盗博:法学:マヌエル・バルディソン(Manuel Baldizón)(グアテマラ)

2018年1月16日掲載。

ワンポイント:2014年(43歳)に大統領の最有力候補だった野党の政治家(男性)。2014年(43歳)に著書の盗用、次いで、2004年(2007年?)の博士論文の盗用(盗用率50%以上)が発覚した。2015年(45歳)、支持率が減り、党首を辞任し、大統領候補者を降りた。博士号ははく奪されなかった。損害額の総額(推定)は10億円(当てずっぽう)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

マヌエル・バルディソン(Manuel Baldizón、写真出典)は、グアテマラの政治家で野党LIDER党の党首だった。2014年1月の次期大統領選の予備調査で最大の支持率を集めたが、その直後に盗用、盗博が発覚した。

2014年1月の次期大統領選予備調査において最大の支持率(33.6%)を獲得したものの、同月に発売した著作『パラダイムの破壊』において盗作が発覚し販売が中止となっていた。結局、2014年2月、同著作は引用符を付して再販されたが、同氏が2007 年に執筆した博士論文についても、文章のほとんどはインターネット上に掲載されている文章の「コピー&ペースト」であることが発覚した。出典:在グアテマラ日本国大使館「グアテマラ月報(2014 年2 月)」

2015年9月14日(45歳)、党首を辞任し、大統領候補者を降りた。

グアテマラ・サン・カルロス大学(Universidad de San Carlos de Guatemala)。写真出典

グアテマラ・サン・カルロス大学の講義風景。写真出典

  • 国:グアテマラ
  • 成長国:グアテマラ
  • 研究博士号(PhD)取得:グアテマラ・サン・カルロス大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1970年5月6日
  • 現在の年齢:53 歳
  • 分野:法学
  • 博士論文タイトル:Legislative approval of the free trade agreements and the popular consultation: the case of the free trade treaty with the United States
    (日本語訳):自由貿易協定の法的承認と一般的な協議:米国との自由貿易条約の場合
  • 博士論文指導教授: ?
  • 博士論文提出:2004 年(34歳)、2007 年(37歳)?
  • 盗博発覚年月日:2014年(43歳)
  • 盗用ページ率:xx%
  • 盗用文字率:50 %以上
  • 研究博士号(PhD)はく奪状況:はく奪なし
  • 最初の不正論文発表:2004 年(34歳)、2007 年(37歳)?
  • 発覚時地位:野党LIDER党の党首で、大統領の最有力候補者
  • ステップ1(発覚):盗博は「Contra Poder」新聞が見つけた
  • ステップ2(メディア): 「Contra Poder」新聞
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①グアテマラ・サン・カルロス大学は調査委員会を設けなかった?
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 不正:盗用。盗博
  • 不正論文数:書籍1冊。博士論文1報
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 損害額:総額(推定)は10億円(当てずっぽう)。内訳 → ①研究者ではないので研究成果上の損害はないが、盗博は明白である。政治家としてその国と政界の権威・公正・信頼を失墜させ、学術界・高等教育界に損傷を与えかつ腐敗環境を助長した。普通の国の現職大統領は1000億円、閣僚は100億円、知事・大統領候補は10億円(当てずっぽう)。
  • 結末:人気低下し大統領候補者を降りた。党首辞任

●2.【経歴と経過】

主な出典:Dr. Manuel Baldizón – Dr. Manuel Baldizón | Dr. Manuel Baldizón

  • 1970年5月6日:グアテマラで生まれる
  • 1987年(17歳):陸軍で歩兵。中尉で退役
  • 2000年(30歳):グアテマラのマリアノ・ガルベス大学(Universidad Mariano Gálvez)卒業。弁護士資格取得
  • 2003年(33歳):グアテマラの国会議員当選
  • 2004年(34歳)、2007 年(37歳)?:グアテマラ・サン・カルロス大学(Universidad de San Carlos de Guatemala)で研究博士号(PhD)を取得。法学
  • 2005年(35歳):スペインのサラマンカ大学(Universidad de Salamanca)・ポスドク、議会法の研究
  • 2007年(37歳):グアテマラの国会議員、再選。財務・通貨委員会委員長
  • 2009年(39歳):野党LIDER党の党首(副党首?)
  • 2011年(41歳):大統領選で2位
  • 2014年1月(43歳):大統領選(2015年)の予備選挙で最大の支持率を集めた
  • 2014年1月(43歳):書籍『パラダイムの破壊』出版。すぐに盗用が発覚し、書籍回収
  • 2014年2月(43歳):盗博が発覚。博士号ははく奪されなかった
  • 2015年9月14日(45歳):党首を辞任し、大統領候補者を降りた

●3.【動画】

【動画1】
盗用・盗博ニュースではない。大統領候補者のニュース動画:「LIDER党マヌエル・バルディソン候補者のプロフィール(Perfil del candidato Manuel Baldizón- Líder)」(スペイン語)51秒。
teleSUR tv が2015/09/05 に公開

【動画2】
盗用・盗博ニュースではない。バルディソンが政治に復帰し再び大衆の前に出てきたニュース動画:「バルディソンの復帰(RETORNO DE BALDIZÓN)」(スペイン語)1分36秒。
teleSUR tv が2015/09/05 に公開

●4.【日本語の解説】

★2014 年3月3日:在グアテマラ日本国大使館「グアテマラ月報(2014 年2 月)」

出典 → ココ

(2)バルディソン野党LIDER 党首著作の盗作疑惑

バルディソン野党LIDER 党首は、1 月の次期大統領選予備調査において最大の支持率(33.6%)を獲得したものの、同月に発売した著作『パラダイムの破壊』において盗作が発覚し販売が中止となっていた。結局、2 月、同著作は引用符を付して再販されたが、同氏が2007 年に執筆した博士論文についても、文章のほとんどはインターネット上に掲載されている文章の「コピー&ペースト」であることが発覚した。

(3)バルディソン野党LIDER 党首の辞任表明

バルディソン野党LIDER 党首は、「国民の声に耳を傾けることに専念する」ため、党首を辞任する旨発表した。後任にはロベルト・ビジャテ議員が就任する予定。

★2015年9月8日:ウラ「グアテマラ大統領選挙、10月決選投票へ(9月7日)」

出典 → ココ(保存版)

マヌエル・バルディソンは脱税との闘いを約束し、公共支出を削減し、国の現代化を進めると主張した。

バルディソンはあだなを“コピー・貼り付け博士”と呼ばれ、2014年に出版されたかれの博士論文のほんの、多くの部分が盗用されたものであることが発見されて広まった。

https://elpais.com/internacional/2015/09/15/actualidad/1442280961_962354.html

●5.【不正発覚の経緯と内容】

2014年1月(43歳)、マヌエル・バルディソンは次期大統領選(2015年)の予備選挙で最大の支持率を集めた。

2014年1月20日(43歳)、書籍『Rompiendo Paradigmas 』(日本語:パラダイムの破壊。英語:Breaking Paradigms。写真出典)を出版した。

2014年1月22日(43歳)、出版の2日後、書籍の内容のかなりの部分が適切な引用や許可を求めずに他の資料からコピーされているという証拠が示された。

2014年1月24日(43歳)、バルディソンの広報担当者はすぐにその告発に対応した。

書籍『パラダイムの破壊』の序論に、「この本では、著者は自分のアイデアだけでなく、他の学者や作家のアイデアも使用しています。読者には、融合したアイデアと理解していただきたい、と書かれております」と、バルディソンの広報担当者は、盗用ではないと弁解した。

http://www.fotomontag.com/2015_09_07_archive.html

しかし、少なくとも7ページが適切な引用なしに文章を使用したという明確な盗用の証拠が示され、盗用指摘の2日後、書店から書籍を回収し、被盗用者に謝罪した。

2014年2月12日(43歳)、著書の盗用が発覚したことで、「Contra Poder」新聞の記者はバルディソンの博士論文の盗用も調べ、盗博を見つけた。

人間の法則:「強い衝撃がなければ、悪習慣は続く」

しかし、グアテマラ・サン・カルロス大学(Universidad de San Carlos de Guatemala)は、博士論文審査会が審査して研究博士号(PhD)を授与したという理由で、博士号をはく奪しなかった。

2015年9月6日(45歳)、バルディソンは大統領選(2015年)の予備選挙で得票率が3位に下がった。

2015年9月14日(45歳)、LIDER党の党首を辞任し、大統領候補者を降りた。
→ 2015年9月16日記事(写真同):Guatemala Presidential Candidate Resigns, Faces Uncertain Future – InSight Crime

2017年12月18日(47歳)、しかし、バルディソンは政治家を辞めたわけではない。メディアに再び登場し、政治家として再起を果たそうとしている。

まだ47歳と若い。盗用政治家はいずれ、グアテマラの大統領になるのだろうか?

→ 2015年12月18日記事(写真同):Manuel Baldizón reaparece en redes y habla de sueños, venganza y agradecimiento | Publinews

●6.【論文数と撤回論文】

省略。

●7.【白楽の感想】

《1》博士号はく奪

政治家の盗用や盗博は、政治生命にかかわる。それは当然だと思うが、問題なのは、政治的に利用される点である。

1回目の大統領選の予備選挙で最大の得票率を獲得したのに、盗用と盗博で、国民の信頼を失い、大統領選から脱落した。党首も辞任した。

ただ、大学は博士号をはく奪しなかった。「盗博の博士号は当然はく奪!」なのに、大学の振舞はとても政治的だった。忖度は日本だけではありません。

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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Manuel Baldizón – Wikipedia
② 2014年1月24日の「PanAm Post」記事:Guatemala: Manuel Baldizón Book Riddled with Plagiarism、(保存版
③ 2014年2月5日の「KCBA News」記事:KCBA Fox 35 – Monterey / Salinas » Guatemala opposition leader plagiarized his doctoral thesis as press、(保存版
④ 2014年2月12日の「Contra Poder」記事:¿La tesis también, doctor? | Revista Contrapoder、(保存済)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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