2017年5月3日掲載。
ワンポイント:盗博サイトのヴロニプラーク・ウィキの10番目。国はドイツではなくポーランドである。英国生まれの女性で、2008年(38歳?)にポーランドのクラクフ経済大学で経済学の博士号を取得し、ドイツのザクセン職業大学の教授になった。2011年(41歳?)に盗博がバレたが、博士号ははく奪されなかったし、辞職なし。盗用ページ率は20.4%で、盗用文字率は約6%である。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.盗用解析
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
コーネリア・スコット(Cornelia E. Scott、写真出典)は、2008年(38歳)にポーランドのクラクフ経済大学(Wydział Ekonomii i Stosunków Międzynarodowych、英語:Cracow University of Economics)で経済学の博士号を取得した。その後、ドイツのザクセン職業大学(polytechnic college in Saxony)・教授になった。専門は、経済学である。
2011年8月8日(41歳)、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)が盗博を告発した。10番目の盗博事件である。
→ 1‐4‐10.ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)
ヴロニプラーク・ウィキがドイツ以外の大学の盗博も告発している少数例(2017年5月2日現在・13人)の1人である。英語で記載されているのも珍しい。
2012年1月26日(42歳)、ポーランドの学術学位最終委員会(Zentralkommission für akademische Abschlüsse und Titel)は、博士号をはく奪しなかった。
ポーランドのクラクフ経済大学(Wydział Ekonomii i Stosunków Międzynarodowych、英語:Cracow University of Economics)。写真出典
- 不正:盗博(盗用博士論文)
- 国:ポーランド
- 成長国:英国? ドイツ?
- 研究博士号(PhD)取得年月日:2008年月日(38歳)
- 研究博士号(PhD)取得大学:ポーランドのクラクフ経済大学
- 分野:経済学
- 博士論文タイトル:The influence of national culture on stock option programmes as motivators. The case of managers in Germany
(日本語訳):動機付けとしてのストックオプション・プログラムへの国の文化の影響。ドイツのマネジャーのケース - 博士論文審査教授: Prof. nadwz. dr hab. Anna Karwińska (UEK Kraków), Prof. WSPiZ dr hab. Czesław Szmidt (WSPiZ im. L. Koźmińskiego), Prof. dr hab. Aleksy Pocztowski (UEK Kraków)
- 公開: Aachen 2008. → Nachweis Deutsche Nationalbibliothek → ISBN 978-3-8322-7495-5 → Download beim Verlag (kostenpflichtig)
- 盗博発覚年月日:2011年8月8日(41歳)
- 盗用ページ率:20.4%
- 盗用文字率:約6%
- 研究博士号(PhD)はく奪状況:はく奪なし
- 男女:女性
- 生年月日:1969年。1969年12月31日とする。英国・オックスフォードに生まれた
- 現在の年齢:54 歳?
- 発覚時地位:ドイツのザクセン職業大学(polytechnic college in Saxony)・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者はヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)の人
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①クラクフ経済大学・調査委員会。②ポーランドの学術学位最終委員会(Zentralkommission für akademische Abschlüsse und Titel)。この委員会がポーランドの博士号の授与やはく奪を決める唯一の最終機関。
- 結末:博士号はく奪なし。解雇なし?
●2.【経歴と経過】
主な出典:http://www.openeuropeberlin.de/uber-uns/
- 生年月日:1969年。1969年12月31日とする。英国・オックスフォードに生まれた
- xxxx年(歳):xx大学。学士号
2002 年(32歳): ドイツのアンハルト大学(Hochschule Anhalt )・教授。国際経営と国際金融。MBA コースの国際貿易プログラム ディレクター - 2008年(38歳):ポーランドのクラクフ経済大学で研究博士号(PhD)を取得
2010 年(40歳): 中国の江蘇科技大学(Jiangsu University of Technology)・客員教授、中国の嘉興大学(Jiaxing University)・客員教授 20xx年(xx歳):ドイツのザクセン職業大学(polytechnic college in Saxony)・教授 2011年8月8日(41歳):3年前の盗博が発覚 2012年1月(42歳):ポーランドの学術学位最終委員会(Zentralkommission für akademische Abschlüsse und Titel)は、スコットの博士号をはく奪しなかった 2013 年(43歳):ガーナのガーナ工科大学(Ghana University of Technology) ・客員教授
●3.【動画】
【動画1】
事件ニュースではない。コーネリア・スコットの講演の解説「Plagiatsverdacht bestätigt – RAN1 – YouTube」(ドイツ語)0分40秒
AnhaltFreizeitSport が2012/01/27 にアップロード
●5.【不正発覚の経緯と内容】
英国で生まれた。卒業大学は不明である。ドイツで活動していた。
理由は不明だが、2008年(38歳)に、ポーランドのクラクフ経済大学で研究博士号(PhD)を取得した。博士論文は英語で執筆している。
2011年8月8日(41歳)、3年前の2008年のコーネリア・スコットの博士論文の37ページに盗用があると、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)が、盗博を告発した。盗用ページ率は20.4%で、盗用文字率は約6%である。
2012年1月26日(42歳)、ポーランドのクラクフ経済大学は、調査の結果、33ページに盗用があったと発表した。ヴロニプラーク・ウィキの指摘より4ページ少なかった。
ポーランドの学術学位最終委員会(Zentralkommission für akademische Abschlüsse und Titel)は、ポーランドの博士号の授与やはく奪を決める唯一の最終機関である。
ポーランドの学術学位最終委員会はコーネリア・スコットの博士号をはく奪しなかった。
→ Uni bestätigt Verdacht auf Plagiate – naumburger-tageblatt.de(保存済)
●6.【盗用解析:博士論文】
コーネリア・スコット(Cornelia E. Scott)の博士論文のタイトルは 「The influence of national culture on stock option programmes as motivators. The case of managers in Germany
(日本語訳):動機付けとしてのストックオプション・プログラムへの国の文化の影響。ドイツのマネジャーのケース」である。
博士論文は書籍として出版されている(写真出典はAmazon)。
博士論文の盗用分析図は以下の5色のバーコードである。博士論文の本文は181ページ、盗用ページ率は20.4%で、盗用文字率は約6%と算定されている。
なお、元の盗用分析図では、バーコードがページ毎の盗用分析にリンクしている。→ http://de.vroniplag.wikia.com/wiki/Cs
★イラスト表示
以下はページ毎に色分けしたイラスト表示である。
盗用の色分けは、灰色= 逐語盗用(コピペ、文献提示なし)、赤色 = 加工盗用(ロゲッティング、文献提示なし)、黄色 =流用部分が曖昧な盗用(文献提示あり)、 青色 = 翻訳盗用、である。
ページ換算の盗用ページ率は20.4%で、文字換算の盗用文字率は約6%と少ないので、イラスト表示でも灰色部分+着色部分は少ない。
★各ページの盗用分析
コーネリア・スコット(Cornelia E. Scott)の博士論文の各ページ毎に盗用分析がされている。盗用があるページは青色で、盗用がないページは赤色である。青色をクリックすると、各ページが開く。
【80ページ目】
1例として、80ページ目(つまり、080)をクリックすると、盗用比較図が出てくる。以下はその1部分を示した。80ページ目はイラストで赤色( 加工盗用)である。
左側がコーネリア・スコット(Cornelia E. Scott)の博士論文で右が被盗用論文である。着色部分の文章が同一である。
イラストで赤色( 加工盗用)の盗用が顕著な部分を上にあげたが、逐語盗用にとても近い。文献の記載はない。
●7.【白楽の感想】
《1》わからないこと多し
コーネリア・スコット(Cornelia E. Scott)は英国で生まれ、どこの大学を卒業したのか不明である。
活動はドイツでしているのに、どうしてかわからないが、2008年(38歳)に、ポーランドのクラクフ経済大学で研究博士号(PhD)を取得した。博士論文は英語で執筆している。
盗用ページ率は20.4%で、盗用文字率は約6%である。盗用率は低いが、確実に盗博である。
ただし、盗用箇所が博士論文の中核部分なのか末梢部分なのか、白楽は分析していない。それで、博士号をはく奪しない妥当性がどれほどなのかを、ネカト学者としては判断できない。その前提であるが、盗博は確実なので、博士号をはく奪すべきだったろう。
それにしても、どうして盗博したのか、どこに原因があるのか、どうすれば今後の盗博を防げるのか、この事件からは見えてこない。
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●8.【主要情報源】
① ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)のコーネリア・スコット(Cornelia E. Scott)サイト。通常はドイツ語だが、今回は英語で、珍しい:Cs | VroniPlag Wiki | Fandom powered by Wikia
② 2011年8月17日のフランケ・ルプケ=ナルベルハウズ(Frauke Lupke-Narberhaus)記者の「SPIEGEL ONLINE」記事:Doktorpfusch: FH-Professorin unter Plagiatsverdacht – SPIEGEL ONLINE
③ 2012年1月26日の「Mitteldeutsche Zeitung」記事:Professorin Cornelia Scott: Uni bestätigt Verdacht auf Plagiate | Mitteldeutsche Zeitung
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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