2021年1月1日掲載
ワンポイント:2020年に世界中(含・日本)で起こったネカト関連事件から、特に重要な事件を選んだ(選者が)。ネカトだけでなく、学術界・健康科学界の重要な事件も含まれている。
- 分野を記載していないのは生命科学。
- カタカナ名の赤字は本ブログで解説済み。
- ※印の事件は近日中に本ブログの記事にする予定。
- 本記事は、更新日を示さずに上書きする。
★1.「The Scientist」誌の「2020年の論文撤回上位」:2020年12月15日
出典:The Top Retractions of 2020 | The Scientist Magazine®、保存版
著者は「撤回監視(Retraction Watch)」。
【1A】コーヴィッド 19(COVID-19)関連の撤回論文の最も重要な 10項目
【1B】コーヴィッド 19(COVID-19)以外の最も重要な撤回論文5報の研究者
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【1A】コーヴィッド 19(COVID-19)関連の撤回論文の最も重要な 10項目。以下の番号は順位ではない。
- サパン・デサイー(Sapan Desai)(米)
- ディディエ・ラウル(Didier Raoult)(フランス)
- (ネカトではない):「Asian Journal of Medicine and Health」誌を捕食学術誌と指摘した論文の話
- 「ズサン」:ソンハン・キム、김성한(Sung-Han Kim)(韓国)
- マッシモ・フィオラネッリ(Massimo Fioranelli)(イタリア)
- 「錯誤」:チャンドラ・ウィクラマシンゲ(Chandra Wickramasinghe)(スリランカ)、エドワード・スティール(Edward Steele)(豪)、ゲンスケ・トコロ、所源亮(Gensuke Tokoro)(日本)
- モーゼス・ビリティ(Moses Bility)(米)
- 「ズサン」:ジーラ・マグボーリ(Zhila Maghbooli)(イラン)
- (ネカトに該当せず):インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のアズラ・ガーニ・感染症教授(Azra Ghani)(英)の「2020年3月16日のImperial College」報告書と「2020年3月30日のLancet Infectious Diseases」論文は、中国のリジュン・ファン(Li-Qun Fang)らの論文を引用したが、データが古いという理由で中国の論文が撤回された → 200426のRetraction Watch
- 「ズサン」:シボー・ジャン(Shibo Jiang)(中国)
【1B】コーヴィッド 19(COVID-19)以外の最も重要な撤回論文5報の研究者。以下の番号は順位ではない。
- 化学:トマス・ハドリィキー(Tomáš Hudlický)(米):(ネカトではない)
- (ネカトに該当せず)
- マッシモ・フィオラネッリ(Massimo Fioranelli)(イタリア)
- ジョナサン・プルイット(Jonathan Pruitt)(カナダ)
- 「善行」:ケイト・ラスコウスキー(Kate Laskowski)(米):プルイット事件で説明した。
化学:フランシス・アーノルド(Frances Arnold)(米)
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★2.RealClearScience誌の「2020年の最大ガラクタ科学」:2020年12月15日
出典:The Biggest Junk Science of 2020 | RealClearScience、保存版
ランクした人はロス・ポメロイ(Ross Pomeroy)。ポメロイは動物学者、生物保護学者でブログ「RealClearScience」のライター。学歴・職歴はよくわからない。
→ Ross Pomeroy | Author | RealClearScience
8件の最大ガラクタ科学。第4位は責任研究者が不明なのでパス。第5、6、7位は研究者ではないのでパス。第8位は【1A】の「7」と同じ。
- 第1位:ヒドロキシクロロキンはCOVID-19の治療に世界中で使用されたが、効果はない:Hydroxychloroquine and the price of abandoning of science- and evidence-based medicine – Science-Based Medicine → 【1A】のディディエ・ラウル(Didier Raoult)(フランス)と類似の事件
- 第2位:ジュディ・ミコヴィッツ(Judy Mikovits)(米):ミコヴィッツは、マスクがCOVID-19を活性化する、ビーチには治癒力がある、COVID-19ワクチンが数百万人を殺すという、根拠のないデマを流布:Debunking the most dangerous claims of ‘Plandemic’ | Live Science
- 第3位:5GでCOVID-19の感染を防げるデマ(米):The Science Of Why 5G Is (Almost) Certainly Safe For Humans → 【1A】のマッシモ・フィオラネッリ(Massimo Fioranelli)(イタリア)と類似の事件
- 第4位:(イラン):イランでコロナウイルスの予防にメタノールを飲み、数千人が病気になったり死亡した:In Iran, false belief a poison fights virus kills hundreds
- 第5位:トランプ大統領(President Trump)(米):トランプ大統領がコロナウイルスを殺すために消毒剤を注射するのを公然と暗示:Coronavirus: Outcry after Trump suggests injecting disinfectant as treatment – BBC News
- 第6位:マイク・リンデル(Mike Lindell)(米):枕の会社(My Pillow – Wikipedia)のリンデル社長(Mike Lindell – Wikipedia)がキョウチクトウからの毒物・オレアンドリン(Oleandrin – Wikipedia)がCOVID-19の治療に有効と発表:Oleandra – The New COVID Snake Oil – Science-Based Medicine
- 第7位:ルーク・バーネット主任牧師(Luke Barnett )(米):フェニックスの巨大教会であるドリームシティ教会(Dream City Church – Wikipedia)のバーネット主任牧師は、ドリームシティ教会 の空気ろ過システムはCOVIDの99.9%を殺すと主張した:Phoenix Megachurch Hosting Trump Rally Says It Has a Special Virus-Killing Air System | Phoenix New Times
- 第8位:モーゼス・ビリティ(Moses Bility)(米):ピッツバーグ大学・感染症のビリティ助教授は翡翠のお守りがCOVID-19の感染予防に効くという論文を発表 → 【1A】の「7」で既述
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★3.サイメックス(Scimex):「オーストラリア科学メディアセンターが選んだ2020年の奇妙な10大科学話」:2020年12月11日
出典:The AusSMC’s Top 10 WEIRD Science Stories 2020 – Scimex、(保存版)。
オーストラリア科学メディアセンター(AusSMC)が選んだとあるが、選んだ人の名前は不記載。
以下の番号は順位ではない。引用先を示していない写真は文章と同じ出典。
10話の内、最初の4話を以下に示した。内容はネカト・クログレイではなく、ユーモア話なので、他の6話の紹介を止めた。
- ミイラの声:工学:デイヴィッド・ハワード(David Howard) (英):Synthesis of a Vocal Sound from the 3,000 year old Mummy, Nesyamun ‘True of Voice’ | Scientific Reports
3,000年前の古代エジプトのミイラのうめき声を再現した。「ハムナプトラ2 黄金の王女」と「トーキング・デッド」が出会ったケースである。テーベのカルナック神殿(現在のルクソール)に埋葬されミイラ化した古代エジプトの司祭兼書記の遺骨の喉頭は、ミイラ化のおかげで何世紀にもわたって無傷のままだった。X線スキャンと3Dプリンターを使って、声道の軟組織を再現し、電子喉頭を使用して音を再現した。なお、話し声の再現はできない。再現した音は、牛の発する「モー(実際は「エー」)」に似た音だった。聞いてみたい方は以下、または → ココ をクリック。 - イグノーベル賞:イヴァン・マクシモフ(Ivan Maksymov)(豪):Vibrating a drunk worm lands Australia a prestigious global ‘Ig Nobel’ award – Scimex
マクシモフは、2020年のイグノーベル賞を受賞したスウィンバーン工科大学(Swinburne University of Technology)・上級講師で、脳での音波の役割を研究する研究者である。今回、ミミズの神経が哺乳類の神経と似ているので、田舎にある自宅の裏庭の小屋で、ミミズにウォッカを飲ませて麻酔し、サブウーファースピーカーで少し酔った(麻酔した)ミミズを振動する実験を行なった。
- 豊胸は命を救う:ジャンカルロ・マクエベニュー(Giancarlo McEvenue)(カナダ):Life-Saving Silicone Breast Implant After Firearm Injury: Case Report and Treatment Recommendations
カナダのマクリーン病院(McLean Clinic)のマクエベニュー整形外科医(写真出典)が発表した「2020年4月のPlastic Surgery Case Studies」論文。近距離で胸を撃たれた30歳のカナダ人女性の治療をした。左胸に弾丸が当たったのだが、豊胸手術したシリコンインプラントおおかげで弾丸の進路は心臓をそれていた。女性は完全に回復したが、6か月間は新しい豊胸手術をしないようにとのこと。なお、過去に豊胸インプラントで弾丸がそれた事件は4件あった。そのうち2件は女性の命を救った。
- 睾丸で味わう:ベドリック・モージンガー(Bedrich Mosinger)(米):Genetic loss or pharmacological blockade of testes-expressed taste genes causes male sterility | PNAS
米国のモネル化学感覚研究所(Monell Chemical Senses Center)のモージンガー研究員は「2013年のPNSA」論文を発表した。味蕾にあるガストデューシン(gustducin)という味覚たんぱく質が甘い・にがいを感じている。その味覚たんぱく質は睾丸や精子にもある。論文は、それが男性不妊に関係しているとのことだが、2020年、悪乗りしたアホなユーチューバーや10代のティックトッカーが自分の睾丸で味覚を試した動画をアップした。 → TikTok users are dipping their testicles in soy sauce to taste it – Insider
以下はそのアホなユーチューバーが自分の睾丸に醤油とオレンジジュースで試した動画。
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★4.「Science Integrity Digest」の「2020年という1年を振り返って」:2020年12月31日
出典:2020: A year in review – Science Integrity Digest、保存版
著者はエリザベス・ビック(Elisabeth Bik、写真出典)(米) → 1‐5‐1 ネカトハンターとネカトウオッチャー | 白楽の研究者倫理。
ランキングではなく、ビックが発表した2020年の1年間の主要ネカト事件。以下の番号は順位ではない。
【4A】顕彰ものの論文:2報
【4B】コーヴィッド 19(COVID-19)論文:1報
【4C】論文工場:省略
【4D】同じ研究グループの複数論文:13グループ
【4E】思い出に残る2020年の撤回論文:3報
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【4A】顕彰ものの論文。2報
- マッシモ・フィオラネッリ(Massimo Fioranelli)(イタリア)
- サパン・デサイー(Sapan Desai)(米): 但し、問題にしたのはねつ造画像の「2005年のJournal of Neurophysiology」論文
【4B】コーヴィッド 19(COVID-19)論文:1報
- ディディエ・ラウル(Didier Raoult)(フランス)
【4C】論文工場
省略
【4D】同じ研究グループの複数論文:13グループ
- デチー・ムー、母得志(Dezhi Mu)(中国)
- チャウンシャン・チャン(张传祥、張傳祥、Chawnshang Chang)、スオク・リー(Soo Ok Lee)(米)
- ディディエ・ラウル(Didier Raoult)(フランス)
- 化学工学:トーマス・ウェブスター(Thomas Webster)(米)、ヤン・セン(沈雁、Yan Shen)(中国)
- ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)(米)
- エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso)(カナダ)
- 化学:ファティ・シェン(Fatih Şen)(トルコ)
- ?
- 化学:アリレザ・ヘイダリ(Alireza Heidari)(米)
- アール・ロバートソン(Erle Robertson)(米)
- マリウシュ・ラタイジャック(Mariusz Ratajczak)(米)
- フセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand)(イラン)
- ファ・タン(汤华、唐華、Hua Tang)(中国)
【4E】思い出に残る2020年の撤回論文:3報
- マッシモ・フィオラネッリ(Massimo Fioranelli)(イタリア)
- ロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)(オランダ)
- シイ・ウー(Xu Wu)、ジシャオ・ニウ(Jixiao Niu)(米)
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★5.Plagiarism Todayの「2021年に注視する5つの著作権物語」:2021年1月4日
出典:5 Copyright Stories to Watch in 2021、(保存版)
今年は、学術研究者の盗用事件を1人も取り上げていない。
ランクした人は、ジョナサン・ベイリー(Jonathan Bailey)。2002年に米国・サウスカロライナ大学(University of South Carolina)でジャーナリズムとマスコミの学士号を取得した。知的所有権のコンサルタント会社・コピーバイト(CopyByte)の経営者で「Plagiarism Today」サイトで記事を書いているー。(経歴と写真の出典)。経歴②
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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