2020年4月6日掲載
ワンポイント:ヴァングールはルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)・教授・医師で、テレビに取り上げられ、小児脳腫瘍の癌ワクチン治療で超有名になった。2013年(50歳?)と2014年(51歳?)に調査が入り、データねつ造・改ざん、医療倫理違反、医療上の規則違反、ズサンな医療記録などの不正が指摘された。2015年2月(52歳?)、ルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)と示談し、辞職した。ところが、7か月後の2015年9月(52歳?)、ドイツの免疫がん治療センター・ケルン(IOZK: Immun-Onkologisches Zentrum Köln)の医師になり、現在も、問題の癌ワクチンの治療を続けている。撤回論文はない。国民の損害額(推定)は被害患者が500人いたとして500億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ステファン・ヴァングール(Stefaan Van Gool、ORCID iD:?、写真出典)は、ベルギーのルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)・教授・医師で、専門は小児がんである。小児脳腫瘍の治療ではベルギーで超有名である。事件発覚後、ルーヴェン・カトリック大学を辞職し、ドイツの病院に勤めているが、世界から患者が押し寄せている。
2013年(50歳?)と2014年11月(51歳?)、発覚の経緯は不明だが、調査が入った。その結果、ヴァングールはデータねつ造・改ざんだけでなく、医療倫理違反、医療上の規則違反、ズサンな医療記録など多岐にわたる不正をしていたと指摘された。臨床医として多岐にわたる不正をしてきたが、本記事では、データねつ造・改ざんを中心に記載する。
2015年2月(52歳?)、ルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)と示談し、辞職した。この示談に秘密条項が入っているため、事件の関係者は現在も口をつぐんでいる
2015年9月(52歳?)、ルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)の辞職の7か月後、ドイツの民間病院である「免疫がん治療センター・ケルン(IOZK: Immun-Onkologisches Zentrum Köln)」で医師になり、現在も、問題の癌ワクチンの治療を続けている。
撤回論文はない。
ヴァングール事件では、関係者が事件のことを外部に話すことを法的に禁じている。それで、関係者口を閉ざしている。新聞記者も、入手した資料の公表に制限がかけられている。調査報告書は一切公表されていない。
ルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)の病院と医学部。2006年4月29日、白楽撮影
- 国:ベルギー
- 成長国:ベルギー
- 医師免許(MD)取得:ルーヴェン・カトリック大学
- 研究博士号(PhD)取得:ルーヴェン・カトリック大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1963年1月1日生まれとする。1981年に大学に入学した時を18歳とした
- 現在の年齢:61 歳?
- 分野:小児がん
- 発覚年:2013年(50歳?)
- 発覚時地位:ルーヴェン・カトリック大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
- ステップ2(メディア):「De Standaard」、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ルーヴェン・カトリック大学の内部調査。②ルーヴェン・カトリック大学が依頼した調査委員会
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:調査したが発表なしの隠蔽(✖)
- 不正:データねつ造・改ざん、医療倫理違反、医療上の規則違反、ズサンな医療記録
- 不正論文数:撤回論文0報
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に移籍し研究職を続けた(◒)
- 処分:示談で辞職
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は被害患者が500人いたとして500億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:(2) Stefaan Van Gool | LinkedIn
- 生年月日:不明。仮に1963年1月1日生まれとする。1981年に大学に入学した時を18歳とした
- 1981年 – 1988年(18 – 25歳?):ベルギーのルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)で医師免許(MD)取得:小児科
- 1995年(32歳?):ルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)で研究博士号(PhD)を取得:医学
- 1995年7月(32歳?):ルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)・医師、後に教授:小児神経腫瘍学
- 2013年(50歳?):治療と研究の不正が発覚し、内部調査
- 2014年11月(51歳?):外部委員も加わり、調査
- 2015年2月(52歳?):ルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)と示談し、辞職
- 2015年9月(52歳?):ドイツの免疫がん治療センター・ケルン(IOZK: Immun-Onkologisches Zentrum Köln)・医師
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
「ステファン・ヴァングール」と紹介している。
動画:「ヴァングール教授、子供向け携帯電話の有害な放射線パート1.(Straling Gsm Prof Van Gool Kinderen blootgest deel1v2) – YouTube」オランダ語(?)、10分。Bonneangeが2012/05/16に公開
【動画2】
講演動画:「安楽死と自殺ほう助-ヴァングール(Euthanasia and Assisted Suicide – Van Gool) – YouTube」(英語)8分55秒。
Anscombe Bioethics Centreが2014/11/26に公開
【動画3】
ヴァングールと彼の妻であるアン・プロエスマン博士とその4人の娘、ステファニー、アニー、マリーズ、カロリアン(dr. Ann Proesmans、Stefanie, Annie, Marlies, Karolien)が、音楽とともに、ルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)・法学部を紹介している動画:「Valklied – Collegium Falconis – YouTube」(オランダ語?)4分15秒。
Skoop Videogroep Leuvenが2014/03/18に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★スター医師
テレビの「トップ・ドクター(Topdokters)」はベルギーの一流の医師を紹介するドキュメンタリー番組である。この番組は、ベルギー国民の大人気番組である。
2014年に始まったシーズン1で、ステファン・ヴァングール(Stefaan Van Gool)が小児がんの「トップ・ドクター」であると紹介された。ヴァングールは2002年(39歳?)頃から独特の癌ワクチンを使って小児脳腫瘍の治療していた。
「トップ・ドクター(Topdokters)」は2020年にはシリーズ7となり、2020年4月5日現在もシリーズが続いている。
→ Topdokters
→ Topdokters – Wikipedia
以下は、そのテレビ番組の紹介動画である。
2013年3月29日(50歳?)、事件との絡みは不明だが、以下の手紙で、ステファン・ヴァングール(Stefaan Van Gool)がベルギーの小児脳腫瘍の治療にゲキを飛ばしている。
「トップ・ドクター(Topdokters)」の放映前だが、出演企画も始まり、事件発覚前の医師として、人生として、脂がのった絶頂期の医師の手紙である。以下に冒頭部分を示す。 → 出典:https://ec.europa.eu/health/sites/health/files/files/advtherapies/2013_05_pc_atmp/58_pc_atmp_2013.pdf
★突然の辞職と辞職理由の秘匿
ところが、2015年2月(52歳?)、超有名医師のヴァングールがルーヴェン・カトリック大学を辞職した。
その理由については一般には何も公表されなかった。
実は、ヴァングールの辞職の背後に驚くような不正があった。
その不正を知る人はかなりいた。もちろん、ルーヴェン・カトリック大学は知っている。
そして、いくつかの健康保険会社、ベルギー国立障害者保険研究所(INAMI-RIZIV:National Institute for Health and Disability Insurance)、ベルギー連邦医薬品健康製品庁(FAMHP:Federal Agency for Medicines and Health Products)、他大学の専門家も、ヴァングールの不正を知っていた。
2013年(50歳?)、ヴァングールの医療実体、臨床試験などについて、内部調査がされていた。
2014年(51歳?)、外部の専門家を交えた調査が行われた。
だから、これら調査に関与した組織・人はヴァングールの辞職の背後にある不正を知っていた。もちろん、調査結果は調査報告書にまとめられた。
しかし、調査報告書は公表されず、関係者は口を閉ざし、記事を掲載した新聞「De Standaard」も事実の全部を報道しなかった。
深刻な健康被害者もいただろうし、巨額の公金、研究費、治療費が無駄になったと思われるが、ほとんどの真相はいまだに闇の中である。
2015年9月(52歳?)、ルーヴェン・カトリック大学病院の辞職7か月後、ヴァングールは、ベルギーではなく、ドイツの免疫がん治療センター・ケルン(IOZK: Immun-Onkologisches Zentrum Köln)に医師として就職した。そして、2020年4月5日現在も、小児がんに同じような治療をしている。深刻な健康被害者がいまだに出続けている可能性がある。
●【不正】
★発端
ヴァングール事件は、2013年後半(50歳?)に表面化し始めた。
当時、テレビ・ドキュメンタリー「トップ・ドクター(Topdokters)」の収録が本格的に行なわれていた。番組では、ヴァングール自身、彼の家族、ルーヴェン・カトリック大学病院の小児神経腫瘍学部門をテレビ視聴者に紹介していた。彼の患者たち、つまり脳腫瘍に苦しみ、ヴァングールに最後の希望を託している子供、ティーンエイジャー、大人の患者たちを紹介していた。
「トップ・ドクター(Topdokters)」の放映時点で、ヴァングールは既に200人以上の成人と40人の子供を彼特性の実験腫瘍ワクチンで治療していた。
例えば、彼の患者の1人である少女・フラン(Fran)は、悪性脳腫瘍と戦うための彼特性の癌ワクチンを与えられ、治療が進められていた。「トップ・ドクター(Topdokters)」はフランと彼女の両親を追って、手術室またはヴァングールの診察室にカメラが入った。 しかし、少女・フランは再発し、死亡してしまった。
ヴァングールは小児脳腫瘍の権威である。彼の癌ワクチンを接種してもらうために、世界中の患者がルーヴェン・カトリック大学病院に来ていた。ヴァングールの治療を受けていた子供の両親は、病気は治るとヴァングールに伝えられ、ヴァングールの治療法を信じていた。
そして、慎み深さに欠けるヴァングールは、堂々と自分のトランペットを吹いていた。2011年後半、雑誌「SP.A」で「私たちが、マリエ・ローズ・モーレル(Marie-Rose Morel – Wikipedia、2011年に38歳で癌で亡くなったオランダの政治家)とスティーブ・ジョブズ(2011年に56歳で癌で亡くなったアップル社の創業者)を治療していれば、彼らはまだ生きていただろう」、と述べていた。
しかし、ヴァングール特性の癌ワクチンは非常に問題が多く、専門家の間では治療報告に疑念が持たれていた。
2013年(50歳?)から2014年冬(51歳?)、ヴァングールの治療に内部監査が行なわれた。また、それとは別に、2014年11月(50歳?)に外部の専門家も委員に加わった調査委員会による調査が行なわれた。
2回の調査報告書の両方とも、ヴァングールが治療成績を改ざんし、よりよく見せていたと結論した。
彼の実験腫瘍ワクチンは、2020年4月5日現在も、小児脳腫瘍の治療に効果があるのかどうか不明である。
★未承認の治療、保険なしの患者
ヴァングールの臨床試験にはいろいろな問題が指摘された。彼の治療と研究は混乱、混乱、混乱と、カオス、カオス、カオスが支配していた。
ヴァングールは、ベルギー連邦医薬品健康製品庁(FAMHP:Federal Agency for Medicines and Health Products)から承認を受ける前に、癌ワクチンの実験的治療を開始していた。
別のケースでは、倫理委員会やベルギー連邦医薬品健康製品庁に治療承認の申請すらしていなかった。こうなると、患者への臨床試験から得られる成果を、また、潜在的なリスクについても、独立した専門家が評価する機会がない。
倫理委員会やベルギー連邦医薬品健康製品庁の公式の承認がなかったので、患者が臨床試験中に急変するなどの不測の事態、さらに、副作用が出た場合、保険がかけられていなかった。従って、また、実際に不測の事態や副作用があったがどうか不明である。
ヴァングールは、臨床試験や治療の記録で「重篤な有害事象(serious adverse events)」(患者・被験者が永続的な障害や死ぬこと)について言及していない。1つだけ例外的な科学論文があるだけだ。
その科学論文では、患者のてんかん発作と血液の危険な異常値について言及している。しかし、明確な義務があったにもかかわらず、この時、ヴァングールは、てんかん発作と血液の危険な異常値を倫理委員会に知らせなかった。
2013年(50歳?)から2014年冬(51歳?)の最初の内部調査は、ヴァングールの臨床試験にいくつもの不正行為があったとした。その調査結果を受け、ルーヴェン・カトリック大学病院はヴァングールのいくつかの臨床試験の中止を決めた。
ヴァングールは懲戒処分を受けた。裁判も開始された。
★安楽死法
ヴァングールは、自分の小児脳腫瘍部内で大騒動が起こっているにもかかわらず、裁判所にメディアを訴えた。
2014年2月(51歳?)、ヴァングールは160人の小児科医をリーダーとして、衆議院議長に安楽死法の未成年者への拡大に反対した公開書簡を送付した。 ヴァングールは、深夜のテレビ討論番組「Reyers Laat」で哲学者のウォルター・マッシュ(Walter Musch)と安楽死法の問題を議論したりした。
★医療倫理違反
2014年11月(51歳?)、外部の専門家が委員に加わった調査委員会がヴァングールの不正を調査した。
その結果、さらに大きな問題が明らかになった。
ヴァングールのワクチン接種の臨床試験でかなりの数の患者の「インフォームドコンセント」書類が見つからなかったのだ。「インフォームドコンセント」は、患者(または両親)が署名した文書で、治療法の手順が明確に説明されたことを確認する文書である。
「インフォームドコンセント書類がない」ということは、「臨床試験に参加した患者は、彼特性の癌ワクチンの有効性が不確実だということを理解していなかった」可能性が大きい。
患者の「インフォームドコンセント」がないということは、重要な医療倫理違反である。
★価値のない臨床試験結果
医療倫理違反とは別に、ヴァングールは、臨床試験をいいかげんに行なっていた。
違反は、量と質の両方で深刻だった。
臨床試験の手順によれば、患者に実験用癌ワクチンを接種した後、経過観察が必要である。ところが、ヴァングールは、経過観察をしていなかった。
また、ヴァングールの臨床試験に参加した患者の一部は、臨床試験の対象となる腫瘍タイプの記載がなかった。となると、どの腫瘍タイプが癌ワクチンに有効なのか判定できなくなる。
さらに、癌ワクチンの接種に加えて、臨床試験で禁止された別の薬物も投与されていた。別の薬物を投与してしまったので、臨床試験なのに、癌ワクチンの評価ができなくなってしまう。
ヴァングールは自分自身が決めた試験手順を実行していなかったのである。こうなると、臨床試験の結果は、科学的に価値がなくなってしまう。
ヴァングールが試験手順から逸脱した臨床試験の1つは、ベルギー国立障害者保険研究所(INAMI-RIZIV:National Institute for Health and Disability Insurance)からの研究助成金で行なわれていた。
結局、ルーヴェン・カトリック大学病院は、ヴァングールが臨床試験で収集したデータに基づいて癌ワクチンを投与することはできないと判断した。
ズサンな研究は、恥ずべきことだが、恥ずべき研究というだけで事態は収まらない。脳腫瘍をもつ子供たちを脳スキャンし全身麻酔をし、将来の治療に役立たない臨床上の治療と検査をしたのだ。これでは、善意で臨床試験に参加した患者は、やりきれない。その上、臨床試験で健康被害を受けた患者は、さらに、やりきれない。
★ルーヴェンからケルンへ
2015年2月(52歳?)、ルーヴェン・カトリック大学病院のマーク・デクラマー病院長(Marc Decramer、写真出典)は、病院とヴァングール教授が相互に合意し、ヴァングール教授が辞職したとベルギー国立健康障害研究所(INAMI-RIZIV)に通知した。
それで、癌ワクチンの臨床試験は停止した。
2015年9月(52歳?)、ヴァングールは、免疫腫瘍学に特化したドイツの民間病院である「免疫がん治療センター・ケルン(IOZK: Immun-Onkologisches Zentrum Köln)」で働き始めました。
ドイツのケルンで、ヴァングールは、ベルギーで行なっていたのと同じ癌ワクチン接種による小児脳腫瘍の治療を再開したのである。治療費は患者1人につき5-7万ユーロ(約600-840万円)で、健康保険はきかない。
しかし、ヴァングールの名声はアメリカにまで及んでいた。
2017年2月(54歳?)、米国のワシントンポスト紙は、脳腫瘍のある8歳の少年、エリヤ君(Elijah Simpson-Sundell、写真出典)の物語を記事にした。 → 2017年2月6日の「ワシントンポスト」記事:A young boy, a devastating brain tumor and parents who ‘will do anything’ – The Washington Post
彼の両親の最後の望みは、前年の2016年10月に始まったケルンでのヴァングールの癌ワクチンで治療してもらうことだった。彼らの場合も保険のカバーがないため、合計で約45,000ドル(約450万円)を調達する必要があった。
2017年4月23日(54歳?)、しかし、ワシントンポスト紙で記事に掲載された2か月後、9歳の誕生日を迎えた翌日、エリヤ君は死亡した。 → (97) Michael Mosier Defeat DIPG Foundation
ヴァングールの癌ワクチン接種のためにドイツのケルンに行くベルギー人患者は、ベルギーの健康保険会社からの払い戻しを求めることがある。しかし、それは常に拒否されている。これまでのところ、脳腫瘍に関しては、ヴァングールの癌ワクチン接種が有効だったという確固たる証拠はまったくない。
そして、患者やその親は誰も、ヴァングールの癌ワクチン接種の有効性を調べた臨床試験について、ヴァングールから詳細な説明を受けていない。
ヴァングールがルーヴェン・カトリック大学病院を辞任した理由も厳重に封印されていて、秘密が保たれている。
ルーヴェン・カトリック大学のリク・トーフス学長(Rik Torfs 、写真出典)はこの件に関するコメントを拒否している。
ルーヴェン・カトリック大学病院は、機密条項の契約に合意し、機密を保っている。病院のスポークスマンは、この事件について知らされるべき人のすべてに、必要なことは伝えた、と言う。
ヴァングール自身は、ルーヴェン・カトリック大学病院を去った理由を、ここに記述したような不正とは異なると言っている。「しかし、私はそれについて話しません。私はルーヴェン・カトリック大学病院との機密条項の契約に合意していますので」と、新聞記者に語った。
なお、以下に2015年10月5日の記録の冒頭を張り付けた(18ページある)。オランド語らしく、どういうものか、白楽は把握できていない。調査報告書のような気もする。 → 出典:https://www.scribd.com/document/343091859/Nota-Verzekeringscomite#download&from_embed
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2020年4月5日現在、パブメド(PubMed)で、ステファン・ヴァングール(Stefaan Van Gool)の論文を「Stefaan Van Gool [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2019年の18間の89論文がヒットした。
「Van Gool S[Author]」で検索すると、1990~2019年の30間の158論文がヒットした。
2020年4月5日現在、「Van Gool S[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回論文データベース
2020年4月5日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでステファン・ヴァングール(Stefaan Van Gool)を「Stefaan Van Gool」で検索すると、0論文がヒットし、0論文が撤回されていた
★パブピア(PubPeer)
2020年4月5日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ステファン・ヴァングール(Stefaan Van Gool)の論文のコメントを「Stefaan Van Gool」で検索すると、0論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》闇の中
ステファン・ヴァングール(Stefaan Van Gool、写真出典)の事件の真相は闇の中である。
調査報告書は公表されず、関係者は口を閉ざし、メディアも事実を記事にしなかった。
ネカト・ブログでは、ある程度情報が得られる事件しか記事にしていない(記事にできない)が、真相が闇の研究者の事件はかなりあると思う。感触として、報道された事件の数倍はあるだろう。
闇の中だけならいいが(イヤ、よくないけど)、ヴァングールは有効性が疑問視されている癌ワクチンでの治療を続けている。治療費は患者1人につき5-7万ユーロ(約600-840万円)で、健康保険はきかない。そして、過去に、医療行為がズサンだった。現在も、ズサンな医療が行なわれているのではないだろうか?
《2》処分
ヴァングールは医療を停止させられような処分を受けなかったので、2020年4月5日(57歳?)現在、小児がんの治療を行なっている。彼の癌ワクチンが無効で、ズサンな治療を続けているなら、どうして問題視されないのだろう?
ヴァングールが専門とする小児脳腫瘍の1つ「びまん性正中グリオーマ(diffuse intrinsic pontine glioma (DIPG))」は診断されると、ほぼ、1-2年で患者は死亡する。
→ 2014年1月の論文:Treatment of newly diagnosed diffuse brain stem gliomas in children: in search of the holy grail: Expert Review of Anticancer Therapy: Vol 7, No 5
→ 脳外科医 澤村豊のホームページ:脳幹グリオーマ(脳幹部神経膠腫,脳幹グリオーマ,びまん性橋膠腫)
それで、治療効果がなくても、治療に失敗しても、患者家族から訴えられないということなのか?
病院とは異なるキャンパスのルーヴェン・カトリック大学(University of Leuven)・生物工学科(bio-ingenieurswetenschappen)。2006年4月28日、白楽撮影
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 2017年3月28日のマキシー・エッカート(Maxie Eckert)記者とマーク・エックハウト(Mark Eeckhaut)記者の「De Standaard」記事:Top Doc’s Fall from Grace – De Standaard
② 2017年3月28日の上記を含めた4つの「De Standaard」記事:Case Van Gool (English) – De Standaard
③ 2017年4月5日のビクトリア・スターン(Victoria Stern)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Star pediatric oncologist committed misconduct, ethical violations: reports – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
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