2021年6月15日掲載
ワンポイント:2014年4月25日(40歳)、研究公正局は、マウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)・ポスドクだったチェンの4件の研究費申請書、4報の発表論文、1報の投稿原稿にねつ造・改ざんがあったと発表した。2014年4月11日から3年間の締め出し処分を科した。2005-2008年(31-34歳)の4年間の4論文が2010年(36歳)に撤回された。なお、チェンは2019年に米国の企業秘密の窃盗で逮捕され、2021年(47歳)、夫のユー・ジョウ(Yu Zhou)とともに、2年6か月の刑務所刑が科され、現在服役中である。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
リー・チェン(Li Chen、ORCID iD:?、写真出典)は、中国出身(推定)で、米国のマウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)・ポスドクになった。専門は遺伝子治療学である。
リー・チェンは、同じ研究室のポスドクで2016年に研究公正局からクロと判定されたジーユ・リー(Zhiyu Li)の記事でも登場する。 → ジーユ・リー(Zhiyu Li)(米) | 白楽の研究者倫理
ネカト発覚の経緯は不明であるが、2008年に投稿した原稿中のネカトが指摘されているので、同じ研究室の上司または同僚と思われるが、特定できていない。発覚時期は、2008年(34歳)と推定される。
2010年9月17日(35歳)、マウントサイナイ医科大学はネカト調査を終え、クロと判定し、研究公正局に報告した。
2014年4月25日(40歳)、発覚から6年後(遅いですね)、研究公正局は、マウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)・ポスドクだったチェンの4件の研究費申請書、4報の発表論文、1報の投稿原稿、の画像群にねつ造・改ざんがあったと発表した。
2014年4月11日(40歳)から3年間の締め出し処分を科した。3年間の締め出し処分は通常の処分である。
それから5年後の2019年、リー・チェン(Li Chen)の名前が事件簿に再び登場する。
状況証拠しかないが、このリー・チェン(Li Chen)は2014年に研究公正局がクロとしたリー・チェン(Li Chen)と同一人物と想定して本記事を進める。
リー・チェン(Li Chen)は、勤めていた米国の全国小児病院研究所(Nationwide Children’s Hospital’s Research Institute)の「エクソソーム分離キット(exosome isolation kits)」のノウハウを盗んで、中国に設立した自分のバイオ会社から売っていた。
2019年7月(45歳)、夫のユー・ジョウ(Yu Zhou)とともに、米国カリフォルニア州で逮捕された。
2021年2月(47歳)、裁判所はリー・チェン(Li Chen)の刑期を2年6か月とした。2021年4月20日(48歳)、夫のユー・ジョウ(Yu Zhou、51歳)の刑期を2年9か月とした。
また、彼ら夫婦は約145万ドル(約1億4500万円)の罰金、Avalon GloboCare Corp.の普通株50万株、GenExosome Technologies Inc.の普通株400株が没収された。さらに、260万ドル(約2億6000万円)の賠償金の支払いを命じられた。
マウントサイナイ医科大学。”SinaiMed” by Homieg340 – Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Commons – 写真出典
- 国:米国
- 成長国:中国(推定)
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:中国(推定)のxx大学
- 男女:女性
- 生年月日:仮に1974年1月1日生まれとする。2020年8月4日の「AllOnGeorgia」記事で46歳とあったので
- 現在の年齢:50 歳
- 分野:遺伝子治療学
- 不正論文発表:2005-2008年(31-34歳)の4年間
- 発覚年:2008年(34歳)
- 発覚時地位:マウントサイナイ医科大学・ポスドク
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「Scientist」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①マウントサイナイ医科大学・調査委員会。②研究公正局。③2回目の事件は裁判所
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- 不正:ねつ造・改ざん。2回目の事件は企業秘密の窃盗
- 不正論文数:研究公正局は4件の研究費申請書、4報の発表論文、1報の投稿原稿の画像をねつ造・改ざん。2021年6月14日現在、2005~2008年の4論文が撤回されている
- 時期:研究キャリアの初期
- 職:事件後に移籍し研究職を続けた(◒)。2回目の事件では研究職を続けられなかった(Ⅹ)
- 処分: NIHから 3年間の締め出し処分。2回目の事件では2年6か月の刑務所刑と高額賠償金
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
ほとんど不明。主な出典:Li Chen | LinkedIn(2021年6月14日現在、削除されている)
- 生年月日:仮に1974年1月1日生まれとする。2020年8月4日の「AllOnGeorgia」記事で46歳とあったので
- 19xx年(xx歳):中国(推定)のxx大学で学士号を取得
- 19xx年(xx歳):xx大学で研究博士号(PhD)を取得
- 2004? – 2008年(30? – 34歳):米国のマウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)・ポスドク。2005 年にマウントサイナイ医科大学所属の論文出版があるので、1年前の2004年には在籍していただろう
- 2008年(34歳):ネカトが発覚し、同大学・解雇
- 2008年– 2018年(34 – 44歳):米国の全国小児病院研究所(Nationwide Children’s Hospital’s Research Institute)・研究員
- 2010年9月17日(36歳):マウントサイナイ医科大学はネカト調査を終え、クロと判定
- 2014年4月25日(40歳):研究公正局がネカトと発表
- 2019年7月(45歳):企業秘密の窃盗罪で、カリフォルニア州で逮捕
- 2021年2月(47歳):米国の裁判所で 2年6か月の刑務所刑と高額賠償金
- 2021年6月14日(47歳)現在:米国の刑務所で服役中(推定)
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究人生
リー・チェン(Li Chen)の経歴は不明である。
多分、中国で生まれ育ち、渡米したと思う。
米国のマウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)・ポスドクになった。
ボスは、サヴィオ・ウー教授(Savio L.C. Woo、写真出典)だった。
ネカト発覚の経緯は不明であるが、2008年に投稿した原稿のネカトが指摘されているので、第一次追及者は同じ研究室の上司または同僚と思われるが、特定できなかった。発覚時期を2008年(34歳)と推定した。
★ジーユ・リー事件
リー・チェン(Li Chen)の事件は、同じサヴィオ・ウー教授の研究室のポスドクで2016年に研究公正局からクロと判定されたジーユ・リー(Zhiyu Li)の記事でも登場する。 → ジーユ・リー(Zhiyu Li)(米) | 白楽の研究者倫理
―――以下はそこから流用(一部修正)。
2009年(推定)、米国・マウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)のサヴィオ・ウー教授(Savio L.C. Woo、写真出典)が自分の研究室の論文(論文原稿?)に異常を感じ、マウントサイナイ医科大学に調査を申し出たのが発端である。
2010年9月15日、サヴィオ・ウー教授(Savio L.C. Woo)の論文が4報撤回されたと「撤回監視(Retraction Watch)」が報告した。
Work from noted gene therapy researcher Savio Woo under scrutiny with slew of retractions – Retraction Watch at Retraction Watch
撤回された論文は「2005年のPNAS」「2008年のJ Natl Cancer Inst.」「2009年のHum Gene Ther.」などの論文だ。
2010年9月17日、マウントサイナイ医科大学はサヴィオ・ウー教授(Savio L.C. Woo)の研究室で研究ネカトがあったと発表した。同時に、論文の第一著者だった、2人のポスドク、ジーユ・リー(Zhiyu Li 、男女不明)とリー・チェン(Li Chen、男女不明)を解雇した。なお、ウー教授にはなんら不正はなかったと発表した。
解雇者も出したことだから、マウントサイナイ医科大学の調査は、2010年9月17日に終了したと思われる。
ところが、研究公正局が調査結果を発表したのはそれから4年後だった。それも解雇した2人の不正者のうちの1人だけの調査結果である。
2014年4月25日、研究公正局は、2人の不正者のうちの1人・リー・チェン(Li Chen)のデータねつ造・改ざんを発表し、3年間の締め出し処分を科した(Federal Register | Findings of Research Misconduct)。その時、ジーユ・リーに関しては、何ら言及していない。
2016年7月28日、研究公正局は、もう1人の不正者・ジーユ・リーのデータねつ造・改ざんを発表し、5年間の締め出し処分を科した。
ジーユ・リーに関しては、2010年の解雇後、何ら発表はなく、6年後の研究公正局の発表だった。
―――ここまで流用。
★研究公正局
2014年4月25日(40歳)、研究公正局はチェンが4件の研究費申請書、4報の発表論文、1報の投稿原稿、の複数画像をねつ造・改ざんしていたと発表した。
2014年4月11日(40歳)から3年間の締め出し処分を科した。3年間の締め出し処分は通常の処分である。
4件の研究費申請書は以下の通り。
- R01 DK074695, “Genome-targeted PAH Gene Integration in PKU Mice and Sexual Dimorphism,’ Savio L.C. Wood, Ph.D., Principal Investigator (P.I.) (hereafter referred to as “R01 DK074695′).
- P20 GM075019, “Growth, Differentiation & Genetic Alteration of Human ES Cells,’ Gordon M. Keller, Ph.D., P.I. (hereafter referred to as “P20 GM075019′).
- R01 NS062054, “Nanoparticle-medicated Gene Therapy for PKU,’ Savio L. Woo, Ph.D., P.I. (hereafter referred to as “R01 NS062054′).
- R01 DK083285, “Nanoparticle-Mediated Gene Therapy PKU,’ Savio L. Woo, Ph.D., P.I. (hereafter referred to as “R01 DK083285′).
4報の発表論文は以下の通り。2005-2008年(31-34歳)の4年間の4論文である。
- Chen, L., & Woo, S.L.C. “Complete and persistent phenotypic correction of phenylketonuria in mice by site-specific genome integration of murine phenylalanine hydroxylase cDNA.’ Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102(43):15581-15586, October 2005 (hereafter referred to as “PNAS 2005′).
- Chen, L., Thung, S.N., & Woo, S.L.C. “Metabolic Basis of Sexual Dimorphism in PKU Mice After Genome-targeted PAH Gene Therapy.’ Mol. Ther. 15:1079-1085, June 2007; Retracted in December 2010 (hereafter referred to as “Mol. Ther. June 2007′).
- Chen, L., & Woo, S.L.C. “Correction in Female PKU Mice by Repeated Administration of mPAH cDNA Using phiBT1 Integration System.’ Mol. Ther. 15:1789-1795, October 2007; Retracted in December 2010 (hereafter referred to as “Mol. Ther. Oct. 2007′).
- Chen, L., & Woo, S.L.C. “Site-Specific Transgene Integration in the Human Genome Catalyzed by [Ouml]BT1 Phage Integrase.’ Hum. Gene Ther. 19:143-151, February 2008; Retracted in August 2010 (hereafter referred to as “HGT 2008′).
1報の投稿原稿は以下の通り。2008年に投稿した原稿である。
- Chen, L., Roy, I., Prasad, P.N., & Woo, S.L.C. “Nanoparticle-Based Gene Therapy for Metabolic Disorders: Hepatic Delivery of Minicircle DNA for Complete Correction of Phenylketonuria.’ Submitted for publication in Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (hereafter referred to as the “PNAS 2008 manuscript’).
●【ねつ造・改ざんの具体例】
2014年4月25日(40歳)の研究公正局の発表は、各研究費申請書・論文のネカト部分を指摘している。
しかし、言葉で説明されてもわかりにく。仕方がないので、論文を適当に選んで研究公正局の指摘箇所を以下に詳しく見よう。
★「2005年10月のProc Natl Acad Sci U S A」論文
「2005年10月のProc Natl Acad Sci U S A」論文の書誌情報を以下に示す。2010年8月10日、撤回された。
- Complete and persistent phenotypic correction of phenylketonuria in mice by site-specific genome integration of murine phenylalanine hydroxylase cDNA
Li Chen, Savio L. C. Woo
Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Oct 25; 102(43): 15581–15586. Published online 2005 Oct 17. doi: 10.1073/pnas.0503877102
研究公正局がネカト画像としたのは図2A、2C、3B、4Bである。その3画像を順番に以下に示す(出典:原著論文)。しかし、どこがネカト箇所なのか、う~ん、白楽にはワカリマセン。
●【企業秘密の窃盗】
研究公正局がクロと発表したのが2014年4月25日(40歳)。
それから5年後の2019年、リー・チェン(Li Chen)の名前が事件簿に再び登場する。
状況証拠しかないが、このリー・チェン(Li Chen)は2014年に研究公正局がクロと発表したリー・チェン(Li Chen)と同一人物と想定して本記事を進める。
2008年(34歳)、ネカトがバレてマウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)を解雇されたリー・チェン(Li Chen)は、米国の全国小児病院研究所(Nationwide Children’s Hospital’s Research Institute、写真出典)・研究員に就職した。
そして、別の研究所の研究員だった夫のユー・ジョウ(Yu Zhou)とともに、中国にバイオ会社を設立した。
リー・チェン(Li Chen)は、勤めていた全国小児病院研究所(Nationwide Children’s Hospital’s Research Institute)の「エクソソーム分離キット(exosome “isolation kits”)」(写真は別会社の製品、出典)のノウハウを盗んで、中国に設立した自分のバイオ会社から売っていた。
チェンは、この事業で、中国政府の国家外国専家局(State Administration of Foreign Expert Affairs)や中国国家自然科学基金(National Natural Science Foundation of China)などから助成金をもらっていた。
チェンは、また、中国が外国の研究と技術を中国政府に移転するた仕組みである中国政府の人材計画に複数回応募していた。
2018年(44歳)、リー・チェン(Li Chen)は、企業秘密の窃盗がバレて全国小児病院研究所を解雇された(辞職?)。
2019年7月(45歳)、夫のユー・ジョウ(Yu Zhou、写真出典)とともに、米国・カリフォルニア州で逮捕された。
2020年、裁判所は、米国の科学技術のノウハウを盗んで中国のバイオ会社から売った罪でリー・チェン(Li Chen)を有罪とした。
2021年2月(47歳)、裁判所はリー・チェン(Li Chen)の刑期を2年6か月とした。
2021年4月20日、裁判所は夫のユー・ジョウ(Yu Zhou、51歳)の刑期を2年9か月とした。 → 2021 年4月20日の法務省記事:Hospital Researcher Sentenced to Prison for Conspiring to Steal Trade Secrets and Sell to China | OPA | Department of Justice
また、彼ら夫婦は約145万ドル(約1億4500万円)の罰金、Avalon GloboCare Corp.の普通株50万株、GenExosome Technologies Inc.の普通株400株が没収された。さらに、260万ドル(約2億6000万円)の賠償金の支払いを命じられた。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2021年6月14日現在、パブメド(PubMed)で、リー・チェン(Li Chen)の論文を「Li Chen [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、1968~2021年の6,953論文がヒットした。本記事で問題にしているリー・チェン(Li Chen)とは別人の論文が多いと思われる。
2021年6月14日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、11論文が撤回されていた。
2005~2008年の4撤回論文は「Woo SL」と共著論文だった。
「Chen L AND Woo SL」で論文を検索すると、2000~2017年の13論文がヒットした。2000年の「Chen L」は「Lieping Chen」、2009年以降も別人なので、本記事で問題にしているリー・チェン(Li Chen)の論文は 2005~2008年の6論文と思われる。
2021年6月14日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、2005-2008年(31-34歳)の4年間の4論文が2010年に撤回されていた。
★撤回監視データベース
2021年6月14日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでリー・チェン(Li Chen)を「Li Chen」で検索すると、0論文が訂正、0論文が懸念表明、30論文が撤回されていた。本記事で問題にしているリー・チェン(Li Chen)とは別人の論文が多いと思われる。
★パブピア(PubPeer)
2021年6月14日現在、「パブピア(PubPeer)」では、リー・チェン(Li Chen)の論文のコメントを「Li Chen」で検索すると、2080論文にコメントがあった。本記事で問題にしているリー・チェン(Li Chen)とは別人の論文が多いと思われる。
●7.【白楽の感想】
《1》研究公正局
今回、米国・研究公正局がクロと発表した事件を取り上げた。研究公正局がクロと発表した2015年以降の事件はすべて記事にしているので、2014年の事件を扱った。徐々に古い事件も記事にしていく予定だ。
ただ、研究公正局は毎年約10件ほどクロと発表している。それで、白楽は、新しい研究公正局の事件を平均毎月1回、記事にしている計算になる。
ところが、今年(2021年)は2021年1月28日にイビン・リン(Yibin Lin)の事件を発表して以降、ほぼ5か月、研究公正局は事件を発表していない。 → イビン・リン(Yibin Lin)(米) | 白楽の研究者倫理
研究公正局はどうなってるんじゃあ~、と思っていた。
そしたら、2021年6月7日、エリザベス・ハンドリー局長(Elisabeth Handley)が在任期間1年10か月弱で退任したと報じられた。 → 2021年6月7日記事:ORI Director’s Update | ORI
後任の局長選びにまた数か月~数年かかるだろう。
局内で何かと騒動が多い。
研究公正局はその役割から、もっと安定した堅牢な組織運営が望ましい。
官僚組織ではあるけれど、むしろ専門家集団・技能集団・特殊部隊の色彩が濃いハズなのだが、どうなってるんじゃあ~。
エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)に業務を丸投げしたらどうでしょう。
冗談ですけど。
《2》同姓同名
「リー・チェン(Li Chen)」という姓名は、同姓同名が多く、名前で検索しても、個人を特定するのが難しい。
パブメド(PubMed)で、リー・チェン(Li Chen)の論文を「Li Chen [Author]」で検索すると、1968~2021年の6,953論文がヒットした。こうなると、姓名で論文を検索できない。
同姓同名の他人に成りすますことが簡単にできてしまう。
本人、そして、中国は困らないのだろうか?
イヤ、困って対策を練っているそうだ。 → 2007年6月12日 記事:中国で「姓のバラエティーを増やす法改正」草案を発表:AFPBB News
《3》人生いろいろ
米国以外の国から米国に来た研究者で、米国でネカトが発覚した人の、その後の人生はどのようなものだろうか?
3大別すると、母国に帰る人、米国にとどまる人、別の国に行く人の3パターンがある。
どちらにせよ、「死んでしまおうな~んて 悩んだ~りした」人もいるだろう。
そして、「笑いばなしに 希望がいっぱい 希望の中に若さがいっぱい」の人生になった人もいるだろう。(「 」:中山大三郎・作詞)
今回のリー・チェン(Li Chen)は米国にとどまった。そして、再度、悪行し、さらに重い刑罰が科された。
母国に帰った方が良かったんじゃないでしょうか? まあ、結果論ですけど。
ポスト・ネカト人生を、誰か調査してくれませんかね。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 2010年9月15日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」:Work from noted gene therapy researcher Savio Woo under scrutiny with slew of retractions – Retraction Watch
② 研究公正局の報告:(1)2014年4月25日頃:Case Summary: Chen, Li | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2014年4月25日の連邦官報:2014-09434.pdf 。(3)2014年4月25日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2014年5月23日:NOT-OD-14-098: Findings of Research Misconduct
③ 2014年4月25日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」:Former Mount Sinai postdoc faked gene therapy data: ORI – Retraction Watch
④ 2014年4月25日のボブ・グラント(Bob Grant)記者の「Scientist」記事:Gene Therapy Researcher Faked Data | The Scientist Magazine®
⑤ 2019年9月16日の「司法省」記事: Couple Who Worked at Local Research Institute for 10 Years Charged with Stealing Trade Secrets, Wire Fraud | OPA | Department of Justice
⑥ 2020年8月4日の「AllOnGeorgia」記事:Researcher Pleads Guilty to Conspiring to Steal Scientific Trade Secrets from Children’s Hospital to Sell in China – AllOnGeorgia
⑦ 2021年2月5日の「teiss」記事:US woman gets 30 months for selling Exosomes data to China
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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