アリ・サルタン(Ali Sultan)(米)

2018年8月13日掲載。

ワンポイント:14年前の2004年11月22日(41歳?)、研究公正局は、ハーバード大学公衆健康大学院(Harvard School of Public Health)・準教授のサルタンが1件の研究費申請書でデータ盗用と改ざんをしたと発表した。3年間の締め出し処分を科した。サルタンはスーダン出身で、英国・スコットランドのエディンバラ大学で研究博士号(PhD)を取得していた。国民の損害額の総額(推定)は1億8000万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

アリ・サルタン(Ali A. Sultan、写真出典)は、スーダンで医師免許(MD)、英国・スコットランドのエディンバラ大学で研究博士号(PhD)を取得し、米国のハーバード大学公衆健康大学院(Harvard School of Public Health)の準教授になった。専門は免疫学(マラリア治療)である。

2004年11月22日(41歳?)、発覚の経費は不明だが、研究公正局は、サルタンの1件の研究費申請書にデータ盗用と改ざんがあったと発表した。2004年10月19日から3年間の締め出し処分を科した。

2004年(41歳?)、サルタンはハーバード大学を辞職し、中東はカタールのウェイル・コーネル・メディカル大学(Weill Cornell Medicine – Qatar (WCM-Q))・準教授に移籍した。

2018年8月12日(55歳?)現在、同大学に在職している。 → https://qatar-weill.cornell.edu/research/research-faculty/research-faculty

ハーバード大学公衆健康大学院(Harvard School of Public Health)。写真出典:https://www.youtube.com/watch?v=71dhwsU-nJg

  • 国:米国
  • 成長国:スーダン
  • 医師免許(MD)取得:スーダンのハルツーム大学
  • 研究博士号(PhD)取得:英国・スコットランドのエディンバラ大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1963年1月1日生まれとする。1987年に医師免許(MD)を取得した時を24歳とした。
  • 現在の年齢:55 歳?
  • 分野:免疫学
  • 最初の不正:2003年(40歳?)
  • 発覚年:2003年(40歳?)
  • 発覚時地位:ハーバード大学公衆健康大学院・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)はサルタンの研究室員(推定)
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ハーバード大学公衆健康大学院・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:データ盗用
  • 不正論文数: 1件の研究費申請書
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:事件後に発覚時の地位をやめた・続けられなかった(Ⅹ)が、別の大学の研究職に移籍した(◒)
  • 処分: NIHから3年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億8000万円。内訳 ↓

  • ①研究者になるまで5千万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
  • ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費など)は年間4500万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
  • ③外部研究費。2002年と2003年にNIHから6,472万円受給していた。損害額は6,500万円とした。
  • ④調査経費。第一次追及の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円、研究公正局など公的機関は1件200万円。小計で1,500万円
  • ⑤裁判経費は2千万円。裁判ないので損害額は0円。
  • ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文は0報なので損害額は0円。
  • ⑦研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
  • ⑧健康被害:不明なので損害額は0円とした。

●2.【経歴と経過】

ほとんど不明。

  • 生年月日:不明。仮に1963年1月1日生まれとする。1987年に医師免許(MD)を取得した時を24歳とした。
  • 1987年(24歳?):スーダンのハルツーム大学(University of Khartoum)で医師免許(MD)を取得
  • 1995年(32歳?):英国・スコットランドのエディンバラ大学(University of Edinburgh)で研究博士号(PhD)を取得。
  • 1995-1999年(32-36歳?):米国のニューヨーク大学医科大学院(New York University School of Medicine)・ポスドク
  • xxxx年(xx歳):ハーバード大学公衆健康大学院(Harvard School of Public Health)・準教授
  • 2003年(40歳?):経緯は不明だが、ネカトが発覚した(推定)
  • 2004年9月3日(41歳?):ハーバード大学公衆健康大学院(Harvard School of Public Health)・準教授を辞職
  • 2004年11月22日(41歳?):研究公正局がネカトでクロと発表。締め出し期間は3年間
  • 2004年(41歳?):カタールのウェイル・コーネル・メディカル大学(Weill Cornell Medicine – Qatar (WCM-Q))・準教授
  • 2018年8月12日(55歳?)現在:同大学・準教授に在職している。 → https://qatar-weill.cornell.edu/research/research-faculty/research-faculty

●4.【日本語の解説】

★2005年07月19日:WIRED NEWS [日本語版:米井香織/高森郁哉]、AP通信:深刻化する、科学研究の捏造・改竄・盗用(上)

出典 → ココ、(保存版

昨年(2004年)11月には、マラリアの研究で受賞したこともあるハーバード大学公衆衛生学部のアリ・サルタン博士が、マラリアの治療薬の研究への助成金を連邦政府に申請する際に、文章と図表を盗用し、さらにデータを改竄していた――ある種類のマラリアに関する研究結果を別のマラリアのものとして記載した――ことが判明した。サルタン博士は調査委員会に呼ばれたとき、博士課程を修了した教え子に責任を転嫁しようとした。同博士はハーバード大学を退職し、現在はカタールのワイル・コーネル医科大学の教壇に立っていると、同大学の広報担当者は述べている。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★NIH研究費

アリ・サルタン(Ali Sultan)は、ニューヨーク大学医科大学院(New York University School of Medicine)のポスドクとして、1995年と1996年に各1件、計53,100ドル(約531万円)の奨学金を受給した。

ハーバード大学公衆健康大学院・準教授として、NIH・アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)から2002年と2003年に各1件、計647,200ドル(約6,472万円)の研究費を受給していた。

★ネカトの内容

ネカト事件の詳細は不明である。ネカト行為を犯した状況、発覚の経緯、ネカトの具体的内容、処分、処分のその後、どれも不明である。

2003年(40歳?)、経緯は不明だが、ネカトが発覚した(推定)。

2003年(40歳?)、ハーバード大学公衆健康大学院・調査委員会は、アリ・サルタン(Ali Sultan)のネカトを調査し、クロと判定し、研究公正局に伝えた。

2004年11月22日(41歳?)、研究公正局は、アリ・サルタン(Ali Sultan)の1件の研究費申請書にネカトがあったと発表した。締め出し期間として3年間を科した。

ネカトを犯した研究費申請書は、NIH・アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)に申請した研究費申請書「P01 AI060332-01」・「化学遺伝学およびマラリア薬開発(Chemical genetics and malaria drug development)」である。

具体的なネカト内容は不明だが、アリ・サルタン(Ali Sultan)は、免疫蛍光アッセイ、リン光イメージング、およびノーザンブロット分析の結果を示す3つの図と関連文章を盗用した(図3、図4、図5)。

ただ、被盗用先が示されていない。もし、他人の論文からの盗用なら、どの論文なのかを示すと思うのだが、示されていない。白楽には被盗用論文がわかりません。

さらに、アリ・サルタンは、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のデータを改ざんし、ネズミマラリア原虫(Plasmodium bergheii)のデータとして提示した。

熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の一生、http://legacy.cambridgemedicine.org/article/doi/10.7244/cmj-1323558924/

アリ・サルタン(Ali Sultan)は、ポスドクからの電子メールを改ざんし、ポスドクが盗用したかのような資料をネカト調査委員会に提出する、という工作も行なった。

研究費申請書のネカトなので、これ以上、具体的なネカト内容はわからない。

また、研究費申請書のネカトなので、アリ・サルタンの不正行為を見つけたのは、同じ研究室の研究室員だろう。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年8月12日現在、パブメド(PubMed)で、アリ・サルタン(Ali A. Sultan)の論文を「Ali A. Sultan [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2018年の17年間の20論文がヒットした。

「Sultan AA[Author]」で検索すると、1983~2018年の36年間の128論文がヒットした。

2018年8月12日現在、「Sultan AA[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

省略

●7.【白楽の感想】

《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

2004年頃の事件は新聞記事になったような大きな事件を除いて詳細は不明である。14年も経過しているので当時の資料は簡単には見つからない。ましてや、インターネットは今ほど発達していなかったので、ネット上の情報はそもそも少なかった。

ネカト防止策は、この事件からは学べない。

《2》研究費申請書

アリ・サルタン(Ali Sultan)のネカトは研究費申請書であって、出版論文ではない。

2005年のゲーリー・カマー(Gary Kammer)事件で書いたが、再掲する。

以下の事件も研究費申請書であって、出版論文ではない。ドライヤーは投稿原稿もあるが出版していない。

  1. 2000年:エヴァン・ドライヤー(Evan B. Dreyer)(米)
  2. 2001年:デイヴィット・パジェット(David A. Padgett)(米)
  3. 2001年:モミアオ・シャオン、熊墨淼(Momiao Xiong)(米)
  4. 2003年:ジャスティン・ラドルフ(Justin D. Radolf)(米)
  5. 2005年:ゲーリー・カマー(Gary Kammer)(米)

2000-2005年頃は、ネカトは研究費申請書のネカト発覚が普通だったのだろうか?

その場合、出版論文のネカトは指摘されていない。出版論文のネカトを調査していないのか、調査したけど出版論文にネカトはなかったのか、どっちなのだろう。

ネカトが研究費申請書だけだったとは信じがたい。

なお、勿論、2000-2005年の間、研究公正局は出版論文のネカト事件も報告している(以下はその一部)。

  1. 2002年:レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad)(米)
  2. 2002年:タツミ・アリチ、有地建実(Tatsumi Arichi)(米)
  3. 2003年:クレイグ・ジェルバンド(Craig H. Gelband)(米)
  4. 2005年:エリック・ポールマン(Eric T. Poehlman)(米)

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●8.【主要情報源】

① 2004年11月22日、研究公正局の報告:NOT-OD-05-009: Findings of Scientific Misconduct
② 2004年12月6日、「Harvard Crimson」記事:Professor Barred from Research | News | The Harvard Crimson
③ http://www.achsnatl.org/ethics/Integrity_Matters_Sept05.pdf

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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