2022年3月31日掲載
ワンポイント:フーアンは中国で生まれ育ち、米国のサンフォードバーナム医学研究所(Sanford-Burnham Medical Research Institute)・教授になった。その時に出版した「2006年6月のCurr Opin Chem Biol」論文が、2013年1月(49歳?)、ブログの「Plagiarism Talk」で盗用と指摘された。しかし、大学・研究機関は盗用の調査をせず、他のメディアも追及しなかったので、全く無風に終わった事件である。国民の損害額(推定)は100万円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ズィウェイ・フーアン(黄子为、Ziwei Huang、ORCID iD:?、写真出典)は、中国で生まれ育ち、中国のサウスチャイナノーマル大学で学士号を取得後、渡米し、曲折を経て、米国のサンフォードバーナム医学研究所(Sanford-Burnham Medical Research Institute)・教授になった。医師免許は所得していない。専門は化学生物学である。
2013年1月7日(49歳?)、フーアンの「2006年6月のCurr Opin Chem Biol」論文は盗用である、とブログの「Plagiarism Talk」で指摘された。
しかし、サンフォードバーナム医学研究所はネカト調査をしていない。指摘された時、フーアンは米国のアップステート医科大学(Upstate Medical University)・教授に移籍していたが、アップステート医科大学も調査していない。
2013年(49歳?)、指摘されて間もなく、フーアンは中国の清華大学(清华大学、Tsinghua University)・教授に移籍したが、盗用と指摘されたことと関係があるのかどうか不明である。
この事件は、ブログで盗用を指摘しても、大学・研究機関が調査せず、他のメディアも追及しなかったので、全く無風、つまり、盗用はなかったかのように進んだ事件である。
従って、フーアン自身が盗用者なのか、他に3人いた共著者の誰かが盗用者なのかは不明である。本記事では、フーアン自身を盗用者として記述した。
サンフォードバーナム医学研究所(Sanford-Burnham Medical Research Institute)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:中国
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:カリフォルニア大学サンディエゴ校
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1964年1月1日生まれとする。1982年に大学・学部に入学した時を18歳とした
- 現在の年齢:60 歳?
- 分野:化学生物学
- 不正論文発表:2006年(42歳?)
- 発覚年:2013年(49歳?)
- 発覚時地位:アップステート医科大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は「Plagiarism Talk」管理者
- ステップ2(メディア):「Plagiarism Talk」のみ
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①調査していない
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していない
- 大学の透明性:調査していない(✖)
- 不正:盗用
- 不正論文数:1報
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は100万円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:Ziwei HUANG-清华大学生命学院
- 生年月日:不明。仮に1964年1月1日生まれとする。1982年に大学・学部に入学した時を18歳とした
- 1982-1986年(18-22歳?):中国のサウスチャイナノーマル大学(华南师范大学、South China Normal University)で学士号取得
- 1988-1993年(24-29歳?):米国のカリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)で研究博士号(PhD)を取得:化学
- 1993-1994年(29-30歳?):カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)・ポスドク
- 1995-2000年(31-36歳?):トーマスジェファーソン大学(Thomas Jefferson University)・助教授
- 2000-2004年(36-40歳?):イリノイ大学アーバナシャンペーン校(University of Illinois at Urbana-Champaign)生化学・化学科・準教授
- 2004-2009年(40-45歳?):サンフォードバーナム医学研究所(Sanford-Burnham Medical Research Institute)・教授
- 2009-2013年(45-49歳?):アップステート医科大学(Upstate Medical University)・教授
- 2013年(49歳?):不正研究が発覚する
- 2013年(49歳?):中国の清華大学(清华大学、Tsinghua University)・教授
- 2022年3月30日(58歳?)現在:同・教授職を維持:Ziwei HUANG-清华大学生命学院(2022年3月9日保存)
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★経緯
ズィウェイ・フーアン(黄子为、Ziwei Huang、写真出典)の「2006年6月のCurr Opin Chem Biol」論文の書誌情報は以下である。
- Structure-based virtual screening of chemical libraries for drug discovery.
Ghosh S, Nie A, An J, Huang Z.
Curr Opin Chem Biol. 2006 Jun;10(3):194-202. doi: 10.1016/j.cbpa.2006.04.002. Epub 2006 May 3.
2013年1月7日(49歳?)、「Plagiarism Talk」記事が、この論文は、少なくとも8つの異なる出版物から文章を盗用していると指摘した。
上記論文を出版した時のフーアンの所属はサンフォードバーナム医学研究所(Sanford-Burnham Medical Research Institute)だが、サンフォードバーナム医学研究所は盗用の調査をしていない。または、調査したが、調査に関する記事がウェブ上に残っていない。
盗用発覚時、フーアンはアップステート医科大学(Upstate Medical University)・教授に移籍していた。
そして、2013年(49歳?)、指摘されて間もなく、フーアンは中国の清華大学(清华大学、Tsinghua University)・教授に移籍したが、盗用の指摘と関係があるのかどうか不明である。
この事件は、ブログで盗用を指摘しても、大学・研究機関が調査せず、他のメディアも追及しなかったので、全く無風、つまり、盗用はなかったかのように進んだ事件である。
従って、フーアン自身が盗用者なのか、他に3人いた共著者の誰かが盗用者なのかは不明である。
●【盗用の具体例】
★「2006年6月のCurr Opin Chem Biol」論文
「2006年6月のCurr Opin Chem Biol」論文の書誌情報は以下である。
- Structure-based virtual screening of chemical libraries for drug discovery.
Ghosh S, Nie A, An J, Huang Z.
Curr Opin Chem Biol. 2006 Jun;10(3):194-202. doi: 10.1016/j.cbpa.2006.04.002. Epub 2006 May 3.
以下、「Plagiarism Talk」記事の盗用比較図を羅列した。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2022年3月30日現在、パブメド(PubMed)で、ズィウェイ・フーアン(黄子为、Ziwei Huang)の論文を「Ziwei Huang[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2022年の21年間の126論文がヒットした。
2022年3月30日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2022年3月30日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでズィウェイ・フーアン(黄子为、Ziwei Huang)を「Ziwei Huang」で検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2022年3月30日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ズィウェイ・フーアン(黄子为、Ziwei Huang)の論文のコメントを「”Ziwei Huang”」で検索すると、本記事で問題にした論文とは別の「2000年のJBC」論文・1論文にコメントがあった。
図3bの以下の画像(N30とN39)が重複使用(ねつ造)だという指摘だ。フーアンは何も返事をしていない(画像出典:原著論文)。
●7.【白楽の感想】
《1》不明
ズィウェイ・フーアン(黄子为、Ziwei Huang)事件では、フーアンが「どのような状況で、どうして」ネカトをしたのか、見えてこない。これでは、ネカト対策に役立つ点は少ない。
フーアンが所属していたサンフォードバーナム医学研究所はネカト調査をしていない。指摘された時、米国のアップステート医科大学(Upstate Medical University)・教授に移籍していたが、アップステート医科大学も調査していない。
2013年(49歳?)、中国の清華大学(清华大学、Tsinghua University)・教授に移籍したが、盗用の指摘と関係があるのかどうか不明である。
フーアン自身が盗用者なのか、他に3人いた共著者の誰かが盗用者なのかは不明である。
盗用と指摘されたフーアンの論文は、他にはないので、白楽の推定では、共著者の誰かが盗用者だと思う。
しかし、調査すれば、フーアンの他の論文に盗用が見つかるかもしれない。調査しないとわからない。
盗用の証拠が明確に示されているのに、まるで何もなかったかのようである。こんなに無風の事件は珍しい。
https://lhs.cuhk.edu.cn/article/35、(保存版)
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 2013年1月7日の「Plagiarism Talk」記事:gumtalk « Plagiarism Talk、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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