企業:学術業(academic business):オミックス・インターナショナル社(OMICS International)(インド)

2018年11月19日掲載

ワンポイント:【長文注意】。オミックス・インターナショナル社(OMICS International)は、2007年に25歳のインド人・スリヌバブ・ゲデラ(Srinubabu Gedela)がインドで創業した。10年後の2017年、従業員約1,500人体制で、医学、技術、工学などの分野で1,000誌のオープン・アクセス・ジャーナルに毎年5万報の論文を掲載する世界規模の出版社として大きく成長した。また、学術誌だけでなく、世界各地で約3,000件の学術集会を開催する強力な会議部門も構築した。しかし、その学術業(academic business)は2012年頃から、米国のジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)をはじめ世界の研究者から詐欺的な捕食(predatory)学術業(academic business)と非難された。そして、2016年8月、米国の連邦取引委員会(FTC)に詐欺的ビジネスと提訴され、2017年11月、ネバダ州地方裁判所から仮差止め命令が下された。しかし、オミックス・インターナショナル社は反論し、営業を続けている。数万人(推定)の日本人研究者も、知ってか知らずか、餌食になっている。損害額の総額(推定)は100億(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
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●1.【概略】

捕食学術業(predatory academic business)の最大手と目されているインドのオミックス・インターナショナル社(OMICS International)の事件である。

オミックス・インターナショナル社(OMICS International)は、2007年に25歳のインド人・スリヌバブ・ゲデラ(Srinubabu Gedela、写真)が創業した学術業(academic business)の企業である。

10年後の2017年、医学、技術、工学などの分野の世界の研究者を対象に、従業員約1,500人体制で、1,000誌のオープン・アクセス・ジャーナルに毎年5万報の論文を掲載する出版社として大きく成長した。また、学術誌だけでなく、世界各地で約3,000件の学術集会を開催する強力な会議部門も構築した。

しかし、その学術業(academic business)は2012年頃から、ジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)をはじめ、世界各地の研究者から詐欺的な捕食学術業(predatory academic business)と非難されている。

非難されている点は、査読がない、編集力が低い、質の悪い論文の出版、本人の了承なく編集委員・編集長とする、掲載料が高額などである。また、著名な研究者が講演すると宣伝した学術集会に、その著名な研究者がこない(本人に無断で講演者としたため)などの詐欺的な学術集会を開催している。

捕食学術業(predatory academic business)はここ10年ほどで急成長したのだが、学術研究を腐敗させ・破壊していると指摘・批判・非難されている。

オミックス・インターナショナル社(OMICS International)は、これら捕食学術業(predatory academic business)で最も活発な企業である。

そして、2016年8月、米国の連邦取引委員会(FTC)に詐欺的ビジネスと提訴され、2017年11月、ネバダ州地方裁判所から仮差止め命令が下された。

しかし、オミックス・インターナショナル社は反論した。本社がインドのあるため米国の仮差止め命令のダメージは少なく、依然と活発に営業を続けている。

なお、数千、イヤ多分、数万人の日本人研究者も、知ってか知らずか、捕食学術誌(predatory journal)に論文を出版し、捕食会議(predatory conference)に出席している。

捕食学術業(predatory academic business)は研究者をダマすような営業をしていて、これを「ねつ造・改ざん」ととらえた。また、捕食学術誌(predatory journal)はネカト論文の温床になっている。それで、本ブログで取り上げることにした。

白楽は、捕食出版社(predatory publisher)、捕食学術誌(predatory journal)、捕食学会(predatory academic society)、捕食会議(predatory conference)など、研究者を食いものにする捕食学術業(predatory academic business)をまとめて理解したいと考えている。

捕食学術業に対して、学術界は有効な手を打てるのか? ウ~ン、学術界だけではマズ無理だ。立法・司法・行政が乗り出すべきだろう。

オミックス・インターナショナル社(OMICS International)のインドの本社。後ろのビルか手前の屋敷かわかりません。写真出典

以下の動画はオミックス・インターナショナル社(OMICS International)の宣伝
「オミックス・グループ・インターナショナル社(OMICS Group International)」(音楽と英語文字)3分24秒。
Omicsgroupconferenceが2014/03/03 に公開

以下の動画はオミックス・インターナショナル社(OMICS International)の宣伝
「オミックス会議(OMICS Conferences)」(英語)3分10秒。
Omicsgroupconferenceが2016/01/08 に公開

  • 国:インドに本社がある世界企業で、米国で最も大きく問題視された
  • 集団名:オミックス・インターナショナル社
  • 集団名(英語):OMICS International
  • ウェブサイト(英語):https://www.omicsonline.org/
  • ウェブサイト(日本語):http://japan.omicsonline.org/
  • 集団の概要:スリヌバブ・ゲデラ(Srinubabu Gedela)が2007年に設立した。学術誌を発行、学術集会を主催する会社。従業員は約1,500人いる。
  • 事件の首謀者:スリヌバブ・ゲデラ(Srinubabu Gedela)社長。
  • 分野:学術業
  • 不正年:2008年(推定)
  • 発覚年:2012年
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は特定しにくい。有力な人物として、ジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)が捕食学術を指摘した。また、ジョンズ・ホプキンズ大学(Johns Hopkins University)でエイズウイルスを研究しているケン・ウィトワー準教授(Ken Witwer、Kenneth W. Witwer)が捕食学術だとNIHに訴えた。
  • ステップ2(メディア): 「Science」、「New York Times」、「ABC Radio National」、「撤回監視(Retraction Watch)」など多数
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ): ①NIH。②米国の連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)。③米国・ネバダ州の地方裁判所。
  • 不正:捕食学術業
  • 不正数:数百の学術誌、数万報の論文、数千の学術集会が捕食的(推定)
  • 被害(者):数十万~数百万人の研究者(推定)
  • 損害額:総額(推定)は100億(大雑把)
  • 結末:米国の裁判所で仮差止め命令。オミックス・インターナショナル社は業務を継続している

●2.【日本語の解説】

★【用語:捕食】

用語について、別の記事に書いたのを以下、再掲する。

用語として、「predatory journal」に対して、白楽は「ハゲタカ」ジャーナルなど「ハゲタカ」を使いません。「捕食」を使います。

ハゲタカ(禿鷹)はハゲワシ類またはコンドル類の俗称である。(出典:ハゲワシ – Wikipedia)

「ハゲタカ」ジャーナルなどの「ハゲタカ」は鳥類のハゲタカを一方的に蔑視する名称で、ハゲタカを差別的に使用した用語です。非倫理的です。特定の生き物を蔑視するニュアンスを持つ用語は専門用語としては不適格で、生命科学者として強い違和感があります。ライオンだって、捕食動物です。「predatory journal」を「ライオン」ジャーナルと呼びますか? 呼ばないのは、「ライオン」を蔑視するニュアンスがないからです。特定の生き物を蔑視してはいけません。生物の尊厳を傷つけます。

それに、「predatory conference」をハゲタカ会議と訳せば、鳥類のハゲタカを研究する学術集会と混同します。

英辞郎 on the WEB(アルク)によれば、predatoryの意味は「【形】〔動物が〕捕食性の、肉食の」とあります。

捕食(ほしょく)とは、生物が餌となる対象の動物を捕らえて食うことである。(出典:捕食 – Wikipedia)

それで、白楽は「捕食」を使います。勿論、「捕食」という用語は白楽だけが使用しているわけではありません。以下2例。
→ 2018年7月19日記事:捕食ジャーナル」ブラックリストへの強い要望 – 学術英語アカデミー
→ 2014年3月26日記事:捕食性学術出版社に注意【日経バイオテクONLINE Vol.2030】:日経バイオテクONLINE

★2018年11月18日アクセス:オミックス・インターナショナル社「オープンアクセスジャーナル」

オミックス・インターナショナル社の宣伝です。ダマされないように。

出典 → ココ (保存版)

オープンアクセス・イニシアチブは、出版されたコンテンツへのアクセスを制限することなく、科学界に真実かつ信頼できる貢献をすることを約束します。

このパブリッシャーは、700以上の最先端ピアレビューオープンアクセスジャーナル 3000以上の組織 国際会議 世界中で。世界中からの著者と読者からの巨大な世界的な可視性と驚異的な反応を得て、出版社がさまざまな学問分野でオープンアクセスジャーナルを維持するよう促しました。

ジャーナルは1500万を超える読者 達成された評判と成功は、急速で定性的で迅速なレビュープロセスを保証する5万人以上の著名人物を含む強力な編集委員会に帰することができます。 1000以上 International Societies 科学情報のオープンアクセスを支援しています。

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★2017年2月28日: ジャヤシュリー・ラジャゴパラン記者のエディテージ・インサイト記事:「ハゲタカ出版社疑惑のOMICSがカナダの著名出版社を買収」

出典 → ココ (保存版)

論理的根拠に乏しいいわゆる「ジャンクサイエンス」(疑似科学/ニセ科学)を流布しているとの非難を浴び、ハゲタカ出版社の疑惑がかけられている学術出版社、OMICS International(インド)が、カナダの定評ある著名出版社、Andrew John PublishingとPulsus Groupを買収しました。

この2社が出版するジャーナルには、Plastic Surgery、Canadian Journal of Pathology、Canadian Journal of Optometry、Canadian Journal of General Internal Medicineなどがあります。この買収について、カナダのマスコミ大手CTV Newsとトロント・スター紙は共同調査を行いました。調査報告によると、買収が発覚した経緯も物議を醸すものであるらしいことが分かりました。

★2018年1月26日:エナゴ学術記事:「2017年に学術界を揺るがした衝撃的事件(後編)」

出典 → ココ (保存版)

この記事は事件の状況を的確に記載しており、秀逸である。少し長いが引用する。

OMICSグループはインドに本社を置く、オープンアクセスジャーナル専門の出版社ですが、「捕食出版社」 (著者から掲載費用を得る目的で、適正な査読を行わずに論文を掲載する出版社)として知られています。「ハゲタカ出版社」とも呼ばれ、いわゆるジャンク・サイエンス(論理的根拠に乏しい科学)の流布をはじめ、たびたび問題となっています。米国の連邦取引委員会(FTC) は2016年8月、OMICSグループのCEOであるSrinubabu Gedela氏を相手取り、詐欺的ビジネスを理由に提訴 しました。

OMICSは700の学術雑誌を出版し、3000の学術会議を運営する出版社です。FTCは、OMICSが研究者らに、論文を掲載する動機付けとなるインパクトファクター(学術雑誌の影響力の評価指標)を偽って伝えていると主張しています。その上、OMICSは論文の掲載料を著者らに公表せず、さらに著者が論文の掲載をやめたり、他社で発表したりすることを妨害していたということです。

OMICSへの疑惑はまだあります。FTCは、OMICSが開催する学術会議でも不正が行われていると指摘しています。例えば、OMICSは学術会議での研究発表に架空の論文「鳥-豚の生理における飛翔特性の進化」を採択し、手数料を払えば発表も可能としたとの報告があります。採択されるはずのないジャンク・サイエンスの論文にも関わらず、発表が許可されたのです。また、査読を行っているという偽りの発言をしていることも疑われています。OMICSの編集委員のリストには著名な科学者の名前が連なっていますが、証明するものはありません。このような申し立てが積もり、OMICSは捕食出版社だとの疑惑が高まっているのです。

2017年11月、ネバダ州の地方裁判所のGloria Navarro裁判官は、Gedela氏とOMICSグループ、関連会社のiMedPub、Conference Seriesの3社に、仮差止め命令を下しました。OMICSが研究者に虚偽の説明をして論文を掲載するように誘導していることや、著名な科学者の名を無断で用いて投稿を依頼するメールを送っていたことが、今回の命令の根拠とされています。

この仮差止め命令はOMICSグループに向けたものであるため、OMICSは、会議に出席する予定のない講演者の名を語って宣伝することや、ジャーナルの編集委員として虚偽の名前を連ねることは、無論できなくなります。裁判所はOMICSに対し、論文の投稿前に、掲載にかかる費用の総額を著者に伝えるよう要求しています。また、FTCは研究者らに、OMICSによる仮差止め命令への違反があればすぐに報告するよう伝えており、新たな不正が発覚した時点で、法廷侮辱罪として訴える考えです。

一方、OMICSのCEOであるGedela氏は、FTCの訴えの内容を否定しています。この告発は、市場シェアを失った従来の出版社が、オープンアクセス出版社に対して腹いせに起こしたものであり、仮差止め命令の後もOMICSの活動は制限されない、と反論しています。米国の裁判所命令ではインドの出版社の活動を効果的に止めることはできない、と主張する研究者もおり、出版投稿や国際会議での発表を行わないようにする以外、捕食出版社の活動を実際に抑制することは難しいと見られているようです。

このような捕食出版社が登場した背景には、一本でも多くの論文を出版し、学術会議で発表しさえすれば、研究者として評価されるという、学術界の悪しき習慣があるのかもしれません。仮差止め命令の影響とOMICSの今後の動きが注目されるところです。

★2018年8月2日:船守美穂:「5000名以上のドイツ研究者、ハゲタカ雑誌に論文出版」

出典 → ココ (保存版)

この記事は捕食学術誌の巨大な被害状況を記載しており、秀逸である。以下、一部しか引用しない。原典を読むことをオススメする。太字は白楽。

北ドイツ放送(NDR)と西ドイツ放送(WDR)、南ドイツ新聞が中心となり、その他いくつかの国際的なメディアと共同で行った調査により、5000名以上のドイツの研究者が、偽物の学術雑誌(pseudo-scientific journals;以下、ハゲタカ雑誌(通称predatory journals))に論文を出版していたことが判明しました。その他の国も含めると、40万名もの研究者が、そのようなハゲタカ雑誌に論文を出版しています。

調査は、Omics Publishing Group(インド)、World Academy of Science、Engineering and Technology (WASET)(トルコ)、Sci-Pub、IOSR Journals、SCIENCEDOMAIN internationalの、5大ハゲタカ雑誌を対象に行われました。

以下略。原典を読むことをオススメする。→ ココ

★2013年05月07日以降の「負け犬主義」の記事群

この著者は内科医師で都内に勤務し、匿名でブログを書いている。

2013年05月07日に「偽学術誌の氾濫: OMICSに気をつけろ!」という記事で、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)の学術誌を「怪しげな雑誌」と指摘している。つまり、非常に早くからオミックス・インターナショナル社(OMICS International)の学術業を批判的に見ていた。

2017年、掲載された論文を実際に読んで、論文内容の質の悪さを具体的に指摘した。

出典 → ①2017年12月19日: OMICS論文抄読会 第1回: Journal of Novel Physiotherapies。②2017年12月21日: OMICS論文抄読会 第2回: Internal Medicine: Open Access

OMICS Internationalはハゲタカ出版社であるとか、OMICSグループのジャーナルは偽学術誌だとか、今まで色々なことを言ってきました。しかし、もっとも大事なのは論文の内容そのものではないかという意見を鑑み、実際に論文の内容を検証していくシリーズを始めてみます。

著者を貶めたり人格攻撃するとかそのような意図はもちろんなく、純粋に学問的興味(というか医学ジャーナルとして妥当な内容かどうか)を個人的に検証したいという気持ちからです。OMICSに騙されて貴重な研究内容を投稿してしまっただけという人も少なからずいるでしょうし、他誌になかなか受理されないからまわりまわって最終的に投稿してしまったのかもしれません。研究の新規性が乏しかったり、ネガティブデータで世に出にくいものでも、方法や結果の解釈が妥当であれば真っ当な論文です。ジャーナルや出版社の「格」ではなく、内容そのものを評価していきましょう。

以下略しますが、読者の皆さんには、是非、上記サイトの「OMICS論文抄読会」を読まれることをオススメします。

また、以下の批判もしています。
→ ③2018年09月04日:ハゲタカジャーナルが一般紙に取り上げられたので問題点を整理 : 負け犬主義。

毎日新聞の記事に戻ると、どうやら国内で5000本以上の論文がこのようなハゲタカジャーナルに掲載されているということ。「研究者の業績の水増し」が問題視されています。研究者がポストを獲得するためには、一にも二にも業績が必要となり、その業績とは論文の本数であったりインパクトファクターだったりします。

業績の水増しという問題以外に、「税金の無駄使い」というのも懸念されます。本質的には何の意味もないゴミを生産するため(誰も読まないpdfファイルをオンラインにばら撒く行為)に研究費(科研費、民間助成金、大学の運営交付金、研究者の私費)を海外のハゲタカ出版社に支払っているわけです。この論文投稿料は出版社によってことなりますが、低く見積もって1本あたり1000ドルとしましょう。5000本の「論文」を出版するために500万ドル(約5.5億円)が海外へ流出したことになります。

●3.【事件の経過と内容】

★スリヌバブ・ゲデラ(Srinubabu Gedela)がオミックス・インターナショナル社(OMICS International)を創業

スリヌバブ・ゲデラ(Srinubabu Gedela)、インドのオフィスで。 Photographer: Mahesh Shantaram for Bloomberg Businessweek https://www.bloomberg.com/news/features/2017-08-29/medical-journals-have-a-fake-news-problem

2006年、後にオミックス・インターナショナル社(OMICS International)を起業するスリヌバブ・ゲデラ(Srinubabu Gedela)は24歳で、インド中東部のヴィシャーカパトナム(Visakhapatnam)にあるアンドゥラ大学(Andhra University)の博士課程院生だった。

ゲデラは人口が約2,000人の小さな村アレナ(Allena)で、泥の壁、砂糖キビの屋根の貧しい農家に生まれ育った。

大学院で糖尿病の新しい研究をしようとしていたが、そのためには最新の学術論文を読む必要がある。ところが、1つの学術誌の年間購読料は数千ドル(数十万円)で、アンドゥラ大学(Andhra University)の図書館は糖尿病の研究に必要な最低限の学術誌を揃える予算はない。超有名な学術誌を購読するのがやっとである。

研究の競争相手である西洋の研究者は必要な学術論文を読むことができる。この特権的な道具なしに、インドでまともな研究をするには、どうすればいいのだろう?

ゲデラは学術論文を読むために毎月、250ルピー(約4ドル、約400円)を払って、夜行バスで約400マイル(約640km)離れたハイデラバードの研究機関に通った。バスには空調設備やトイレがなく、暑く、でこぼこ道を12時間以上走った。そして、「International Journal of Pure and Applied Analytical Chemistry」などの学術誌の最新号に目を通すことができた。

丁度その頃、学術出版界では新しい出版ビジネス、つまり、オープンアクセス・ジャーナル、が立ち上がり始めていた。伝統的な学術誌は購読料を請求することでお金を得ていたが、オープンアクセス・ジャーナルは、著者に論文掲載料を払ってもらい、読者には無料で論文閲覧を提供するというビジネス・モデルだった。

ゲデラは博士号を取得する前に、すでに実験研究を2の次にし、オープンアクセス・ジャーナルのビジネスに専念していた。 彼は200ルピー(約300円)でドメイン名を購入し、ハイデラバードとヴィシャカパトナムで数人の仲間を募集し、ウェブサイトを作り、彼の会社「Omics Online Publishing」(後にオミックス・インターナショナル社(OMICS International)と改名)を立ち上げた。

2008年4月、最初の学術誌「Journal of Proteomics&Bioinformatics」の第1巻第1号に論文を掲載した。

2012年、その4年後、オミックス・インターナショナル社は、医学、技術、工学などの分野で200誌のオープン・アクセス・ジャーナルを出版するまで急成長した。しかし、200誌と数は多くても、その約60%は内容がなかった。
→ 2013年5月15日のジェイク・ニュー(Jake New)記者の「Chronicle of Higher Education」記事:Publisher Threatens to Sue Blogger for $1-Billion – The Chronicle of Higher Education

2015年、さらに3年が経過し、700誌のオープンアクセス・ジャーナルを出版するまで成長していた。しかし、相変わらず、その約50%は内容がなかった。
→ 2015年8月2日の「ABC Radio National」記事:Predatory publishers criticised for ‘unethical, unprincipled’ tactics – Background Briefing – ABC Radio National (Australian Broadcasting Corporation)

2017年、さらに2年が経過し、オミックス・インターナショナル社は、医学、技術、工学などの分野で1,000誌のオープン・アクセス・ジャーナルに毎年5万報の論文を掲載する出版社として大きく成長した。また、学術誌だけでなく、世界各地で約3,000件の学術集会を開催する強力な会議部門も構築した。

インドのハイデラバードの旧市街から車で45分のハイテクオフィスパークにオミックス・インターナショナル社のオフィスがある。ゲデラは彼の祖父から学んだ人生訓・「他人を騙さない」を旨とし、使命は、「あらゆる障壁から科学的知識を解放する」ことだと述べている。研究情報を無料で人々が読める新しいビジネスを猛然と開拓する若い世界的救世主とも思える。

最高経営責任者(CEO)のスリヌバブ・ゲデラ博士

★ジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)

ジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)[CC BY 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons
ジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)は、米国のコロラド大学デンバー校(University of Colorado Denver)の准教授で司書だった(2018年3月退職)。
→ 7-20.ビールのライフワーク:捕食出版社との闘いhttps://haklak.com/page_2017_Beall.html

2012年、ビールは、世界中の捕食学術誌をリストしたビール・リスト(Beall’s List)をウェブサイト「Scholarly Open Access」に公開していた(2017年1月にサイトは閉鎖)。このリストにオミックス・インターナショナル社(OMICS International)の学術誌のすべてがリストされていた。

オミックス・インターナショナル社(OMICS International)は、論文投稿を歓迎する宣伝を電子メールで多量に送付し、論文原稿が送付されてくるとすぐに受理(accept)し、約3,000ドル(約30万円)の掲載料を請求する捕食学術誌であると、ビールに非難された。

また、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)は、著名な科学者が学術集会で講演すると本人の了解なく科学者の名前を使用し、実際はその科学者は講演しないという詐欺的な宣伝で参加者を集めたと、ビールに非難された。

さらに、まともな学術集会と限りなく近い名前の学術集会名にするという詐欺的な会議名で、参加者を集めたとも、ビールに非難された。たとえば、オミックス・インターナショナル社が2013年に主催した「Entomology-2013」会議は米国昆虫学(Entomological Society of America)の「Entomology 2013」会議の名称にハイフンを入れただけだ。なんとも紛らわしいというか、明らかに昆虫学者が間違えて参加するよう仕組んだ名称だ。

2013年5月、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)は、ビールの非難とビール・リスト(Beall’s List)は営業妨害であり、法的に訴えるとビールに通知した。インドの情報技術法(Information Technology Act, 2000)の条項66Aに基づき、最大で3年間の刑務所刑、損害賠償額は10億ドル(約1000億円)であると脅かした。
→ 2013年5月15日のジェイク・ニュー(Jake New)記者の「Chronicle of Higher Education」記事: Publisher Threatens to Sue Blogger for $1-Billion – The Chronicle of Higher Education

オミックス・インターナショナル社(OMICS International)の依頼で、知財を担当するインドの法律事務所・アイピー・マーケッツ(IP Markets)のアショク・クマール弁護士(Ashok Ram Kumar、写真http://ipmarkets.in/team.php)がビールに法的措置をとると脅迫したのである。

脅迫文は6ページの手紙である。ビールのブログは「ばかばかしい、根拠のない、無意味な」、「プロフェッショナル主義と傲慢さの気配がある」とこき下ろし、ビールは人種差別的で、「オープンアクセス出版物の文化を妨害」しようとしていると主張した。

「あなたのブログの主張のすべては、あなたの想像力の素晴らしさ以上のものではなく、ブログを書く目的は、私たちのクライアントを侮辱するためのようです。私たちのクライアントは、このブログを支離滅裂な人の愚かな空騒ぎと受け止めております。そして、私たちは、インターネット上に犯罪行為を記述している点と、あなたの文章、論調、テニュアについて重大な関心を払っています」。

脅迫文は、ブログの捕食出版社リストからオミックス・インターナショナル社を削除し、謝罪文を掲載するようビールに要求した。 クマール弁護士は、ビールが要求に従ったとしても、依頼人(オミックス・インターナショナル社)は依然として訴訟を起こし、ビールに対して刑事訴訟を起こすつもりであると述べた。

米国の弁護士は、この脅威文は「恐怖を与える」という「宣伝活動」であると見なした。

ニューデリーに本拠を置く新聞「インド・トゥデイ(India Today)」の社説は、この事件を引用し、政治的異議を抑え、スピーチを粉砕し、いじめを可能にする66A条項を廃止すべきだと訴えた。

2015年になって、別の事件との関連であるが、インド最高裁判所は66A条項を廃止した。
→ 2015年3月24日記事:SC strikes down ‘draconian’ Section 66A – The Hindu

★ケン・ウィトワー(Ken Witwer)

この話の出典は以下である。
→ 2013年5月9日のジョセリン・カイザー(Jocelyn Kaiser)記者の「Science」記事:U.S. Government Accuses Open Access Publisher of Trademark Infringement | Science | AAAS

2012年8月、ジョンズ・ホプキンズ大学(Johns Hopkins University)でエイズウイルスを研究していたケン・ウィトワー準教授(Ken Witwer、Kenneth W. Witwer、写真)は、オミックス・インターナショナル社が主催する栄養学会で彼の研究成果を発表した。

しばらくして、この学術集会にダマされたことを悟った。

ケン・ウィトワーは、この学術集会で講演者予定になっていたエームズ変異原性試験の発明者である生化学者・ブルース・エイムス(Bruce N. Ames)教授に会いたいと考えていた。しかし、エイムス教授は学術集会に現れなかった。

ケン・ウィトワーは、後で、エイムス教授がこの学術集会で講演すると約束したことは一度もなかったとエイムス教授本人から聞いた。

2013年3月、ケン・ウィトワーは、オミックス・インターナショナル社を詐欺で訴えるようNIHに電子メールを送った。というのは、NIH助成金を受給している研究者は学術集会に出席する参加費をNIH助成金で払う。オミックス・インターナショナル社は詐欺的行為で学術集会を開催した。その詐欺的行為で、オミックス・インターナショナル社は政府のお金を間接的に得ているというのがケン・ウィトワーの論理だ。

2013年4月1日、ケン・ウィトワーは、NIH・上級弁護士ディーン・ランディス(Dean Landis)からオミックス・インターナショナル社・オンライン編集長(online Managing Editor)のヴェンカテシュ・ヤナマダラ(Venkatesh Yanamadala)に、同社のウェブサイト(www.omicsonline.org)による商標違反を通知した手紙(https://www.sciencemag.org/sites/default/files/media/0mics-Letter.pdf リンク切れ)の写しを受け取った。

つまり、米国・NIHは、オミックス・インターナショナル社に対し、米国政府機関の名前と政府機関所属の研究者名を虚偽的に使用することを中止する要求・停止命令を送ったのである。なお、オミックス・インターナショナル社の本社はインドにあるが、米国・ロサンゼルスにも支社がある。

ランディス上級弁護士は次のように書いている。「私たちは、オミックス・インターナショナル社のウェブサイト(www.omicsonline.org)が、NIH、NIH傘下の研究所、PubMed Central、NIH従業員の名前を誤ったやり方で使用している複数の事例を知っています」。

具体的には、オミックス・インターナショナル社のウェブサイトは、同社がPubMed Central、NIHの全文論文アーカイブ、PubMed、NIHの要約データベースにコンテンツを提供していると書いていた。

しかし、実際は、これらのデータベースはオミックス・インターナショナル社の学術誌を1つも受け付けていなかった。というのは、NIH傘下の国立医学図書館(National Library of Medicine)の学術誌選択係はオミックス・インターナショナル社の学術誌について深刻な疑念を抱いていたからである。

また、NIH傘下の国立看護研究所(National Institute of Nursing Research)の科学ディレクターであるレイモンド・ディオンヌ(Raymond Dionne)がオミックス・インターナショナル社の学術誌の編集長であるとされていたが、ディオンヌはもはやNIHで働いていなかった。

また、NIH傘下の国立がん研究所の研究者・スディール・スリバスタバ(Sudhir Srivastava)の写真を使用し、彼のコメント文章が掲載していたが、彼は写真の使用を許可していなかったし、コメント文を送付していなかった。

ランディス上級弁護士がオミックス・インターナショナル社に書面で要請したことは、ウェブサイト上にNIH傘下の研究所とNIHの研究者の名前を使用しないこと、つまり、事実でないことを記載しないことだった。

オミックス・インターナショナル社は、ウェブサイトのトップページのほぼ最下段で、PubMed Centralのロゴを使用していた。以下をクリックすると2013年2月13日時点のトップページが別窓で開く。

オミックス・インターナショナル社のウェブサイトのFAQリストの中でPubMedに言及していた。以下をクリックすると2013年2月13日時点のFAQが別窓で開く。

その後、NIHのランディス上級弁護士の指示に従い、オミックス・インターナショナル社はウェブサイトを修正した。PubMed Centralのロゴを削除し、FAQリストの中のPubMedについての項目を削除した。

なお、NIHは連邦取引委員会にオミックス・インターナショナル社の問題を訴えた。

★オーストラリアの研究者

2015年、オーストラリアのハガル・コーエン(Hagar Cohen)記者がオーストラリアの研究者に状況を調べ、メディア「ABC Radio National」に掲載した。
→ 2015年8月2日のハガル・コーエン(Hagar Cohen)記者の「ABC Radio National」記事:Predatory publishers criticised for ‘unethical, unprincipled’ tactics – Background Briefing – ABC Radio National (Australian Broadcasting Corporation)

その記事によると、オミックス・インターナショナル社は、本人に無断で、以下の3人の研究者の名前を学術誌の編集委員・編集長に使用していた。

【アダム・ブライアント準教授(Adam Bryant)】

メルボルン大学(Melbourne University)のアダム・ブライアント準教授(Adam Bryant、写真)は学術誌「Orthopaedic & Muscular System」編集長になっていた。しかし、「ABC Radio National」の記者に知らされるまで、本人は自分が編集長になっていたことに気が付かなかった。

ブライアント準教授はオミックス・インターナショナル社に抗議した。

2015年7月31日、オミックス・インターナショナル社は謝り、ブライアント準教授の名前を削除した。以下はその手紙。

omics27-follow-up-correspondence-with-adam-bryant-data

 

ここで書いておくが、編集長になっているのにブライアント準教授本人が気がつかないのはヘンだと思う読者もいるでしょう。そうです、名前を使って編集長にしているが、オミックス・インターナショナル社は編集長としての仕事を一切させていない。だから、本人は何も知らない状態が保てるのである。

【ロジャー・ペペレル教授(Roger Pepperell)】

メルボルン大学(ロイヤル・ウィメンズ病院)で30年以上にわたり産科・婦人科の教授を務め、10年前に退職したロジャー・ペペレル教授(Roger Pepperell、写真)は、当初、編集の役割を果たすことに同意した。

ペペレル教授は、普通の編集委員として参加することに同意したが、オミックス・インターナショナル社はペペレル教授を普通の編集委員ではなく編集長にしていた。

「なぜ私が編集長とされたのかわかりません」。

そして、約6か月前、「私はもはや関与したくない。編集委員のリストから私の名前を取り除いてください」と、ペペレル教授は、オミックス・インターナショナル社に伝えた。

しかし、彼らはペペレル教授の要請を無視した。

ペペレル教授は、編集長になることに決して同意していないと主張している。「私は編集委員として参加することを了承しただけです。そして、私は自分の分野の投稿原稿を評価するだけの編集者だと思っていました」。

「私の名前を削除するよう要請したもう一つの理由は、私が査読した論文原稿の質が悪いこともあります。私が査読した論文原稿の多くは出版すべきではないというレベルでした。しかし、出版した論文原稿と出版しなかった論文原稿を教えてくれないので、私が査読した論文原稿が出版されたのかどうかわかりません」。

ペペレル教授は、ほとんどの論文は非常に質が悪い。その上、ペペレル教授に出版するか・しないかを決定する権限がなく、実際、誰がそれを決定しているかわからないと述べた。

2015年7月15日、オミックス・インターナショナル社は謝り、ペペレル教授の名前を削除した。また、質が悪い原稿は出版していないと述べている。以下はその手紙。

omics-email-correspondence-with-roger-pepperell-data

 

【マーティン・ハースト準教授(Martin Hirst)】

ディーキン大学(Deakin University)のマーティン・ハースト準教授(Martin Hirst、写真)は、かれこれ約2年間、オミックス・インターナショナル社のウェブサイトから彼の名前を削除するよう要請していた。

「一度、あなたの写真と履歴書を送付したら、オミックス・インターナショナル社のウェブサイトからそれを取り除くことは非常に難しい」とハースト準教授は言う。

「彼らに私の名前を強制的に取り除かせる方法はわかりません。オミックス・インターナショナル社の行為は犯罪ではありませんが、とにかく、信じられないほど非倫理的です」。

3年前、ハースト講師(当時)は学術誌「Mass Communication and Journalism」の編集者になって欲しいとオミックス・インターナショナル社から要請された。当時、彼はそのオファーを受け入れたが、学術誌の査読プロセスがどう機能しているかを理解したとき、受け入れたことを後悔した。

私は、バングラデシュの学者がバングラデシュのテロリズムとメディアを論じた投稿原稿の査読をしました。私はメディアのテロリズムに興味があり、私の専門分野の一つです。

それで、私はその投稿原稿を査読しました。内容はかなり良いのですが、文章は本当にひどく、英語の表現、文法、スペルは、“非常にひどい”レベルでした。

私は、投稿原稿は出版前にまともな編集作業が必要だと査読報告書に書いて、オミックス・インターナショナル社に送付しましたが、その後の経過を教えてもらえませんでした」。

後に、ハースト準教授は、その投稿原稿は原稿を受け取ってから20日後に出版され、出版された論文では、ハースト準教授が指摘したことが全く生かされていないことを知るハメになった。

全く変更されていません。はい、かなり恐ろしいスペルミスがあります。私はそれが出版され、変更されていないことに非常に驚きました。私が見る限り、1つの文字、1つの単語、1つのスペルミスでさえ、修正されていませんでした」とハースト準教授は批判した。

ハースト準教授は、「私の経験から推察するに、この学術誌は査読を無視しています。査読しても、査読結果を、投稿者に示していません。20日後に出版されたのは、掲載料徴収に20日かかったということのようです」と述べた。

【編集委員から削除】

オミックス・インターナショナル社は、「ABC Radio National」の指摘を受け、アダム・ブライアント準教授、ロジャー・ペペレル教授、マーティン・ハースト準教授に謝罪し、各学術誌の編集委員から彼らの名前を削除した。

★捕食学術業

オミックス・インターナショナル社(OMICS International)が出版する学術誌は、その査読の妥当性の欠如、論文掲載料の額の不当な高さ、マーケティングの不適切性、本人の了解なしに著名な学者を学術誌の編集委員・編集委員長にした、などを多くの学者と米国政府によって指摘・批判・非難された。

また、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)が企画した学術集会で本人の了解なしに名な学者を講演者であると広告したことも、多くの学者と米国政府によって指摘・批判・非難された。

ちなみに、学術誌への論文掲載料を見てみよう。

2013年2月13日当時のサイトでは、低所得国では900-1800ドル(約9万-18万円)、中所得国では1300-2600ドル(約13万-26万円)、高所得国では1800-3600ドル(約18万-36万円)とあった。日本は高所得国なので、論文1報出版すれば約18万-36万円払わなければならなかった。かなり高額ですね。
OMICS Group – Open Access Journals, Scientific Conferences & Events Organizer:: FAQs

そして、1か月半前の2018年10月2日は、論文が受理されたら(once a manuscript has been accepted for publication)、掲載料を払う必要があると述べている。金額が記載されていない。以前より高額だと推察される。:OMICS International FAQ | Freaquently Asked Questions

2018年11月18日現在、上記から1か月半しか経過していない。1か月半前の文章と同じである。掲載料の金額が記載されていない。
OMICS International FAQ | Freaquently Asked Questions

掲載料金は、ジャーナルごとに異なります。詳細な情報については、編集局にお問い合わせください。 各ジャーナルのホームページに電子メールアドレスがあります

★連邦取引委員会と裁判

2016年8月、米国の連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)は、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)のCEOであるスリヌバブ・ゲデラ(Srinubabu Gedela)を、詐欺的なビジネスである捕食学術業をしていたことでネバダ州地方裁判所に提訴した。
→ 2016年8月26日の連邦取引委員会プレスリリース:FTC Charges Academic Journal Publisher OMICS Group Deceived Researchers | Federal Trade Commission

オミックス・インターナショナル社(OMICS International)は捕食学術業で訴えられた最初の企業である。

以下の文書をクリックすると、連邦取引委員会が訴えたPDFファイル(1.40 MB、54ページ)が別窓で開く。

オミックス・インターナショナル社の反論
→ https://www.omicsonline.org/pdfs/OMICS-Group-Lawyer-Response-to-FTC-Allegations.pdf

2017年11月、ネバダ州地方裁判所は、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)に仮差止め命令を下した。
→ 2017年11月22日の連邦取引委員会プレスリリース:FTC Halts the Deceptive Practices of Academic Journal Publishers | Federal Trade Commission

以下の文書をクリックすると、ネバダ州地方裁判所の仮差止め命令のPDFファイル(1.17 MB、23ページ)が別窓で開く。

しかし、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)はそれらすべてを否定し、インドのハイデラバードからの世界に向けた営業の拡大を続けている。

●4.【白楽の感想】

《1》どこで線を引く

白楽は、捕食出版社(predatory publisher)、捕食学術誌(predatory journal)、捕食学会(predatory academic society)、捕食会議(predatory conference)など、研究者を食いものにする捕食学術業(predatory academic business)をまとめて理解したいと考えている。

一応、研究者を食いものにする捕食学術業(predatory academic business)と書いたが、従来の伝統的な出版社、学術集会、学会組織も研究者を顧客とし、ある意味、研究者を“食いもの”にしている。

例えば、大学紀要・研究所紀要は、全部ではないが、いい加減な査読で学術的に質の悪い論文を掲載している。他にも質の悪い論文を掲載している学術誌はゴマンとある。原資は、国民の税金である。ある意味、捕食学術誌(predatory journal)ではないのだろうか?

伝統的な学術集会も、国内学会だけで、日本で毎年数千~数万件開催されている(推定)。

大学教員が手弁当で会場の整理やプログラムを作る小さな学術集会もあるだろうが、昔はともかく、今は少ないだろう。国際会議はもちろん、国内学会でも大規模な学術集会や医学系の学術集会では企業が仕切っている。学会ビジネスである。原資は、国民の税金である。研究者を顧客とし、ある意味、研究者を“食いもの”にしている。
→ 学術集会 | コンベンション | 日本コンベンションサービス株式会社 – JCS
→ 学術集会請負業者一覧

本記事では、オミックス・インターナショナル社(OMICS International)を捕食学術業ととらえ、悪いという視点で書いたが、やっていることは従来の学術業と紙一重である。欠点ばかり指摘されるが(本記事でもそうしたが)、利点もあり、ある意味、新しい動きでもある。

白楽は、現段階では、学術出版と学会ビジネスのあるべき姿を描けていない。従来の学術業にも問題を感じている。

《2》悪いのは投稿者?

捕食学術誌(predatory journal)は質の悪い論文を掲載するから悪いと批判・非難されている。科学を崩壊させると。
→ 捕食出版社、ねつ造医学論文 | 研究倫理(ネカト、研究規範)

チョットまて、「質の悪い論文を掲載するから悪い」という場合、その質の悪い論文は、学者が投稿したのではないのか? 悪いのは、学術誌ではなく学者ではないのか? という思いを、白楽は払拭できない。

《3》需要

日本のほとんどの大学では、博士号申請の重要な要件は「国際学術誌に1報出版」である。こういう要件だから、論文の質が悪くてもとにかく、院生は、1報、出版したい。その欲求が強い。死活問題である。

研究職への採用、助教から准教授への昇格、准教授から教授への昇格にも出版論文数は、重要な判断因子である。死活問題である。

奨学金や研究費の採択でも出版論文数は、重要な基準である。死活問題である。

このように論文出版が死活問題になる状況下では、捕食学術誌はますます栄えるだろう。

《4》捕食学術の情報リスト

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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●5.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:OMICS Publishing Group – WikipediaPredatory open-access publishing – WikipediaPredatory conference – Wikipedia
② 2017年11月22日のアンドリュー・ハン(Andrew P. Han)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事: US court issues injunction against OMICS to stop “deceptive practices” – Retraction Watch
③ 2017年3月27日のアリソン・マクック(Alison McCook)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事: Multiple OMICS journals delisted from major index over concerns – Retraction Watch
④ ‎2017‎年‎8月‎29‎日‎のエズメ・ディプレズ(Esmé E Deprez)記者とキャロライン・チェン(Caroline Chen)記者の「Bloomberg」記事:Medical Journals Have a Fake News Problem – Bloomberg
⑤ 2013年4月7日のジナ・コラタ(Gina Kolata)記者の「New York Times」記事:Scientific Articles Accepted (Personal Checks, Too) – The New York Times

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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