2024年11月10日掲載
ワンポイント:英語の「Predatory Journal」を日本ではハゲタカジャーナル(ハゲタカ・ジャーナル)と呼ぶ人が多いが、これは間違った訳であるばかりか、鳥の「ハゲタカ」に対する差別語、動物虐待語、ヘイトスピーチである。英語の「Predatory」に「ハゲタカ」という意味は全くない。それなのに、わざわざ「ハゲタカ」を引き合いに出して、「Predatory Journal」を「ハゲタカ」と呼ぶことで、鳥の「ハゲタカ」に「悪い、粗雑、略奪的、不正、低品質」と、理不尽な嫌悪感を植え付けている。使用すべきではない。なお、グラハム・ケンダル名誉教授(Graham Kendal)が主張するように、そもそも「Predatory Journal」という分類や呼称を止めよう。
【追記】
・「もむ」さんのX情報 → 山田 祐樹の「心理学ワールド 96号」2022年1月号論文:捕食学術誌とのつきあい方 | 日本心理学会
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.卓見・浅見
7.白楽の手紙
8.白楽の感想
10.コメント
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●1.【卓見・浅見】
★ハゲタカジャーナルの「ハゲタカ」
今回は、ハゲタカジャーナルの「ハゲタカ」についての話である。
最初に結論を書いておく。ワインポイントに書いたのと同じだが、以下再掲した。
英語の「Predatory Journal」を日本ではハゲタカジャーナル(ハゲタカ・ジャーナル)と呼ぶ人が多いが、これは間違った訳であるばかりか、鳥の「ハゲタカ」に対する差別語、動物虐待語、ヘイトスピーチである。英語の「Predatory」に「ハゲタカ」という意味は全くない。それなのに、わざわざ「ハゲタカ」を引き合いに出して、「Predatory Journal」を「ハゲタカ」と呼ぶことで、鳥の「ハゲタカ」に「強欲、粗雑、邪悪、悪徳、不正、低品質」と、理不尽な嫌悪感を植え付けている。使用すべきではない。
生物(いきもの)は与えられたその命をまっとうしようと、生きているだけです。
人間社会が特定の生物(いきもの)に悪いイメージを植え付けるのは、倫理や公正を研究し、社会に伝えている白楽、生命科学者でもあった白楽は、とても不当で傲慢、マズイと感じている。
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ウィキペディアは「ハゲタカジャーナル」を以下のように説明している。
ハゲタカジャーナル(英: predatory journal)は、論文の著者から高額の論文掲載料を得ることのみを目的として発行され、査読付きであることを標榜しながら実際には適切な査読を経ていない低品質の論文を掲載するオープンアクセス形式の学術誌(ジャーナル)を指す[1][2]。ハゲタカジャーナルの出版元をハゲタカ出版社(predatory publisher)と呼ぶ[3][4][5]。ハゲタカジャーナルやハゲタカ出版社を、英語の直訳から「捕食学術誌」[6]、「捕食雑誌」[7]、「捕食出版社」[7]と称する例もある。(ハゲタカジャーナル – Wikipedia)
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最初に「ハゲタカジャーナル」という用語の使用例を示す。
以下はたくさんある例のほんの一部である。検索でヒットした上位から適当に選んだだけで、その個人・組織をことさら批判する意図はない。
【文部科学省】
2021年10月26日の「【資料2-3】学術情報流通に係る懸念すべき事例への対応状況アンケート集計結果」に「粗悪論文誌(いわゆる「ハゲタカジャーナル」)」とある
【メディア】
2024年10月18日記事:粗悪なハゲタカ学術誌の卵?怪しいネット誌、メールを送ってみると… | 毎日新聞
2020年12月18日記事:成果焦り、後絶たぬ研究不正 実績求めハゲタカ誌投稿 科技立国 動かぬ歯車(1) – 日本経済新聞
【大学】
多くの大学は「Predatory Journal」に注意するよう、ウェイブサイトで示している。以下は、その1つの例。
記載年月日不明:オープンアクセスジャーナルに論文を投稿する際の注意事項 | 広島大学(画像と文章の出典)
ハゲタカジャーナル(predatory journal)とは?
「ハゲタカジャーナル(predatory journal)」とは、著者が論文投稿料(APC=Article Processing Charge)を支払い、だれでも自由に論文を読むことができる、いわゆる「オープンアクセスジャーナル」のビジネスモデルを悪用した雑誌です。ハゲタカジャーナルは、急いで出版したいという著者の心理を利用したり、権威のある学術雑誌のように装うことで、著者を騙して高額な投稿料を取ることを目的としています。「粗悪学術誌」「捕食ジャーナル」とも訳されます。
【学術論文】
2022年:田嶋ティナ宏子、聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 50, pp. 55-59, 2022、「はげたかジャーナルの実際」
【学術出版社】
2016年8月24日記事:<記事紹介> なぜ研究者は「ハゲタカジャーナル」で論文を出版してしまうのか | ワイリー・サイエンスカフェ
上記のように、ウィキペディア、文部科学省、メディア、大学、学術論文、学術出版社で「ハゲタカジャーナル」という用語を使用している。つまり、現在、ほぼ、どこでも使用している。
ただ、文部科学省をはじめ、「まともな」組織(白楽の印象)は、「粗悪論文誌(いわゆる「ハゲタカジャーナル」)」としているように、積極的には「ハゲタカジャーナル」を使用していない。世間が使用しているので、わかりやすいように「ハゲタカジャーナル」と付記している(と思う)。
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一方、「ハゲタカ」は何を指すか?
再び、ウィキペディアから引用すると、「ハゲタカ」は以下のようだ。
ハゲタカ(禿鷹 英:vulture)は、腐肉を漁る猛禽類を広く指す俗称。特定の鳥の種名ではなく、ハゲワシ類やコンドル類を指す[注釈 1]。彼らの食餌習性から転じて、困窮して弱った相手を食い物にする強欲な人物・組織のことを「ハゲタカ」と比喩的に表現することもある[1]。(ハゲタカ – Wikipedia)
要するに、「ハゲタカ」は猛禽類の鳥である。
それで、「鳥のハゲタカ」の写真を表示した「ハゲタカジャーナル」解説記事も登場する。 → 2018年02月07日記事:ハゲタカ出版社を見抜くためのチェックリスト | エディテージ・インサイト
猛禽類をウィキペディアから引用すると以下のようだ。
猛禽類(もうきんるい)は、鋭い爪と嘴を持ち、他の動物を捕食(または腐肉食)する習性のある鳥類の総称[1]。獲物を捕まえるための鋭い爪、掴む力が強い趾(あしゆび)、鉤型に曲がったくちばしを持つことが共通の特徴である。 一般的に生態系の頂点に位置する例が多いことから、強さ・速さ・権力・高貴さの象徴として、猛獣などとともに戦闘機やスポーツカー、シンボルマーク、特撮やアニメのヒーローのモチーフになることが多い。猛禽類 – Wikipedia
猛禽類は「強さ・速さ・権力・高貴さの象徴」となることもあるが、「困窮して弱った相手を食い物にする強欲な人物・組織」としても比喩的に使われる。
そして、「ハゲタカジャーナル」の「ハゲタカ」は「強さ・速さ・権力・高貴さの象徴」としては使用されていない。後者の意味に類似した「強欲、粗雑、邪悪、悪徳、不正、低品質」と同じ意味に使われている。
★なぜ蛇が気持ち悪い
さて、「蛇が気持ち悪い」と思う人は多いだろう。
どうしてそう思うのか?
人々がそのように扱ってきたからで、そのために、蛇は不当に嫌われ、蛇蝎(だかつ)の如く迫害され、いじめられ、殺される(縁起が良いとする風習もあるが、ここでは、迫害されている例で進める)。
北九州の「水環境館」は、魚やカメ、ヘビ、カエルなど約70種類の生物を展示している。その飼育係の福田海輝さんの話。
ヘビの展示を見て「気持ち悪い」と口にする人は多い。
飼育係の福田海輝さんは、その言葉を聞くたびに「ヘビに申し訳ないな」と思ってきた。(2021年11月17日の若松真平記者の記事:「ヘビは気持ち悪い」子どもの前で言わないで 飼育係が考える価値観:朝日新聞デジタル)
生物は遺伝子に組み込まれた姿・形と行動で環境に適応しながら、純粋に、食べ、戦い、生きている。蛇を含めすべての生き物は、その生き物にとっての自然の摂理に純粋に従い、食べ、戦い、生きている。単に生きている、自然の生き方である。
人間にとって極めて害となる病原菌などは、人間社会の「悪い生き物」と扱われ、毛嫌いされ、根絶される方向である。これは致し方ない。
しかし、人間にとって大きな害にならないのに、不当に差別され、人類のせいで絶滅の危機を迎える生き物もたくさんいる。 → 「人類のせいで「動植物100万種が絶滅危機」=国連主催会合」(2019年5月7日記事)。
どうして、集団で、意図的にイジメるのだ。
「ハゲタカ」は、人間社会に悪いことをしたか?
おかしくないか?
★「ハゲタカ」は動物虐待語
英語の「Predatory Journal」を日本ではハゲタカジャーナル(ハゲタカ・ジャーナル)と呼ぶ人が多いが、これは間違った訳であるばかりか、理不尽に嫌悪感を植え付ける用語、差別語、動物虐待語、ヘイトスピーチである。
英語の「Predatory」の日本語訳は「predatoryの意味・使い方・読み方|英辞郎 on the WEB」によれば、以下である。
〔動物が〕捕食性の、肉食の
略奪する、強奪する、搾取する
略奪[搾取]で生計を立てる
英語の「Predatory」に「ハゲタカ」という意味は全くない。
それなのに、必要もないのに、わざわざ「ハゲタカ」を引き合いに出して、「ハゲタカ」を「強欲、粗雑、邪悪、悪徳、不正、低品質」と同義語に使い、理不尽に嫌悪感を植え付ける。
英語の「Predatory Journal」の日本語に「強欲、粗雑、邪悪、悪徳、不正、低品質」を込めた「ハゲタカ」を使用する意味は全くない。
決して「ハゲタカジャーナル」と呼んではいけない。
他の呼び方がある。例えば、捕食学術誌(捕食ジャーナル)と呼べばいい。
★侮蔑語
法務省のサイトにヘイトスピーチの説明がある。 → 法務省:ヘイトスピーチ、許さない。
3つのうちの3番目に以下がある。
(3)特定の国や地域の出身である人を、著しく見下すような内容のもの
(特定の国の出身者を、差別的な意味合いで昆虫や動物に例えるものなど)
「法務省:ヘイトスピーチ」に当てはめると、ハゲタカジャーナルは、「人を、著しく見下す」の「人」ではなく「ハゲタカ」・「鳥の猛禽類」を著しく見下すケースである。
捕食学術誌をハゲタカジャーナルと呼ぶのは、特定の学術誌を差別的な意味で「ハゲタカ」と呼んでいる。この場合、ハゲタカを「強欲、粗雑、邪悪、悪徳、不正、低品質」と同義に見下している。
例えとして「ハゲタカ」を引き合いに出す意味はないのに、わざわざ引き合いに出して侮蔑している。この感覚は異常である。
日本人のほとんどは動物を傷つけたくないと思っているだろう。久保田さゆりの論文を借りれば以下のようだ。
われわれの多くは、理由なく動物を傷つけてはならないという信念を共有している。たとえば、のら猫や学校の飼育小屋のうさぎやにわとりなどを殺すことや、自分のペットを傷つけたり飢えさせたりすることは、動物への虐待であり、道徳的な非難に値する行為であるとみなされることは、ほとんど疑いえないと言えるだろう。(久保田さゆり、千葉大学人文社会科学研究 (28) 162-177 2014年3月:「動物倫理と広く共有された道徳的信念」)
理不尽に嫌悪感を植え付けていると自覚しないで、つまり無意識的に、ハゲタカジャーナルと呼んでいる人も多いかもしれない。
しかし、自覚していなくても、深層レベルでは意識的な偏見で、嫌悪感を植え付けている。これをマイクロアグレッションと言う。いけません。
マイクロアグレッションとは、思い込みや偏見によって無自覚に相手を傷つける言動。(無自覚の差別行為「マイクロアグレッション」とは?専門家に聞いた | 日本財団ジャーナル)
★「ハゲタカ」呼称の起源
2012年、英語の「Predatory Journal」は、米国のコロラド大学デンバー校・オーラリア図書館の準教授で司書のジェフリー・ビール(Jeffrey Beall)が従来の「まともな」学術誌と異なる「強欲、粗雑、邪悪、悪徳、不正、低品質」学術誌を区別するために、「Predatory Journal」と命名した学術誌群である。
2012年1月、私は、「学術オープンアクセス(Scholarly Open Access)」という新しいブログを立ち上げ、捕食出版社と捕食学術誌をリストし、学術的なオープンアクセス出版に関する批判的なコメントを書き始めた。(7-20.ビールのライフワーク:捕食出版社との闘い | 白楽の研究者倫理)
当時、「Predatory Journal」の用語に違和感を抱いた英語圏の人々はいた。
ただ、ビールの功績が大きかったことと、新しい概念なので新しい用語が必要だった。また、別の用語が定着しなかったので、英語圏では「Predatory Journal」という用語が定着した。
では、「ハゲタカ」ジャーナルという日本語訳は、誰が、いつ、どういう意図で使い始めたのか?
以下の「2015年の栗山正光の情報管理」論文を読んで、白楽は、今まで、栗山正光(首都大学東京・教授)が命名したと思っていた。
ここで問題となるのが,APC目当てにあこぎな商売をする悪徳OA出版社の存在である。欧米ではそうした出版社を“predatory publishers”と呼んで警戒している。predatoryとは「捕食性の」とか,「略奪的な」といった意味だが,筆者は「ハゲタカ」と訳すとぴったりではないかと思う。以下,この訳語を用いることとする。(栗山正光:情報管理、2015 年 58 巻 2 号 p. 92-99 「ハゲタカオープンアクセス出版社への警戒」)
この論文では、どういう意図で「ハゲタカ」と訳したのか、曖昧だが、「強欲、粗雑、邪悪、悪徳、不正、低品質」という意味を込めていると受け取れる。
今回、インターネットで「ハゲタカジャーナル」を検索した。
すると、国立国会図書館が、「図書館界、図書館情報学に関する最新の情報をお知らせする」(同サイト)カレントアウェアネス・ポータルが2014年に既に使用していた。
- 2014年11月11日:ハゲタカ出版の雑誌に論文を発表しているのはどんな人?(文献紹介) | カレントアウェアネス・ポータル
- 2014年09月30日:ハゲタカ出版がインドの魚類学に与える影響(文献紹介) | カレントアウェアネス・ポータル
さらに、探ると、2013年に以下の記事があった。
2013年5月7日の内科医師の「dr7」氏の記事:ハゲタカジャーナル(偽学術誌)の氾濫: OMICSに気をつけろ! : 負け犬主義。。
そして、Nature 2013年3月28日号の記事「オープンアクセスの早期実現のために | 科学出版の未来 | Nature 特別翻訳記事 | Nature Portfolio」(翻訳:三枝小夜子)に以下の文章があった。
著者が支払う論文掲載料を目当てに質の低い学術誌を発行する「ハゲタカ出版社」の存在は、明らかに問題である(Nature 2013年3月28日号、433ページ参照)。
インターネットでは2013年3月28日以前に「ハゲタカジャーナル」はヒットしなかった。
それで、2013年に翻訳家の三枝小夜子(ミエダ・サヨコ)が「ハゲタカ」を最初に使用したと思われる。
ただし、「2015年の栗山正光の情報管理」論文以外は、どの記事も、なぜ「Predatory」を「ハゲタカ」に訳したのかの説明はない。
★悪いのは投稿する研究者
この白楽記事は、英語の「Predatory Journal」を「ハゲタカジャーナル(ハゲタカ・ジャーナル)」と呼ばないよう喚起する記事である。
ただ、英語の「Predatory Journal」そのものの呼称にも問題がある。
3節で述べたように、英語の「Predatory」の日本語訳は「predatoryの意味・使い方・読み方|英辞郎 on the WEB」によれば、以下である。
〔動物が〕捕食性の、肉食の
略奪する、強奪する、搾取する
略奪[搾取]で生計を立てる
「7-24.捕食業者と研究者はグル | 白楽の研究者倫理」に書いたが、「捕食学術業者は研究者をダマし餌食にしている。だから捕食と命名された。という構図である」。
初期の頃はそうだった面がある。
しかし、その後、現在まで、この構図ではない。
捕食学術誌に投稿する研究者は、お金を出せば、質の悪い論文でも出版してくれる査読が超甘い学術誌であることをある程度(または、かなり)承知している。
論文掲載料は研究費(税金)から払えるので、自分の懐は痛まない。税金を使って、とにかく論文を直ぐに出版してくれる有難い学術誌だということをわかって投稿しているのである。
だから、研究者が「捕食された」「略奪された」と、あたかも被害者みたいな構図として描くのはおかしい。
「捕食学術業者は研究者をダマし餌食にしている」ことはない。研究者は事情を知っていて、ある意味、捕食学術業者と研究者はグル・共犯なのである。
だから、英語の「Predatory Journal」そのものの呼称にも問題がある。
★「非倫理的な」学術誌
本記事「白楽の卓見・浅見22」は、「ハゲタカ」ジャーナルの「ハゲタカ」という呼称は、鳥の「ハゲタカ」に対する差別語、動物虐待語、ヘイトスピーチなので使わないようにという論旨である。
しかし、英国のノッティンガム大学のグラハム・ケンダル名誉教授(Graham Kendal)は、そもそも、「捕食出版(predatory publishing)」とその関連語の分類・使用を止めるべきだとしている。 → 7-159 「捕食」出版(ハゲタカ・ジャーナル)という分類を止めよ
大きな理由は、「捕食」学術誌(学術出版社)を一義的に定義できないからだ。
白楽も、ケンダル名誉教授の主張に強く同意する。
しかも、前項で指摘したように、「捕食」学術業者は研究者をダマし餌食にしているのではなく、研究者は捕食学術誌(学術出版社)と知っていて、論文を出版している。
だから、研究者が「捕食された」「略奪された」という「predatory」という用語は、そもそも、不適切である。
それで、ここではケンダル名誉教授が使った「非倫理的な」学術誌と呼ぼう。ただ、「非倫理的な」学術誌は、「非倫理的な学術誌」という固有名詞ではなく、「非倫理的な」と形容した学術誌だ。「粗悪な」学術誌でも良い。
どうしてかというと、「非倫理的な」学術誌(学術出版社)の特性は多面的で、「強欲、粗雑、邪悪、悪徳、不正、低品質」だけではない。
特性のいくつかを以下に示したが、全部ではない。
- 掲載論文の内容が低質
- 編集長・編集委員の虚偽表示、本人の了解なく表示
- 編集長・編集委員の学術的質が悪い
- インパクトファクター虚偽表示
- インパクトファクターが同じ学術分野の中でかなり低い
- スパムメールの送信
- 論文受理まで論文掲載料を隠す
- 査読が実質上ないか低質
- 論文採択率が高い
- 論文受理の決定が異常に早い
- 論文内容の研究分野がバラバラ
- 論文工場、論文売買、引用工場、査読工場絡み
- 「Web of Science」「スコーパス(Scopus)」「PubMed(パブメド)」などに索引付けされていない
- 他の学術誌からのコンテンツの盗用
- ネカト論文が多い
- 撤回論文数が多い
- 学術誌や編集長などに電子メールで連絡できない
「非倫理的な」学術誌(学術出版社)の特性を多面的としたが、学術誌を人間になぞらえた方がわかりやすいだろう。
私たちは、人々を「良い人」と「悪い人」と分類することがある。その「良い人」「悪い人」の特性が多面的なのと同じだ。
私にとって「良い人」でもあなたにとって「悪い人」かもしれない。「良い」「悪い」は多義的であって、一義的ではない。
学術誌も同じで、「良い」「悪い」は多義的であって、一義的ではなく、その特性の受け止め方は人によって異なる。
それで、「捕食」学術誌(学術出版社)という分類はやめて、「とても良い」「良い」「普通の」「悪い」「とても悪い」学術誌(学術出版社)などの多義的な評価ならOKだろう。
グループ化するなら「非倫理的な学術誌(学術出版社)」というあたりはどうだろう。
●7.【白楽の手紙】
「ハゲタカ」ジャーナルと呼ばないように、以下の関係各組織に本記事を伝えた(伝える予定)。この白楽ブログの読者に中に関係者がおられれば、関係機関に伝え改善をお願いしたい。
以下の薄水色部分は各サイトの文章を流用した。
- 国立国会図書館のカレントアウェアネス・ポータル → メールを送信した
https://current.ndl.go.jp/about
図書館業務の評価・改善のための情報源として、図書館や図書館情報学に関する調査・研究のための情報源として、あるいは、国内外の図書館やその周辺でいま起こっていることが手軽にわかる情報源として、ご活用ください。2024年11月12日、返事がきた ↓
- 一般社団法人 日本鳥学会 → メールを送信した
https://ornithology.jp/aboutOSJ.html
日本鳥学会は、鳥学の発展および鳥類保護への学術的貢献を目的とし、次のような活動を行っています。 - アニマルライツセンター → メールを送信した
https://arcj.org/faq/animal-rights-2/
種差別(スピーシーシズム)とは? -動物たちには、人間から虐待や搾取を受けずに、自然のままに生活をする権利があります。基本的人権が尊重されるのと同様に、動物にも動物らしく生きる権利が認められるべきであり、種によってその権利は左右されるべきではありません。 - 動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA) → 日本語サイトがないので送信せず
https://www.petaasia.com/about/
PETA Asia is dedicated to establishing and protecting the rights of all animals. (PETAアジアは、すべての動物の権利を確立し、保護することに専念しています。) - PEACE → 送信サイトから送信できなかった
https://animals-peace.net/aboutus
動物たちにも、人間に虐待されず、搾取されず、本来の生き方で暮らしていく権利があります。 - 日本自然保護協会 → 送信せず
https://www.nacsj.or.jp/
生態系と生物の多様性を守り、そして持続的な社会を目指しています。 - WWFジャパン → 送信せず
https://www.wwf.or.jp/
人と自然が調和して生きられる未来をめざして、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行なっています。
●8.【白楽の感想】
《1》おかしな日本のリーダーたち
「ハゲタカ」ジャーナルについては、白楽は最初に聞いた時から大きな違和感を抱いた、しかし、ほぼ10年、学者・大学・メディアが受け入れてきて、誰ひとり異議を唱えない。
研究「倫理」の専門家や関係者が、そして、日本の主要新聞、多くの大学図書館員が、平然と「ハゲタカ」ジャーナルと呼んできたし、今も呼んでいる。
「倫理」の専門家や関係者なのに、「非倫理的」な言動をしていることに、白楽はかなり戸惑ってきた。
6年前の2018年10月に毎日新聞の記者に質問(抗議?)したこともあるが、改善されなかった。
「Predatory Journal」を「ハゲタカジャーナル」と呼ぶな! 捕食学術誌(捕食ジャーナル)と呼ぶべきだと、白楽は、数年前から文章にしている。
日本の倫理や言論をリードする人たちが、おかしい。
「ハゲタカジャーナル」の呼称問題は研究者倫理(ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ)そのものの問題ではないので、白楽ブログでは正面から取り上げてこなかった。
数年前に記事原案を書いていたが、公表するのが、遅くなってしまった。
理由の一部は、「ハゲタカジャーナル」の呼称は、鳥の「ハゲタカ」に対する差別語、動物虐待語、ヘイトスピーチである。と、多くの人が、自発的に気付くと思っていたからである。
今回、数年前の記事を修正し、公表した。
なお、白楽が関係した著書・新聞記事・白楽ブログ記事に「ハゲタカジャーナル」の用語を使用したケースはある。これは、世間に伝わりやすいように「ハゲタカジャーナル」と付記しただけで、困ったなあと思いつつ、仕方なしである。
《2》植物学名、動物学名
生物(いきもの)に非倫理的な名称の使用を禁止する動きは、高まっている。
変えない(変えるべきではない)ことでは最強と思える生物(いきもの)の学名まで、非倫理的な名称の使用を止める動きがある。
例えば、植物では、学名から人種差別的・中傷的な用語を削除する方向である。
2024年7月、スペインのマドリッドで開催した第20回国際植物会議で、556人の植物学者の間で行われた投票で、63%の会員が非倫理的な学名の変更に賛成した。 → 2024年7月18日の「Science」記事:In a first, botanists vote to remove offensive plant names from hundreds of species | Science | AAAS
一方、動物の学名に関して、2023年の論文で、非倫理的な学名を変更しないとした。 → 2023年1月20日論文:Renaming taxa on ethical grounds threatens nomenclatural stability and scientific communication | Zoological Journal of the Linnean Society | Oxford Academic
国際動物命名委員会(International Commission on Zoological Nomenclature)は、非倫理的な学名の問題があることを承知しているが、学名の安定性の重要性を優先した、そうだ。
といっても、10年後、20年後、動物の学名も変えるのではないだろうか。
《3》悪いのは研究者
「捕食学術業者は研究者をダマし餌食にしている」ことはない。研究者は事情を知っていて、ある意味、捕食学術業者と研究者はグル・共犯なのである。
つまり、研究者と捕食学術業者は「需要と供給」の関係なので、どっちが悪いかといえば、需要側の研究者である。研究者が原稿を投稿しなければ、受け皿の供給は不要で、捕食学術誌はなくなる。
だから、1つの対策は研究者が投稿しないようにすればよい。
ただ、現実として、昔からジャンク学術誌はそれなりに存在していたし、読まれない論文は多数出版されていた。
日本経済新聞の2024年5月5日の記事に「日本の論文「ほぼ引用なし」が半数、研究者評価の改革を」(白楽は無料部分しか読んでいない)とあるが、論文の半数が引用されないのは、昔からだ。
日本の研究力低迷が指摘されて久しいが、ほとんど引用されない論文が日本の論文の約半分を占めるまでに増えたことはあまり知られていない。
論文は引用数が多いと質が高いと考えられている。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が2023年に公表した「科学研究のベンチマーキング」によると、20年の日本の論文のうち被引用数が0〜3回のも
では、引用されない論文の出版を禁止すれば良いのだろうか?
極端なことを言うと、3年以内に引用されないと、1報あたり50万円の罰金を科すなどすれば、引用されない論文の出版は激減するだろう。
ただ、臨床医学系の知人が、臨床医にとって、「引用される・されない」とは別の次元で、学術研究をし続ける姿勢を維持する力として、論文を出版し続ける意味は大きいと言っていた。
引用されない論文の存在意義やあり方を、まじめに検討する必要があると思う。
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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる
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