2017年10月21日掲載。
白楽の意図: ネカト・ブログを書く目的は、「研究界の研究公正を高め・維持するため」なのだが、結果的には、上手にネカトする方法を指南したり、ネカトと糾弾されないための方法を指南している面もある。表裏一体なので、この両面性は切り離せない。「ネカトの仕方教えます」そのものズバリの内容の論文(2017年出版)があったので、読んでみようと考えた。なお、論文に「よい子はマネしないように(DON’T TRY THIS AT WORK)」と赤スタンプが押してある。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.論文概要
2.書誌情報と著者
3.論文内容
4.白楽の感想
5.関連情報
6.コメント
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【注意】「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直してあります。
●1.【論文概要】
悪徳のススメなので、ネタバレは省略しよう。ウフフ。
●2.【書誌情報と著者】
★書誌情報
- 論文名:Ten Simple Rules for Scientific Fraud & Misconduct
日本語訳:科学の詐欺とネカトの単純な10規則 - 著者:Nicolas Rougier, John Timmer.
- 掲載誌:HAL Id: hal-01562601
- 発行年月日: 2017年7月16日
- DOI:
- ウェブ:https://hal.inria.fr/hal-01562601
- PDF:https://hal.inria.fr/hal-01562601/document
★著者
- 第1著者:ニコラ・リゥジエー(Nicolas P. Rougier) https://www.labri.fr/perso/nrougier/
- 国:フランス
- 学歴:
2000年、アンリ・ポアンカレ大学、研究博士号(PhD)取得(コンピュータ科学)
http://www.labri.fr/perso/nrougier/downloads/rougier.pdf - 分野: 情報科学
- 所属・地位:①ボルドー大学・神経変性疾患研究所・教授:Universite de Bordeaux、Institut des Maladies Neurodegeneratives. ②フランス国立情報学自動制御研究所・教授:INRIA(Institut National de Recherche en Informatique et en Automatique
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- 最後著者:ジョン・ティマー(JohnTimmer)
https://arstechnica.com/author/john-timmer/ - 国:米国
- 学歴:コロンビア大学(Columbia University)・学士号(生化学)取得。カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)で研究博士号(PhD)取得(分子細胞生物学)。その後、約10年間、コーネル大学、メモリアル・スローン・ケッタリングがんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)などで生命科学の研究をした後、アーツ・テクニカ(Ars Technica)の科学編集員
- 分野:科学メディア
- 所属・地位:アーツ・テクニカ(Ars Technica)の科学編集員
●3.【論文内容】
●【はじめに】
ブルゾンちえみの「研究ネカト」編です。
「あー、研究者になってよかったあ」
どうも、効率的な仕事ぶり、充実した私生活
研究者です。
論文がなかなか出ない、ブラック研究室で3K労働する研究者のみんな
研究倫理守らないと、学術界から糾弾されると思っていない?
じゃあ質問です!
研究ネカトした東大医学部教授は、学術界から糾弾されましたか?
「・・・研究倫理守らない、ネカトするの」
ネカトしてごらん! ドンドン論文でるから!
―――ブルゾンちえみwith Bは退場
というわけで、サイエンスの背徳の世界へようこそ。
ウソのような大発見、再現不可能な実験結果、データねつ造・改ざん、ありえない統計処理など、悪徳の世界が紳士淑女のアナタをお待ちしています。
が、しかし、スキャンダルにまみれ、論文撤回と助成金没収、失職と嘲笑、そしておそらく刑務所でのお暮し(写真出典)というリスクがないわけではありません。
アナタ、そのスリルを身体で感じて、ゾクゾクしていません。
ここ崖っぷちです。
ネカト・・・、する? しない?
アナタの選択です。
が、ご安心あれ。ネカト行為のリスクを上手に処理するスベをアナタだけに、こっそり、お教えしましょう。
数百年の間、科学者は、簡単に世間をダマしてきました。この世界の偉人たちは、チェスの名手であるロボット「トルコ人」で金を儲けたり、理論的に不可能と言われた「永久機関」を作りました。アメリカがこれから見つけようとしている「月の生命体」もすでに見つけています。人類の進化を示す「ピルトダウン人」も見つけたんです。「記憶を持つ水」というありえないような大発見もありました。イグ・ノーベル賞もマッサオです。
わずか数年前まで、背徳の科学者は世間の喝さいを浴びていました。
しかし、ここ数年、この世界に新しいネカト・バスターズ(ネカト・ハンター)が登場し、ネカトの世界もひどく住みにくくなりました。
PubPeer君、Retraction Watchさん、For Better Scienceおじさん、Neuroskeptic氏などの有名なネカト・バスターズ(ネカト・ハンター)が、正義を振りかざして、我がもの顔に暴れだしたのです。調子に乗って、出版社もハイテクツールで武装し始めたんです。困ったもんです。
それに、あなたのお仲間の科学者も油断がなりません。アナタの秘め事、悦楽の背徳行為、興奮に身もだえするネカト発表を、あろうことか、アナタの実名を挙げてソーシャルメディアで糾弾し始めたのです。
2017年の現在、発覚しないでネカトを遂行するのは高い才能が要求されます。才能だけでなく、勇敢な精神力も必要です。偉大な挑戦です。アナタの天才的な才能を傾注し、最大の慎重さで行動し、献身的な努力を要する行為です。勲章モノです。
といっても、アナタが科学界全体より賢くなる必要はございません。ごく普通の院生・ポスドクでよろしいのでございます。
研究能力としては平凡なアナタでさえ、ひとたび、ネカトの素晴らしい世界に足を踏み出せば、数年~30年後は、超一流大学の教授や学長、アナタの国の首相や大臣になれるでしょう。ノーベル賞の受賞も夢ではありません。
ネカトの世界に足を踏み出し、業績を増やし、一度しかない人生で最高の栄華・幸福を手に入れる。その素晴らしい方法を、ウフ~ン♡、アナタだけにこっそりお教えいたしましょう。こっそりと。
そう、もちろん、結果は保証いたしかねます。自業自得の世界でございます。ホッーホッホッホッ。
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●【1.データねつ造・改ざんし、誤発表せよ】
研究ネカト者としてのあなたの人生を始めるために、最初にあなたがする必要があることは、データをねつ造・改ざんする説得力のある方法を学ぶことです。
あなたがネカトを実行するのに躊躇する初心者なら、まずすべきことは、あなたの仮説を支持するために、データを少し加工することから始めなさい。いくつかの古典的なテクニックについては、以下で詳しく説明します(Rougier, Droettboom, &Bourne, 2014)。データに数字が含まれている場合なら、かなり多くのテクニックがあります(Wainer, 1984; Raschke&Steinbart, 2008)。
もしあなたのデータが画像データなら、PhotoshopやGIMP画像ソフトで自由に画像を加工してください(Cromey, 2012; Hendricks, 2011)。
しかし、注意する点は、画像ネカトを検出するソフトも急速に発達していることです(White, 2007; Rossner&Yamada, 2004; Hsu, Lee, &Chen, 2015)(PLoS画像操作の勧告とRockefeller University Press の討論も参照)。
あなたの画像が学術誌編集部に問題視されるかどうか、Jonas Wagner氏のオンラインツールを使って、テストしておきましょう。これに引っかかると、あなたは画像のねつ造・改ざんをあきらめるかもしれませんが、ご心配には及びません。ネカトを達成したいご要望のアナタに、他のいろいろなオプションを以下にご用意いたしました。
あなたのデータの数値・統計値を変更するのはどうでしょう。
実際にあなたがデータを持っているケースでお話ししましょう。その場合、データのあまり重要でない数値を変えて、それを、重要な意味をもつ数値、つまり、重要な結果に仕立て上げるのです。p-hacker アプリ(Schuonbrodt, 2015)やインタラクティブなアプレット(Aschwanden, 2015)などを使うのはどうでしょう。
実際の実験データを加工する利点は、結果が良く見えるだけでなく、疑わしさが少ないことです。欠点は、最初にいくつかの実験データを必要とすることです。これは実際に実験を行なうことを意味しています。
誰が実際の実験を望んでいますか?
そうですよね。せっかくネカトするんですから。実際には実験したくありませんよね。
それでは、実際の実験を全くしないで、ソフトウェアで全部のデータをねつ造し、まとも風な結果を得る方法をお教えしましょう。
チョットばかしプログラミングの技術が必要ですが、やり方さえ習得すれば、相関係数、X値とY値の平均値/ SDをみつくろって、正確な統計値のデータセットを作ることができます(Matejka&Fitzmaurice, 2017)。 もちろん、datasaurusセットを選んではいけませんぜよ。それを使えば、注意を喚起してしまいまっせ。
【動画】
「Same Stats, Different Graphs: Generating Datasets with Varied Appearance and Identical Statistics through Simulated Annealing 」(英語)0分30秒
ACM SIGCHI が2017/05/02 に公開
あなたがどんなオプションを選んだにせよ、あなたのデータを懐疑的にみる人がいます。
そのような人が意地悪な質問をする場合に備えて、もっともらしく反論できるストーリーを用意しておいてくださいね。何気ない軽い気持ちの質問に、いい加減に答えたことが契機となって、多くのネカトは発覚しているんです(Vastag, 2006)。
●【2.自分の結果をハックせよ】
タイトルから内容が推察できませんねえ。どんな秘伝が書いてあるんでしょうかねえ。ウフフ。
原典をご自分でお読みくださいませ。
●【3.他人のをコピペせよ】
フェイク・データが十分ないが、名声と昇格と助成金が欲しい時、どうするか?
です。
なんとしてでも、論文を出版する。
答えは、これにつきます。
しかし、論文執筆は面倒で、相当量の時間とエネルギーが必要です。
つまり、過去数年間に同じ分野の研究者が発表した論文を全部読まなければならない。それは非常に時間のかかる作業です。しかし、運がよいことに、たいていの場合、同じ分野の研究者が論文を書いています。さらに、特定分野の研究の現状を上手に解説した総説があります。
というわけで、彼/彼女が書いた論文や総説をコピペ(コピー/ペースト)して論文を書く方がはるかに簡単です。
早い話、盗用です。
盗用はネカトの中心的行為です(Neuroskeptic, 2017)、逐語盗用(コピペ、文献提示なし)、加工盗用(ロゲッティング、言い換え盗用(パラフレーズ)、文献提示なし)、流用部分が曖昧な盗用(文献提示あり)、翻訳盗用などいろいろあります(エルゼヴィア社の定義、出版規範員会(COPE)の対処)。
もちろん、他人の文章をそのまま自分の論文に挿入する逐語盗用はやめた方がいいでしょう。査読者が挿入文章の著者だったという不運に見舞われることは、実は、結構あるんです。
盗用するなら、研究者の目(Dorigo, 2015)、さらには盗用検出ソフト(例、アイセンティケイト(iThenticate))に引っかからないように、文章を大胆に変える加工盗用です。
大学や学術誌は盗用検出ソフトを導入して、レポート、原稿、論文に盗用があるのではないかと監視の目を光らせています。特に、アナタのように隙あらば盗用するたちの悪い、しかも、賢い人が、世の中にはソコソコいるので、24時間体制で盗用を検出しようとしています。
加工盗用するソフトも開発されていますが、加工盗用を検出するソフトも開発されています。ソフト会社は盗用検出ソフトを高度化して大儲けしようと、ソフト開発に余念がありません。
盗用検出ソフトのデータベースが充実しつつあるので、現代では、盗用はますます困難になってきました。大部分の学術誌は自己盗用も許してくれません。
というわけで、何としてでも盗用したいアナタは、かなり独創的な新手を考案するしかありません(Long, Errami, George, Sun, and Garner, 2009)。
結局、情けないのですが、私たち筆者2人は、見つからないように盗用することを考えるより、自分の文章を自分で書く方がズッと簡単という結論に達してしまったんです。
●【4.自分の投稿原稿の査読者になる】
上記のすべての落とし穴をすり抜けてネカト論文を投稿しても、論文出版されるまで、アナタはまだ安心できません。
学術誌にもよりますが、査読段階で問題に遭遇するかもしれません。
査読者が小うるさい人だと、面倒な質問をしてきます。より多くの情報を要求したり、追加実験を要請したり、大きな改訂を求めたり、最後には、掲載不可と言ったり、やりたい放題です。
苦労してねつ造データを作成したり、盗用した後で、論文原稿がこんなイヤな目に合うアナタの気持ちをどうしてくれるんだ。ったく、想像できます?
おまけに、査読者がねつ造・改ざん・盗用に気づいてしまうかもしれません。
幸いにも、この小うるさい査読とネカト発覚のリスクを避ける簡単な解決策があります。
そう、自分の投稿原稿の査読者に自分でなることです。
方法は驚くほど簡単です。
論文原稿を投稿するとき、アナタは誰が査読者に適しているか、推薦を求められることが結構ありますよね。
それで、偽名とその人あてのメール・アドレスを用意し、査読者候補ですと編集部に伝えるのです。
ほどなくして、そのアドレスに、自分が投稿した原稿を査読(レビュー)してほしいと、編集部からのメールが届くはずです。
もちろん、実際の査読(レビュー)のように見える査読(レビュー)を書く必要があります。
アナタはマキャベリアン(Machiavellian)だから、実は、アナタの原稿に最初からいくつかの誤りを挿入しておいたハズです。そして、査読者になった別のアナタはその誤りを指摘したレビューを書いて編集部に送り返すのです。
なお、査読締め切り前にレビューを送らないこと。
エリザベス・ウェイジャー(Erizabeth Wager)(Stigbrand, 2017)の報告によると、査読者が即座にレビューを送付してきたために査読偽装を見破ったという編集者の自慢が、コバナシとして雑誌に掲載されているんです。
ここまで秘策を教えてきましたが、残念なことに、現在、編集者や出版社は査読偽装という手法に気付いてしまったんです(Ferguson, Marcus, &Oransky, 2014)。それで、反対措置を講じ始めました(Haug, 2015)。
例えば、いくつかの学術誌は、もはや著者に査読者の推薦を認めていません。または査読者の推薦を認める場合でも、査読候補者リストの中から選ぶように制限されています。
残念です。
それで、アナタが、依然として自分の投稿原稿を自分で査読したいなら、ゲームの勝者になれる独創的な方法を、自分で発明しなければなりません。
結局、情けないのですが、私たち筆者2人は、独創的な方法を発明することを考えるより、査読偽装しない方がズッと簡単という結論に達してしまったんです。
●【5.捕食出版社を利用せよ】
原典をご自分でお読みください。
●【6.自分の生データにアクセスさせるな】
原典をご自分でお読みください。
●【7.自分の研究室外で再現実験をさせるな】
原典をご自分でお読みください。
●【8.論文撤回しないで「間違い」で切り抜けよ】
アナタが本当にネカトしていない場合です。
論文内容で大きな「間違い」を犯した場合、論文撤回は問題ありません(Miller, 2006)。「間違い」を陳謝し自発的に論文撤回すれば、学術界から、むしろ好感されるでしょう(Lu, Jin, Uzzi, &Jones, 2013)。
しか~し、もしアナタが「間違い」ではなく、本当にネカトをしていた場合、学術界からの反応は正反対です。論文撤回すれば、ネカトを認めたことになります。
論文撤回は、「論文のデータに何か問題があるように思います」的な編集長への単純なコメントから始まります。
もしアナタがとてもウンがよければ、そのコメントは編集長の手元にとどまり、詮索も公開もされません(Trebino, 2009)。
しかし、「とてもウンがよい」場合でなかったら、編集長からの問い合わせが来ます。この時、しっかり説得できる内容で編集長に返事しなければなりません。悪い印象を与えないためにも、最初の返事はとても大事です。やり取りに失敗すると、編集長はアナタが泣き叫んで反対しても、編集長権限で論文を撤回してしまいます。
というわけで、編集長からの問い合わせや論文データの疑義が公表された場合、迅速な行動が必須です。
最も優れた手法は、論文の作成中に「間違い」があったことを認め、致命的ではないので論文の訂正(コリゲン corrigendum)をしますと、「間違い」で処理される方向に誘導し、危機を迅速に解消することです。
訂正(コリゲン)が多いほど、批判者はハッピーになるので、訂正(コリゲン)は多くてもかまいません。
あるいは、何年にも渡って問題を長引かせることも1つの方法です。「人の噂も75日」なので、数年後にはほとんど話題にならないと、期待しましょう。
期待が外れた場合ですか? そりゃ、自業自得の世界でございます。ホッーホッホッホッ。
●【9.見つかるな。見つかっても否定する方法】
もしアナタが研究ネカトを深く静かに何年にも渡って続けていれば、遅かれ早かれネカトが発覚する。この鉄則を肝に銘じておきましょう。
発覚しない研究者は、多分、少数です。
[白楽注:盗用では少数かもしれないが、データねつ造・改ざんは少数ではない。欧米ではネカト・クログレイの99%は発覚しないという分析結果が多い。日本だとその10分の1として、99.9%発覚しない(推定)]。
もし、発覚時期を選べるなら、ベストなのは死後ですが、選べませんよね(DeGroote et al., 2016)。
しかし、アナタの目が黒いうちに発覚しても、研究人生が終わるわけではありません。
上手にネカトを否定してください。
電車内で痴漢嫌疑がかかった時、血走った目の酒臭いおっさんが「私は痴漢していません」と言っても、か弱い女子高生が恥ずかしそうに、しかし断固として「こ、この人です」と言えば、駅員も警察も酒臭いおっさんの言うことを信じません。
つまり、「私はネカトしていません」と単純に主張しても、周囲の研究者やネカト調査員は信じてくれません。正義は勝つわけではありません。勝ったのが正義なんです。
実は、ネカトと糾弾された時、回避する秘策があるんです、ヒサク、秘策、オクノテ、が。秘策をお教えしましょう。お兄さん、1件10万円でどうですか?
というほど秘策ではなくて、定番の対処法です。
次のように弁解すべきです。弁解と取れらないように、悲しげに、時には真面目に、あるいは威厳を保って演じ切ってくださいね。
- アナタが第一著者の場合:最後著者に強いプレッシャーをかけられたために、ネカトせざるをえなかったんです。
- アナタが最後著者の場合:第一著者がネカトをしていたとは思いもしませんでした。
- アナタが第一著者でも最後著者でもない場合:論文著者に自分の名前が載っていたことさえも知りませんでした。
- アナタがギフト・オーサー(gift author、贈呈著者)だった場合:ギフト・オーサーだったことは認めましょう。ギフト・オーサーシップは研究クログレイですが、ネカトだとされるよりはずっと軽いので。
- 学術界から去った研修医、ポスドク、テクニシャンなどで連絡不能な人がいたら、メッケものです。ネカトをその人のせいにしましょう。
- アナタのネカトを告発した人に脅迫メールを送りましょう。ただ、犯罪にならないように注意してね。
- 脅迫メールを送ってしばらくしたら、ネカトを告発した人を名誉棄損や損害賠償で告訴しましょう。
アナタの運が良ければ、上記のどれかが功を奏して、事態は正常に戻るでしょう。
なお、一応、アナタは所属機関の「重要な研究者、輝く星」だったとしますね。その場合、ネカトの疑惑を受けても、大学・研究機関がアナタの強い味方になって、サポートしてくれるハズです。
多くの場合、御用委員を任命し、ネカトではなく「間違い」だとしてくれる。
ネカトとしても、①懲戒解雇ではなく、10日間の停職とか戒告など軽い処分にしてくれる。②告発者を解雇・降格(コクハラ)したり、間違ったふりして実名報道し、さらなる追求を防いでくれる。③調査報告書を部外秘にしてくれる。④アナタの所属・氏名を公表しない。⑤所属は公表されても、氏名を匿名にしてくれる。
このように、所属の大学・研究機関は率先して社会正義に抵抗してくれます。大学・研究機関はありがたいですね。よかったですね。日本社会全体がどうなろうと、大学・研究機関は自分の組織が第一優先なんです。
アナタは所属機関の厄介者だった場合、う~ん、困った。
所属の大学・研究機関からの手厚いサポートは望めません。でも、大学・研究機関は自分の組織からネカト者を極力だしたくないんです。この隙間を上手に突いてください。
●【10.独創的であれ】
ここまであの手この手のネカト方法の秘伝を教えてきましたが、撤回監視(Retraction Watch)のサイトをよく読めば、すべての秘伝が公開されている。
つまり、今まで伝授した9つの方法は、ネカト・バスターズには筒抜けになっている。
というわけで、最後の秘伝を示そう。
ネカトの免許皆伝を得るには、今までなかった、新しいネカト方法を自分で独自にあみ出すのじゃ。ホーホッホッ。
●4.【白楽の感想】
《1》教えちゃった
研究ネカトの仕方教えちゃいましたが、教えちゃっていいのだろうか?
ただ、白楽のネカト・ブログのほとんどの記事は、読みようによっては、研究ネカトをするノウハウ教材でもある。それに、日本政府はいくら言っても、まともにネカトを取り締まらず、うがった見方をすれば、ネカト者を育成し擁護している。
それで、院生から偉大な教授まで、ネカトすることで、いっそう出世が早まります。
ただ、ネカトで研究人生を失うというスリルとリスクも付いてます。自業自得の世界でございます。ホッーホッホッホッ。
なお、アナタのような賢いお方は別ですが、ハクラクとかいうアホもいるから、もう一度書いておきましょう。「よい子はマネしないように(DON’T TRY THIS AT WORK)」。守らないと→
●5.【関連情報】
① 2017年2月1日の「Guardian」記事:The high-tech war on science fraud | Science | The Guardian、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●6.【コメント】