トーマス・スードフ(Thomas Südhof)(米)ノーベル賞受賞者

2024年10月5日掲載

ワンポイント:明後日の10月7日、2024年のノーベル生理学・医学賞の受賞者が発表される。2013年はスタンフォード大学(Stanford University)・教授のスードフ(47歳)が受賞した。受賞10年後に出版した「2023年3月28日のProc Natl Acad Sci U S A」論文が、今年(2024年)3月12日に撤回された。「パブピア(PubPeer)」では、1999~2024年の44論文にコメントがあり、うち11論文はノーベル賞受賞前に発表した論文である。スタンフォード大学は黙殺しネカト調査をしていない。ネカト実行者はスードフ本人ではなく室員だと思われるが、ネカト指摘に対するスードフの対応は驚くほどヒドい。撤回論文は1報。国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

トーマス・スードフ(Thomas Südhof、Thomas C Südhof、ORCID iD:? 、写真出典)は、ドイツで生まれ育ち、米国のスタンフォード大学(Stanford University)・教授になった。専門は神経科学である。

2013年(47歳)、スードフは、「細胞内の主要な輸送システムである小胞輸送を制御する機構の発見(their discoveries of machinery regulating vesicle traffic, a major transport system in our cells)」で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

受賞10年後に出版した「2023年3月28日のProc Natl Acad Sci U S A」論文が、今年(2024年)3月12日に撤回された。

2024年10月4日現在、上記論文1報が撤回され、「2017年5月のNeuron」論文が撤回予定である。つまり、2報が撤回。

2023年、ネカトハンターのマールテン・ファン・カンペン(Maarten van Kampen)が「For Better Science」で、スードフとルー・チェン(Lu Chen)の論文のデータ疑惑を解説した。

「パブピア(PubPeer)」では、1999~2024年の44論文にコメントがあり、うち11論文はノーベル賞受賞前に発表した論文である。

スタンフォード大学は黙殺し、ネカト調査をしていない。

ネカト実行者はスードフ本人ではなく室員だと思われるが、ネカト指摘に対するスードフの対応は驚くほどヒドい。

1200px-Stanford_School_of_Medicine_Li_Ka_Shing_Centerスタンフォード大学・医科大学院(Stanford University School of Medicine)。”Stanford School of Medicine Li Ka Shing Center” by LPS.1 – Own work. Licensed under CC0 via Commons – 写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:ドイツ
  • 医師免許(MD)取得:ドイツのゲッティンゲン大学
  • 研究博士号(PhD)取得:ドイツのゲッティンゲン大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1955年12月22日
  • 現在の年齢:68歳
  • 分野:神経科学
  • 不正疑惑論文発表:1999〜2024年(43〜58歳)の26年間
  • ネカト行為時の地位:テキサス大学サウスウェスタン校・教授、スタンフォード大学・教授、ノーベル生理学・医学賞・受賞者
  • 発覚年:2022年(56歳)
  • 発覚時地位:スタンフォード大学・教授、ノーベル生理学・医学賞・受賞者
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのマールテン・ファン・カンペン(Maarten van Kampen)、エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)、チェシャ―(Cheshire)らで、「パブピア(PubPeer)」で指摘
  • ステップ2(メディア):「For Better Science」、「Transmitter」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①スタンフォード大学は調査していない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していないので
  • 大学の透明性:調査していない(✖)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:2報撤回、「パブピア(PubPeer)」で44論文にコメント
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:数人はいる

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:CV_Suedhof_Thomas_EN.pdfThomas C. Südhof, M.D., Ph.D. | Catalio Capital Management

  • 生年月日:1955年12月22日
  • 1975~1977年(19~21歳):ドイツのアーヘン工科大学(Rhine‐Westphalia Technical University of Aachen)で学士号取得:医学
  • 1977~1982年(21~26歳):ドイツのゲッティンゲン大学(University of Göttingen)で研究博士号(PhD)と医師免許(MD)取得
  • 1982〜1983年(26〜27歳):ドイツのマックス・プランク生物物理化学研究所(Max Planck Institute for Biophysical Chemistry)・ポスドク
  • 1983〜1985年(27〜29歳):米国のテキサス大学サウスウェスタン校(UT Southwestern)・ポスドク
  • 1987年(31歳):同大学・助教授
  • 1989年(33歳):同大学・準教授
  • 1991〜2007年(35〜41歳):同大学・正教授
  • 1999〜2024年(43〜58歳):この26年間の44論文が疑惑論文
  • 2008年(42歳):スタンフォード大学(Stanford University)・正教授
  • 2013年(47歳):ノーベル生理学・医学賞受賞
  • 2022年半ば(56歳):「パブピア(PubPeer)」で論文データの異常が指摘された
  • 2024年3月12日(58歳):最初の論文撤回
  • 2024年10月4日(58歳)現在:無処分。従来職を維持

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
ノーベル賞受賞講演の動画:「Thomas Südhof, Nobel Prize in Physiology or Medicine 2013: Official Lecture – YouTube」(英語)49分47秒。
Nobel Prize(チャンネル登録者数 62.1万人) が2022/11/04に公開

●4.【日本語の解説】

以下は事件の記事ではない。

★20xx年xx月xx日:著者名不記載(Birkenstock):トーマス・スードフ – ヴァルドルフ学校卒業生、神経科学者、ノーベル賞受賞者

出典 → ココ、(保存版) 

トーマス・スードフ教授は自らを典型的なオタクと呼んでいます。2013年にノーベル賞を受賞したドイツ、ゲッティンゲン出身の彼は、サンフランシスコの南にあるスタンフォード大学医学部で教鞭をとっています。この地には家族と一緒にもうずいぶん長く住んでいるそうです。「ヴァルドルフ学校を卒業した世界で多分一人だけのノーベル賞受賞者」の自宅を訪れお話を伺いました。栄誉、ファッション、バラク・オバマとの対面、そしてBirkenstockについて語ってくれました。

続きは、原典をお読みください。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究人生

2013年(47歳)、ドイツで生まれ育ち、米国のスタンフォード大学(Stanford University)・教授になったトーマス・スードフ(Thomas Südhof)は、「細胞内の主要な輸送システムである小胞輸送を制御する機構の発見(their discoveries of machinery regulating vesicle traffic, a major transport system in our cells)」で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した(写真出典)。

★発覚と経過

2022年11月、テオ・ベイカー(Theo Baker)がスタンフォード大学のマーク・テシア=ラヴィーン学長(Marc Tessier-Lavigne)のネカト疑惑を記事にした。 → マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)(米) | 白楽の研究者倫理

テシア=ラヴィーンの専門は神経科学である。

それで、ネカトハンターは、同じ大学の同じ神経科学者で、ノーベル賞受賞者のトーマス・スードフ(Thomas Südhof)の論文を精査してみようと思ったらしい。

2022年半ば以降、ネカトハンターのマールテン・ファン・カンペン(Maarten van Kampen)、エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)、チェシャ―(Cheshire)らは、スードフの論文のデータ異常を「パブピア(PubPeer)」で指摘した。

現在、「パブピア(PubPeer)」には、スードフの1999~2024年(43〜58歳)の44論文にコメントがある。

そして、2023年、ファン・カンペンが「For Better Science」記事でスードフとルー・チェン(Lu Chen、写真出典)の論文のデータ異常をまとめて指摘した。

なお、ルー・チェン(Lu Chen)は、中国生まれの神経科学者で、スタンフォード大学・教授になり、現在、スードフの妻である(どちらも2回目の結婚)。

著名なネカトハンターがスードフの論文データの異常を指摘すると、無礼なことに、スードフは尊大で攻撃的な対応をした。

スードフは自分のウェブサイトに研究公正サイトを作り、「自分は悪くない」「(ネカトハンターが指摘したのに)自分たちが間違いを見つけ、訂正した」「間違いは論文の結果に影響しない」などと記述した。そして、ネカトハンターを蔑視する文章を書いた。 → Integrity – PubPeer |  Stanford Medicine

この驚くほどヒドい対応は、かえって、ネカトハンターの闘争心を駆り立てた。

なお、スタンフォード大学はスードフのネカト疑惑を黙殺しネカト調査をしなかった。従って、研究公正局も動かなかった。

★「2023年3月28日のProc Natl Acad Sci U S A」論文

トーマス・スードフ(Thomas Südhof)は、2013年のノーベル生理学・医学賞の受賞者である。

受賞10年後に出版した「2023年3月28日のProc Natl Acad Sci U S A」論文が、今年(2024年)3月12日に、ゴタゴタの末、撤回された。この論文には70件のパブピア・コメントが付いている。

ネカト者は、スードフのポスドクで第一著者のペイイー・リン(Pei-Yi Lin、写真出典)なのは明らかだそうだ。

ペイイー・リンは、台湾の国立台湾大学(National Taiwan Universityで修士号を取得し、2019年に米国のUT サウスウェスタン・メディカル・センター(UT Southwestern Medical Center)で研究博士号(PhD)を取得した。2019年12月~2024年5月の4年6か月、スードフのポスドクだった。

論文は2023年3月に出版されたが、なんと、その翌日、パブピアでデータの異常が指摘された。以下の図表の出典は → https://pubpeer.com/publications/DAF32F6DB6C166337E5381F769AE52

2023年3月、以下に示すように、図2B-Dの補足資料の数値(色付き枠で囲った)に同じ数値が多数ある、と「Eirenis aurolineatus」が指摘した。

その後、他のデータでも、似たような重複数値が指摘された(以下。出典:https://forbetterscience.com/2023/06/28/science-moves-forward-with-productive-and-meaningful-activities/)。

ペイイー・リンは、この指摘に対し、「間違えてスミマセン」、こちらが「生データ」ですと別のデータを投稿した。ところが、その「生データ」はねつ造した「生データ」だった。

ペイイー・リンは、28回もパブピアでやり取りをしたのち、29回目にスードフが登場した。

2023年8月、スードフは、以下のように対応した。

論文のデータ・ファイルに複数の誤りがあったことをご報告いただき、感謝いたします。

これらの誤りは、データの分析、図の作成、論文執筆後に要約ファイルを組み立てる際に、間違えたものです。論文の図と結論は要約ファイルのコンパイル前に作成したため、要約ファイルの誤りは論文には反映されず、実際の論文には影響しません。

PNAS に正誤表を提出しました。この論文のデータに関する長い議論 (投稿 1 ~ 28) を考慮して、提出した正誤表には、生データを利用可能にしたので、上記の批判によって提起された問題を明らかにできると期待しております。要約ファイルのエラーについて再度お詫び申し上げます。

敬具、トム・スードフ

スードフのこの対応は礼儀正しく、概して、まともである。ただ、「誤り」と決めつけている傲慢さはある。

スードフは、この論文の撤回と大学のネカト調査を求めなかった。

そして、その後、ネカト対処での典型的な陥落5段階を進んでいった。

陥落5段階とは、①上記のような否定、②全く説得力のない、ありそうもない説明、③ネカトハンターの怒りを買う尊大な発言、④交渉(彼の部下の研究室のメンバーによるデータの再分析の提案)、⑤論文撤回、である。

4段目の後、2023年10月、パブピアの70回目のコメントにスードフが登場し、以下のように述べている。

全体として、この論文のソースデータと既存の生データの間に大きな矛盾があり、私たちは困惑しています。この論文のソースデータには、私が以前に誤って推測したようにコピーアンドペーストの間違いでは説明できない大きな欠陥があります。別のソースを使ったと思います。

もうどうにもカバーできなくなったのだ。

2023年10月17日、学術誌「Proc Natl Acad Sci U S A」は論文に懸念表明を付けた。

そして、2024年3月5日(12日)、5段目の論文撤回に至った。

★「2018年5月のJ Neurosci.」論文

ノーベル生理学・医学賞の受賞5年後に出版したスードフの「2018年5月のJ Neurosci.」論文もデータ異常が指摘された。この論文には24件のパブピア・コメントが付いている。

以下の図出典:https://pubpeer.com/publications/D8EAA6F915EE4008B654738F66ABE6#

2024年3月、著名なネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)が、問題点を指摘した。

――― 図2

色付き枠内は、同じ画像に見えると指摘した。

ちょっと見にくいですね。棒グラフは無視して、バンドの部分を見てください。

――― 図3B

画像の一部(色付き枠)がはめ込まれている。

――― 図3E

画像の一部(赤枠内)が同じ。

第一著者のエリカ・セニュール(Erica Seigneur、写真出典)が、「間違えてスミマセン。誠実な間違いです」と回答した。

何度も「間違い」と書いて、「間違い」を強調した。

エリカ・セニュールは論文出版した2018年にスードフの指導下で研究博士号(PhD)を取得した。従って、この論文は、実質的には彼女の博士論文である。

この論文は、最初の指摘の2か月後の2024年5月5日、訂正された。

しかし、その間、スードフは「パブピア(PubPeer)」で、驚くほど不適切な発言を何度もした。

2024年4月の11件目のコメントでは、スードフは、コメンテーターを「金銭的な利益のためにコメントしている」とコメンテーターを攻撃した。

これには、ビックもチェシャ―も「金銭を得るためにコメントしていない」と反論した。

スードフは、傲慢で不遜、自分はえらい、という、人間性に問題がある発言をしている印象を白楽は受けた。

レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)は、スードフを「恥知らず」と呼んだ。

★「2017年5月のNeuron」論文

スードフ論文のネカト疑惑が世間を騒がしているので、他人からの指摘を恐れたためか、自分で論文データの異常を言いだした共同研究者も出てきた。

2024年4月xx日、ルル・チェン(Lulu Chen、写真出典)は、自分の論文に間違いを見つけたと「パブピア(PubPeer)」に投稿した。

なお、ルル・チェンは2018年にスードフのポスドクだったが、2024年10月4日現在、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles:UCLA)・助教授である。

申し訳ありませんが、図2Dの図を図S3Aに誤って複製してしたことを見つけました。この間違いは、最終図を組み立てて最終原稿にする時、コピー&ペーストを間違えたためです。元の画像を見つけ、論文を訂正します。 → https://pubpeer.com/publications/F7C42C356B2E7049FDB68A434EF4F8

以下の図出典:https://pubpeer.com/publications/F7C42C356B2E7049FDB68A434EF4F8

しかし、結局、いくつかの図に「不自然な」画像重複があり、意図的でないなら、なんで、そうなったのか、論理的に説明がつかない、とスードフは論文撤回の意向を示した。なお、ルル・チェンは論文撤回に同意していない。

2024年10月4日現在、論文は撤回されていないが、間もなく撤回されるという話だ。

【ねつ造・改ざんの具体例】

本文で記載したので、省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2024年10月4日現在、パブメド(PubMed)で、トーマス・スードフ(Thomas Südhof、Thomas C Südhof)の論文を「Thomas Südhof[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2024年の23年間の400論文がヒットした。

「Südhof TC」で検索すると、1982~2024年の43年間の662論文がヒットした。

2024年10月4日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で問題にした「「2023年3月28日のProc Natl Acad Sci U S A」論文・1論文が2024年3月12日に撤回されていた。

★撤回監視データベース

2024年10月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでトーマス・スードフ(Thomas Südhof、Thomas C Südhof)を「Thomas C Südhof」で検索すると、本記事で問題にした「2023年3月28日のProc Natl Acad Sci U S A」論文・ 1論文が2024年3月12日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2024年10月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、トーマス・スードフ(Thomas Südhof、Thomas C Südhof)の論文のコメントを「Thomas Südhof」で検索すると、1999~2024年(43〜58歳)の44論文にコメントがあった。

コメント対象論文は、2013年にノーベル賞受賞する前の1999~2012年の11論文も含まれていた。

●7.【白楽の感想】

《1》ヤナ奴 

2013年、トーマス・スードフ(Thomas Südhof)は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

スードフ事件を調べていると、明確に指摘するのは難しいけど、スードフの傲慢さというか、尊大さというか、そのような発言をするスードフの人間性に、白楽はヘキヘキした。

例えば、ネカトハンターが自分の論文の問題点を指摘してくれているのに、「金銭的な利益のためにパブピアでコメントしている」と侮辱している。攻撃的でまるで感謝がない。 → トーマス・スードフ(Thomas Südhof )の研究公正サイト:Integrity – PubPeer | The Department of Molecular and Cellular Physiology, The Department of Neurosurgery, and Institute for Stem Cell Biology and Regenerative Medicine | Stanford Medicine

もちろん、ノーベル賞の受賞条件に人間性や道徳観の評価は入っていないので、ノーベル賞受賞者に人徳の高さを求める方がヘンと言えばヘンだけど、なんだかな―、と感じてしまった。

《2》ノーベル賞の副作用 

2013年、トーマス・スードフ(Thomas Südhof)は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

そのおこぼれにありつこうと有象無象が集まった結果、ネカトまみれの研究室になっていったようだ。

つまり、ここではスードフを代表に話を進めたが、ネカトの実行犯はスードフではなく、室員だったと思える。

撤回された「2023年3月28日のProc Natl Acad Sci U S A」論文は、スードフのポスドクであるペイイー・リン(Pei-Yi Lin)がネカト者なのは明らかだそうだ。

それなのに、ペイイー・リン(Pei-Yi Lin、写真出典)が処分されたとの記事はない。

ただ、リンクトイン(linkedin)では、スードフのポスドクが2024年5月で終わっているので、解雇されたのかもしれない。

「2018年5月のJ Neurosci.」論文の第一著者のエリカ・セニュール(Erica Seigneur、写真出典)も、「間違えてスミマセン。誠実な間違いです」と回答した。

本文にも書いたけど、エリカ・セニュールは論文出版した2018年にスードフの指導下で研究博士号(PhD)を取得した。従って、この論文は、実質的には彼女の博士論文である。でも、スタンフォード大学がネカト調査して、エリカ・セニュールの博士号を剥奪したという記事はない。

スードフの腐敗した研究室でズルして博士号を取得しても博士号は剥奪されない。

ズルのし得という印象を受けた。

「2017年5月のNeuron」論文の第一著者のルル・チェン(Lulu Chen、写真出典)は、2018年にスードフのポスドクだったが、2024年10月4日現在、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles:UCLA)・助教授である。

スタンフォード大学がネカト調査したという記事はない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校を解雇された記事もない。

ノーベル生理学・医学賞受賞者の研究室でネカトし、バレても、大学はネカト調査しない。従って、処分はない。甘い対処の前例を作っている。

スードフのノーベル賞に、輝きはない。汚れ、腐食した金メダルである。

かつて、スタンフォード大学の研究は「世界のトップクラス」で「すごく」輝いていた。

スードフ事件への対処も悪いけど、マー、ネカト者を学長に選出した大学である。今後、輝きはなく、汚れ、腐敗した大学に落ちていくのだろうか。類が友を呼んだのだろうか。

《3》2024年版:ノーベル賞受賞者・候補者の不正(含・疑惑や関連)

2021年8月3日(220921追記)の「●白楽の卓見・浅見3【ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思うべし】」に一部をまとめたが、内容が古くなった。

以下は、2024年版「ノーベル賞受賞者・候補者の不正(含・疑惑や関連)」リスト。

白楽ブログで解説したノーベル賞受賞者(最後の方に候補者)の不正(含・疑惑や関連)を受賞年順にリストした。

他にも問題者(含・研究公正以外)はいる。白楽ブログの解説記事にしない(多分)。

以下は問題ないと思う。

ノーベル賞候補者の不正(含・疑惑や関連)を発覚年順にリストした。

《4ノーベル賞受賞者の撤回論文数ランキング

「撤回監視(Retraction Watch)」に「ノーベル賞受賞者の撤回論文数ランキング」のページが2024年10月(?)に作られた。 → Retractions by Nobel Prize winners – Retraction Watch

以下そのまま貼り付けた(2024年11月27日現在)

  1. Gregg Semenza (13): 2019 Nobel Prize in Physiology or Medicine.  See coverage.
  2. Linda B Buck (3): 2004 Nobel Prize in Physiology or Medicine.  See coverage.
  3. Jack W Szostak (2): 2009 Nobel Prize in Physiology or Medicine.  See coverage.
  4. Frances H Arnold (1): 2018 Nobel Prize in Chemistry. See coverage.
  5. Bruce A Beutler (1): 2011 Nobel Prize in Physiology or Medicine.  See coverage.
  6. Michael Rosbash (1): 2017 Nobel Prize in Physiology or Medicine. See coverage.
  7. Thomas Südhof  (1): 2013 Nobel Prize in Physiology or Medicine. See coverage.
  8. Shinya Yamanaka (1): 2012 Nobel Prize in Physiology or Medicine. See coverage.

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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類平等の観点で、人口減を補う程度の移民を受け入れる。
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●9.【主要情報源】

① ウィキペディア日本語版:トーマス・スードフ – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Thomas C. Südhof – Wikipedia
③ トーマス・スードフ(Thomas Südhof )の研究公正サイト:Integrity – PubPeer | The Department of Molecular and Cellular Physiology, The Department of Neurosurgery, and Institute for Stem Cell Biology and Regenerative Medicine | Stanford Medicine
④ 2023年6月28日のマールテン・ファン・カンペン(Maarten van Kampen)記者の「For Better Science」記事:Science moves forward with productive and meaningful activities – For Better Science
⑤ 2023年10月19日のシャエナ・モンタナリ(Shaena Montanari)記者の「Transmitter」記事:Nobel laureate’s study earns expression of concern over data integrity issues | The Transmitter: Neuroscience News and Perspectives
⑥ 2024年3月7日のシャエナ・モンタナリ(Shaena Montanari)記者の「Transmitter」記事:Nobel Prize winner Thomas Südhof retracts study | The Transmitter: Neuroscience News and Perspectives
⑦ 2024年4月5日のシャエナ・モンタナリ(Shaena Montanari)記者の「Transmitter」記事:Nobel Prize winner acknowledges errors in three more papers | The Transmitter: Neuroscience News and Perspectives
⑧ 2024年4月29日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Tom Südhof’s Verfolgte Unschuld – For Better Science
⑨ 2024年8月26日のシャエナ・モンタナリ(Shaena Montanari)記者の「Transmitter」記事:Second paper from lab of Nobel Prize winner to be retracted | The Transmitter: Neuroscience News and Perspectives
⑩ 2024年8月28日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Thomas Südhof and AI-powered weapons of micro-duplication – For Better Science
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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