crystallography)・部長に就任したと思われる。:Grantome: Search
なお、研究費「ZO1」はどんなグラントなのかを調べたが、表にのってない。NIH所内向けの研究費なのだろう。 → Activity Codes Search Results
★ネカト
2014年10月31日(54歳?)、発覚から8年後(遅いですね)、研究公正局は、アフヴァーズィの2004-2006年(44-46歳?)の2年間の2報の発表論文と1つの投稿論文に、5つの画像の改ざんがあったと発表した。研究公正局の報告書では「him」と書いているので、アフヴァーズィは男性である。
2014年10月7日(54歳?)から2年間の締め出し処分を科した。2年間の締め出し処分は軽い処分である。
このアフヴァーズィ事件は不明だらけである。
アフヴァーズィの出身国、受けた教育、ネカト発覚の経緯、ネカト行為状況が不明である。
Bijan Ahvaziという名前はマレー語由来なので、マレー人の多い国から米国に来たのかもしれない。
「2004年6月のJ. Biol. Chem」論文、「2004年2月のJ. Biol. Chem」論文、それに、「2006年のJ. Biol. Chem」投稿原稿(不採択)の画像がネカトだと指摘されているので、発覚は2006年と思われる。
不採択になった投稿原稿の画像にネカトが見つかっている。このことから、白楽は、ネカトを発見し告発した人は、論文の査読者と思うが、特定できなかった。論文の共著者かもしれない。
2報の発表論文は、「2004年6月のJ. Biol. Chem」論文と「2004年2月のJ. Biol. Chem」論文である。
- Crystal structure of transglutaminase 3 in complex with GMP: structural basis for nucleotide specificity.
Ahvazi B, Boeshans KM, Steinert PM.
J Biol Chem. 2004 Jun 18;279(25):26716-25. Epub 2004 Apr 14. Erratum in: J Biol Chem. 2007 May 18;282(20):15312 - Structural basis for the coordinated regulation of transglutaminase 3 by guanine nucleotides and calcium/magnesium.
Ahvazi B, Boeshans KM, Idler W, Baxa U, Steinert PM, Rastinejad F.
J Biol Chem. 2004 Feb 20;279(8):7180-92. Epub 2003 Nov 28. Erratum in: J Biol Chem. 2007 Apr 27;282(17):13139.
1報の不採択原稿は以下の通り。「2006年のJ. Biol. Chem」投稿原稿である。
- Ahvazi, B., Boeshans, K.M., Idler, W.,& Cooper, A.J.L. “Crystal structure of transglutaminase 3-cystamine complex: Binding of two cystamines to the nucleotide-binding pocket.
M6:06060,Submitted to J. Biol. Chem., 2006 (rejected)
★再就職
2015年1月26日(55歳?)、「撤回監視(Retraction Watch)」は、ビジャン・アフヴァーズィ(Bijan Ahvazi)がNIH を辞職し、2008年から米国特許庁(USPTO)の特許審査官になっていたと暴露した。
2008年、ビジャン・アフヴァーズィ(Bijan Ahvazi)は米国特許庁(USPTO)に再就職し特許審査官になっていた。 → Patents Examined by Bijan Ahvazi – Justia Patents Search
「撤回監視(Retraction Watch)」記事によると、アフヴァーズィ特許審査官 の2013年の給料は基本給が$116,402(約1164万円)で$9,575(約96万円)のボーナスを受け取っていた:Search Federal Employee Salaries
白楽は、「撤回監視(Retraction Watch)」に2015年に指摘され、米国特許庁(USPTO)がアフヴァーズィを解雇したと思った。
イヤイヤ、2020年3月21日現在、アフヴァーズィは2018年の基本給が$134,710.00(約1347万円)だとリストされた(保存版)。2019年の記載はないが、辞めたというより、2019年のデータがリストされていないだけだろう。現在も米国特許庁(USPTO)の特許審査官だと思われる。
●【ねつ造・改ざんの具体例】
2014年10月31日の研究公正局の発表に、論文のネカト部分が指摘されている。5つの画像にねつ造・改ざんがあった。
「2004年6月のJ. Biol. Chem」論文の画像のねつ造・改ざんを1例示す。
★「2004年6月のJ. Biol. Chem」論文
「2004年6月のJ. Biol. Chem」論文の書誌情報を以下に示す。2007年5月18日に撤回された。
- Crystal structure of transglutaminase 3 in complex with GMP: structural basis for nucleotide specificity.
Ahvazi B, Boeshans KM, Steinert PM.
J Biol Chem. 2004 Jun 18;279(25):26716-25. Epub 2004 Apr 14. Erratum in: J Biol Chem. 2007 May 18;282(20):15312
研究公正局の指摘箇所を以下に示す。
以下の図3Aがねつ造・改ざんとあった(図の出典は原著)。
上記の図3Aは別の「2004年2月のJ. Biol. Chem」論文(2007年4月27日撤回)の図1A(以下)を標識を変えて流用した図だった。同じ画像なのに、X軸をみると、上記の図では[GMP]なのに、下図では[GTPγS]になっている。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2020年3月21日現在、パブメド(PubMed)で、ビジャン・アフヴァーズィ(Bijan Ahvazi)の論文を「Bijan Ahvazi [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2011年の10年間の24論文がヒットした。
「Ahvazi B[Author]」で検索すると、1993~2016年の24年間の45論文がヒットした。
2020年3月21日現在、「Ahvazi B[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回論文データベース
2020年3月21日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでビジャン・アフヴァーズィ(Bijan Ahvazi)を「Bijan Ahvazi」で検索すると、2論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2020年3月21日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ビジャン・アフヴァーズィ(Bijan Ahvazi)の論文のコメントを「Bijan Ahvazi」で検索すると、3論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》遅い
2006年にネカトが発覚して、その8年後の2014年10月31日に、研究公正局がクロ発表している。
遅い!
《2》ネカト者の再就職
研究公正局のクロ発表が遅いためなのか、2008年、ビジャン・アフヴァーズィ(Bijan Ahvazi)はNIHを退職して米国特許庁(USPTO)の特許審査官になっていた。そのことを指摘したのは、2015年1月26日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事である。
米国特許庁は、アフヴァーズィのネカトを知っていたら採用しなかったかどうか、白楽はわからない。
ただ、事実として、2015年1月26日に「撤回監視(Retraction Watch)」に指摘されたのちも、米国特許庁は、解雇できないのか、しないのか、不明だが、アフヴァーズィは在職している。
なお、研究公正局がクロと結論した人が国家公務員になるのを、法律は禁じていない。
ただ、データ不正をした人がデータを検査する公的な職に就くのは、どうでしょう。違和感が(少し)ある。
《3》詳細が不明
ビジャン・アフヴァーズィ(Bijan Ahvazi)事件は不明だらけである。アフヴァーズィの出身国、受けた教育、ネカト発覚の経緯、ネカト行為状況など、ほぼすべてが不明である。
それで、「どんな人が、どの状況で、どうして?」がわからない。ネカト防止策定の役に立たない。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 研究公正局の報告:(1)2014年10月31日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(2)2014年11月10日:NOT-OD-15-021: Findings of Research Misconduct
② 2014年10月31日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former NIH lab director faked findings in three papers: ORI – Retraction Watch
③ 2015年1月26日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Exclusive: Former NIH lab head who faked data now working as government patent examiner – Retraction Watch
④ 2016年2月15日の記事:Ethics Case Study-Bijan Ahvazi – My PhD Journey
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