2023年10月5日掲載
ワンポイント:昨晩、ノーベル化学賞の受賞者が発表された。2012年のノーベル化学賞は、デューク大学(Duke University)・教授・医師のレフコウィッツが受賞した。ところが、レフコウィッツのノーベル賞受賞前の1論文が受賞後の2022年4月26日に撤回された。画像の重複使用(データねつ造)が撤回理由だが、ネカト者は共著者であるキングス・カレッジ・ロンドン(King’s College, London)・教授のハウスリーだとされている。なお、両者には他にも疑惑論文がある。国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz、Robert J. Lefkowitz、ORCID iD:?、写真出典 © The Nobel Foundation. Photo: U. Montan)は、米国のデューク大学病院(Duke University Medical Center)・教授・医師で、専門は内科と生化学(Gタンパク質)である。。
マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay、Miles D. Houslay、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0002-3826-8091、写真出典)は、英国のグラスゴー大学(University of Glasgow)・教授を27年間務め、2011年(60歳)、キングス・カレッジ・ロンドン(King’s College, London)・教授に移籍した。専門は薬理学である。
2012年10月x日、レフコウィッツ(69歳)は、「Gタンパク質共役受容体の研究(studies of G-protein-coupled receptors)」で、ノーベル化学賞を受賞した。ノーベル化学賞を受賞したが、内容は生命科学なので、白楽ブログでは生命科学の枠で扱った。
レフコウィッツのノーベル賞受賞前の「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文が、受賞後の2022年4月26日に撤回された。
この論文はマイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)と共著である。
それでレフコウィッツとハウスリーを1つの記事にまとめた。なお、両者には他にも疑惑論文がある。
デューク大学病院(Duke University Hospital)。写真出典
キングス・カレッジ・ロンドン(King’s College, London)のウォータールー・キャンパス(Waterloo campus)。出典:https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=W4uBByb4R4k
●2.【経歴と経過】
★ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)
主な出典:CV – Robert Lefkowitz | Lindau Mediatheque
- 生年月日:1943年4 月15日、米国・ニューヨーク州ブロンクスで生まれた
- 1959~1962年(16~19歳):コロンビア大学(Columbia College)で学士号取得:生化学
- 1966年(23歳):コロンビア大学(Columbia College)で医師免許(MD)取得
- 1973(30歳):デューク大学病院(Duke University Medical Center)・準教授
- 1977(37歳):同大学病院・教授
- 2003年(59歳):後に撤回される「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文を出版
- 2012年(69歳):ノーベル化学賞を受賞
- 2020年4月(77歳):研究不正が発覚
- 2022年4月26日(79歳):「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文が撤回
- 2023年10月4日(80歳)現在:デューク大学病院の教授職を維持している →Robert J. Lefkowitz | Duke Department of Medicine
★マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)
主な出典:Professor Miles Houslay – King’s College London
- 生年月日:不明。仮に1951年1月1日生まれとする。記事「50 years of the Colworth Medal」に、1984年にグラスゴー大学・教授採用の面接を受けた時、33歳だったとあったので
- 19xx年(xx歳):英国のカーディフ大学(Cardiff University)で学士号取得:生化学
- 19xx年(xx歳):英国のケンブリッジ大学(Cambridge University)で研究博士号(PhD)を取得:生化学
- 1984~2011年7月(33~60歳):27 年間、グラスゴー大学・教授
- 2003年(52歳):後に撤回される「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文を出版
- 2011年~現(60歳~):キングス・カレッジ・ロンドン(King’s College, London)・教授
- 2016年12月(65歳):研究不正が発覚
- 2021年11月(70歳):グラスゴー大学とキングス・カレッジ・ロンドンは、ハウスリーのネカト疑惑を調査中
- 2022年4月26日(71歳):「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文が撤回
- 2023年10月4日(72歳)現在:キングス・カレッジ・ロンドンの教授職を維持している → Professor Miles Houslay – King’s College London
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
ノーベル賞でのインタビュー動画:「Robert J. Lefkowitz’s Nobel Week Highlight – YouTube」(英語)56秒。
Nobel Prize(チャンネル登録者数 53.7万人)が2013/01/10 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)
ロバート・レフコウィッツ(英: Robert Joseph Lefkowitz、1943年4月15日 – )は、アメリカ合衆国の医学者。Gタンパク質共役受容体の研究で著名であり、これにより2012年のノーベル化学賞をブライアン・コビルカと共同受賞した。現在はデューク大学の教授 (James B. Duke Professor of Biochemistry) を務めている。(出典:ロバート・レフコウィッツ – Wikipedia)
★マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)
マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)は薬理学者で、グラスゴー大学・教授として27年間勤務し、さまざまな役職についた。
グラスゴー大学で 2,200 万ポンド(約30億円)を超える研究助成金を受給した。
★撤回論文
2020年4月、ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)とマイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)が共著の「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文の不正画像が「パブピア(PubPeer)」で指摘された。
論文は2022年4月26日に撤回された。
- beta-Arrestin-mediated PDE4 cAMP phosphodiesterase recruitment regulates beta-adrenoceptor switching from Gs to Gi.
Baillie GS, Sood A, McPhee I, Gall I, Perry SJ, Lefkowitz RJ, Houslay MD.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Feb 4;100(3):940-5. doi: 10.1073/pnas.262787199. Epub 2003 Jan 27.
レフコウィッツがノーベル化学賞を受賞したその13年前に出版した論文である。その論文が、受賞6年後に撤回された。
この時、レフコウィッツの所属は4箇所で、英国のグラスゴー大学(University of Glasgow)や米国のデューク大学病院(Duke University Medical Center)などである。
ハウスリーの所属は英国のグラスゴー大学(University of Glasgow)である。
「撤回公告 | PNAS」によると、画像の重複使用(データねつ造)が撤回理由である。
図4C のレーン2とレーン3のバンドが同じ画像だった。
以下の図の出典は「パブピア(PubPeer)」:https://pubpeer.com/publications/82986F4A4D89EA465E822A9809F154
グラスゴー大学研究公正評議会(University of Glasgow Research Integrity Council)が、図4Cの画像の問題を指摘した。
それで、5人の著者たちは、撤回を学術誌に要請した。しかし、ハウスリーとアイリーン・ガル(Irene Gall)の2人は撤回に同意しなかった。
グラスゴー大学研究公正評議会は、図4Cの画像以外のデータに問題は無いとした。
しかし、その後、2022年4月、図3にも、画像の重複使用(データねつ造)が「パブピア(PubPeer)」で指摘された。
以下の図の出典は「パブピア(PubPeer)」:https://pubpeer.com/publications/82986F4A4D89EA465E822A9809F154
グラスゴー大学研究公正評議会のネカト調査はお粗末だった、ということだ。
マー、論文は撤回されているので、お粗末さは二次被害を生んでいない。その点、幸いでした。
★発覚の経緯:マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)
上記したように、「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文のネカトと論文撤回を書いたが、ハウスリーのネカト疑惑が指摘されたのは別の論文が最初で、年月は2016年12月である。
その論文はロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)は共著者ではない。
2016年12月、米国のワシントン大学(ワシントン州)の生物統計学者だったスティーブン・マッキニー(Steven McKinney、写真出典)が、ハウスリーの「2009年6月のJ Biol Chem.」論文のデータがおかしいと「パブピア(PubPeer)」で指摘した。 → PubPeer
- Mdm2 directs the ubiquitination of beta-arrestin-sequestered cAMP phosphodiesterase-4D5.
Li X, Baillie GS, Houslay MD.
J Biol Chem. 2009 Jun 12;284(24):16170-16182. doi: 10.1074/jbc.M109.008078. Epub 2009 Apr 16.
論文は2020年8月に撤回されたが、それで終わらなかった。
2020年8月、マッキニーのコメントを見たクレア・フランシスは、キングス・カレッジ・ロンドンと、グラスゴー大学にハウスリー論文のネカト疑惑を調査するよう通報した。
グラスゴー大学(University of Glasgow)の研究公正官のアマンダ・マッケンナ(Amanda McKenna、写真出典)は、この通報に対してフランシスに感謝の意を表し、次のように述べた。
調査委員会は疑惑に同意しており、私たちは、疑惑のあるすべての論文の撤回を求めています。
2021年11月16日頃、通報を受けて約1年後、「撤回監視(Retraction Watch)」が問い合わせると、グラスゴー大学とキングス・カレッジ・ロンドンは、告発を受け、ハウスリーの7報の論文のネカト調査をしていると述べた。
以下は「撤回監視(Retraction Watch)」に調査中と伝えたグラスゴー大学の文書(2021年11月16日頃)の冒頭部分(出典:同)。全文(1ページ)は → http://retractionwatch.com/wp-content/uploads/2021/11/Retraction-Watch-Statement.docx
2023年10月4日現在、ネカト調査中とされて2年経つが、ネカト調査の結果がどうなったか、発表されていない。
どうなったのでしょうねえ~。
2023年10月4日現在、ハウスリーはキングス・カレッジ・ロンドンの教授職を維持している。 → Professor Miles Houslay – King’s College London
ということは、ハウスリーは無罪だったのか?
それとも、事件は闇に葬られたのか?
2023年10月4日現在、ハウスリーは72歳なので、事件を不問にする条件で、退職金を減額する示談交渉をキングス・カレッジ・ロンドンがしているのか?
●【ねつ造・改ざんの具体例】
ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)とマイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)が共著の「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文のネカトについては上記したので再掲しない。
以下、疑惑論文を2報示す。
★「2009年10月のSci Transl Med」論文
レフコウィッツが連絡著者の論文。
ハウスリーは共著者ではない。
「2009年10月のSci Transl Med」論文の書誌情報を以下に示す。2023年10月4日現在、撤回されていない。
- A beta-arrestin-biased agonist of the parathyroid hormone receptor (PTH1R) promotes bone formation independent of G protein activation.
Gesty-Palmer D, Flannery P, Yuan L, Corsino L, Spurney R, Lefkowitz RJ, Luttrell LM.
Sci Transl Med. 2009 Oct 7;1(1):1ra1. doi: 10.1126/scitranslmed.3000071.
2020年2月、ディレトモイデス・パウキラディアトゥス(Diretmoides pauciradiatus)は、図4Aの画像が重複使用だと指摘した。
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/5E7A40D8CF5E3A1018F927099138B4#
画像を回転させているので、意図的な操作の可能性が高い。
レフコウィッツはネカト指摘を無視していて、何も返事していない。
★「2019年7月のJ Biochem.」論文
ハウスリーの論文。
レフコウィッツは共著者ではない。
「2019年7月のJ Biochem.」論文の書誌情報を以下に示す。2022年10月14日、撤回された。
- Phosphorylation of PDE4A5 by MAPKAPK2 attenuates fibrin degradation via p75 signalling.
Houslay KF, Fertig BA, Christian F, Tibbo AJ, Ling J, Findlay JE, Houslay MD, Baillie GS.
J Biochem. 2019 Jul 1;166(1):97-106. doi: 10.1093/jb/mvz016.
話しがそれるが、この論文の第一著者はハウスリーの娘で、医薬品企業の研究員であるカースティ・ハウスリー(Kirsty Houslay、写真出典)である。
なお、娘のカースティ・ハウスリーは、グラスゴー大学で研究博士号(PhD)を2009年に取得したが、指導教授は、父親のマイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)だった。その後、ポスドクになった時のボスも父親である(出典)。
父親は娘に大きく肩入れしただろう。
そして、発表した論文が、データねつ造で論文撤回である。なんか狂っている。
学則違反ではないのかもしれないが、まともな教育システムとは思えない。
話しを戻して、ねつ造・改ざんを具体的に示そう。
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/4500EAFC5C40497347E63F88238BF6
―――2020年4月、ウィル某(Willistoniella pleuropunctata)は、図3の画像が重複使用だと指摘した。
―――2022年4月、マッキニー(S E McKinney)は、図3fの画像の別の重複使用を指摘した。
―――2022年4月、マッキニー(S E McKinney)は、さらに、図3hの画像の別の重複使用を指摘した。
この図は省略した。ネカト図が多すぎ。
―――2022年4月、アロ某(Alocasia reversa)は、図2の画像の重複使用を指摘した。
―――2022年4月、ヴァ―某(Verbascum dentifolium)は、図2の画像の別の重複使用を指摘した。
―――2022年4月、ドリ某(Doryteuthis pealeii)は、図2の画像の別の重複使用を指摘した。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
データベースに直接リンクしているので、記事を閲覧した時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。
★パブメド(PubMed)
【ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)】
2023年10月4日現在、パブメド(PubMed)で、ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)の論文を「Robert Lefkowitz[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2023年の22年間の251論文がヒットした。
251論文の内ハウスリーと共著の論文は2論文しかなかった。
2023年10月4日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で解説した「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文・1論文が撤回されていた。
この撤回記論文がハウスリーと共著の論文だった。
【マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)】
2023年10月4日現在、パブメド(PubMed)で、マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)の論文を「Miles Houslay[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2022年の21年間の137論文がヒットした。
「Houslay MD」で検索すると、1973~2022年の50年間の407論文がヒットした。
2023年10月4日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、3論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
【ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)】
2023年10月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)を「Lefkowitz」で検索すると、本記事で問題にした「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文・1論文が撤回されていた。
【マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)】
2023年10月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでマイルズ・ハウスリー(マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay))を「Miles D Houslay」で検索すると、3論文が撤回されていた。
「2003年2月のProc Natl Acad Sci U S A.」論文が2022年4月26日に撤回されたのと、「2019年7月のJ Biochem.」論文が2022年10月14日に撤回されていた。共に本記事で解説した。
その他、1 報は、「2009年6月のJournal of Biological Chemistry」論文が2020年8月21日に撤回された。
★パブピア(PubPeer)
【ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)】
2023年10月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)の論文のコメントを「Robert Lefkowitz」で検索すると、2003~2023年の6論文にコメントがあった。
6論文の内2論文がハウスリーと共著である。
【マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)】
2023年10月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)の論文のコメントを「Miles Houslay」で検索すると、2000~2010年の10論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》懸念
ノーベル化学賞を受賞したロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz、写真出典)の論文が、画像の重複使用(データねつ造)が理由で撤回された。
詳しい事情を理解しようと、情報を探った。
結局、共著者のマイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)側にネカト犯がいる模様である。また、ハウスリーには他に2論文が撤回されていて、撤回理由は、2論文とも画像の重複使用(データねつ造)である。
つまり、レフコウィッツ(研究室)はネカト犯ではないようだ。
ただ、懸念もある。
というのは、「パブピア(PubPeer)」ではレフコウィッツ の6論文のコメントがあり、内4論文はハウスリーが共著者になっていない。
つまり、レフコウィッツ(研究室)がネカト犯という疑惑を払拭できない。
《2》ヘン
マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)の娘のカースティ・ハウスリーは、グラスゴー大学で研究博士号(PhD)を2009年に取得したが、指導教授は、父親のマイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)だった。その後、ポスドクになった時のボスも父親である。
これは、国際的に認められないと思うが、グラスゴー大学はOKだったということだ。韓国ではこのケースが何度も起こっている。日本にも、少しあったと思うが、統計的な数値はない。事件にもなっていない。でも、ヘンである。
《3》ヘン・ヘン
2021年11月16日頃、グラスゴー大学とキングス・カレッジ・ロンドンは、告発を受け、ハウスリーの7報の論文のネカト調査をしていると述べた。
2023年10月4日現在、ネカト調査中とされて2年経つが、ネカト調査の結果がどうなったか、発表されていない。
そして、2023年10月4日現在、マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)の論文は3論文しか撤回されていない。
7報の論文のネカト調査をしていた。残り4論文はネカトがなかったのか?
ハウスリーはキングス・カレッジ・ロンドンの教授職を維持している。 → Professor Miles Houslay – King’s College London
事件はウヤムヤにされた、ということか?
《4》2023年版まとめ:ノーベル賞受賞者・候補者の不正(含・疑惑や関連):他記事でも同じ内容
「●白楽の卓見・浅見3【ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思うべし】」に一部をまとめたが、2023年版リストでデータを加えた。
白楽ブログで解説したノーベル賞受賞者(最後の方に候補者)の不正(含・疑惑や関連)を受賞年順にリストした。2023年版リスト。
- 1964年、盗博:宗教学:キング牧師(Martin Luther King Jr.)(米)
- 1976年、「性的暴行」:カールトン・ガジュセック(Carleton Gajdusek)(米)
- 1992年、「性不正」:文学:デレック・ウォルコット(Derek Walcott)(米)
- 1998年、ルイ・イグナロ(Louis Ignarro)(米)
- 2004年、リンダ・バック(Linda Buck)(米)
- 2007年、マーティン・エヴァンズ(Martin Evans)(英)
- 2009年、「間違い」:ジャック・ショスタク(Jack W. Szostak)(米)
- 2011年、ブルース・ボイトラー(Bruce Beutler)(米)
- 2012年、化学:ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)(米)
- 2016年、化学:フレイザー・ストッダート(Fraser Stoddart)(米)
- 2017年、マイケル・ロスバッシュ(Michael Rosbash)(米)
- 2018年、化学:フランシス・アーノルド(Frances Arnold)(米)
- 2019年、グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米)
- 2022年、「アカハラ?」:スバンテ・ペーボ(Svante Pääbo)(ドイツ、日本)
- 2022年、「性不正」:経済学:フィリップ・ディビッグ(Philip Dybvig)(米)
他にも問題者(含・研究公正以外)はいる。古いので白楽ブログでは取り上げない(多分)。
- 1912年、アレクシス・カレル – Wikipedia
- 1923年、物理学:ロバート・ミリカン – Wikipedia
- 1956年、物理学:ウィリアム・ショックレー – Wikipedia
- 1962年、ジェームズ・ワトソン – Wikipedia
以下は問題ないと思う。
- 2001年、ポール・ナース – Wikipedia:Paul Nurse
2018年7月26日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Nobel Prize winners correct the literature, too – Retraction Watch - 2002年、ダニエル・カーネマン – Wikipedia:Daniel Kahnemann
2017年2月20日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:“I placed too much faith in underpowered studies:” Nobel Prize winner admits mistakes – Retraction Watch
ノーベル賞候補者の不正(含・疑惑や関連)を発覚年順にリストした。
- 1974年、ロバート・グッド(Robert A. Good)(米)
- 1981年、エフレイム・ラッカー(Efraim Racker)(米)
- 1988年、「錯誤」:ジャック・ベンヴィニスト(Jacques Benveniste)(仏)
- 1993年、無罪:バーナード・フィッシャー(Bernard Fisher)(米)
- 2004年、「児童性的虐待」:フレンチ・アンダーソン(French Anderson)(米)
- 2014年、デイビット・バウルクーム(David Baulcombe)(英)
- 2015年、エイドリアン・バード(Adrian Bird – Wikipedia)(英)
- 2016年、「間違い」:チュンユー・ハン、韩春雨(Chunyu Han)(中国)
- 2020年、物理学:ランガ・ディアス(Ranga Dias)(米)
- 2021年、「レイプ」:デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)(米)
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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる。
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●9.【主要情報源】
① ウィキペディア日本語版:ロバート・レフコウィッツ – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Robert Lefkowitz – Wikipedia
③ 2021年11月11日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Exclusive: University of Glasgow seeking retraction of multiple papers after findings of image manipulation – Retraction Watch
④ 2021年11月23日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:University of Glasgow ‘in discussions to retract’ seven papers, confirming Retraction Watch reporting – Retraction Watch
⑤ 2022年10月21日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Schneider Shorts 21.10.2022 – The Book of Smits – For Better Science
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
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