2022年11月30日掲載
ワンポイント:デ・ブリトはリスボン大学(University of Lisbon)・工科大学(Instituto Superior Técnico)・教授である。2021~2022年、盗用、データねつ造・改ざんで、13論文が撤回された。ネカト犯は共著者の、イランのフェルダウシ大学マシュハド校(Ferdowski University of Mashad)・院生のカリミプール(現・米国在住)だとした。両大学はネカト調査をしていないので、真相不明。誰も処分されていない。国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito、Jorge Manuel Caliço Lopes de Brito、ORCID iD:?、写真出典)は、ポルトガルのリスボン大学(University of Lisbon)・工科大学(Instituto Superior Técnico)・教授で、専門は建築工学(コンクリートとモルタルの再生骨材)である。
「撤回監視(Retraction Watch)」にならい、本記事では、デ・ブリトを主役に、カリミプールを端役として記述した。
2021~2022年、データねつ造・改ざんで、2018~2011年に出版したデ・ブリトの 13論文が撤回された。
しかし、ネカト犯はイランのフェルダウシ大学マシュハド校(Ferdowski University of Mashad)・院生のアラシュ・カリミプール(Arash Karimipour、Arash Karimi Pour、写真出典)(現・米国在住)だと、デ・ブリトは述べている。
カリミプールは 19論文が撤回されている。「パブピア(PubPeer)」では、カリミプールの51論文にコメントがある。
2022年11月29日現在、リスボン大学とフェルダウシ大学マシュハド校の両大学はネカト調査をしていないので、真相不明である。誰も処分されていない。
リスボン大学(University of Lisbon)・工科大学(Instituto Superior Técnico)。写真出典
イランのフェルダウシ大学マシュハド校(Ferdowski University of Mashad)。写真出典
★ホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito)
- 国:ポルトガル
- 成長国:ポルトガル
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:リスボン大学・工科大学
- 男女:男性
- 生年月日:1959年11月19日
- 現在の年齢:65歳
- 分野:建築工学
- 不正論文発表:2018~2021年(59~62歳)の4年間
- 発覚年:2021年(62歳)
- 発覚時地位:リスボン大学・工科大学・教授
- ステップ1(発覚):推定だが、第一次追及者はネカトハンターのホヤ・カンフォリフォリア(Hoya camphorifolia)である。「パブピア(PubPeer)」で指摘した
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①リスボン大学は調査していない
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。リスボン大学は調査していない
- 大学の透明性:調査していない(✖)
- 不正:盗用、ねつ造・改ざん
- 不正論文数:撤回論文が13報
- 時期:研究キャリアの後期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
★ホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito)
主な出典: CV
- 1959年11月19日:モザンビークのロウレンソ・マルケスで生まれる。ポルトガル国籍
- 1982年7月(22歳):ポルトガルのリスボン大学(University of Lisbon)・工科大学(Instituto Superior Técnico)で学士号取得:土木工学
- 1986年9月(26歳): 同大学で修士号取得:構造工学
- 1993年5月(33歳):同大学で研究博士号(PhD)を取得:土木工学
- 2018~2021年(59~62歳):後で撤回されるネカト論文13報を出版
- 2021~2022年(62~63歳):上記13論文が撤回
★アラシュ・カリミプール(Arash Karimipour)
主な出典:①:(18) Arash Karimi Pour | LinkedIn、②:Arash KARIMI POUR
- 生年月日:不明。仮に1993年1月1日生まれとする。2011年に大学・学部生として入学した時を18歳とした
- 2011年9月~2015年9月(18~22歳?):イランのイーラーム大学(Ilam University)で学士号取得:土木工学
- 2015年9月~2017年9月(22~24歳?):イランのフェルダウシ大学マシュハド校(Ferdowski University of Mashad)で修士号取得:構造工学
- 2018~2021年(25~28歳?):後で撤回されるネカト論文19報を出版
- 2019年9月~2024年5月(26~31歳?):米国のテキサス大学エルパソ校(University of Texas at El Paso)・院生研究員
- 2021~2022年(28~29歳?):上記19論文が撤回
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
研究内容紹介の動画:「#11 #UmMinutoCom Prof. Jorge de Brito – YouTube」(英語)4分15秒。
Fórum Civil(チャンネル登録者数 291人)が2019/11/06に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★発覚の経緯と論文撤回
ネカト発覚の経緯は不明だが、ホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito)の1論文が2021年に、12論文が2022年に撤回された。
発覚の経緯を推察すると、ネカトハンターのホヤ・カンフォリフォリア(Hoya camphorifolia)が複数のホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito)の論文の重複画像や盗用を「パブピア(PubPeer)」で指摘したためと思われる。本記事ではその方向で記述した。
「2021年のJ. Build. Eng.」論文の撤回公告は以下のようだ。 → 2022年9月15日の撤回公告:Retraction notice to “Effect of different fibre types on the structural performance of recycled aggregate concrete beams with spliced bars” [J. Build. Eng. 38 (2021) 102090] – ScienceDirect
編集長は、この論文の研究公正に問題があると結論し、論文を撤回した。この論文と別の論文で、異なる条件なのに同じ画像が使われていた。また、他の2つの図は出典を明示せずに他人のウェブから盗用していた。
★ネカト者は?
ホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito)の撤回論文のネカト犯は誰なのか、リスボン大学(University of Lisbon)がネカト調査をしていないので、明確ではない。
デ・ブリトは 13報の撤回論文があるが、1報を除くと、アラシュ・カリミプール(Arash Karimipour、Arash Karimi Pour、写真出典)が共著者になっている。
カリミプールが修士号を取得したイランのフェルダウシ大学マシュハド校(Ferdowski University of Mashad)の マンスール・ガレノヴィ教授(Mansour Ghalehnovi、写真出典)も多数の撤回論文の共著者になっている。
カリミプールは現在、米国のテキサス大学エルパソ校(University of Texas at El Paso)の院生研究員だ。
2022年3月、デ・ブリトは上記共著者のガレノヴィ教授とメールでやり取りした。その結果、ネカト犯はカリミプールだと「撤回監視(Retraction Watch)」に伝えた。
しかし、ネカトハンターのアルテミシア・ストリクタ(Artemisia Stricta)はホルヘ・デ・ブリトがカリミプールに責任転嫁していると以下のように批判した。
すべての著者は自分が共著者になった論文の公正さに責任があります。幾つもの論文の共著者になっているホルヘ・デ・ブリトがカリミプールだけにネカト行為の責任を押し付けるのはおかしい。
ただ、2022年11月29日現在、リスボン大学とフェルダウシ大学マシュハド校の両大学はネカト調査をしていないので、真相は不明である。
結果として、誰も処分されていない。
しかし、デ・ブリトが13論文撤回に対して、カリミプールは 19論文撤回である。「パブピア(PubPeer)」では、デ・ブリトの10論文に対して、カリミプールは51論文にコメントがある。
この数値から、ネカト犯はカリミプールだと思う。
●【ネカトの具体例】
★「2014年のKey Engineering Materials」論文
「2014年のKey Engineering Materials」論文の書誌情報を以下に示す。2022年11月29日現在、撤回されていない。この論文にはアラシュ・カリミプール(Arash Karimipour)が共著者に入っていない。
- Performance of Concrete Made with Recycled Aggregates from Portuguese CDW Recycling Plants
Miguel Bravo, Jorge de Brito, Jorge Pontes, Luís Evangelista
Key Engineering Materials (Volume 634), 193-205. 2014
2021年8月xx日、「Tuber macrosporum」が、4つの図8,9,10,12は、同じ4人の著者の別の論文・「2015年のConstruction and Building Materials」論文と同じだと指摘した。つまり、二重出版、自己盗用。
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/846594021B037729B831D4E5A87D8C
――――――――――以下は図8,9,10,12
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
論文数は調べていない。
★撤回監視データベース
2022年11月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito)を「Jorge de Brito」で検索すると、2018~2021年に出版された 13論文が2021~2022年に撤回されていた。
端役としたアラシュ・カリミプール(Arash Karimipour)を「Arash Karimipour」で検索すると、2018~2021年出版された 19論文が2021~2022年に撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2022年11月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito)の論文のコメントを「Jorge de Brito」で検索すると、10論文にコメントがあった。
端役としたアラシュ・カリミプール(Arash Karimipour)の論文のコメントを「Arash Karimipour」で検索すると、51論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》主役と端役が逆?
「撤回監視(Retraction Watch)」がホルヘ・デ・ブリト(Jorge de Brito、写真出典)を主役、アラシュ・カリミプール(Arash Karimipour)を端役として記事を掲載していたので、本記事もそれに従った。
ただ、調べてみると、デ・ブリトの撤回論文数は13論文だが、カリミプールの撤回論文数は19論文で、デ・ブリトより6論文も多い。
そして、デ・ブリトの13撤回論文の内、カリミプールが共著者に入っていない論文は1報だけである。
「パブピア(PubPeer)」では、デ・ブリトの10論文に対して、カリミプールは51論文にコメントがある。
ということは、デ・ブリトはシロで、カリミプールがネカト常習犯の多数論文撤回者だと思われる。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】
① 2022年7月13日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Engineering researcher who cast blame on co-author will soon have 12 retractions – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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