2020年12月20日掲載
ワンポイント:2020年12月8日(43歳?)、研究公正局は、アリゾナ大学(University of Arizona)・元・非常勤助教授(Adjunct Assistant Professor)だったダウンズの6件の研究費申請書に12個のねつ造・改ざん画像が見つかったと発表した。2020年11月18日から4年間の締め出し処分を科した。記事執筆時点では、撤回論文はゼロ。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
ーーーーーーー
●1.【概略】
チャールズ・ダウンズ(Charles Downs、Charles A. Downs、写真出典)はアリゾナ大学(University of Arizona)・助教授だった。看護師資格(RN: Registered Nurse)を所持している。医師免許は所持していない。専門は看護学である。
ネカト発覚の経緯は不明だが、研究費申請書でのネカトだった。発表論文でのネカトは指摘されていない。研究費審査員あるいは同じ大学の同僚が気付き、告発したと思われる。誰が見つけ追及したか、白楽は特定できなかった。
発覚時期は、研究公正局の発表2年前の2018年(41歳?)頃と推定した。
推定だが、2018年にアリゾナ大学がネカト調査を終え、クロと判定し、研究公正局に伝えたと思われる。この2018年(41歳?)時点ではネカトは公表されていない。それで、ダウンズはアリゾナ大学からマイアミ大学(University of Miami)・準教授・副学部長に移籍できた。
2020年(43歳?)、マイアミ大学もダウンズのネカトを知り、ダウンズはマイアミ大学の副学部長を辞任した(させられた)。但し、準教授職は維持している。
2020年12月8日(43歳?)、研究公正局は、アリゾナ大学(University of Arizona)・元・非常勤助教授(Adjunct Assistant Professor)だったダウンズの6件の研究費申請書に12個のねつ造・改ざん画像が見つかったと発表した。
研究公正局は、2020年11月18日から4年間の締め出し処分を科した。4年間の締め出し処分は幾分重い処分である。
記事執筆時点(2020年12月19日現在)では、撤回論文はゼロ。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
アリゾナ学(University of Arizona)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:米国
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:アリゾナ大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1977年1月1日生まれとする。1999年に看護師資格を取得した時を22歳とした
- 現在の年齢:47 歳?
- 分野:看護学
- 最初の不正研究費申請:2018年(41歳?)?
- 不正研究費申請:2018年(41歳?)?
- 発覚年:2018年(41歳?)
- 発覚時地位:アリゾナ大学・助教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
- ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①アリゾナ大学・調査委員会。②研究公正局
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正文書数:6件の研究費申請書に12個のねつ造・改ざん画像。2020年12月19日現在、撤回論文はない
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)が、少し降格した。
- 処分: NIHから 4年間の締め出し処分。副学部長を辞任(解任)
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:Wayback Machine “>Charles Downs
- 生年月日:不明。仮に1977年1月1日生まれとする。1999年に看護師資格を取得した時を22歳とした
- 1999年(22歳?):アラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham)で学士号を取得。看護師資格(RN: Registered Nurse)
- 2011年8月(34歳?):アリゾナ大学(University of Arizona)で研究博士号(PhD)を取得:看護および肺生物学
- 2011-2012年(34 – 35歳?):エモリー大学(Emory University)・ポスドク:細胞および分子生理学
- 2012-2015年(35 – 38歳?):同大学(Emory University)・助教授
- 2015-2018年(38 – 41歳?):アリゾナ大学(University of Arizona)・助教授
- 2018年(41歳?):不正研究が発覚(推定)
- 2018年8月(41歳?):マイアミ大学(University of Miami)・準教授(テニュア)、かつ、副学部長
- 2020年12月8日(43歳?):研究公正局がネカトと発表
- 2020年12月(43歳?):マイアミ大学の副学部長を辞任した(させられた)が、準教授職は維持している。
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★グラント
2015年(38歳?)、チャールズ・ダウンズ(Charles Downs)は、米国のアリゾナ大学(University of Arizona)の助教授(Assistant Professor)になった。
アリゾナ大学時代の2008~2018年に4件のNIH研究費を受給している。以下のリストの4件目(2006年)は別人。( Charles A. Downs | University of Arizona )
マイアミ大学時代の2019年に1件のNIH研究費が採択された。
この研究費申請番号はR01NR016957-02なので、後述するように、この研究費申請書にネカトが見つかった。採択は取り消されたと思われる。
★ネカト
チャールズ・ダウンズ(Charles Downs、写真出典)のネカト発覚の経緯は不明であるが、研究費申請書でのネカトだった。発表論文でのネカトは指摘されていない。研究費審査員あるいは同じ大学の同僚が気付き、告発したと思われるが、誰であるかは特定できない。
発覚時期は、研究公正局の発表2年前の2018年(41歳?)と推定した。
推定だが、2018年にアリゾナ大学がネカト調査を終え、クロと判定し、研究公正局に伝えたと思われる。この2018年(41歳?)時点ではネカトは公表されていない。それで、ダウンズはアリゾナ大学からマイアミ大学(University of Miami)・副学部長に移籍できた。
2020年(43歳?)、マイアミ大学もダウンズのネカトを知り、ダウンズはマイアミ大学の副学部長を辞任した(させられた)。但し、準教授職は維持している。
なお、ダウンズは研究公正局が示したネカト行為を認めていないが、否定もしていない。しかし、ダウンズと研究公正局は、これ以上進展がないので、さらに時間を費やさないで問題を終わらせることで、自主的和解契約(Voluntary Settlement Agreement)を締結した。
2020年12月8日(44歳?)、研究公正局はダウンズの6件の研究費申請書に12個のねつ造・改ざん画像が見つかったと発表した。なお、発表論文や投稿原稿でのねつ造・改ざんについては言及がない。
2020年11月18日から4年間の締め出し処分を科した。4年間の締め出し処分は幾分重い処分である。
6件の研究費申請書は以下の通り。どれも申請しただけである。採択される前にネカトが発覚した。
- R01 NR016242-01, submitted to the National Institute of Nursing Research (NINR), NIH
- R01 NR016242-01A1, submitted to NINR, NIH
- R01 NR016957-01, submitted to NINR, NIH
- R01 NR016957-01A1, submitted to NINR, NIH
- R01 HL142576-01, submitted to the National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI), NIH
- R01 NR016957-02, submitted to NINR, NIH
●【ねつ造・改ざんの具体例】
2020年12月8日(37歳?)の研究公正局の発表では、ラット肺組織スライスおよび単離された肺胞2型細胞で、活性酸素種(ROS)の生成に関する組織学的画像および蛍光信号データの棒グラフをねつ造・改ざんしたとある。
しかし、ネカトは研究費申請書の図である。研究費申請書は第三者が閲覧不能だ。
一方、チャールズ・ダウンズ(Charles Downs)の発表論文に撤回論文はないし、パブピアでのネカト疑惑指摘もない。
ねつ造・改ざんの具体例を示そうにも、これでは、お手上げである。
ということで、今回は具体例の例示はなし。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2020年12月19日現在、パブメド(PubMed)で、チャールズ・ダウンズ(Charles Downs)の論文を「Charles Downs [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2007~2020年の14年間の29論文がヒットした。
「Downs CA」で検索すると、1996~2020年の25年間の83論文がヒットした。
2020年12月19日現在、「Retracted Publication」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2020年12月19日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでチャールズ・ダウンズ(Charles Downs)を「Charles Downs」で検索すると、0論文が訂正、0論文が懸念表明、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2020年12月19日現在、「パブピア(PubPeer)」では、チャールズ・ダウンズ(Charles Downs)の論文のコメントを「Charles Downs」で検索すると、1論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》動機
単純なネカトと思える。
しかし、なんでネカトしたんだろう?
すごく優秀というわけではないけど、そこそこ研究費ももらえ、論文も出版していて、40歳代である。
ただ、チャールズ・ダウンズ(Charles Downs)はアリゾナ大学・助教授ではテニュアを持っていなかった。
白楽の推定では、ダウンズには、アリゾナ大学でテニュアを得て、準教授に昇進する昇格人事が迫っていたのだろう。それで、背伸びしてでも、研究費を沢山獲得し、昇格人事を有利にしようとした。
ただ、ネカトがバレたので、アリゾナ大学にいられなくなった。
2018年に マイアミ大学に移籍した。マイアミ大学ではテニュアを持つ準教授になれた。それなら、ネカトしないで、最初から、マイアミ大学に移籍すればよかったのに。マー、「後悔先に立たず」、そして、「覆水盆に返らず」。
ネカトしてでも昇進したいというのは、ネカトのポピュラーな動機である。
ーーーーーー
日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓
ーーーーーー
●9.【主要情報源】
① 研究公正局の報告:(1)2020年12月8日:Case Summary: Downs, Charles A. | ORI – The Office of Research Integrity(2024年12月にリンク切れる)、(保存版)。(2)2020年12月11日の連邦官報:2020–27309 FRN – Downs.pdf 。(3)2020年12月11日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2020年12月xx日:NOT-OD-20-xxx: Findings of Research Misconduct
② 2020年12月8日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Researcher, now a Miami dean, faked data in grant applications, says federal watchdog – Retraction Watch
③ 2020年12月9日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事: Miami dean stepped down weeks after misconduct finding – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
注意:お名前は記載されたまま表示されます。誹謗中傷的なコメントは削除します