化学:ラシュミ・マドフリ(Rashmi Madhuri)(インド)

2018年5月4日掲載。

ワンポイント:インド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)・応用化学科・助教授(女性)である。2017年11月(34歳?)、ホヤ・カンフォリフォリア(Hoya Camphorifolia)が「パブピア(PubPeer)」でマドフリのデータねつ造を指摘した。大学はネカト調査を始めていない。撤回論文数が9報と多いが、他の数十論文にも疑念がある。損害額の総額(推定)は4200万円。

【追記】
・2018年6月22日記事:Attack of the Photoclones: Sharma-Madhuri Prequel – For Better Science
・2018年8月16日記事:Investigation confirms serious scientific misconduct by IIT Dhanbad faculty – Science Chronicle

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説

5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ラシュミ・マドフリ(Rashmi Madhuri、写真出典)は、インド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)・応用化学科・助教授で、専門は応用化学(分子認識ポリマー)である。

2017年11月(34歳?)、ホヤ・カンフォリフォリア(Hoya Camphorifolia)が「パブピア(PubPeer)」でデータねつ造を指摘した。

2018年5月3日現在(35歳?)、大学はネカト調査を始めていない。撤回論文数が9報と多いが、他の数十論文にも疑念がある。

なお、インド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)は、NIRFの2018年大学ランキングでインド第27位の名門大学である。「4icu.org」の大学ランキング(信頼度は?)ではインド第126位の大学である(Top Universities in India | 2017 Indian University Ranking(保存済))。

インド工科大学(Indian Institute of Technology)。写真出典

インド工科大学(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)。写真出典

  • 国:インド
  • 成長国:インド
  • 研究博士号(PhD)取得:インドのバナーラス・ヒンドゥー大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1983年1月1日とする。2005年にバナーラス・ヒンドゥー大学を卒業学した時を22歳とした
  • 現在の年齢:41 歳?
  • 分野:応用化学
  • 最初の不正論文発表:不明。2012年(29歳?)(推定)
  • 発覚年:2017年(34歳?)
  • 発覚時地位:インド工科大学鉱物科大学院・助教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はホヤ・カンフォリフォリア(Hoya Camphorifolia)だが、仮名らしく、所属など詳細不明である。ホヤ・カンフォリフォリア(Hoya Camphorifolia)が「パブピア(PubPeer)」で指摘した
  • ステップ2(メディア): 「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②インド工科大学鉱物科大学院は調査していない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していないから
  • 所属機関の事件への透明性:発表なし(✖)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:撤回9報。他の数十論文に疑念
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 損害額:総額(推定)は4200万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円だが、研究者をやめていないので損害額はゼロ円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円だが、研究者をやめていないので損害額はゼロ円。③院生の損害が1人1000万円だが、額は②に含めた。④外部研究費の額は不明で、額は②に含めた。⑤調査経費なし。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。1報撤回=200万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分: なし

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1983年1月1日とする。2005年にバナーラス・ヒンドゥー大学を卒業学した時を22歳とした
  • 2005年(22歳?):インドのバナーラス・ヒンドゥー大学(Banaras Hindu University)で学士号取得:化学
  • 2007年(24歳?):同大学で修士号取得:有機化学
  • 2012年(29歳?):同大学で研究博士号(PhD)を取得:分析化学
  • 2012年?(29歳?):インド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)・応用化学科・助教授
  • 2017年(34歳?):不正が発覚
  • 2018年5月3日現在(35歳?):インド工科大学鉱物科大学院(Indian Institute of Technology, Indian School of Mines, Dhanbad)・応用化学科・助教授に在職
    → IIT (ISM), DHANBAD | INDIAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY (INDIAN SCHOOL OF MINES), DHANBAD

●5.【不正発覚の経緯と内容】

2017年11月29日、ホヤ・カンフォリフォリア(Hoya Camphorifolia)がラシュミ・マドフリ(Rashmi Madhuri)の複数の論文のデータの異常を「パブピア(PubPeer)」で指摘した。

ホヤ・カンフォリフォリアの指摘が切っ掛けとなって、他の人も含め、マドフリの多数の論文のデータ異常を「パブピア(PubPeer)」で指摘した。

ホヤ・カンフォリフォリア(Hoya Camphorifolia)は、仮名らしく、所属など詳細不明である。

なお、マドフリはホヤ・カンフォリフォリアを知らないと撤回監視に答えている。

プラシャント・シャルマ(Prashant Kumar Sharma) https://biography.omicsonline.org/india/indian-school-of-mines/dr-prashant-kumar-sharma-9542

マドフリの論文の多くは同じインド工科大学鉱物科大学院・応用化学科・助教授のプラシャント・シャルマ(Prashant Kumar Sharma)と共著である。となると、ネカト実行者はシャルマかもしれない。

ここでは、マドフリをネカト実行者と扱うが、インド工科大学鉱物科大学院が調査していない現状では、本当は、ネカト実行者はマドフリなのかシャルマなのか特定できない。

【ねつ造・改ざんの具体例】

★「2017年のACS Biomater. Sci. Eng」論文

「2017年のACS Biomater. Sci. Eng」論文は、2018年2月7日に撤回された。

以下、ねつ造・改ざんデータを見ていこう。

【図2A】
図2ACの緑色のSPIONs スペクトラムを9割にすると、赤色のGd-SPIONs スペクトラムとオーバーラップする。つまり、どちらかがねつ造データである。指摘はSylvain Bernès(commented December 1st, 2017)、図の出典はHoya Camphorifolia(commented December 3rd, 2017)。

【図2C】
図2Cは AuNFs@MPS粒子の顕微鏡写真である。

Gymnetron Bipustulatum (commented December 2nd, 2017 6:15 AM and accepted December 2nd, 2017 5:47 PM)は、粒子は全部同じ写真だと指摘している。
出典:https://pubpeer.com/publications/33CB940D42723BAB8B4F737B434E86#10

分析として、粒子の番号を付け(A)、並べ(B)、粒子の特徴をつかむと黄緑色と青色で切れ、オレンジ色に黒点がある(C)。コントラストを変えると、どれも同じ(D)。

【図3C】

上記の図3Cは、別論文「Magnetic hysteresis loop of SPIONs and poly-SPIONs.” from Patra et al (2015)」の図1B(以下)の盗用である。縦軸のスケールは異なるが、数値のパターンは酷似している、というか、全く同じである

 ★他のデータねつ造

マドフリは多数の論文で多数のデータねつ造を行なっており、ねつ造データは多岐に渡っている。

ここで全部を指摘する意味はないので、やめておくが、どんな画像もねつ造してしまうねつ造の業師(わざし)である。アッパレだ。

ねつ造されたデータを以下、適当に並べた。皆さん、どこがねつ造なのか、推察できますか?

出典:https://pubpeer.com/publications/05C01FDC20C60489EE35CF3FEAAD90#1

出典:https://pubpeer.com/publications/05C01FDC20C60489EE35CF3FEAAD90#2

出典:https://pubpeer.com/publications/05C01FDC20C60489EE35CF3FEAAD90#14

●6.【論文数と撤回論文】

2018年5月3日現在、パブメド(PubMed)で、ラシュミ・マドフリ(Rashmi Madhuri)の論文を「Rashmi Madhuri [Author]」で検索すると、2010-2018年の9年間の32論文がヒットした。

32論文の内、24論文がプラシャント・シャルマ(Prashant Sharma)と共著だった。

2018年5月3日現在、ラシュミ・マドフリ(Rashmi Madhuri)のパブメドの論文撤回リストを「Rashmi Madhuri [Author] AND retracted 」で検索すると、0論文が撤回されていた。

一方、2018年4月25日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事では8論文が撤回されたと報じている。:Author under fire has eight papers retracted, including seven from one journal – Retraction Watch

上記以外にも、以下の「2017年のACS Biomater. Sci. Eng」論文が2018年2月7日に撤回された。

2018年5月3日現在、というわけで、撤回論文数を合計9報としておく。

★パブピア(PubPeer)

2018年5月3日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ラシュミ・マドフリ(Rashmi Madhuri)の37論文にコメントがある。とても多い。:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》ネカトのプロ

マドフリの論文でのデータねつ造は見事である。こんな多量の細工をするより、普通にデータを出した方が楽ではないかと思うほどである。

この手のネカト者は根っからのネカト者である。「イケマセン」と言ったところで止めるとは思えない。防止する方策は、学術界からマドフリを排除することだ。

標語:「ネカト者は学術界から追放!」
法則:「ネカトでは早期発見・適切処分が重要である」。

インド工科大学鉱物科大学院はなぜ調査に乗り出さないのか不明だ? かなり評判を落としていると思う。

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(注:写真は本文とは関係ありません)。驚きのニューデリー:歩道で床屋を営業。2008年。白楽撮影。写真をクリックすると写真は大きくなります。2段階です。

●8.【主要情報源】

① 2017年12月5日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ:Sharma’s bad karma, or is anyone peer reviewing nanotechnology? – For Better Science
② 2017 年11月30日以降のアリソン・マクック(Alison McCook)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事群:Search Results for “Rashmi Madhuri” – Retraction Watch
③ 2017 年11月30日の「Neuroskeptic」記事:The Bottom of the Barrel of Science Fraud – Neuroskeptic
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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