天文学:エイミー・メインザー(Amy Mainzer)(米)

2018年7月6日掲載。

ワンポイント:メインザー(美人と評判)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)の3つの研究プロジェクト、ネオワイズ(NEOWISE)、スピッツァー(Spitzer)、ワイズ(WISE)、の責任者(主宰研究者)で、地球の周辺を移動する約164,000個の小惑星と彗星の動きを測定・予測し、地球への衝突の可能性を研究している。2016年5月(42歳)、そして、2018年6月(44歳)、マイクロソフト社の元・主任技術者で技術の巨人のネイサン・ミアボルト博士(Nathan Myhrvold)が、ネオワイズ(NEOWISE)/ワイズ(WISE)プロジェクトのデータや解釈にネカト・クログレイ疑惑があると指摘した。疑惑段階なので辞職や処分はない。損害額の総額(推定)は今のところ、0円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

エイミー・メインザー(Amy Mainzer、写真出典)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory.)・主宰研究者で、専門は天文学である。研究とは無関係だが美人との評判である。

メインザーは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の3つの研究プロジェクト、つまり、ネオワイズ(NEOWISE)、スピッツァー(Spitzer)、ワイズ(WISE)、の責任者(主宰研究者)である。研究プロジェクトでは、高性能な天体望遠鏡を使い、地球の周辺を移動する約164,000個の小惑星と彗星の動きを測定・予測し、地球への衝突の可能性を研究している。

エイミー・メインザー(Amy Mainzer)。https://9gag.com/gag/ayD3ZQV/astronomer-dr-amy-mainzer

2016年5月(42歳)、そして、2018年6月(44歳)、マイクロソフト社の元・主任技術者で技術の巨人で大富豪のネイサン・ミアボルト博士(Nathan Myhrvold)が、ネオワイズ(NEOWISE)/ワイズ(WISE)プロジェクトのデータや解釈にネカト・クログレイ疑惑があると指摘した。

最初に指摘されてから既に約2年経ったが、事件の決着はついていない。調査委員会も設置されていない。

アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory) 写真出典
  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 研究博士号(PhD)取得:カリフォルニア大学ロサンゼルス校
  • 男女:女性
  • 生年月日:1974年1月2日
  • 現在の年齢:50歳
  • 分野:天文学
  • 最初の不正疑惑論文発表:2011年(37歳)
  • 発覚年:2016年(42歳)
  • 発覚時地位:メリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所・主宰研究者
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)で、ブログや論文で指摘
  • ステップ2(メディア):「New York Times」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①調査委員会の設置なし
  • 所属機関・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 透明性所属機関の事件への透明性:調査していないので・該当せず(ー)
  • 不正疑惑:ねつ造・改ざん、盗用
  • 不正疑惑論文数:?報
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 損害額:不正疑惑段階なので辞職や処分はない。損害額の総額(推定)は今のところ、0円。クロとなれば、損害額は大きいと思われる。
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分: なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

●2.【経歴と経過】

  • 1974年1月2日:生まれる
  • 1995-2003年(21-29歳):ロッキード・マーティン先端技術センター(Lockheed Martin Advanced Technology Center)の主宰研究者
  • 1996年(22歳):スタンフォード大学(Stanford University)で学士号取得:物理学
  • 2000年(26歳):カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)で修士号取得:天文学
  • 2002年(28歳):2002年にNEATによって発見されたメインベルト小惑星は”Asteroid 234750 Amymainzer”と命名されたが、彼女の名前にちなんで命名された
  • 2003年(29歳):カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)で研究博士号(PhD)を取得:天文学
  • 2003年(29歳):アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory, Astrophysics and Space Sciences Section)・主宰研究者
  • 2016年5月(42歳):ネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)にネカト・クログレイ疑惑を指摘された
  • 2018年6月(44歳):再び、ネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)にネカト・クログレイ疑惑を指摘された

受賞
• NASA Exceptional Scientific Achievement Medal (2012)
• NASA Exceptional Achievement Medal (2011)
• Numerous group achievement awards for Spitzer, WISE, NEOWISE
• Lew Allen Award for Excellence (2010)
• NASA Graduate Student Research Program Fellowship (2001-2003)
• National Science Foundation Graduate Research Fellowship (1996-1999)

●3.【動画】

事件の動画はなかった。

【動画1】
「最も美しい女性科学者・エイミー・メインザー博士(Most Beautiful Female Scientist Dr. Amy Mainzer ♥♥)」(英語)3分42秒。

EriCosmos Techが2017/12/03 に公開

【動画2】
「エイミー・メインザー博士 – アメリカ人院生のチャンピオン(Dr. Amy Mainzer – American Graduate Champion)」(英語)3分42秒。

WUCF TVが2016/09/02 に公開

【動画3】
「NASAの女性歴史月間プロフィール -エイミー・メインザー(NASA Women’s History Month Profile – Amy Mainzer)」(英語)2分16秒。

NASAが2012/03/23 に公開

●4.【日本語の解説】

この事件の日本語解説は見つからなかった。以下、しょうもない記事だが日本語文章があった。

★2012年4月4日:はい、こちら加茂ちゃんで~す:「Amy Mainzer」

出典 → ココ (保存版)

「相棒」のない水曜日は、スカパー!ヒストリーチャンネルで、ザ・ユニバース(宇宙の歴史)に限りますね。宇宙物理学者のAmy Mainzer博士が才色兼備で、なんと言っても男心をくすぐりますね。日本で言えば、東大の大木聖子さんあたりですかね。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

この事件はねつ造・改ざん・盗用と明確に結論されていない。しかし、いくつかの点で、データ改ざんと盗用があった印象である。

★エイミー・メインザーの研究プロジェクト

エイミー・メインザー(Amy Mainzer)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(•Jet Propulsion Laboratory, Astrophysics and Space Sciences Section)・主宰研究者で以下の3つの研究プロジェクトの責任者である。
→ Science – Structure of the Universe (3266): People: Amy Mainzer、以下の3つの写真もここが出典。

1.ネオワイズ(NEOWISE)
ネオワイズプロジェクトは、ワイズ(WISE:Wide-field Infrared Survey Explorer)ミッションの小惑星探査部隊である。 2013年9月、ワイズをに再稼働させた。ネオワイズは、ワイズ画像から小惑星と彗星の測定値を算出し、・・・。

2.スピッツァー(Spitzer)
スピッツァー宇宙望遠鏡(旧SIRTF、宇宙赤外線望遠鏡施設)は、2003年8月25日フロリダのケープカナベラルからのデルタロケットによって宇宙に打ち上げられた。

3.ワイズ(WISE)
2009年12月に開始。ワイズ(WISE:Wide-field Infrared Survey Explorer)は、従来の赤外線ミッションより1,000倍以上の感度で全天を測るように設計された4チャンネル超冷却赤外線望遠鏡である。

★研究の背景

何千もの小惑星が常に地球の近くを通過している。地球に衝突する確率はとても小さいが、もし地球に衝突すれば、民家ほどの大きさの小惑星でさえ、原子爆弾ほどのエネルギーで爆発する。

NASAの科学者たちは、そのような危険な宇宙の岩(小惑星)の動きを把握するのも仕事の1つである。もし地球に衝突するコースに宇宙の岩が見つかれば、大きさと組成の分析は、宇宙の岩を地球に衝突させないように逸らすため、あるいは命中すれば破壊の大きさを計算するために不可欠である。

プリンストン大学で物理学の研究博士号(PhD)を取得し、マイクロソフト社で主任技術者だったネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold、ネイサン・マイアーボールド)は小惑星科学者の小規模なコミュニティを作っていた。その小惑星科学者コミュニティはNASAの地球近傍の小惑星のデータには欠陥があり、信頼性が低いことを見つけた。

2011年以来、ネオワイズ(Neowise)として知られているNASAプロジェクトは、158,000個の小惑星のサイズと反射率をカタログ化している。ところが、小惑星科学者コミュニティによると、ネオワイズは小惑星の直径をしばしば実際のサイズの10%以下に算出していた。

ネオワイズの研究者は近くの小惑星ではなく遠方の物体を観測するために設計された衛星からのデータを使用していたために、不正確さはもっとはるかに大きいと、ミアボルト博士は主張している。

エイミー・メインザー(Amy Mainzer)。 Credit Frederick M. Brown/Getty Images。写真出典

★ネカトまたはクログレイ

問題視されているエイミー・メインザー(Amy Mainzer)の論文は2011年から2015年の論文群である。2011年と2015年の論文の書誌情報を以下に示す。

★2016年のバトル

2016年5月20日(42歳)、マイクロソフト社の元・主任技術者で技術の巨人で大富豪のネイサン・ミアボルト博士(Nathan Myhrvold)は110ページもある「2016年のarXiv」論文でエイミー・メインザー(Amy Mainzer)の研究結果を批判した。
→ 2016年5月20日のネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)の「arXiv」論文:https://arxiv.org/abs/1605.06490
→ 2016年6月1日のネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)の「arXiv」論文のPDF(6.80 MB)

ケネス・チャン記者(Kenneth Chang)がすぐに「New York Times」紙に解説記事を掲載した。
→ 2016年5月23日のケネス・チャン記者(Kenneth Chang)の「New York Times」記事:How Big Are Those Killer Asteroids? A Critic Says NASA Doesn’t Know. – The New York Times

ネイサン・ミアボルト博士(Nathan Myhrvold)https://www.geekwire.com/2016/nathan-myhrvold-stirs-debate-search-killer-asteroids/

ミアボルト博士は「ネオワイズの分析は基本的には間違っている。多くの数値は不正確である」と批判した。

2016年5月26日(42歳)、しかし、エイミー・メインザー(Amy Mainzer)とアメリカ航空宇宙局(NASA)は、自分たちの研究成果は査読付きの論文で出版している。ミアボルト博士の「2016年のarXiv」論文は同じ分野の研究者の査読を受けていない。そのような論文もどきの“論文”に対して、まともな対応をしませんと、ネイサン・ミアボルトを批判した。
→ NASA Response to Recent Paper on NEOWISE Asteroid Size Results | NASA

もう少しアメリカ航空宇宙局(NASA)の記述に沿うと、以下のようだ。

ネイサン・ミアボルトが「ArXiv.org」に論文を投稿し、2016年5月23日にケネス・チャン(Kenneth Chang)記者がニューヨークタイムス紙に記事を掲載し、NASAのネオワイズ・ミッションの小惑星に関するデータの解釈を論じた。しかし、ネイサン・ミアボルトの論文は、科学論文に不可欠な査読がない状態で発表された。

ミアボルトの論文に示されたアプローチと分析にいくつかの根本的な誤りがある。研究論文への批判と再検討は科学プロセスにとって不可欠だが、真剣に批判と再検討をする前に、論文は同じ分野の研究者による査読を受けていることが重要です。査読は、研究結果が独立に検証され、再現性があり、論文が科学コミュニティにとって価値があることを確実にするために必要なステップです。

ネオワイズ・チームの論文はすべて、査読論文です。 NASAは、ネオワイズ・チームの論文に記載されたプロセスと分析が科学的データと科学的知見に基づいていて、論文内容は検証されており、有効だと確信しています。

なお、ネオワイズのデータは、ウェブサイトで入手可能です。データリリース、データアクセス手順、およびサポートドキュメントのガイドはhttp://wise2.ipac.caltech.edu/docs/release/neowise/で入手できます。

★2018年のバトル

上記バトルの2年後の2018年6月(44歳)、それで、ネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)は査読付きの論文(以下)を出版し、問題点を指摘した。

また、ミアボルトは自分のブログでも問題点を指摘した。
→ 2018年6月14日のネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)の記事:What’s wrong with NEOWISE – Nathan Myhrvold – Medium

指摘した問題点は4つある。

ワイズ/ネオワイズは小惑星科学データの宝庫だが、以下の問題がある。

  1. ネオワイズで報告した約164,000個の小惑星の半分以上が体系的な間違いとデータ及び解釈上の矛盾がある。・・・ねつ造・改ざん
  2. ネオワイズの熱モデルの結果には、過去に直接観察し算出した直径と全く同じ直径と正確に一致する129小惑星の直径が含まれている。・・・盗用
  3. ワイズのデータパイプラインは、フラックス誤差の推定値を系統的に過小評価している。常識ではありえない分布である。・・・ねつ造・改ざん
  4. ネオワイズの直径の推定値は、≧+ 4%(系統的)および±25%(ランダム)の誤差があり、以前に問題視された数値よりも精度が低い。・・・不正確(間違い)

ケネス・チャン記者(Kenneth Chang)も再び、「New York Times」紙に解説記事を掲載した。
→ 2018年6月14日のケネス・チャン(Kenneth Chang)の「New York Times」記事:Asteroids and Adversaries: Challenging What NASA Knows About Space Rocks – The New York Times

2018年7月5日(44歳)現在、最初に指摘されてから約2年経ったが、事件の決着はついていない。調査委員会も設置されていない。

どうなるのでしょう?

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

省略。

●7.【白楽の感想】

《1》美女

美醜と研究成果は無関係だが、男性主体の科学界で美女は何かと優遇される。それで、能力以上のことが要求され、応えようとして、ネカト・クログレイを犯しがちである。日本でも小保方晴子の例があるが、本ブログでも海外の美人研究者のネカト事件をいくつか解説した。
→ 美貌と研究ネカトで名声を得た女性研究者、超優秀で人柄が良い若い研究者が研究ネカトする | 研究倫理(ネカト)

https://www.greencarreports.com/news/1038989_dr-amy-mainzers-electric-experiences-with-the-tesla-roadster

《2》大富豪

美人と評判のエイミー・メインザー(Amy Mainzer)をネカト・クログレイと糾弾するネイサン・ミアボルト博士(Nathan Myhrvold)は、マイクロソフト社の元・主任技術者で技術の巨人であり、かつ大富豪である。

ミアボルト博士はいわばネカト・ハンターだが、このような人がどうしてネカト・ハンティングをするのか、その動機がよくわからない。まあ、動機はどうであれ、ネカト・ハンターとしてはユニークな経歴である。

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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Amy Mainzer – Wikipedia
② 2016年6月1日のネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)の「arXiv」論文:https://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1605/1605.06490.pdf
③ 2016年5月23日のケネス・チャン(Kenneth Chang)記者の「New York Times」記事:How Big Are Those Killer Asteroids? A Critic Says NASA Doesn’t Know. – The New York Times
④ 2016年5月23日のエリック・ハンド(Eric Hand)記者の「Science」記事:Billionaire technologist accuses NASA asteroid mission of bad statistics | Science | AAAS
⑤ 2016年5月27日のリー・ビリングス(Lee Billings)記者の「Scientific American」記事:For Asteroid-Hunting Astronomers, Nathan Myhrvold Says the Sky Is Falling – Scientific American
⑥ 2016年6月16日の「Physics World」記事:NASA hits back at millionaire in asteroid spat – Physics World、(保存版)
⑦ 2018年6月14日のネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Two years of stonewalling: What happened when a scientist filed a public records request for NASA code – Retraction Watch
⑧ 2018年6月14日のケネス・チャン(Kenneth Chang)記者の「New York Times」記事:Asteroids and Adversaries: Challenging What NASA Knows About Space Rocks – The New York Times、(保存版)
⑨ 2018年6月14日のネイサン・ミアボルト(Nathan Myhrvold)の記事:What’s wrong with NEOWISE – Nathan Myhrvold – Medium、(保存版)
⑩ 2018年6月14日のクリス・マオン(Chris Mahon)の記事:This Tech Expert Says NASA’s Asteroid Data Is Flawed—Now Scientists Are Backing Him Up
⑪ 2018年6月15日のアレクサンドラ・ウィッツェ(Alexandra Witze)の「Nature」記事:Asteroid battle: Tech entrepreneur doubles down on critique of NASA mission
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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