「レイプ」:デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)(米)

2021年11月6日掲載 

ワンポイント:サバティーニはノーベル賞候補のスーパースター研究者(男性、離婚手続き中)である。2021年8月20日(53歳)、2018年4月~2019年7月(50~51歳)の1年3か月間、1人の女性(ポスドク?)へのレイプ行為が発覚したため、ホワイトヘッド研究所、ハワード・ヒューズ医学研究所はサバティーニを解雇(fired)した。マサチューセッツ工科大学はサバティーニを休職にした。2021年11月5日(53歳)現在、裁判中。解雇以上の処分なし。被害女性の名前は非公表。事件の動きに不自然な点が多い。国民の損害額(推定)は20億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini、David M. Sabatini、写真出典)は、マサチューセッツ工科大学・教授、ホワイトヘッド研究所(Whitehead Institute for Biomedical Research)・教授、ハワード・ヒューズ医学研究所(Howard Hughes Medical Institute)・研究員である。専門は細胞生物学で、mTOR(エムトア)キナーゼの発見とそれに関連するシグナル伝達経路の研究で何度もノーベル賞候補者になるスーパースター研究者である。

2021年8月20日(53歳)、性不正行為が発覚したため、ホワイトヘッド研究所、ハワード・ヒューズ医学研究所はサバティーニを解雇(fired)した。マサチューセッツ工科大学はサバティーニを休職にした。

サバティーニが原告の裁判文書では、サバティーニ(離婚手続き中)は、指導下の女性(ポスドク?)と2018年4月~2019年7月(50~51歳)の1年3か月間「合意に基づいた性的関係」を持っていたが、2019年7月に性的関係を事実上終了した。サバティーニは、女性に長期的な関係を望んでいないと何度も伝えた。

ところが、その女性から性不正だと訴えられた。

なんだか、両方とも独身みたいなもんだし(サバティーニは離婚手続き中)、痴話げんかのなれの果てのケースのようだ。

上記はサバティーニ側の主張で、性不正の被害者女性側の主張とかなり異なる。

それに、レイプ被害女性は複数いて、サバティーニは女性院生(ポスドク)を性的な食い物にしていたという見方もある。

ここからは白楽の推測だが、実は、サバティーニは2021年のノーベル生理学・医学賞を受賞することがノーベル賞委員会でほぼ決まっていた。

1か月半後にノーベル賞受賞者の発表が迫っていた。

それで、ホワイトヘッド研究所は大慌てで、サバティーニの性不正事件を公表し、サイエンス誌に記事を書かせた。

ノーベル賞受賞者がその直後にレイプ犯と発表したのでは、ホワイトヘッド研究所・所長は、大きな批判を浴びるからだ。

「大慌て」という理由は、調査が不十分なまま、性不正事件を公表し、処分したと思われるからだ。

2021年11月5日現在、サバティーニの主張と被害女性の主張が大きく食い違う。性不正事件の調査が大慌てで、内容が確定していない。裁判になっている。

ホワイトヘッド研究所(Whitehead Institute for Biomedical Research)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許取得:ジョンズ・ホプキンズ大学医科大学院
  • 研究博士号(PhD)取得:ジョンズ・ホプキンズ大学医科大学院
  • 男女:男性
  • 生年月日:1968年1月27日、ニューヨークで生まれた
  • 現在の年齢:53 歳
  • 分野:細胞生物学
  • レイプ行為:2018年4月~2019年7月(50~51歳)の1年3か月間
  • 最初に訴えられた:2021年(53歳)
  • 社会に公表年:2021年(53歳)
  • 社会に公表時地位:ホワイトヘッド研究所・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は被害者の女性研究者で研究所に公益通報
  • ステップ2(メディア):「Boston Globe」、「Science」、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ホワイトヘッド研究所・外部調査委員会。②裁判所
  • 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 研究所・処分のウェブ上での公表:あり:https://forbetterscience.com/2021/11/03/the-sex-privileges-of-mtorman-david-sabatini/
  • 研究所の透明性:大学・研究所は実名を発表したが、調査報告書のウェブ公表なし(△)
  • 不正:レイプ
  • 被害者数:1人の女性院生(ポスドク)という説と複数の女性院生(ポスドク)の説がある
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を解雇(Ⅹ)
  • 処分:解雇
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は20億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

出典:David Sabatini – MIT Department of Biology

  • 生年月日:1968年1月27日、ニューヨークで生まれた
  • 19xx年(xx歳):ブラウン大学(Brown University)で学士号取得
  • 1997年(29歳):ジョンズ・ホプキンズ大学医科大学院(Johns Hopkins University School of Medicine)で医師免許と研究博士号(PhD)を取得
  • 1997年(29歳):ホワイトヘッド研究所(Whitehead Institute for Biomedical Research)・研究室主宰
  • 2002年(34歳):マサチューセッツ工科大学・助教授を兼任
  • 2006年(38歳):同大学・終身教授を兼任
  • 2008年(40歳):ハワード・ヒューズ医学研究所・研究員を兼任
  • 2016年(48歳):米国科学アカデミー会員に選出された
  • 2018年4月(50歳):後で性不正と訴えられる元指導下の女性(ポスドク?)と「合意に基づいた性的関係」を持ち、1年3か月続けた
  • 2021年3月(53歳):ホワイトヘッド研究所は性不正を調査
  • 2021年8月(53歳):ホワイトヘッド研究所とハワード・ヒューズ医学研究所から解雇(fired)。マサチューセッツ工科大学・休職

●3.【動画】

【動画1】
性不正事件の動画ではない。研究講演動画:「Signaling Pathways in Cancer Symposium: David Sabatini – YouTube」(英語)29分26秒。
KochInstituteMITが2016/08/11に公開

●4.【日本語の解説】

★2018年09月30日:詫摩雅子(たくま・まさこ)(日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任):10月1日からノーベル賞発表 日本人の受賞は? 日本科学未来館が予想

出典 → ココ、(保存版) 

【生理学・医学賞】10月1日(月)18時30分~(日本時間)

■細胞の栄養状態のセンサーであるmTORの発見
マイケル・ホール(Michael N. Hall)博士/スチュアート・シュライバー(Stuart L. Schreiber)博士/デイビッド・サバティーニ(David M. Sabatini)博士

・・・中略・・・

最後の「mTOR」とは細胞の中にある分子の名前で、酵母でTORを、哺乳類でmTORを発見したホール、シュライバー、サバチェーニの3氏々を受賞者として予想した。細胞は、栄養状態が良ければ成長したりや分裂したりするが、飢餓状態では細胞内にあるものを分解・リサイクルするオートファジーの仕組みが活発になる。この栄養状態に応じた細胞のふるまいを調節しているのが、mTORを中心とした細胞内の分子ネットワークの働きだ。mTORは近年では、がんや老化との関わりも研究もされ、非常に注目されている分子だ。

★2020年09月28日:浅井文和(日本医学ジャーナリスト協会会長):ノーベル医学生理学賞は細胞の栄養センサーを研究した二人と予想

出典 → ココ、(保存版) 

ノーベル医学生理学賞で今年の有力候補は(1)エピジェネティクス(2)ラパマイシン標的たんぱく質(TOR)の二つとみている。

・・・中略・・・

今回はTORについて大胆に予想したい。

TORは細胞の栄養状態に応じて成長や増殖を調節するたんぱく質だ。いわば、細胞の栄養センサー。酵母から哺乳類までさまざまな生物の細胞に存在する。

★2021年8月22日:百年人生記録(中国で教授生活):サバティーニ的な

出典 → ココ、(保存版) 

週末は色々とあったのだが、とにかくなによりDavid Sabatiniであろう。

私の研究分野であるmTORの大御所であり、おそらく今後10年以内にノーベル賞をとる人物、で「あった」。mTORは細胞の成長に関連しているとても重要なタンパク質であり、それが核となり形成されるmTORC1は長寿に関わる因子として注目されている。

Sabatini先生はMITと関連する研究施設でラボを運営しており、またボストン界隈でバイオテックを有していて、まあ、この分野のロックスター的な人物で「あった」。モテ要素満載で「あった」。

で、昨日のニュースによると、セクハラでクビになると言う。まだ教授職は維持されているようだが、某大手弁護士事務所が調査に乗り出しており、その報告次第で去就が決まると。ラボは閉鎖、のようである。

ここのラボがなくなるとこの分野の研究進捗は停滞するかも、あるいは政治的な要素が薄くなり進むかも、いずれにしろ業界激震である。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)の人生

デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini、写真出典)は世界的に著名で、米国のスーパースター研究者である。

専門は細胞生物学で、mTOR(エムトア)キナーゼの発見とそれに関連するシグナル伝達経路の研究で何度もノーベル賞候補になっている。

2018年と2020年にノーベル賞受賞を日本人が予測したが(上記の【日本語の解説】)、外国でも勿論、予測されていた。例えば、2016年。 → 2016年9月21日記事:Web of Science Predicts 2016 Nobel Prize Winners

サバティーニは、今まで、研究費は数千万ドル(数十億円)獲得している。

サバティーニ研究室で過ごしたポスドク・院生は、24年間で71名と、かなり多い。

卒業したポスドクは36人で院生は18人だが、その内、29人は現在、ハーバード大学、スタンフォード大学、ロックフェラー大学、ニューヨーク大学、イェール大学などの著名な大学で研究室を主宰している。その中には女性も多い。

サバティーニの両親はアルゼンチンから米国にきた移民である。

2つのメディアは、レイプ事件を起こした時、サバティーニは独身だったとしている。 → (1):David Sabatini Wife – Did HHMI Fire Him After Sexual Harassment? – Internewscast、(2):David M. Sabatini Biography, Age, Height, Wife, Net Worth, Family

別のメディアは、レイプ事件を起こした時、サバティーニは妻と別居していて、離婚手続きが進行中だったと報道している。 → 2021年10月2日のスネハナ・ファルベロフ(Snejana Farberov)記者の「Daily Mail Online」記事:MIT biology professor, 53, sues after being accused of sexual harassment | Daily Mail Online

本記事では、後者の「離婚手続き中」を採用した。

写真出典

★突然の解雇発表

2021年8月20日(53歳)、ホワイトヘッド研究所のルース・レーマン所長(Ruth Lehmann、写真出典)は、スタッフに電子メールを送り、法律事務所の調査で性不正行為が発覚したため、サバティーニを解雇(fired)したと発表した。
 → 2021年8月21日のメレディス・ワッドマン(Meredith Wadman)記者の「Science」記事:HHMI fires prominent biologist for sexual harassment | Science | AAAS

以下は、ルース・レーマン所長の電子メール(出典:2020年1月29日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:David Sabatini TORmented by steaming turds – For Better Science

ーーー英語のママでスミマセン

I am writing to let you know that David Sabatini, a member of Whitehead Institute, is no longer associated with either the Whitehead Institute or the Howard Hughes Medical Institute, effective immediately. 

Dr. Sabatini’s departure comes on the heels of his receipt of a report laying out the findings of an independent investigation into the culture and working environment of his lab.  This investigation was precipitated by a Diversity, Equity and Inclusion survey commissioned and conducted last winter which collected data and comments on the culture across the Institute.  The results of this survey identified issues of particular concern in the Sabatini Lab and that led to the appointment of Hinkley Allen & Snyder LLP to investigate the Sabatini Lab.  In sum, the investigation found that Dr. Sabatini violated the Institute’s policies on sexual harassment among other Whitehead policies unrelated to research misconduct.

Dr. Sabatini’s departure has significant implications for the 39 members of his lab, four of whom are HHMI employees; the remainder are Whitehead employees.  Whitehead human resources personnel will be conducting one-on-one meetings with all 39 – next week – to help effectuate a plan to ensure their smooth transition to another lab setting so that they may continue their work in pursuit of their career goals.

I am and will always be steadfast in my commitment to providing an inclusive, supportive environment for the training and research of our community. 

Ruth Lehmann

ーーーーーーーーー

同日、ハワード・ヒューズ医学研究所もサバティーニを解雇した。

2021年8月21日(53歳)、マサチューセッツ工科大学はサバティーニがテニュア持ちの終身教授(tenured professor)ということで、簡単に解雇できない。とりあえず、休職にした。

以下は、マサチューセッツ工科大学の L・ラファエル・ライフ(Leo Rafael Reif)学長の手紙(出典:2021年11月3日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:The Sex Privileges of mTORman David Sabatini – For Better Science

★性不正事件概略

2021年11月5日(53歳)現在、性不正の実態はよくわからない。メディアは性不正被害女性の名前を公表していない。

但し、サバティーニは性不正していないと裁判に訴えた。被告はホワイトヘッド研究所、ルース・レーマン所長、性不正被害を受けたと称する女性(30代)である。

メディアは72頁の裁判文書を入手して記事にしている(白楽未入手)。白楽は未入手なので、以下は推測をまじえた概略である。

――――裁判文書からの推察:ここから

2012年(44歳)、サバティーニは、マサチューセッツ工科大学でのサバティーニの授業を受講していた女性院生(ここでは女性Aと呼ぶ)と会った。

2018年4月(50歳)、サバティーニは女性A(ポスドクになっていた?)と「合意に基づいた性的関係」を持った。この関係は、1年3か月後の「2019年7月に事実上終了」した。というのは、サバティーニは、別の欧州女性と恋仲になったからだ。

2019年7月~2020年初頭、サバティーニは女性Aに長期的な関係を望んでいないと何度も伝えた。

それにもかかわらず、女性Aはサバティーニに性的関係と恋愛関係を求め続けた。

2021年3月(53歳)、女性Aが性不正被害を訴えたため、ホワイトヘッド研究所は外部の法律事務所に性不正調査を依頼し、調査が始まった。

ホワイトヘッド研究所が委嘱した法律事務所の調査員は、サバティーニ研究室の文化習慣やサバティーニの日頃の言動を調査した。サバティーニ研究室の室員は約40人と大所帯だが、裁判所の記録では室員の約半数の調査が終わったと述べている。

法律事務所の調査員によるサバティーニ研究室員の面接調査は、サバティーニに不愉快な情報を引き出す意図が強く、偏見にみちた面接だったと、ある。

調査員がサバティーニにインタビューしたとき、ホワイトヘッド研究所はサバティーニの弁護士の立ち会いを許可しなかった。これは異常だと指摘している。

――――裁判文書からの推察:ここまで

2021年3月(53歳)、ホワイトヘッド研究所はは外部の法律事務所に性不正調査を依頼し、調査が始まった。

法律事務所は、調査し、229ページの調査報告書(白楽未入手)を作成した。

2021年8月13日(53歳)、ホワイトヘッド研究所は調査報告書を受け取った。

7日後の2021年8月20日(53歳)、サバティーニ(写真出典)を解雇した。

その結果、サバティーニは数十万ドル(数千万円)の研究費を失い、評判は地に落ちた。精神的ダメージも大きく、サバティーニの神経科医は「彼が一人で住むのは危険なので、友人や家族の監視下で生活するよう忠告した」程まで悪化した。

白楽の印象では、裁判文書ではサバティーニが被害者のように書かれていて、主張は一方的な気がする。どこまでが、真実なのか?

229ページの調査報告書では、サバティーニと女性Aとの性的関係は「合意に達していた」かどうか疑問だと、ボストングローブ紙は指摘している。

そして、 2021年10月29日の「Science」記事(【主要情報源】の⑨)は、サバティーニが訴訟を起こしたのは、女性Aらへの脅迫だと指摘した。

★レオニッド・シュナイダーの見方

主な出典 → 2021年11月3日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:The Sex Privileges of mTORman David Sabatini – For Better Science

シュナイダーは、72頁の裁判文書を入手した。

レイプ被害女性Aの名前をシュナイダーは知っているが、公表しないとしている。

シュナイダーの見方は、上記したサバティーニの主張といくつかの点で大きく異なる。

女性Aは2012年にサバティーニに会った時、当時、マサチューセッツ工科大学のアンジェリカ・アモン教授(Angelika Amon、写真出典)の院生になったばかりだった。

ところが、その後、アモン教授はガンを患い、2020年10月29日に53歳で亡くなった。

2018年4月、アモン教授が亡くなる2年半前、女性Aはアモン教授の罹患を知らされ、アモン教授の友人であるサバティーニの研究室に移籍した。その時、サバティーニは、指導する暗黙の条件としてセックスを要求した、と女性Aは主張している。これは事実かどうか不明だが、全くの作り話でもなさそうだ。

女性Aは、現在は30代のマサチューセッツ工科大学・グループリーダーだが、サバティーニの報復を恐れて名前を秘匿している。

そして、実は、サバティーニのレイプ被害者は複数人いて、サバティーニは何人もの女性院生(ポスドク)を性的な食い物にしていた。

というのは、サバティーニは、彼の研究室の複数の女性室員とセックスしたことを公然と認めている。しかも、何人かの女性室員はセックスするために特別に採用したらしい。 

2021年1月、女性Aとは別に、サバティーニ研究室を卒業した2人の女性研究者はサバティーニによる性不正被害をホワイトヘッド研究所に申し立てていた。1人は2016年に卒業し、1人は2020年10月にハーバード大学・準教授になった人である。 

なお、裁判文書中で、サバティーニが恋仲になったという欧州女性は特定されてて、サバティーニとのことを聞かれ「冗談でしょう」と答えている。

マー、男女の仲は他人にはワカリマセンね。イヤ、当人たちもワカリマセンね。

【性不正の具体例】

性不正の具体的行為が不明である。簡単だが上記したので、省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

性不正事件は論文とは無関係なので、多くの場合、省略してきた。しかし、「パブピア(PubPeer)」での疑惑論文数がとても多い。それで、今回は記載した。

つまり、サバティーニにはデータねつ造・改ざん疑惑もある。

★パブメド(PubMed)

2021年11月5日現在、パブメド(PubMed)で、デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)の論文を「David Sabatini[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2021年の20年間の291論文がヒットした。

2021年11月5日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2021年11月5日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでデイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)を「David Sabatini」で検索すると、 0論文が訂正、0論文が懸念表明、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2021年11月5日現在、「パブピア(PubPeer)」では、デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)の論文のコメントを「David Sabatini」で検索すると、68論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)。写真出典

《1》失恋報復?

サバティーニ事件では性不正の実態が公表されていない。米国では珍しい。

知り得た情報で話を構築してみよう。

ーーーーサバティーニ側の説明は以下のようだ

離婚手続き中の男性教授(サバティーニ)が指導下の女性ポスドクと恋をした。1年3か月後、恋愛関係を止めて彼女を振った。振った理由は、別の欧州女性と恋仲になったからだ。

一方、振られた女性ポスドクが燃え上がって、執拗に、恋愛関係の維持を熱望した。それで、サバティーニはさらに強い態度で冷たく扱った。

頭にきた女性ポスドクは報復のため性不正と訴えた。

ただ、教授が指導下の女性ポスドクと性的関係をもったのだから、定義上は「レイプ」になる。

でも、なんだか、両方とも独身だし(サバティーニは離婚手続き中)、白楽には、振られた側が報復した恋愛関係のなれの果てと受け取れる。

ーーーー被害女性A側の説明は以下のようだ

2018年4月、被害女性A(当時、20代後半のポスドク)は、指導教授であるアモン教授がガンに罹患した通知を受け、アモン教授の友人であるサバティーニの研究室に移籍することにした。

その時、指導する条件としてセックスが暗黙の条件だとサバティーニに態度で示された(または、暗示された)。

それで、仕方なしに性的関係を結んだが、1年3か月後の2019年7月、就職先のメドがついたので、不快な関係を何とか解消した。

女性Aは、マサチューセッツ工科大学・グループリーダーに就任した後、2021年1月、サバティーニの性不正をホワイトヘッド研究所の所長に訴えた。

ーーーー

さて、どちらが真実なのか?

性不正を訴えたのが女性Aだけでなく複数人いることから、女性Aの主張が正しい気がする。

サバティーニの性不正を訴えても女性Aの利得にならない上、危険でもあるので、ウソをついて訴える可能性は少ない。

但し、恋愛関係の破綻だと、相手に危害を与える目的で異常な行動をするケースはかなりあるので、何とも言えない。

サバティーニ事件では、最初は、「教授と学生の恋愛ごっこ」だったとしても、立場上、教授が加害者である。

学部生・院生・ポスドクが教員を誘惑することもあると思うけど、一般的に、この辺の真実はよくわからない。

そして、以下の2択になる。

恋愛関係が破綻しなければ、教授と学生は結婚し、仲良く暮らしましたとさのハッピーエンド。もし、別れた場合でも、あと腐れなく、必ず相手と良好な友好関係を維持する、というのが教訓。

良好な関係を保てないで恋愛関係が破綻した時、教授は加害者で学生は被害者となる。そして、教授は性不正で訴えられる。

行為そのものではなく出口で判定されるのは、なんか、ヘンな気もするが・・・。

《2》ノーベル賞・秘話 

デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)のmTOR(エムトア)キナーゼの発見はノーベル賞だと言われている。

2021年8月20日、ホワイトヘッド研究所のルース・レーマン所長が急遽、サバティーニの性不正事件を発表し解雇したのは、1か月前の2021年10月4日に受賞者が発表された今年(2021年)のノーベル生理学・医学賞と関係がある。

特殊はルートの情報だが、実は、サバティーニは2021年のノーベル生理学・医学賞を受賞することが、ノーベル賞委員会ではほぼ決まっていた。

2021年8月21日、サイエンス誌は、ほとんど内容がないのに、サバティーニの解雇記事を書いたのも、ノーベル生理学・医学賞と関係がある。

つまり、ノーベル生理学・医学賞の発表日(2021年10月4日)が1か月半後に迫っていた。

サバティーニ事件の発表がもたついていると、サバティーニ以外の人にノーベル受賞者を差し替える作業がきつくなる。それでなくても、もうギリギリの日数である。

それで、調査が十分ではないけど、サバティーニのレイプ事件を、ドン、と発表し、サバティーニを解雇した。

だから、2021年のノーベル生理学・医学賞受賞者は、候補者としてはほとんど無名の人になった。ノーベル賞委員会が十分、推敲している時間がなかったのだ。

以上は、白楽のねつ造秘話です。信憑性は?

《3》性不正でノーベル賞がフイ 

結局、サバティーニは、性不正事件でノーベル賞をフイにした男になった。

ローランド・フライヤーも「性不正事件でノーベル賞をフイにした男」と言われていますね。 → 「セクハラ」:経済学:ローランド・フライヤー(Roland Fryer)(米) | 白楽の研究者倫理

サバティーニはこの性不正事件で、ホワイトヘッド研究所、ハワード・ヒューズ医学研究所を解雇され、マサチューセッツ工科大学・教授が休職になったので、今後、研究は維持できない。もうノーベル賞はないでしょう。

裁判は年数がかかるし、勝訴しても、元には戻れない。

そして、この分野へのノーベル賞はもうない。

となると、サバティーニと共同受賞の予定だったマイケル・ホール(Michael N. Hall)やスチュアート・シュライバー(Stuart L. Schreiber)への受賞もフイになった。

大きな研究成果を挙げる人は、論文のネカトだけでなく、性不正やアカハラ、そして、室員との恋愛には要注意です。あっという間に、失脚の憂き目にあいます。

ナニ? 憂き目にあってもいいから、室員と恋愛したい・・・デスと? バカ!

サバティーニ研究室員。白塗りは何かわかります? 2020年6月17日。写真出典
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●8.【主要情報源】

①  ウィキペディア日本語版:デイヴィッド・M・サバティーニ – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:David M. Sabatini – Wikipedia
③ 2021年8月21日のメレディス・ワッドマン(Meredith Wadman)記者の「Science」記事:HHMI fires prominent biologist for sexual harassment | Science | AAAS
④ 2021年8月22日のショーナ・ウィリアムズ(Shawna Williams)記者の「Scientist」記事:Cell Biologist David Sabatini Fired for Sexual Harassment | The Scientist Magazine®
⑤ 2021年10月22日のカイル・ラフチク(Kyle LaHucik)記者の「FierceBiotech」記事:Biotech founder, MIT researcher Sabatini alleges sexual harassment claims against him are false | FierceBiotech
⑥  2021年10月20日のジェレミー・フォックス(Jeremy C. Fox)記者の「Boston Globe」記事: MIT professor sues after he was forced to resign from institute following sexual harassment allegations – The Boston Globe
⑦ 2020年1月29日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:David Sabatini TORmented by steaming turds – For Better Science
⑧ 2021年10月2日のスネハナ・ファルベロフ(Snejana Farberov)記者の「Daily Mail Online」記事:MIT biology professor, 53, sues after being accused of sexual harassment | Daily Mail Online
⑨  2021年10月29日のメレディス・ワッドマン(Meredith Wadman)記者の「Science」記事:Whitehead Institute seeks pause on prominent biologist’s defamation lawsuit | Science | AAAS
⑩ 2021年11月3日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:The Sex Privileges of mTORman David Sabatini – For Better Science

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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