数学:ダナット・マーク(Dănuț Marcu)(ルーマニア)

2020年7月23日掲載 

ワンポイント:ブカレスト大学(University of Bucharest)の研究博士号(PhD)を持つ数学者で、大学・研究所に所属していない。2002年-2003年(50-51歳)、複数の盗用論文の投稿が発覚した。悪名高い盗用常習者で、複数の学術誌から投稿禁止処置がされている。盗用ページ率と盗用文字率は共に約100%(推定)である。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ダナット・マーク(Dănuț Marcu、ORCID iD:?、写真出典)は、ブカレスト大学(University of Bucharest)の研究博士号(PhD)を持つ数学者で、大学・研究所に所属していない。専門は数学(コンピューター)だった。自称、400報以上の論文を発表した。

2002年-2003年(50-51歳)、複数の盗用論文の投稿が発覚した。盗用ページ率と盗用文字率は共に約100%(推定)である。マークは、悪名高い盗用常習者で、複数の学術誌は投稿を受け付けない処分を科している。

大学・研究所に所属していないので、大学・研究所は盗用の調査をしていない。

このような人のネカトは、誰がどう対処すると良いのでしょうか?

ブカレスト大学(University of Bucharest)。写真出典

  • 国:ルーマニア
  • 成長国:ルーマニア
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ブカレスト大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1952年1月11日
  • 現在の年齢:69 歳
  • 分野:数学
  • 最初の不正論文発表:2002年(50歳)?
  • 不正論文発表:2002年-2003年(50-51歳)
  • 発覚年:2003年(51歳)
  • 発覚時地位:
  • ステップ1(発覚):第一次追及者の1人はオークランド大学(Oakland University)のジェロルド・グロスマン教授(Jerrold W. Grossman)
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。大学・研究機関に所属していない
  • 大学の透明性:大学・研究機関に所属していない。該当せず(ー)。
  • 不正:盗用
  • 不正論文数:数報?
  • 盗用ページ率:ほぼ100%(推定)
  • 盗用文字率:ほぼ100%(推定)
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:大学・研究機関に所属していない
  • 処分:複数の学術誌が投稿禁止処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:https://www.oocities.org/drmarcu/PP_DM.html

  • 1952年1月11日:ルーマニアのブカレストで生まれた
  • 1974年(22歳):ルーマニアのブカレスト大学(University of Bucharest)で学士号取得:数学
  • 1975年(23歳):同大学で学士号取得:コンピューター学
  • 1981年(29歳):同大学で研究博士号(PhD)を取得:数学
  • 1994年(42歳):イタリアのイタリア産業復興公社(Istituto per la Ricostruzione Industriale)からE.M.B.A取得
  • 2002年-2003年(50-51歳):複数の盗用論文の投稿が発覚

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★盗用の発覚と全体像

ダナット・マーク(Dănuț Marcu)の盗用を最初に見つけた人は不明だが、2002年-2003年(50-51歳)の2年間に盗用が指摘された。

盗用論文数は不明だが、マークは自分のウェブサイトで400報以上の論文を発表したと書いている。このほとんどが盗用だとすると、膨大な数である。

以下は数例を記す。

★学術誌「A Quarterly Journal of Operations Research」

2002年10月、ダナット・マーク(Dănuț Marcu)は数学の学術誌「A Quarterly Journal of Operations Research」に論文原稿「Some results on the independence number of a graph」を投稿した。

その査読で次のことが起こった。

1人目のレフェリーは修正を求めるレポートを返してきた。

2人目のレフェリーは次のように返事をしてきた。

素晴らしいものではありませんでしたが、結果と証明は非常にきちんとしています。ただ、私は同じような論文をどこかで読んだ気がしました。

翌日、2人目のレフェリーは次のメールを送ってきた。

マークの投稿原稿は、J. B. Shearer: “The independence number of dense graphs with large odd girth” (The Electronic Journal of Combinatorics 2 (1995), http://www.combinatorics.org/Volume_2/PDFFiles/v2i1n2.pdf)の論文を少し改変したコピーだったことに気がつきました。数学の出版物で100%の盗用を発見したのはこれが初めてです。そう言えば、最近、私は著名な数学者から盗用についての手紙をもらったことを思い出しました。手紙を探して、確かめると、マークの盗用のことが書いてありました。手紙のコピーを添付します。

添付の手紙は著名な数学者からの手紙で、マークは悪名高い盗用だと書いてあった。

勿論、学術誌「A Quarterly Journal of Operations Research」はマークの投稿原稿を不採択にした。そして、マークを永久投稿禁止処分に科した。

以下は不採択にした投稿原稿:出典(https://users.ugent.be/~tmarchan/4OR/plagiarism.pdf)

★ポール・レンテルン(Paul Renteln)

ポール・レンテルン(Paul Renteln)は、カリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校(California State University, San Bernardino)の物理学教授である。

マークはレンテルン教授の以下の「2003年のArs Combinatoria」論文をほとんどそのまま盗用した。

レンテルン教授は次のように書いている。

非常に奇妙なことが起こりました。ダナット・マーク(Danut Marcu)という名前の研究者が私の論文全体を盗用しました!

盗用論文は、2003年のStudia Universitatis Babes-Bolyai Informatica、Vol XLVIII、Number 2、2003、pp.11-16の「A Note on the Chromatic and Independence Number of a Graph」というタイトルのDanut Marcuの論文です。最初の2ページは、私の論文をそっくりそのまま、証明の詳細まで盗用していました。

なお、ダナット・マーク(Danut Marcu)の盗用はこれが初めてではありません。彼は何年にもわたって論文を盗用し、自分の論文としています。 残念ながら、彼の論文の多くはレフェリーと学術誌の両方をだましています。ダナット・マーク(Danut Marcu)の最新の盗用を明らかにし、状況を私に知らせてくれたオークランド大学(Oakland University)のジェロルド・グロスマン教授(Jerrold W. Grossman)に感謝します。(出典:note.html

ダナット・マーク(Dănuț Marcu)の盗用を最初に見つけた人は不明だが、オークランド大学(Oakland University)のジェロルド・グロスマン教授(Jerrold W. Grossman、写真出典)が貢献している。それで、本記事ではジェロルド・グロスマン教授を第一次追及者としておく。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★論文数

論文数は、自称、400報以上の論文を発表したとある。

★撤回監視データベース

2020年7月22日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでダナット・マーク(Dănuț Marcu)を「Dănuț Marcu」で検索すると、0論文がヒットし、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2020年7月22日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ダナット・マーク(Dănuț Marcu)の論文のコメントを「Dănuț Marcu」で検索すると、0論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》どう対処する? 

ダナット・マーク(Dănuț Marcu)はブカレスト大学(University of Bucharest)の研究博士号(PhD)を持つ。

400報も論文を発表している。400報の内のどれくらいが盗用論文なのか不明だが、少なくとも数論文は他人の論文をそっくり盗用し別の学術誌に投稿していた。

マーク本人は勿論、盗用が不正であることは承知している。そして、論文業績で研究者のキャリアーアップをする意図はない。論文発表は趣味かもしれない。

マークはどのように生計を立てているのか不明だが、大学・研究所に所属していない。だから、盗用と非難されても、大学・研究所から解雇されない。となると社会が科せる処分はとても少ない。勿論、盗用罪で逮捕ということはない。民事訴訟で損害賠償が請求されることもない。各学術誌は、既に掲載した論文は撤回処分、そして、今後の投稿を禁止するという処分でしかない。

このような人のネカトをどう対処するといいのか?

実害があるのだから、強い処置をすべきでしょう。

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●9.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Dănuț Marcu – Wikipedia
② 2006年3月論文:Bouyssou, Denis; Martello, Silvano; Plastria, Frank:4OR: A Quarterly Journal of Operations Research, 4: 11–13, doi:10.1007/s10288-006-0087-0 A case of plagiarism: Dănuţ Marcu.pdf
③ 2007年論文:アレクサンダー・ソイファー(Alexander Soifer), Geombinatorics, XVI (3): 293–296 (2007):The Case of Dr. Danut Marcu: Serial Plagiarism and Signing False Statements
④ 2013年4月19日の「Graduate Skills Courses」記事:1.8 A notorious mathematical problem
4OR:Cases of unethical behavior
⑥ ダナット・マーク(Dănuț Marcu)のウェブサイト:Graph Theory White Pages: Danut Marcu
⑦ 2016年論文:Crama, Y., Grabisch, M. & Martello, S. A brand new cheating attempt: a case of usurped identity. 4OR-Q J Oper Res 14, 333–336 (2016). https://doi.org/10.1007/s10288-016-0329-8:A brand new cheating attempt: a case of usurped identity | SpringerLink
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