犯罪「ニセ医師」:アラディープ・チャタジー(Aradeep Chatterjee)(インド)

2023年4月25日掲載 

ワンポイント:チャタジーは、重症がん管理研究センター・診療所(Critical Cancer Management Research Centre & Clinic)で、10年間、父親と2人で重症がん患者を治療していた。2017年6月(37歳?)、ニセ医師であることが発覚し逮捕された。8か月後の2018年2月26日(38歳?)、チャタジーの「2010年10月のEvid Based Complement Alternat Med.」論文が撤回された。撤回理由は、生命倫理違反、著者在順違反である。付録で、世界のニセ医師事例も加えた。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
5A.世界のニセ医師事例
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

アラディープ・チャタジー(Aradeep Chatterjee、ORCID iD:?、写真出典)は、インドの重症がん管理研究センター・診療所(Critical Cancer Management Research Centre & Clinic)・医師で、専門はがん治療学である。

チャタジーは、医師免許を持っていないのに父親の経営する上記診療所で10年間、医療をし、逮捕された。

本記事では、「ニセ医師」という「犯罪」を主に、クログレイ事件を副で記述した。

2010年10月(30歳?)、チャタジーは後で問題視される「2010年10月のEvid Based Complement Alternat Med.」論文を出版した。

2017年6月(37歳?)、ニセ医師であることがバレ、逮捕された。

2018年2月26日(38歳?)、上記論文が撤回された。撤回理由は、生命倫理違反、著者在順違反である。

学術誌が不正な論文を撤回しても、チャタジーは父親が経営する診療所で働いていたので所属機関からの処罰はない。そもそも、父親も論文の共著者だった。

赤印が重症がん管理研究センター・診療所(Critical Cancer Management Research Centre & Clinic)の所在地である。 381, SK Deb Rd, Shree Bhumi, Patipukur, Kolkata, West Bengal 700048, India、のグーグル地図。写真出典

父親のアシム・チャタジー(Ashim Chatterjee)と診療所。写真出典

  • 国:インド
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:なし
  • 生年月日:不明。仮に1980年1月1日生まれとする。理由は見た目
  • 現在の年齢:44歳?
  • 分野:がん治療学
  • 不正論文発表:2010年(30歳?)
  • 発覚年:2017年(37歳?)
  • 発覚時地位:重症がん管理研究センター・診療所・ニセ医師
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「Times of India」、「撤回監視(Retraction Watch)」、「Daily Mail Online」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①警察。②学術誌・編集部
  • 調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 所属機関の事件への透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:ニセ医師。論文は生命倫理違反、著者在順違反
  • 不正論文数:1報撤回
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:逮捕
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Aradeep Chatterjee | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1980年1月1日生まれとする。理由は見た目
  • 19xx年(xx歳):インドのxx大学(xx)で学士号取得(推定)
  • 2008年8月~2015年8月(28~35歳?):インドの重症がん管理研究センター・診療所(Critical Cancer Management Research Centre & Clinic)・フェロー
  • 2010年10月(30歳?):後で問題視される「2010年10月のEvid Based Complement Alternat Med.」論文を出版
  • 2015年8月(35歳?):インドの乾癬治療センター(Centre of Psorinum Therapy)・所有者
  • 2017年6月(37歳?):ニセ医師が発覚し逮捕
  • 2018年2月26日(38歳?):「2010年10月のEvid Based Complement Alternat Med.」論文は撤回
  • 2023年4月24日(43歳?)現在:刑執行を含め、職・住など状況不明

●3.【動画】

【動画1】
ニュース動画:「New clue in Lake Town Fake doctor case, Aradeep Chatterjee has no Homeopathy degree at all – YouTube」(ヒンズー語?)1分47秒。
ABP ANANDA (チャンネル登録者数 849万人)が2017/07/07 に公開

【動画2】
ニュース動画:「Fake doctor Arodeep Chatterjee sent to jail custody – YouTube」(ヒンズー語?)1分06秒。
ABP ANANDA (チャンネル登録者数 849万人)が2017/07/08 に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★ニセ医師

インドのコルカタで父親・アシム・チャタジー(Ashim Chatterjee)は約10年間、重症がん管理研究センター・診療所(Critical Cancer Management Research Centre & Clinic)を運営し、ホメオパシー医学で重症がん患者の緩和医療をしていた。

父親・アシムは医師免許を持ち、地元の患者からの評判は良かった。

息子・アラディープ・チャタジー(Aradeep Chatterjee)は、この診療所で働き、10年間、医療行為をしていた。

ところが、息子・アラディープは医師免許を持っていなかった。

2017年6月(37歳?)、息子・アラディープはニセ医者であることが発覚し警察に逮捕された(写真出典)。

逮捕後に 処罰を受けたと思うが、その内容を白楽は把握していない。

また、息子・アラディープの治療で死亡した人数、健康被害を受けた人数を白楽は把握していない。ただ、以下の事例がある。

2016年、インドのパンジャブ州に住むアンクル・クマール・ダス(Ankur Kumar Das)は、末期がんの父が息子・アラディープの治療を受け、薬物を注射された2日後に昏睡状態になり、1週間もたたずに死亡した。 → 2021年7月11日記事:Critical Cancer Research Center — Important! Complaint against fake doctor aradeep chatterjee

息子・アラディープの治療で死亡したのかどうか、白楽は判断できない。

しかし、末期がん患者の父の治療をした医師がニセ医師だとわかれば、家族としては、治療した医師(ニセ医師)のマズさを非難するだろう。

★クログレイ

2010年10月(30歳?)、息子・アラディープは、「2010年10月のEvid Based Complement Alternat Med.」論文を出版した。父親・アシムは3番目の著者だった。

この論文は、疥癬から採取した膿が患者の「複雑な抗腫瘍免疫反応を引き起こす」チンキ剤になると主張した。

それを100万倍に希釈した薬で、胃、胆嚢、膵臓、肝臓の癌を治療できたと述べた論文である。

論文は2018年2月26日(38歳?)に撤回されたが、撤回公告によると、理由は以下のようだ。 → 撤回公告

研究プロトコルは、2001年に重症がん管理研究センター・診療所(Critical Cancer Management Research Centre & Clinic)の治験審査委員会(IRB 承認番号: 2001–05)によって承認されたとある。しかし、重症がん管理研究センター・診療所は 2008 年に設立されたので、この承認はあり得ない。ねつ造である。

著者と所属機関に、治験審査委員会の承認書、研究プロトコル、インフォームド・コンセント用紙の送付を要請した。しかし、責任著者の息子・アラディープは、2017年6 月にニセ医者が発覚し警察に逮捕され、共著者の父親・アシムは同年8月に逮捕された。2人と2人の法定代理人は、学術誌の要請に対応してこなかった。

共著者のSyamsundar Mandal、Sudin Bhattacharya、Bishnu Mukhopadhyayの3人は、論文の執筆者になることに同意しておらず、論文の投稿・出版を知らなかったと述べた。共著者のJaydip Biswasは応答してこなかった。

つまり、撤回理由は生命倫理違反、著者在順違反である。

研究データへの信頼も欠けると考える方が妥当だろう。

なお、父親・アシム・チャタジー(Ashim Chatterjee)は2016年12月に『THE MANAGEMENT OF CANCER IN TOTALITY INDIA CAN TAKE A LEAD IN THEORY AND APPLICATION』という著書を出版していて、治療法はそれなりに良い評価を得ていた可能性はある。 → THE MANAGEMENT OF CANCER IN TOTALITY INDIA CAN TAKE A LEAD IN THEORY AND APPLICATION : Dr. Asim Chatterjee : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive → テキスト全文

【世界のニセ医師事例】

本記事はアラディープ・チャタジー(Aradeep Chatterjee)のニセ医師事件を主に扱った。

ニセ医師は珍しいかというと、日本を含め、昔から世界中にたくさんいたと思われる。と言っても、大昔は医療に資格は不要だったのでニセ医師はいなかった。

日本では明治維新後の1874年、医師を免許制とする制度が導入された。
英国では、医師資格の国家試験は存在せず、各大学の「卒業試験」に合格し卒業することで医師免許が与えられる。(医師 – Wikipedia

比較的最近のニセ医師の例を10数人、以下に示す。なお、以下は網羅的ではない。

ニセ医師は男女あり、老若あり、さまざまである。

★ゾリア・アレミ(Zholia Alemi):英国、2018年発覚

ゾリア・アレミ(Zholia Alemi、1962年生まれ)は、イランに生れ、ニュージーランドのオークランド大学で人間生物学の学士号を取得した。その後、医学コースに入学したが2年目の試験を落とし、中退した。

1995年(33歳)、英国に渡り、オークランド大学で取得したと偽った医学士号を英国・一般医療評議会(General Medical Council)に提出し、医師登録され、2017年(55歳)までの22年間、英国のイングランド、ウェールズ、北アイルランドの病院で精神科医として勤務した。この間、彼女は100万ポンド(112 万ユーロ、119万ドル、約1億1900万円)の収入を得た。

アレミは2003年に英国の王立精神医学会(Royal College of Psychiatrists)の会員になったが、患者や同僚からアレミの医療行為に対して多くの苦情が申し立てられた。

2018年10月(56歳)、アレミは、年配の患者からお金を盗んだこと、また、裕福な未亡人の財産の受益者を自分名義にするという患者意志の偽造が発覚し、懲役5 年の有罪判決を受けた。

この段階では、彼女の医師の資格を誰も確認していなかった。

2020年8月(58歳)、アレミは詐欺罪で起訴された。オークランド大学に連絡を取り、アレミが医師としての資格を持っていないことを発見したのは、地方紙ニューズ・アンド・スター(News and Star)のフィル・コールマン記者(Phil Coleman)だった。 → 2023年2月16日記事: Lie after lie: how the News & Star exposed fake doctor Zholia Alemi | News and Star

2023年2月(61歳)、7年間の刑務所刑になった。

偽造の医学士号証明書とゾリア・アレミ(Zholia Alemi)
https://metro.co.uk/2023/02/28/fake-psychiatrist-who-earned-1-3-million-from-nhs-jailed-18363272/

【主要情報源】

★ディーン・ファイエロ(Dean Faiello):米国、2022年と2023年の記事

ディーン・ファイエロ(Dean Faiello、男性、写真出典)はイケメンでカリスマ、そしてニセ医師なのだが、米国・ニューヨーク市の秘密の診療所で、美容レーザー治療を専門とする施術を行ない、皮膚科医として成功していた。

2003年4月13日、薬物吸引し、酔っぱらって施術した。それで、レーザー治療中に35歳の銀行員・マリア・クルス(Maria Cruz、女性、写真出典)に過剰量のリドカインを適用したため、患者が死亡してしまった。

遺体を自宅ガレージのコンクリートの下に隠した。

死亡した患者のマリア・クルスは、1992年、フィリピンから米国に移住し、フォーダム大学(Fordham University)の経営学修士号(MBA)を取得し、金融業界で成功を収めていた女性である。

2003年9月19日、クルス殺人の5か月後、ファイエロはコスタリカに逃げた。

 2004年2月xx日、殺人から10か月後、捜査官はファイエロの家を捜査し、ガレージのコンクリートの下にあったマリア・クルスの死体を発見した。米国当局はファイエロを指名手配した。

2004年2月22日、指名手配から数日後、ファイエロはコスタリカのヴィラ・プラヤ・サマラ・ホテル(Villas Playa Sámara)で逮捕された。

2006年12月、ファイエロは20 年の禁固刑を宣告された。

2022年、17 年間の刑に服した後、ファイエロは、釈放された。

ディーン・ファイエロ(Dean Faiello)。写真出典

【主要情報源】

★2件:韓国、2023年

1件目:以下の【主要情報源】から抜粋引用。

医師免許証がない状態で30年間、医師のふりをした60代が初公判で容疑を認めた。

A被告は医師免許証を取得せず、1993年に医大を卒業した後、1995年から全国にある病院60か所の医療機関に勤務しながら犯行に及んだことがわかった。

無免許で外科手術までした。

A被告を雇用した個人病院長8人中5人は検察の公訴事実を認めたが、それぞれの事情でA被告の医師免許証が偽造された事実を知らず、自分たちも詐欺被害者だと善処を訴えた。

【主要情報源】

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2件目:以下の【主要情報源】から抜粋引用。

今年1月、蔚山(ウルサン)で看護補助者が医師の代わりに妊婦出産過程などで600回以上にわたって縫合手術を執刀し、懲役または罰金刑を宣告された事件があった。その後、医師や看護補助者らは1審宣告に従わず控訴してこの事件が改めて注目を集めている。

該当の産婦人科院長A被告に懲役3年・罰金500万ウォン(約50万円)、同院医師でもう一人の院長B被告には懲役2年6月と罰金300万ウォンを宣告した。代理手術をした看護補助者D被告には懲役2年6月・罰金300万ウォンの処分を下した。

【主要情報源】

★アイセ・オズキラス(Ayşe Özkiraz):トルコ、2022年

オズキラスはテキルダー・チェルケズキョイ州立病院で約1年間、医師を名乗っていたが、他の医師が疑惑を申立てたことでニセ医師が発覚し逮捕された。自称25歳だったが、実際は20歳だった。

ガウンと聴診器を着用していたが、患者を手術や治療をしたことはほとんどないらしい。

どうしてニセ医者になったか?

オズキラスは2021年に高校を卒業したが、優秀だったので、両親は医学部への入学を望んでいた。しかし、入試に失敗した。

ところが、家族の期待を裏切らないように、母親、継父、異母兄弟に、チャパ医科大学(Çapa Tıp Fakültesini)に合格したと伝えた。

家族が受験票を見たいと言った時、偽の受験票を作って家族に見せた。

その後、一人でイスタンブールに行き、ファティガジ私立女子寮に入寮した。

チャパ医科大学の学生も従業員もここに滞在していた。最初、従業員として滞在することを考えていたが、担当の女性に医大生として自己紹介したら、公式書類を求められたので、ニセの学生証を作った。

両親は、大学に入学したと思っているので、寮費などの生活費を送金してくれた。寮に落ち着き、同居するSさんとAさんにキャパ医科大学の学生だと話した。

しかし、病院で医療行為の現場に行けば、バレるわけで、バレました、とさ。

https://www.gazetevatan.com/gundem/sahte-doktor-ayse-ozkiraz-skandalinda-yeni-detay-ve-ortaya-cikti-cezaevinde-bakin-ne-istemis-2075086

【主要情報源】

★8人:タイ、2022年

★日本、2019~2021年の3件

もちろん、日本にもニセ医師はあとを絶たない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2023年4月24日現在、パブメド(PubMed)で、アラディープ・チャタジー(Aradeep Chatterjee)の論文を「Aradeep Chatterjee[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2005~2012年の8年間の3論文がヒットした。

2023年4月24日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、1論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2023年4月24日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでアラディープ・チャタジー(Aradeep Chatterjee)を「Aradeep Chatterjee」で検索すると、本記事で問題にした「2010年10月のEvid Based Complement Alternat Med.」論文・ 1論文が2018年2月26日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2023年4月24日現在、「パブピア(PubPeer)」では、アラディープ・チャタジー(Aradeep Chatterjee)の論文のコメントを「Aradeep Chatterjee」で検索すると、1論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》報道の基本「5W1H」

報道の基本は、「Who:だれが」「When:いつ」「Where:どこで」「What:何をした」「Why:どうして」「How:どのように」を伝えるのが、基本である。つまり、「5W1H」が報道の基本である。

今回、「5A.世界のニセ医師事例」で示した事例で各国の報道姿勢を比較してみた。網羅的な調査ではないので、印象レベルの比較である。

ニセ医師は患者にとって深刻な被害だし、今後、同じ人が将来、再度、ニセ医師をしないことも社会として重要なので、「氏名」と「顔写真」を示して報道するのが公益にかなう。

インド、英国、米国、トルコはニセ医師の「氏名」と「顔写真」の両方を報道した。〇と〇。

タイは△と✕。

韓国は✕と✕。

そして、日本は△と✕。

日本は隠蔽体質の国だと思うが、韓国は日本より隠蔽していた。

国民に伝えるための報道なのに隠蔽する。この行為は、どんな文化を基盤にしているのだろう? 

《2》資格のニセ 

世界中にニセ医師がたくさんいた(いる)。

ニセ教授やニセ研究者の事件はほとんど聞かない。

ニセ教授やニセ研究者は少ないのか?

少ないかどうかわかりません。

ただ、大学教授には資格が不要なので、正規とニセの区別がしにくい。どこかの大学が教授として認めれば大学教授になってしまう。

「大学」と付かない教授もある(例:華道教授)。〇〇を教えているなら〇〇教授と自称しても詐称ではないし、違法でもない(例:ハゼ釣り教授)。

同じように研究者にも資格は不要なので、誰でも研究者になれる。というか、自称でも研究者である(例:ハゼ釣り研究者)。研究所に雇われる必要はない。

博士号の取得は公式認定なので、もし詐称し不当な利益を得れば、詐欺罪に問われる可能性がある。後述のように、ニセ博士はインターネットで直ぐにわかる。

ところが、日本語は乱れていて取り締まられないので、「お天気博士」「ハゼ釣り博士」などと称する人がでてくる。そして、糾弾されない。

「Dr.Drive」と称するガソリンスタンドがある。サッサと、取り締まれ!

《3》大学の職位呼称 

大学の職位の呼称がわかり難い。改善すべきである。

大学などで講演をすると「講師」と呼ばれる。その場合、たまたま講演するので非常勤である。だから「非常勤講師」と名乗っていいように思うが、「非常勤講師」は非常勤で講師をするという人を指す普通名詞ではない。「非常勤講師」という職位で、固有名詞なのである。ヤヤコシイ。

だから、非常勤で「講師」を務めても、「非常勤講師」と名乗ってはいけないことになる。ヤヤコシイ。

大学というか文部科学省は、このヤヤコシイ状況のまま放置している。

それで次のようなことが起こる。

日本維新の会の岬麻紀議員は、3年前の参議院選挙に立候補した際、選挙公報に掲載した「亜細亜大学非常勤講師」と「杏林大学非常勤講師」の経歴について16日、記者会見し、それぞれの大学の内規で定める「非常勤講師」にはあたらないことが分かったとして謝罪しました。

岬氏は、大学で講義を行ったことは間違いないとしたうえで「選挙公報には、常勤の講師ではないという意味で『非常勤講師』と記載した。経歴を詐称しようという気持ちは毛頭ない」と説明しました。
(出典:2022年5月17日記事:大学非常勤講師の経歴 専門家“本人だけでなく政党も確認を”|NHK 東海のニュース、(保存版

数年前まで、白楽は早稲田大学で研究倫理の講義を毎年受け持っていた。長いこと「非常勤講師」だと思い込んでいた。

ある時、白楽のことが新聞記事として掲載されるため、自分の身分を早稲田大学に確かめた。

すると、「非常勤講師」ではなく「ゲストスピーカー(招聘講師)です」と返事が来た。それで、新聞記者に「ゲストスピーカー(招聘講師)」だと伝えた。

「非常勤講師」より「招聘講師」の方が偉そうに聞こえるが、白楽は、「早稲田大学・招聘講師」を自分の身分として使ったことはない。世間でもあまり聞かない。

ただ、この「招聘講師」も普通名詞なのか固有名詞なのかわかりにくい。

大学の「教授」にもいろいろある。ややこしい。

教授にもいくつかの種類があります。以下、一例を紹介します。

  • 名誉教授(教授などを勤めた経験があり、その活動の中で特別な功績を上げた者)
  • 主任教授(学部や学科内における教授のリーダー職)
  • 特任教授(企業や大学を定年退職し、再度教授職として招かれた者)
  • 客員教授(常勤ではなく、不定期勤務の教授職。大学との単年契約が主流)
  • 招聘教授(大学が理想の教育を実現する上で、他大学などから招いた教授)
  • 臨床教授(大学病院などに勤め、医学生の教育にあたる者)(出典:【スタディピア】大学の教授/講師|ホームメイト

大学というか文部科学省は、このヤヤコシイ状況をチャンと整理すべきである。

《4》ニセ医師確認法 

ニセ医師になるのを防ぐ方法はネカト対策と同じで、「①ニセ医師を100%発見する」「②不正者を厳罰に処分する」の2セットで対応することだ。

ネカト対策:『情報の科学と技術』66巻、 2016年3月号「研究倫理」特集号の「海外の新事例から学ぶ「ねつ造・改ざん・盗用」の動向と防止策

日本の場合、ニセ医師かどうか確かめる以下の方法が簡単である。

どうやってニセ医師を見分けたらよいのでしょうか。ひとつの方法は、「医師等資格確認検索」を利用することです。氏名を入力することで、医師が実在するか、また医師の登録年を確認することができます。(出典:2016年2月15日記事:法律コラム│ニセ医師の見分け方 │ LEGALUS(リーガラス)

そして、「②不正者を厳罰に処分する」もセットされている。

医師でない者が医療行為を行った場合、医師法違反(無資格医業)として、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方を科されるほか(医師法31条)、傷害罪(刑法204条。15年以下の懲役または50万円以下の罰金)、詐欺罪(刑法246条。10年以下の懲役)が成立する可能性があります(被害者に対しては、別途被害弁償をする必要もあります)。(出典:2016年2月15日記事:法律コラム│ニセ医師の見分け方 │ LEGALUS(リーガラス)

ただ、外国ではいろいろある。

だから、外国で臓器移植する、豊胸手術をする、はたまた、トランスジェンダー性別適合手術をする場合、ウン? 白楽じゃなのだから、私はそんな手術をしません、とおっしゃる人も多いでしょうが、白楽もしません。少なくとも豊胸手術はしません。

とにかく、微妙は手術は、ニセ医師に気を付けてね!

本物の医師でも、その技量と料金と法律に気を付けてね! 

[事件とは無関係な事件の国の写真]:インドの歩道で営業する床屋。2008年3月。撮影:白楽

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① 2017年8月27日のスマティ・イェンコムト(Sumati Yengkhomt)記者の「Times of India」記事: Homeopath arrested for aiding son, a fake doctor in Kolkata
② 2018年3月12日のアンドリュー・ハン(Andrew P. Han)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Ethics, authorship concerns sink homeopathy paper by researchers arrested last year – Retraction Watch
③ 2018年3月14日のピーター・ドックリル(Peter Dockrill)記者の「Science Alert」記事:Homeopathy Paper on Pus Retracted After Alleged ‘Fake Doctor’ Authors Got Arrested : ScienceAlert
④ 2018年3月15日のミア・デ・グラーフ(Mia de Graaf)記者の「Daily Mail Online」記事:Homeopathy cancer paper pulled after authors were arrested | Daily Mail Online
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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