盗博・スーマン・サハイ(Suman Sahai)(インド)

2018年6月30日掲載。

ワンポイント:サハイはインドの非政府組織のジーン・キャンペーン(Gene Campaign)・代表だが、1986年(38歳?)、ドイツのハイデルベルク大学(University of Heidelberg)で教格を取得した。27年後の2013年(65歳?)、その教格論文の盗用とハイデルベルク大学・教授という経歴詐称が発覚した。盗用ページ率と盗用文字率は4%以上である。損害額の総額(推定)は1億円(当てずっぽう)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

スーマン・サハイ(Suman Sahai、写真出典)は、インドで生まれ育ち、インド農業研究大学で研究博士号(PhD)を取得した。専門は植物遺伝学だったが、その後、遺伝子作物に反対するインドの著名な活動家になった。

1986年(38歳?)、ドイツのハイデルベルク大学(University of Heidelberg)で教格(Habilitationsschriften、博士号より上位)を取得した。

1989年(41歳?)、インドに帰国し、1993年(45歳?)、非政府組織のジーン・キャンペーン(Gene Campaign)を設立した。

2013年(65歳?)、27年前にドイツのハイデルベルク大学に提出した教格論文の盗用とハイデルベルク大学・教授という経歴詐称が発覚した。

教格論文での盗用だが、本ブログでは、ドイツの盗博事件一覧(ヴロニプラーク・ウィキ)にならって、盗博とした。

ハイデルベルク大学(Ruprecht-Karls-Universität Heidelberg)。写真出典

  • 国:インド
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:インド農業研究大学
  • 教格(Habilitationsschriften)取得:ドイツのハイデルベルク大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1948年1月1日生まれとする。研究博士号(PhD)を取得した1975年の時を27歳とした
  • 現在の年齢:70 歳?
  • 分野:遺伝子作物
  • 最初の不正論文発表:1986年(38歳?)
  • 発覚年:2013年(65歳?)
  • 発覚時地位:非政府組織のジーン・キャンペーン・代表
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)は匿名。「Labor-Journal」紙の記事で盗用を指摘報
  • ステップ2(メディア): 「Labor-Journal」紙
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①「Labor-Journal」紙。②ハイデルベルク大学・調査委員会
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:ハイデルベルク大学は実名報道でウェブ公表(〇)
  • 不正:盗用、経歴詐称
  • 不正論文数:1報
  • 盗用ページ率:4.0%以上
  • 盗用文字率:4.0%以上
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 損害額:総額(推定)は1億円(当てずっぽう)。内訳 → ①盗博は明白であるが研究者ではない。1億円(当てずっぽう)。
  • 職:事件後に発覚時の地位を続けた(〇)
  • 処分:教格はく奪
  • 日本人の弟子・友人:不明

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1948年1月1日生まれとする。研究博士号(PhD)を取得した1975年の時を27歳とした
  • 19xx年(xx歳):インドのxx大学で学士号取得
  • 1975年(27歳?):インドのインド農業研究大学(Indian Agricultural Research Institute)で研究博士号(PhD)を取得
  • 19xx年(xx歳)から数年:カナダのアルバータ大学(University of Alberta)、米国のシカゴ大学(University of Chicago)で研究。ポスドク?
  • 1986年(38歳?):ドイツのハイデルベルク大学(University of Heidelberg)で教格を取得した
  • 1989年(41歳?):ドイツのハイデルベルク大学(University of Heidelberg)を離れインドに帰国
  • 1993年(45歳?):非政府組織のジーン・キャンペーン(Gene Campaign http://genecampaign.org/)を設立
  • 2013年(65歳?):ハイデルベルク大学に提出した教格論文の盗用と経歴詐称が発覚

●3.【動画】

ネカト事件の動画はなかった。

【動画1】
講演:「腐敗した科学界| スーマン・サハイ博士 | TEDxSMIT (The Corrupt World of Science | Dr Suman Sahai | TEDxSMIT)」(英語)18分8秒。
TEDx Talksが2016/12/13 に公開

●4.【日本語の解説】

ネカト事件の日本語の記事はなかった。以下は、サハイの遺伝子組み換え作物への反対活動を日本語で解説した文章である。

★2005年9月5日:農業情報研究所「Btワタの有効性をめぐるインドの論争ー研究者とNGOの抗争」

出典 → ココ、(保存版

先日、遺伝子組み換え(GM)食品導入をめぐるガーナの論争を紹介したが、今度は害虫抵抗性GMワタ(Btワタ)をめぐるインドでの激しい論争を紹介したい。8月初めに「インド・マハラシュトラ州・ナグプールに本拠を置く中央綿研究所(CICR)の研究チームが、遺伝子組み換え(GM)Btワタが播種110日後、ワタキバガ (bollworm)に対して無効になることを一連の研究により証明した」ことを伝えたが、この問題をめぐる論争である。

 8月29日付けのThe Hindu紙で、遺伝子キャンペーンのスーマン・サハイ博士は、CICRの科学者による新たな報告がモンサントのインド関連会社・MahycoのBtワタ品種失敗の科学的理由を明らかにした、農民に関する国家委員会は、このBtワタが畑から撤去され、この技術がインドの害虫と農業条件に適切なものにされるまで、そのさらなる栽培のモラトリアムを敷くように勧告せねばならない、またMahyco-Monsantoは、農民が蒙った損害を補償せねばならないと論じた(The science of Bt cotton failure in India,The Hindu,8.29; http://www.hindu.com/2005/08/29/stories/2005082906321100.htm)。

以下省略。

https://www.flickr.com/photos/stepscentre/8463820219

●5.【不正発覚の経緯と内容】

http://adnat.in/adnat-18-symposium/speakers.html

1986年(38歳?)頃の数年間、サハイはドイツに在住していた。

1986年(38歳?)、サハイはドイツのハイデルベルク大学(University of Heidelberg)に456ページの教格論文(Habilitationsschriften)を提出した。タイトルは「正常および異常精神機能における神経伝達物質グルタミン酸の役割の解明(Elucidation of the role of neurotransmitter glutamate in normal and abnormal mental function)」である。
→ HEIDI: Sahai, Suman: Elucidation of the role of neurotransmitter glutamate in normal and abnormal mental function

2012年9月(64歳?)、匿名者が、「Labor-Journal」紙にサハイがドイツのハイデルベルク大学に提出した教格論文に盗用があると指摘した。また、サハイがハイデルベルク大学・教授と称しているが、それは経歴詐称であると指摘した。

2013年4月(65歳?)、「Labor-Journal」紙は、調査の結果、サハイの1986年の教格論文が盗用だったと指摘した。

ハイデルベルク大学は、サハイがハイデルベルク大学・教授と称する資格はないと発表した。

2013年4月13日付けのウィンフリード・ケッペレ(Winfried Köppelle)の解説文(の英語版)を以下に示す。文書をクリックすると、PDFファイル(324 K、10ページ)が別窓で開く。

★盗用の具体例

http://sumansahai-blog.blogspot.com/2011/02/on-record-crux-of-food-security-lies-in.html

1986年(38歳?)、サハイはドイツのハイデルベルク大学(University of Heidelberg)に456ページの教格論文(Habilitationsschriften)を提出した。

このころの教格論文は紙媒体だけだった。電子化されていない。その場合、盗用分析は容易ではない。

教格論文の少なくとも1つの章(54ページから70ページ)は、匿名の告発者が主張しているように、ノルウェーの脳研究者・フロデ・フォンナム(Frode Fonnum)の「1984年のJ Neurochem」論文(以下)から、ほぼ逐語盗用していた。

教格論文での盗用個所では「1984年のJ Neurochem」論文のフレーズを少し省いているが、サハイ自身は文章や段落を加えていない。

教格論文は456ページである。表紙や目次や文献を30ページほどはだろう。実質の文章を426ページになる。少なくともその17ページ分が逐語盗用と指摘されている。それで、盗用ページ率と盗用文章率は4.0%以上と算出される。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年6月28日現在、パブメド(PubMed)で、スーマン・サハイ(Suman Sahai)の論文を「Suman Sahai [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするハズだが、1996年の1論文がヒットした。

「Sahai S[Author]」で検索すると、1973~2018年の46年間の87論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者の論文ではない論文が少し含まれていると思われる

2018年6月28日現在、「Sahai S[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

省略。

●7.【白楽の感想】

《1》社会活動家の正義

http://www.csrvision.in/unsung-sheroes-of-indian-science/

遺伝子作物反対の活動家は、いわば、社会正義の旗手である。その人が盗用や学籍詐称していた。

「唖然!」と、最初は思ったが、徐々に、社会正義の旗手も、そんなもんだろうと思うようになってきた。

社会活動家と言えども人間である。見つからなければズルしたいのである。

社会活動家は大学や研究組織に所属していないと、ネカトをしても解雇などのような、目に見える処分が下されない。実際は、信用を少し失い、講演の機会は少し減るだろう。

それでも、不正が発覚しなければ、盗用しても教格がある方が断然、箔が付く。ハイデルベルク大学・教授と称するのも、箔が付く。

それでネカトをしたのである。

《2》27年後

1986年(38歳)に教格を取得し、その27年後の2013年(65歳)に教格論文の盗用が指摘された。

27年後でも盗用は盗用だけど、指摘が遅すぎて、指摘された人もその人を囲むミニ社会もやり直しがきかない。なんか不条理である。

ネカトに時効制度を導入し、少しはスッキリさせた方が社会が健全になる気がする。

標語:「ネカトに時効制度を導入しよう!」

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http://blog.urbantreehomes.com/about-suman-sahai/

●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版: Suman Sahai – Wikipedia, the free encyclopedia
② 2013年4月18日の「Laborjournal online」記事:Laborjournal online: Editorials
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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