化学:フア・ツォンとタオ・リウ(Hua Zhong & Tao Liu)(中国)

【概略】
フア・ツォン(Hua Zhong)は化学の研究者、タオ・リウ(Tao Liu)は電子工学・教授で、所属は中国・江西省・吉安(キツアン)市にある井岡山大学(Jinggangshan University)だった。

2009年12月、英国の研究論文ジャーナル「Acta Crystallographica Section E」電子版は、2007年に同誌に発表した論文にデータ改ざんがあったので、両氏の論文を撤回したと発表した。

両氏は論文撤回に同意している。撤回論文数は、ツォンが41報で、リウが29報だった。両氏は共同研究者ではないが、同じ大学、同じ研究論文ジャーナルなので一緒に扱う。

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井岡山大学 写真出典

★フア・ツォン(Hua Zhong)
不明点多し

  • 国:中国
  • 成長国:
  • 男女:不明
  • 生年月日:不明
  • 現在の年齢:不明
  • 分野:化学
  • 最初の不正論文発表:2007年(歳不明)
  • 発覚年:2009年(歳不明)
  • 発覚時地位:井岡山大学(Jinggangshan University)・研究者
  • 発覚:英国の研究論文ジャーナル「Acta Crystallographica Section E」編集部
  • 調査:英国の研究論文ジャーナル「Acta Crystallographica Section E」。調査期間:不明
  • 不正:改ざん
  • 不正論文数:41報撤回、その後に撤回論文あり
  • 時期:研究キャリアの初期から?
  • 結末:大学解雇。共産党員除名、出版ボーナスのUS$4600相当返却

★タオ・リウ(Tao Liu)
不明点多し

  • 国:中国
  • 成長国:
  • 男女:不明
  • 生年月日:不明
  • 現在の年齢:不明
  • 分野:電子工学
  • 最初の不正論文発表:2007年(歳不明)
  • 発覚年:2009年(歳不明)
  • 発覚時地位:井岡山大学(Jinggangshan University)・教授
  • 発覚:英国の研究論文ジャーナル「Acta Crystallographica Section E」編集部
  • 調査:英国の研究論文ジャーナル「Acta Crystallographica Section E」。調査期間:不明
  • 不正:改ざん
  • 不正論文数:29報撤回、その後に撤回論文あり
  • 時期:研究キャリアの初期から?
  • 結末:大学解雇。共産党員除名

★主要情報源:
① 2010年1月9日の「ランセット」誌の記事:Scientific fraud: action needed in China : The Lancet
② 2011年9月15日のXin Haoの「IOP Asia-Pacific」記事:Fraud takes the shine off rising star – asia.iop.org
③ 2010年1月12日のJane Qiuの「Nature News」記事:Publish or perish in China : Nature News

【経歴】
★フア・ツォン(Hua Zhong)
★タオ・リウ(Tao Liu)
両者とも、全面的に不明。一緒に書く。

  • 年不明:xxで生まれる
  • 年不明(歳不明):xx大学を卒業
  • 年不明(歳不明):井岡山大学(Jinggangshan University)・研究員に就職
  • 2009年(歳不明)12月:不正研究が発覚する
  • 2010年(歳不明):解雇

【研究内容】

【不正発覚の経緯】

2009年12月19日、「Acta Crystallographica Section E」は、データ改ざんがあったので、2007年に発表したフア・ツォン(Hua Zhong)の41論文、タオ・リウ(Tao Liu)の29論文、計70論文を撤回したと発表した。両者は大学を解雇された。

2010年4月、「Acta Crystallographica Section E」はさらに、2004年~2009年に出版された39論文を撤回したと発表した。総計109論文撤回。

2011年2月、「Acta Crystallographica Section E」はさらに11論文を撤回したと発表した。総計120論文撤回。

この内の20論文は、Yi-An Xiao(生命科学部長)、Xiao-Niu Fang(化学部長) 、Yan Sui(化学副部長)など井岡山大学の役職者が共著者だったが、役職者トリオは解雇されていない。

【撤回論文】

2014年11月14日現在で両氏合わせて、120論文が撤回されている。書誌情報のリストが不完全だがリンクした。

フア・ツォン(Hua Zhong): 41撤回論文の書誌情報(リンク先の一部)。

タオ・リウ(Tao Liu): 29撤回論文の書誌情報

2010年4月の39論文(リンク先の一部)。

【事件の深堀】

「Acta Crystallographica Section E」に占める中国論文の勢力は、2001年に9.3%だったのが、2007年には50%以上だというから、スゴイ増加率だ。しかし、なんかヘンである。英国のジャーナルに中国勢が50%以上も掲載されるのは、ヘンである。これでは、国際誌とは言えないだろう。ウィンブルドン現象(門戸を開放した結果、外来勢が優勢になり、地元勢が消沈または淘汰される。出典:ウィキペディア)が起きている。

以下は主要情報源②の内容を取捨選択した。

マレーシア・マラヤ大学の化学者・セイ・ウェン・ン教授(Seik Weng Ng、「Acta Crystallographica Section E」の共同編集者)は、中国には結晶学に関する別の問題があると指摘している。

井岡山大学は、X線回折装置を購入するお金がないだけでなく、良い科学と悪い科学を区別できないし、そもそも結晶学とはなんたるかも理解できていない。レベルの低い測定結果の場合、論文として発表しないまともな研究者もいるけど、ロクでもないデータを論文として発表する研究者もいる。公的研究費のムダである。

中国は、システムを改革する必要がある。

中国では論文の質より量がズット重要だと言われている。

井岡山大学の不正行為は中国の研究界の1つの問題でしかない。研究資金の大半は研究計画の内容に対して分配されていない。科学界の上層部・・・中国科学院(CAS)、大学学長、学部長、研究所長など・・・に良く思われた研究者に研究費が配分される。こういう偉い人に良く思われない研究者に研究費は配分されない。だから、研究は衰退する。

中国の研究者の基本月給は約6400元(約12万円)未満である。それに、外部研究費の獲得と発表論文数に応じて、月給の数倍のボーナスをもらえる。外部研究費をもらえないと、論文の数を多く出版し、それなりのボーナスをもらうしかない。また、論文の出版数が多いと外部研究費がもらえるようになる。

【白楽の感想】

《1》 不明だらけ

不明点が多く、事件の内容がつかめない。透明性が著しく欠ける。

①政府や大学は事実を把握して公表しないのか、②政府や大学は事実を把握していないのか? もし、②だと、政府や大学自身、改善する方法がつかめない。

《2》 中国

今回の事件を報道する多くの英文記事は、中国の研究体制が前近代的すぎると批判している。胡錦濤(こ きんとう、Hu Jintao)の提唱した「2020年までに研究大国になる」目標なら、研究規範体制もしっかり構築すべきだと指摘している。
(い:Asia Times Online :: China News, China Business News, Taiwan and Hong Kong News and Business.、ろ:China: act on scientific fraud、は:Labtimes: Career strategies for young European scientists: China (Pt II))。

中国には研究ネカトがたくさんあると思われる。トップ大学でも、3分の1の研究者が研究ネカトをしていると報じられている(主要情報源③)。こんなに蔓延していると、通常の方法では無理で、根本的な改革が必要だ。

実体を調べていないが、中国の倫理・規範レベルの低さは根深いと思われる。国民の選挙で選ばれない共産党一党支配という体制のために、研究ネカトを含め、腐敗は広範で根深いのだろう。

共産党一党支配という体制には悪い面もあるが、そういう専制政治の方が、実は、科学技術力は高まる面もある。研究ネカトを厳罰に処すことで研究ネカトをコントロールできる可能性もある。

ただ、現在の中国の教育システムと研究システムは、優れた研究に必要な創造性、好奇心、危険負担、自立的思考を、トコトン妨害し破壊しているという指摘もある。倫理や規範の改革と合わせ、優れた研究に必要な創造性、好奇心、危険負担、自立的思考を育成することも重要だ。

中国の問題をみていると、振り返って、ううん、日本も、程度の差こそあれ、かなり同じだと思える面もある。