心理学:ダン・アリエリー(Dan Ariely)(米)

2021年11月18日掲載 

ワンポイント:アリエリーはイスラエルで育ち、米国のデューク大学(Duke University)・教授になった。専門は心理学(行動経済学)で、この分野では超有名で日本でも大人気である。2021年8月(54歳)、アリエリーの「2012年9月のProc Natl Acad Sci U S A」論文のデータが不正だと、ウェブサイトの「Data Colada」が指摘した。1か月後の2021年9月、論文は撤回された。アリエリーは不正を否定している。デューク大学がネカト調査しているかどうか不明。従って、アリエリーは処分されていない。ただ、アリエリーには他の論文でも問題が指摘されている。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。
ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
ーーーーーーー

●1.【概略】

ダン・アリエリー(Dan Ariely、ORCID iD:?、写真出典)は、イスラエルで育ち、米国のデューク大学(Duke University)・教授になった。専門は心理学(行動経済学)で、この分野では世界的に有名な学者である。日本語訳の著書が10冊もあり、日本でも大人気である。

日本語に翻訳された著書は、『「幸せ」をつかむ戦略』(2020年)、『予想どおりに不合理』(2013年)など10冊もある(本の表紙出典はアマゾン)。

2021年8月17日(54歳)、ウリ・サイモンソン(Uri Simonsohn)、レイフ・ネルソン(Leif Nelson)、ジョー・シモンズ(Joe Simmons)の3人の教授は、複数の匿名者と共に、アリエリーの「2012年9月のProc Natl Acad Sci U S A」論文のデータが不正だとウェブサイトの「Data Colada」で指摘した。

2021年9月21日(54歳)、論文は撤回された。

2021年11月17日(54歳)現在、パブピアはアリエリーが2000~2015年(33~48歳)の16年間に発表した21論文にコメントしている。

2021年11月17日(54歳)現在、デューク大学はネカト調査しているかどうか不明。従って、アリエリーは処分されていない。

デューク大学(Duke University)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:イスラエル
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ノースカロライナ大学チャペルヒル校とデューク大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1967年4月29日
  • 現在の年齢:54 歳
  • 分野:心理学
  • 不正論文発表:2000~2015年(33~48歳)の16年間の21論文
  • 発覚年:2021年(54歳)
  • 発覚時地位:デューク大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はウリ・サイモンソン(Uri Simonsohn)、レイフ・ネルソン(Leif Nelson)、ジョー・シモンズ(Joe Simmons)の3人の教授と複数の匿名者である。ウェブサイトの「Data Colada」で指摘した
  • ステップ2(メディア):ウェブサイトの「Data Colada」、「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」、「buzzfeed」、「forbes」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②デューク大学は調査しているかどうか不明
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。大学は調査しているかどうか不明
  • 大学の透明性:大学は調査しているかどうか不明(ー)。[大学以外が詳細をウェブ公表(⦿)]
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:1報撤回。1報懸念表明。全部で、2000~2015年(33~48歳)の16年間の21論文が疑念
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Ariely_CV

  • 1967年4月29日:ニューヨーク市で生まれる
  • 1991年6月(24歳):イスラエルのテルアビブ大学(Tel Aviv University)で学士号取得:心理学
  • 1994年8月(27歳):米国のノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina)で修士号取得:認知心理学
  • 1996年8月(29歳):同大学で研究博士号(PhD)を取得:認知心理学
  • 1998年8月(31歳):米国のデューク大学(Duke University)で研究博士号(PhD)を取得:経営学
  • 1998~2008年(31~41歳):マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)・スローン経営大学院・教授
  • 2008年(41歳):デューク大学(Duke University)・教授
  • 2012年(45歳):後で問題視される「2012年9月のProc Natl Acad Sci U S A」論文の出版
  • 2021年(54歳):不正研究が発覚
  • 2021年11月17日(54歳)現在:デューク大学・教授職を維持:2021年11月4日保温の Dan Ariely | Duke’s Fuqua School of Business

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
話が「とても」うまい。聴衆が時々爆笑している。以下のサイトをクリック。(英語。日本語の字幕付きJapanese translation by Yasushi Aoki. Reviewed by Misaki Sato.)13分15秒。
2019年6月の講演動画: Dan Ariely: How to change your behavior for the better | TED Talk

【動画2】
インタビュー形式の研究紹介動画:「Why You’ll Be In The Office More Than You Think: Dan Ariely – YouTube」(英語)8分20秒。
CNBCが2021/08/02に公開

●4.【日本語の解説】

★2021年8月21日:瀬川知己:「行動経済学論文のデータ捏造を暴いた記事の大意を和訳してお届けします」

出典 → ココ、(保存版) 

この記事では論文名「Signing at the beginning makes ethics salient and decreases dishonest self-reports in comparison to signing at the end」、学術誌名「Proc Natl Acad Sci U S A」「PNAS」、著者名「ダン・アリエリー(Dan Ariely)」という単語が全然出てこない。内容から推察して、アリエリー論文を解説しているので「日本語の解説」に引用した。しかし、論文のデータねつ造記事で、論文名・学術誌名・著者名を示さないのは不思議だ。

今回の論文では、2012年の論文で用いられた、「論文の執筆者の一人の監督のもと、アメリカ合衆国南東部の自動車保険会社によって実施された13,488名による実験」について、データの検証が行われている。

この実験では、自動車保険会社のポリシーが変わったとして、自分の車の走行距離を報告するように参加者へ求めた。その報告要旨には「私が報告した数字は正確なものであることを約束します」という宣誓文への署名が求められていた。宣誓文ならびに署名の位置は、参加者によってランダムに、誓約書の最初か最後に分けられていた。

実験結果によると、宣誓文ならびに署名が「誓約書の最初に割り振られていた参加者」は、「最後に割り振られていた参加者」よりも、2400マイル(+10.3%)多く、走行距離を報告していた(※注1)のだ。

一般的には、走行距離が多いほど事故リスクが高いと見積もられ、保険料は高くなるため、消費者には「走行距離を低く報告する」インセンティブが働く。つまり、「最初に宣誓させることで参加者をより正直にさせることができる」というのが、実験で証明されたわけだ。

以下略。

★2021年8月22日:本しゃぶり:「行動経済学の『ずる』は予想以上に不合理」

出典 → ココ、(保存版) 

テキスト以外に画像もあるので、画面をコピーして以下に貼り付けた。画面をクリックすると画面は大きくなります。2段階です。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★超有名な研究者

ダン・アリエリー(Dan Ariely)は父親が米国のコロンビア大学で経営学修士を学んでいた時に生れたので、ニューヨーク市で生まれた。3歳の時、両親がイスラエルに移住したのでイスラエルに移住し、イスラエルで育った。

イスラエルのテルアビブ大学(Tel Aviv University)で物理学と数学を専攻し、その後、心理学の専攻に変更し、心理学で学士号を取得した。

渡米し、米国のノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina)で研究博士号(PhD)を取得した(認知心理学)。

その頃には素晴らしい頭脳が開花していた。

マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)・スローン経営大学院・教授を経て、デューク大学(Duke University)・教授になった。

講演での話し方がとても上手である。論文で主張する内容もとても面白い。

話し方がとても上手なのは、逆に、話の盛り方が「うまい」というより、「うま過ぎる」と、白楽と感じた。つまり、ねつ造・改ざんと紙一重という印象を受けた。

ダン・アリエリー(Dan Ariely、写真出典)の顔の左側に髭があるが、右側には髭がない。ファッションではなく、右側は火傷を負って髭が生えないと講演の時に説明している。ホントかなあと、白楽は半分くらい信用していない。白楽はイヤナ性格ですね、ホント。

★2012年論文のデータねつ造疑念

アリエリーの「2012年9月のProc Natl Acad Sci U S A」論文を、2020年に更新した。

この更新時に、2012年の論文の元データを初めて公開・共有した。このデータ共有は、かつては珍しい行為だったが、研究データの透明性の向上が求められ、現在では、徐々に一般的になってきた。

そして、この公開された元データを分析した結果、驚くような不正が見つかったのである。 → 元データ

2021年8月17日(49歳?)、ウリ・サイモンソン(Uri Simonsohn)、レイフ・ネルソン(Leif Nelson)、ジョー・シモンズ(Joe Simmons)の3人の教授(写真出典)は複数の匿名者と共に、アリエリーの「2012年9月のProc Natl Acad Sci U S A」論文のデータが不正だとウェブサイトの「Data Colada」で指摘した。
 → [98] Evidence of Fraud in an Influential Field Experiment About Dishonesty – Data Colada

アリエリーの「2012年9月のProc Natl Acad Sci U S A」論文の書誌情報は以下である。

ねつ造データと指摘されたデータは、米国南東部の自動車保険会社がアリエリーの監督下で実施したフィールド実験だった。

ある種の心理学な実験をするためだが、13,488人の顧客に、所持している最大4台の車の現在の走行距離数を報告するように求めた。

論文にはその元データから得た図しか掲載されていなかったので「2012年9月のProc Natl Acad Sci U S A」論文ではわからなかった。

しかし、元データを図にすると以下のようだった。

つまり、13,488人の顧客の走行距離計数は0マイルから5万マイルまでほぼ均等に分布していた。そして、5万マイルを超えた人は1人もいなかった。

どう見ても、「あり得ない」非現実的なデータである。

通常なら、以下のような分布になるのが普通だ。

この異常な元データを示され、

アリエリーは、元データは実地実験を実施した保険会社から提供されたものであり、自身と自身の研究グループの共著者らはデータ作成に関与していない、と述べた。(ダン・アリエリー – Wikipedia

アリエリーは「データが不正であることがわかっていれば、投稿することはなかった」とも弁解している。

しかし、アリエリーは、データファイルの出所について、機密保持の契約をしているという理由で、提携した保険会社名を公表しなかった。

そして、保険会社の連絡先はすべて消失していて、誰がどのようにデータを送ってくれたかのか覚えていない、と矛盾するようなことを述べた。

それで、「BuzzFeed News」社の記者が調べ、アリエリーが提携した保険会社は、コネチカット州ハートフォードに本拠を置く自動車保険会社であるハートフォード社(Hartford)だと特定した。

記者がハートフォード社の社員を取材した。

社員2人は報復を恐れて匿名を要求したが、アリエリーがハートフォード社を研究パートナーと呼んでいたと述べた。

そして、ハートフォード社のスザンヌ・バーリン広報担当者(Suzanne Barlyn)は、「過去の記録を調べたら、アリエリー博士と小さな共同研究を行なった記録が出てきました。ただ、作成したと思われるデータ、成果、結果は見つけることはできませんでした」と「BuzzFeed News」社 に伝えてきた。

2021年11月17日(54歳)現在、しかし、デューク大学はネカト調査しているかどうか不明。従って、アリエリーは処分されていない。

★2008年論文の再現性に疑念

2021年にデータねつ造が指摘される前、アリエリーの以下の「2008年のJournal of Marketing Research」論文は、2018年に、結果を再現できないと指摘されていた。

この結果を再現できない論文の概要は以下のようだ。

人間は自分自身を正直だと考えるのが好きである。しかし、正直じゃない方が得(トク)することはよくある。人はこの時、自己の内面をどう調整するのか? 研究の結果、自分は誠実だったと自分を言いくるめられる程度の不正直な行為をして、人は利益を得る。つまり、自己の精神の健全性は損なわない程度の不正直な行為で、利益を得る。この2つのメカニズム(正直でありたいが、すこし正直じゃないことで得をする)が自己概念維持理論( theory of self-concept maintenance)を可能にしている。ここで起こっていることは、道徳基準を無視する柔軟的許容である。

2018年9月1日、以下の多数の研究者が上記論文の結果を再現できないと、「Advances in Methods and Practices in Psychological Science」論文として発表した。

多数の研究者、つまり、多数の著者名をズラズラ並べてみると、

Bruno Verschuere, Ewout H. Meijer, Ariane Jim, Katherine Hoogesteyn, Robin Orthey, Randy J. McCarthy, John J. Skowronski, Oguz A. Acar, Balazs Aczel, Bence E. Bakos, Fernando Barbosa, Ernest Baskin, Laurent Bègue, Gershon Ben-Shakhar, Angie R. Birt, Lisa Blatz, Steve D. Charman, Aline Claesen, Samuel L. Clay, Sean P. Coary, Jan Crusius, Jacqueline R. Evans, Noa Feldman, Fernando Ferreira-Santos, Matthias Gamer, Sara Gomes, Marta González-Iraizoz, Felix Holzmeister, Juergen Huber, Andrea Isoni, Ryan K. Jessup, Michael Kirchler, Nathalie klein Selle, Lina Koppel, Marton Kovacs, Tei Laine, Frank Lentz, David D. Loschelder, Elliot A. Ludvig, Monty L. Lynn, Scott D. Martin, Neil M. McLatchie, Mario Mechtel, Galit Nahari, Asil Ali Özdoğru, Rita Pasion, Charlotte R. Pennington, Arne Roets, Nir Rozmann, Irene Scopelliti, Eli Spiegelman, Kristina Suchotzki, Angela Sutan, Peter Szecsi, Gustav Tinghög, Jean-Christian Tisserand, Ulrich S. Tran, Alain Van Hiel, Wolf Vanpaemel, Daniel Västfjäll, Thomas Verliefde, Kévin Vezirian, Martin Voracek, Lara Warmelink, Katherine Wick, Bradford J. Wiggins, Keith Wylie, Ezgi Yıldız。

と、数十人になった。

2021年11月17日現在、しかし、「2008年のJournal of Marketing Research」論文は撤回されていない。懸念表明もついていない。

★2004年論文の再現性に疑念

2021年にデータねつ造が指摘される前、アリエリーにはさらにもう1報、問題が指摘された論文がある。

アリエリーの以下の「2004年のPsychol Sci.」論文が2021年に、問題点が指摘されていた。 → 2021年7月29日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Prominent behavioral scientist’s paper earns an expression of concern – Retraction Watch

当時、アリエリーはマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)・スローン経営大学院・教授だった。

心理学者である香港大学(University of Hong Kong)のギラッド・フェルドマン助教授(Gilad Feldman、写真出典)は、上記論文を心理学論文の統計的間違いをチェックするソフト「statcheck(Statcheck – Wikipedia)」にかけた。

すると、統計処理が異常だと出てきた。

フェルドマン助教授は、この異常を指摘する論文を原稿としてまとめ、学術誌「Psychological Science」に投稿した。しかし、「2004年のPsychol Sci.」論文は「登録報告書(Registered Reports)」ではなかったため、この論文原稿は却下された。

しかし、学術誌「Psychological Science」編集長のパトリシア・バウアー(Patricia Bauer)は、フェルドマン助教授が指摘した問題の重要性を理解し、結局、2021年7月23日、アリエリーの「2004年のPsychol Sci.」に懸念表明を付け、そのことをフェルドマン助教授に伝えた。

これらのやり取りを、フェルドマン助教授はウェブサイトにアップしている。 → Clarifications regarding Heyman and Ariely (2004) replications and extensions and Expression of Concern by Psychological Science | Gilad Feld保存版

アリエリーは、「撤回監視(Retraction Watch)」の問い合わせに、フェルドマン助教授の努力に「喜んでいる」と述べた。

また、「ソフトウェアで論文の「奇妙な」統計分析に疑問符を付けるのは、学問研究にとって良いことです。話は別だが、何よりも、私は自分が行なった統計分析を記録しておけばよかったと反省しています。これが私自身の最大の欠点なのです。私は自分が研究したことの記録を十分に保管していなかったのです」と述べた。

【ねつ造・改ざんの具体例】

既に述べたので省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2021年11月17日現在、パブメド(PubMed)で、ダン・アリエリー(Dan Ariely)の論文を「Dan Ariely [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、1995年の1報を含め2002~2021年の20年間の82論文がヒットした。

2021年11月17日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると本記事で問題にした「2012年9月のProc Natl Acad Sci U S A」論文・1論文が2021年9月21日に撤回されていた。

★撤回監視データベース

2021年11月17日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでダン・アリエリー(Dan Ariely)を「Dan Ariely」で検索すると、 0論文が訂正、1論文が懸念表明、1論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2021年11月17日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ダン・アリエリー(Dan Ariely)の論文のコメントを「Dan Ariely」で検索すると、2000~2015年(33~48歳)に発表した21論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》いい加減な弁解 

ダン・アリエリー(Dan Ariely)は、自動車運転のマイル数のデータは保険会社から提供されたもので自分が出したものではないと、不正を否定している。

いかにも、幼稚な弁解である。

誰が得たデータであろうと、そのデータを使う段階で、どう見てもヘンだと気がつくレベルの異常なデータである。

その異常なデータを誰が出したかは問題だけど、それを使って分析し、論文として発表する研究者も「かなり」問題である。つまり、弁解が弁解として成り立っていない。

『ずる』(2014年、英語版2012年)の著者なんだから、もっと、うまく「ずる」できたんじゃない? (本の表紙出典:楽天市場

《2》心理学は大学が必要 

昨日(2021年11月17日)、メルボルン大学・心理学のシミーン・ヴァジーア教授(Simine Vazire)の「2021年2月のiai news」論文を紹介した。 → 7-83 研究の進め方と論文出版の大改革

ヴァジーア教授の指摘は次のようで、まことに鋭いと感動したが、その論文は、アリエリー事件が発覚する半年前に出版した論文である。先見性も素晴らしい。

学術誌は名声・評判を求めて競争している。研究論文の質ではなく、最も注目を集められるかどうか、を追求している。

学術誌は派手で、影響力の大きい、大胆な発見を報告する論文を出版したい。

それらの発見が信頼できるかどうか、研究過程が科学的に厳密だったかどうかなどは問題視しない。

ダン・アリエリー(Dan Ariely)はまさに、「派手で、影響力の大きい、大胆な発見」をする研究者である。従って、学術界では大もてである。

でも、「それらの発見が信頼できるかどうか」といえば、本記事で示したように、信頼できないのだ。

どうする心理学?

心理学界は大もてな学者を排除できない? 

デューク大学はアリエリーを解雇できない?

Yael Zur, for Tel Aviv University Alumni Organization, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ーーーーーーー
日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー

●9.【主要情報源】

① ウィキペディア日本語版:ダン・アリエリー – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Dan Ariely – Wikipedia
③ 2021年7月29日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Prominent behavioral scientist’s paper earns an expression of concern – Retraction Watch
④ 2021年8月25日更新のステファニー・リー(Stephanie M. Lee)記者の「BuzzFeed」記事:Dan Ariely Retracts Honesty Study Based On Fake Data
⑤ 2021年8月31日のクリスチャン・ミラー(Christian B. Miller)記者の「forbes」記事:An Influential Study Of Dishonesty Was Dishonest
⑥ 2021年9月9日のデイヴィッド・コマーフォード(David Comerford)記者の「conversation」記事:Exposure of faked dishonesty study makes me proud to be a behavioural scientist
⑦ 2021年9月14日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Highly criticized paper on dishonesty retracted – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

注意:お名前は記載されたまま表示されます。誹謗中傷的なコメントは削除します

Submit your review
1
2
3
4
5
Submit
     
Cancel

Create your own review

白楽の研究者倫理
Average rating:  
 0 reviews
Subscribe
更新通知を受け取る »
guest
0 コメント
Inline Feedbacks
View all comments