物理学:ビールバフー・ラマクリシュナン(Veerabahu Ramakrishnan)(インド)

2018年5月19日掲載。

ワンポイント:インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校(IISERs:Indian Institutes of Science Education and Research Thiruvanthapuram)(2008年設立)・初代学長である。2017年2月(60歳?)、匿名者がパブピア(PubPeer)で論文盗用を指摘したことが契機となって、1984-2014年の31年間の50論文以上で盗用が見つかった。15論文では、盗用率は約60%である。盗用は、主にマドゥライ・カーマラージャル大学(Madurai Kamaraj University)・物理学科・教授時代の論文である。発覚後1年3か月が経過したが、インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校もマドゥライ・カーマラージャル大学も調査委員会を設置していない。従って、シロクロ判定なし、処分なし。論文は撤回されていない。損害額の総額(推定)は、2流大学・学長の盗用事件だから50億円(あてずっぽう)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ビールバフー・ラマクリシュナン(Veerabahu Ramakrishnan、写真出典)は、インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校(IISERs:Indian Institutes of Science Education and Research Thiruvanthapuram)(2008年設立)・初代学長で、専門は物理学(生物物理学)だった。

2017年2月(60歳?)、匿名者がパブピア(PubPeer)で論文盗用を指摘した。盗用は、主にマドゥライ・カーマラージャル大学(Madurai Kamaraj University)・物理学科・教授時代の論文である。ラマクリシュナン学長は盗用を否定している。

2018年5月18日現在(61歳?)、発覚後1年3か月が経過したが、インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校もマドゥライ・カーマラージャル大学も調査委員会を設置していない。従って、シロクロの判定なし、処分なし。論文は撤回されていない。

インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校は国立大学だが、NIRFの2018年大学ランキングでインド第200位以内に入っていない。「4icu.org」の大学ランキング(信頼度は?)でインド第745位内に入っていない。(Top Universities in India | 2017 Indian University Ranking(保存済))。

インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校(IISERs:Indian Institutes of Science Education and Research Thiruvanthapuram)。写真出典

  • 国:インド
  • 成長国:インド
  • 研究博士号(PhD)取得:ケーララ大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1987年1月1日とする。1987年にマドゥライ・カーマラージャル大学・物理学科・講師就任時を30歳とした
  • 現在の年齢:31 歳?
  • 分野:物理学
  • 最初の不正論文発表:1984年(27歳?)
  • 発覚年:2017年(60歳?)
  • 発覚時地位:インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校・学長
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)は匿名者で、パブピア(PubPeer)で公表
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「Science Chronicle」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。調査していない。②マドゥライ・カーマラージャル大学。調査委員会を設けていない。③インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校。調査委員会を設けていない。
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査委員会を設けていない。
  • 大学の透明性:発表なし(✖)
  • 不正:盗用
  • 不正論文数:1984-2014年の31年間の50論文以上。撤回論文はない
  • 盗用文字率:15論文では、盗用率は約60%
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 損害額:総額(推定)は50億円。内訳 → 損害額の総額(推定)は2流大学・学長の盗用事件だから50億円(あてずっぽう)。
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人: なし

左がビールバフー・ラマクリシュナン(Veerabahu Ramakrishnan)

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1987年1月1日とする。1987年にマドゥライ・カーマラージャル大学・物理学科・講師就任時を30歳とした
  • 19 xx年(xx歳):xx大学で学士号取得
  • 19xx年(27歳?):インドのケーララ大学(University of Kerala)で研究博士号(PhD)を取得
  • 19xx年(27歳?):タタ基礎研究所(Tata Institute of Fundamental Research)・ポスドク
  • 1987年(30歳?):マドゥライ・カーマラージャル大学(Madurai Kamaraj University)・物理学科・講師
  • 1997年(40歳?):同・教授
  • 2008年(51歳?):インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校(IISERs:Indian Institutes of Science Education and Research Thiruvanthapuram)(2008年設立)・初代学長
  • 2017年2月(60歳?):匿名者がパブピア(PubPeer)でビールバフー・ラマクリシュナンの論文盗用を指摘
  • 2018年5月18日現在(61歳?):同・学長職を維持

●5.【不正発覚の経緯と内容】

2017年2月26日(60歳?)、匿名者がパブピア(PubPeer)で、ビールバフー・ラマクリシュナン学長の論文盗用を指摘した。

その後、1か月ほどの内に、次々と、ラマクリシュナン学長の論文盗用を指摘した。この指摘で不正が発覚したと思われる。

パブピア(PubPeer)での盗用指摘を見たインドの新聞「The Hindu」のプラサド・ラヴィンドラナス記者(Prasad Ravindranath、写真出典は以下同)は、自分のブログ「Science Chronicle」で、ラマクリシュナン学長の論文盗用を解説した。
→ 2017年3月16日の「Science Chronicle」記事:‘Copy and paste’ content spotted in IISER Thiruvananthapuram director’s papers – Science Chronicle

ラヴィンドラナス記者が、パブピア(PubPeer)で盗用指摘した匿名者かもしれない。記載はないので、わかりません。

ラヴィンドラナス記者が調べると、1984-2014年の31年間の50論文以上で盗用していた。ラマクリシュナン学長が連絡著者の15論文では、盗用率は約60%だった。

ラマクリシュナン学長は盗用を否定し、以下のように述べている。

私たちの論文のほとんどは、同じ領域内の初期の研究成果の歴史とレビューをかなりの量記述しています。 すべてのデータに適切な謝意を示し(acknowledged)、参考文献欄に文献としてリストしています。 したがって、盗用の疑念は発生しません。 1984年から論文はパブリックドメインになっており、私たちのグループがデータを盗用したと非難する研究者はおりません。

ラヴィンドラナス記者は、「2014年のSpectrochim Acta A Mol Biomol Spectrosc.」論文の盗用部分を色付け(ハイライト)してラマクリシュナンに送付した(次項に示す)。その件に関してもラマクリシュナンは盗用を否定し、以下のように反論している。

あなたが送付してくれた添付文書のハイライト部分には、ジャーナル、著者、所属、携帯電話番号、電子メールアドレスなどが盗用されたものとして表示されます。 盗用だとの結論には科学的根拠がなくばかげています。科学界が採択した研究方法論に反して、あなたが意図的に盗用と決めつけたことは明らかです。

白楽は反論の一部を理解できなていい。ラマクリシュナンの反論が当を得ていないのか、白楽の理解力が足りないのか、よくわかりません。

それにしても、盗用は証拠が示されるので、バカバカしい反論は墓穴を掘るだけなんだけど・・・。

【ねつ造・改ざんの具体例】

★「2014年のSpectrochim Acta A Mol Biomol Spectrosc.」論文

最初に盗用と指摘された「2014年のSpectrochim Acta A Mol Biomol Spectrosc.」論文(以下が書誌情報)を例に、盗用の内容を見ていこう。

ラヴィンドラナス記者はこの論文の盗用率は約68%と算出している。

以下、論文文章の着色部分が盗用である。ウン、明白な盗用だ。
→ 出典:PubPeer – Photoinduced interaction studies on N-(2-methylthiophenyl)-2…

論文をクリックすると大半の論文は大きくなります。2段階です。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年5月18日現在、パブメド(PubMed)で、ビールバフー・ラマクリシュナン(Veerabahu Ramakrishnan)の論文を「Veerabahu Ramakrishnan [Author]」で検索すると、0論文がヒットした。

「Ramakrishnan V [Author]」で検索した。807論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者の論文以外の論文が多数含まれていると思われる。

マドゥライ・カーマラージャル大学(Madurai Kamaraj University)所属に絞った「(Ramakrishnan V [Author]) AND Madurai Kamaraj University[Affiliation]」で検索した。2000-2015年の16年間の37論文がヒットした。

パブメドの撤回論文を「(Ramakrishnan V [Author]) AND Madurai Kamaraj University[Affiliation] AND retracted」で検索すると、0論文がヒットした。

2018年5月18日現在、つまり、撤回論文はない。

★パブピア(PubPeer)

2017年4月2日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ビールバフー・ラマクリシュナン(Veerabahu Ramakrishnan)の2002-2015年の12論文にコメントがある:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》ネカト者が出世する

データねつ造や盗用をするから論文がたくさん出版され、改ざんするからデータも美しい。つまり、ネカト者は学術界で出世する。そして、上手に言い訳、強弁し、場合によると相手を威嚇する。従って、研究公正がしっかり守られない社会では図々しいネカト者が偉くなる。

1984-2014年の31年間の50論文以上で盗用していたビールバフー・ラマクリシュナン(Veerabahu Ramakrishnan)はその典型のようだ。

インドのネカト事件を数十件調べてきたが、学長にネカト者が多い。

学長がネカト者の大学で、研究公正は保たれるのだろうか?

《2》学長のネカト

インド・日本を含め多くの国では、通常、大学に所属する研究者のネカトは大学が調査し、学長がシロクロと処分を決める。

このシステムは根本的な欠点がいくつも指摘されている。その1つは、このシステムでは学長のネカトを公正に調査し健全にシロクロ判定することができないことだ。日本でも東北大学・学長の例はかなりヒドイ状況になっている。最近(2018年)では、台湾大学・学長の管中閔(Kuan Chung-ming)も盗用でゴタゴタしていますね。

ビールバフー・ラマクリシュナンも学長なので、インド科学教育研究大学・ティルヴァナンタプラム校(国立大学)は調査委員会も設けていない。

ただ、証拠が示されていて、ラマクリシュナンの盗用は誰の目から見ても明白である。学長の不正は大学自治を越えるので、国立大学に強い権限を持つインド人的資源開発省(MHRD: Ministry of Human Resource Development)(日本の文部科学省と同等)が乗り出して、ラマクリシュナン学長を懲戒処分すべきでしょう。

そもそも論で言えば、ネカトは大学ではなく、警察が調査し、クロなら刑事事件とすべきでしょう。

日本での提案:「警察庁にネカト取締部を設置し、学術ポリスとして、日本全体のネカトを捜査せよ」

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●8.【主要情報源】

① 2017年3月16日の「Science Chronicle」記事:‘Copy and paste’ content spotted in IISER Thiruvananthapuram director’s papers – Science Chronicle、(保存版
② 2017年3月27日の「Wire」記事:Science Journalist Alleges Plagiarism by Director of IISER Thiruvananthapuram – The Wire、(保存版

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