犯罪「論文工場・引用工場」:材料工学:モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)(カナダ)

2024年1月25日掲載 

ワンポイント:アㇽジュマンドはイラン出身のブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)・助教授である。2022年以降、ネカトハンターのアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)は、アㇽジュマンドのデータねつ造、論文工場、引用工場を指摘している。「パブピア(PubPeer)」では74論文にコメントがある。ところが、大学は怠慢で、若手の優秀研究者と処遇している。目覚めよカナダ! 国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。この事件は、2023年ネカト世界ランキングの「5」の「2」である。

ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
ーーーーーーー

●1.【概略】

モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand、ORCID iD:?、写真出典)は、イラン出身で、カナダのブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)・助教授になった。専門は材料工学(導電性磁性ナノ材料の合成)で、医師免許は持っていない。

2022年(40歳)以降、ネカトハンターのアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)が、アㇽジュマンドのデータねつ造、論文工場、引用工場を指摘している。

「パブピア(PubPeer)」では74論文にコメントがある。

ところが、2023年3月(41歳)、ブリティッシュコロンビア大学はアㇽジュマンドを5人の優秀研究者の1人に選んだ。

2023年4月(41歳)、ドイツのシュタインマイヤー大統領がカナダを訪問した時、カナダは、シュタインマイヤー大統領にアㇽジュマンドの研究成果を紹介した。

アㇽジュマンドはカナダを代表する若手の優秀研究者とされている。

ブリティッシュコロンビア大学はアㇽジュマンドの悪行を調査していない。「知らぬが仏」ではなく、知っているハズなので、大学は怠慢である。

この事件は、2023年ネカト世界ランキングの「5」の「2」である。つまり、「より良い科学のために(For Better Science)」サイトで2023年に最も読まれた記事ランキングの第2位だった。

ブリティッシュコロンビア大学のオカナガン・キャンパス(University of British Columbia’s Okanagan campus (UBCO))。写真出典

  • 国:カナダ
  • 成長国:イラン
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:カナダのカルガリー大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1982年1月13日(根拠:https://twitter.com/Schlaenzer、別人?)
  • 現在の年齢:42 歳
  • 分野:材料工学
  • 不正論文発表:2018~2023年(36~41歳)の6年間
  • ネカト行為時の地位:ブリティッシュコロンビア大学・助教授
  • 発覚年:2022年(40歳)
  • 発覚時地位:ブリティッシュコロンビア大学・助教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)で、「パブピア(PubPeer)」に公表
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。ブリティッシュコロンビア大学は調査していない
  • 大学の透明性:調査していない(✖)。大学怠慢
  • 不正:データねつ造・論文工場・引用工場
  • 不正論文数:「パブピア(PubPeer)」で74報。撤回論文なし
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Mohammad Arjmand, Author at School of EngineeringMohammad Arjmand – Applied Science Research

  • 生年月日:1982年1月13日(根拠:https://twitter.com/Schlaenzer、別人?)
  • xxxx年(xx歳):イランのシラーズ大学(Shiraz University)で学士号取得:化学工学
  • xxxx年(xx歳):イランのシャリフ工科大学(Sharif University of Technology)で修士号取得:化学/高分子工学
  • 2014年(32歳):カナダのカルガリー大学(University of Calgary)で研究博士号(PhD)を取得:化学 (ポリマー) 工学
  • 2014~2017年(32~35歳):カルガリー大学・ポスドク
  • 2017~2018年(35~36歳):トロント大学(University of Toronto)・ポスドク
  • 20xx年(xx歳):ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)・助教授
  • 2019年4月1日(37歳):カナダの研究費(Canada Research Chair (Tier 2))獲得
  • 2022年7月(40歳):データねつ造・論文工場・引用工場が発覚
  • 2024年1月24日(42歳)現在:従来職を維持

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
「モハマド・アㇽジュマンド」と自己紹介。
研究紹介動画:「SOE Faculty Profile – Mohammad Arjmand – YouTube」(英語)1分39秒。
School of Engineering UBC Okanagan(チャンネル登録者数 496人)が2019/09/10に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究人生

モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)はイランのシャリフ工科大学(Sharif University of Technology)で修士号を取得した後、2014年(32歳)、カナダのカルガリー大学(University of Calgary)で研究博士号(PhD)を取得した、

そして、カナダのブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)・助教授になった。

アㇽジュマンドは次項で示すように、論文工場と引用工場の運営者で、かなりのワルである。

ところが、カナダのブリティッシュコロンビア大学はこの悪行を把握していない。

それで、研究費(Canada Research Chair (Tier 2))を得た。

その上、以下に示すように、カナダを代表する若手の優秀研究者という処遇をしている。

2023年3月(41歳)、ブリティッシュコロンビア大学は5人の優秀研究者の1人にアㇽジュマンド(写真左上)を選んだ。 → 2023年3月21日記事(画像出典):UBC celebrates research excellence, recognizes five UBC Engineering profs – News | UBC Engineering

2023年4月25日(41歳)、上記の1か月後、ドイツのシュタインマイヤー大統領(女性2人の後ろの白髪男性)にアㇽジュマンドの研究成果を紹介した。2023年4月26日記事(画像出典):German President visits UBC to highlight the ongoing cleantech manufacturing transition – Canadian Manufacturing

★引用詐欺(Citation scams)

モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)は、かつて、論文工場運営者のマスード・アフランド(Masoud Afrand、イランのイスラミック・アザッド大学・助教授)、ナデル・カリミ(Nader Karimi)、コン・チー(Cong Qi)とともに、学術誌「Journal of Energy Storage」を舞台に論文工場まみれの特別号のゲスト編集者だった。 → 2023年7月19日記事:Journal asks scientist to step down from editorial board after sleuth’s comments linked him to paper mill – Retraction Watch

特集号「Recent Advances in Battery Thermal Management」はアフランドとカリミの被引用数を高めるための特集号だったが、悪行が発覚し、特集号は打ち切られた。

引用工場は製紙工場の典型的な悪行の1つである。論文を購入した顧客に被引用の有料オプションをプラスすることで、製紙工場の詐欺師は追加の収入が得られる。

参考文献欄に被引用数をあげるためだけのデタラメな論文をたくさんリストしても、参考文献を精査する読者は誰もいない。どんな論文をリストしても誰も気に留めない。

なお、、正当な「査読済み」論文でも、デタラメ論文が参考文献にリストされていることは珍しくない。

★アレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)

2022年7月から(白楽の推定)、ネカトハンターのアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov、写真出典)がモハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)の製紙工場と引用工場を「パブピア(PubPeer)」で指摘し始めた。

2024年1月24日現在、「パブピア(PubPeer)」には、モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)の74論文にコメントがあるが、その大半はマガジノフが指摘した。

以下、引用工場の論文を2報示す。実際はもっとある。

その後、3報目に、画像の使いまわし(ねつ造データ)が掲載された論文を1報示す。実際はもっとある。画像の使いまわしは、論文工場の特徴である。

★「2022年のJournal of Building Engineering 」論文

アㇽジュマンドの「2022年のJournal of Building Engineering 」論文の書誌情報を以下に示す。アㇽジュマンドは連絡著者である。

参考文献にリストされた27~30番の4論文は論文とは全く関係のない論文で、41~44番の4論文も不適切な論文である。つまり、引用工場だと、マガジノフが2022年7月に指摘した。 → https://pubpeer.com/publications/B1BF048C6389C71D4CD19CCBD0664F

★「2022年8月のPolymer Testing」論文

アㇽジュマンドの「2022年8月のPolymer Testing」論文の書誌情報を以下に示す。アㇽジュマンドは連絡著者である。

参考文献にリストされた175論文の内、15論文は第一著者「セイエド・ムーサヴィ(Seyed Rasoul Mousavi)」の論文の自己引用であると、マガジノフが引用工場を2023年5月に指摘した。 → https://pubpeer.com/publications/CF28B774C9F2BED390EB413D8B0DAD#

引用論文の内容を論文中に記載しないで、「セイエド・ムーサヴィ(Seyed Rasoul Mousavi、写真出典)」の論文をガバッとまとめて15論文も引用した。

ムーサヴィはアㇽジュマンドと同じカナダのブリティッシュコロンビア大学の材料工学に所属している研究員である。しかも、アㇽジュマンドと同じイラン出身である。 →  Seyed Rasoul Mousavi | LinkedIn

ブリティッシュコロンビア大学が調査していないので、白楽の憶測だが、ムーサヴィはお金を払って論文の著者在順を買い、被引用オプションも買ったと思われる。

★「2020年8月のCeramics International」論文

アㇽジュマンドの「2020年8月のCeramics International」論文の書誌情報を以下に示す。アㇽジュマンドは連絡著者ではない。

2023年5月、図3(d)と(e)が同じ図でと、マガジノフが指摘した。画像の使いまわしは、論文工場の特徴である。 → https://pubpeer.com/publications/FF15F3D791E89A7D47583608F8B197#

【不正の具体例】

上記したので省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事を閲覧した時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えていると思います。

★スコーパス(Scopus)

2024年1月2日現在、スコーパス(Scopus)で、モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)の論文を「Mohammad Arjmand」「University of British Columbia,」で検索した。2002年の1論文と2010~2024年の15年間の223論文、7,252 回被引用がヒットした。論文数のピークは2022年の45報である。

★撤回監視データベース

2024年1月24日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでモハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)を「Mohammad Arjmand」で検索すると、 0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2024年1月24日現在、「パブピア(PubPeer)」では、モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)の論文のコメントを「”Mohammad Arjmand”」で検索すると、74論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》表の顔と裏の顔 

イラン出身でブリティッシュコロンビア大学・助教授のモハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand、写真出典)が論文工場、引用工場を運営している。

捕食業で有名なアシュトシュ・ティワリ(Ashutosh Tiwari)の主催する捕食会議で、アㇽジュマンドは表彰され、ティワリと一緒に写っている(写真、中央がアㇽジュマンド、右がティワリ、出典)。 → 「捕食」:材料工学:アシュトシュ・ティワリ(Ashutosh Tiwari)(スウェーデン) | 白楽の研究者倫理

アㇽジュマンドの悪行を、カナダのブリティッシュコロンビア大学は無視している。

それで、研究費(Canada Research Chair (Tier 2))を与え、優秀研究者の1人に選んだ。ドイツのシュタインマイヤー大統領にアㇽジュマンドの研究成果を紹介した。

若手の超優秀研究者として処遇している。

「パブピア(PubPeer)」には、モハマド・アㇽジュマンド(Mohammad Arjmand)の74論文にコメントがある。

ネカトハンターのアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)がアㇽジュマンドの悪行を指摘している。

それなのに、どうして、ブリティッシュコロンビア大学は調査し、アㇽジュマンドを排除しないのか?

ネカトハンターは基本的に、悪行研究者の所属大学に通報する。マガジノフも通報しているハズである。ブリティッシュコロンビア大学は通報されていて(推定)、対処しないのである。

外部からみると、ブリティッシュコロンビア大学はダマされたように思えるが、大学が怠慢なのである。

そもそも、マガジノフが通報しなくても、大学は所属教員の不正を見つけ、自律的に対処すべきなのだ。しかし、そうしない。ハイ、大学は怠慢である。

ネカト者(今回は、データねつ造・論文工場・引用工場)はその国の学術界をダマし、巧妙に出世していく。

ネカト者だから、つまり、ズルしているから、研究成果は質・量ともに見栄えする。しかし、中味のない研究成果である。中味がないどころか有害である。

日本も同じだ。ネカトハンターを育成し、詐欺的研究者を排除しないと、実質のない研究者が高い地位に出世し、はびこる。ウン? もうはびこっている? 昔から、はびこってきた?

ーーーーーーー
日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー

●9.【主要情報源】

① 2023年6月00日のアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)の記事:UBCO Engineering Prof caught doing fake research : r/UBC
② 2023年5月1日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Dr. Mohammad Arjmand showcases his work to German President Steinmeier – For Better Science
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

注意:お名前は記載されたまま表示されます。誹謗中傷的なコメントは削除します

Subscribe
更新通知を受け取る »
guest
0 コメント
Inline Feedbacks
View all comments