1‐4‐3.米国・研究公正局(ORI、Office of Research Integrity)

2016年6月29日改訂。

【2017年1月4日追記】
公正教育部門長のゼー・ハマットは、最近、辞職した。

●1.【はじめに】

Home研究公正局(ORI、Office of Research Integrity)は、研究ネカトに対処する米国の政府機関である。権威・実績・スキル・知識・情報などほぼすべてにおいて、世界で最も優れた研究ネカト対処組織である。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.はじめに
2.研究公正局の要点
3.日本語の解説
4.活動、提供資料
5.組織構成、職員、職務
6.科学者捜査官の人生
7.白楽の感想
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Partin_August-2010-150x1502015年12月末、約2年間、空席が続いた所長職に、コロラド州立大学・神経科学教授だったキャシー・パーティン(Kathy Partin、写真出典)が就任した。

●2.【研究公正局の要点】

  • 機関名:研究公正局(ORI、「オーアールアイ」と読む。Office of Research Integrity)
  • 設立:1992年。現在、約25年経過した。前身の科学公正局(Office of Scientific Integrity:OSI)は1989年3月設立。
  • 言語:英語
  • 対象:生命科学系の研究者・院生の研究ネカト。厳密には、NIH所内の研究員、NIH所外でNIH研究助成金の申請者と受給者、健康福祉省(HHS)・監察総監室(Office of Inspector General)研究助成金の申請者と受給者
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本部:The Tower Building – 1101 Wootton Parkway。写真出典
  • 運営:米国連邦政府の政府機関。健康福祉省(保健福祉省:HHS)の長官オフィスの健康次官補オフィス(Office of the Assistant Secretary for Health: OASH )の1部局
  • 本部所在地:Office of Research Integrity, 1101 Wootton Parkway, Suite 750, Rockville, Maryland 20852, USA
  • 連絡先: AskORI@hhs.gov
  • サイト:http://ori.hhs.gov/
  • ブログ:http://ori.hhs.gov/blog
  • ツイッタ―:https://twitter.com/HHS_ORI

●3.【日本語の解説】

★ ウィキペディア:修正引用
研究公正局(けんきゅうこうせいきょく、ORI、Office of Research Integrity)とは、研究の公正性、すなわち科学における不正行為が行われていないかどうかなどを監視する、米国の政府系機関である。

アメリカ国立衛生研究所(NIH、白楽注:国立衛生研究所は誤訳、「国立生物医学研究機構」が適切)内に設置されたOSI(Office of Scientific Integrity 科学公正局)およびアメリカ合衆国保健福祉省(HHS)のAssistant Secretary for Healthの下に設置されたOSIR(Office of Scientific Integrity Review)が、1992年5月に統合した。(米国研究公正局 – Wikipedia

★文部科学省の「研究活動の不正行為に関する特別委員会」の資料(2006年8月8日)。文部科学省の科学技術・学術政策局政策課が作成。

  • 連邦政府規律(Federal Policy on Research Misconduct)の制定のほか、保健福祉省の公衆衛生庁(PHS)に研究公正局(ORI)を設置するなど、生命科学分野を中心に、研究活動の不正行為に対して、立法を含む多様な取り組み。
  • 連邦政府が資金援助した研究には、研究機関は不正の予防と調査の責務を有し、連邦政府機関が監査権限を有するという仕組み。

(保健福祉省)

  • 保健福祉省では、公衆衛生庁(PHS)に研究公正局(ORI)を設置。PHSが助成している研究活動における公正さを監視・指導。研究の不正行為に関するPHS規律(Public Health Service Policies on Research Misconduct)を2005年に改定。
  • 研究の不正行為に関するPHS規律では、規律の適用範囲、不正行為の定義、PHSから研究資金を受けている研究機関及びORIの責務など詳細に規定。
  • ORIは、上記の規律に基づき、不正が申し立てられた場合の手続等に関し、次の対応方針を改訂。
    1)Model Policy for Responding to Allegations of Scientific Misconduct
    2)Model Procedures for Responding to Allegations of Scientific Misconduct
  • 当該Model Policyにおいて、PHSから研究資金を受けている研究機関に示している方針の内容
    1)疑いのある事例の受付
    2)告発すべきかどうかを決める照会調査
    3)公式調査
    4)確認調査結果のORIへの報告を義務付け

●4.【活動、提供資料】

★研究ネカトの調査と公表
第一次追及者の公益通報を研究公正局が直接受けた場合、被疑者の所属する各大学・研究機関に研究ネカト疑念を通知する。

各大学・研究機関が所属研究者の研究ネカトを調査するが、研究公正局はその助力・支援をする。各大学・研究機関からの調査報告書を受け、研究公正局もそれなりに調査する。

小規模な大学・研究機関では人材がいない。要請があった時、研究公正局が事件を調査する。また、大規模大学・研究機関でも広範で重大な研究ネカトでは研究公正局が事件を調査する。

研究公正局がクロと判定すると、実名・所属・職位・研究ネカト内容を公表し、通常は3年間の締め出し処分(debarment)を科す。この締め出し処分は、健康福祉省(HHS)の研究費申請、研究費審査、関連職務を禁止する処分だが、実質上、研究ネカト者に研究をやめさせるための処置である。

研究ネカト者の公表(締め出し処分が過ぎると削除される)。 →  Case Summaries

★ニュースレターの発行
1993年以来、年4回ニュースレターを発行している。記事には、研究ネカト問題の議論や解説もある。研究ネカトの調査の結果、「クロ」と判明した場合、研究者の実名・所属・職位・研究ネカト内容も記載する。 → Newsletter

★研究規範の講演会
1990年と1993年に開催。1997年以降は2012年まで毎年開催していたが、2013年-2015年は開催しなかった。2016年から再開した。 →  Conferences

★研究ネカト申し立てに対する対処方法
研究ネカト申し立てに対する対処方法を丁寧に解説している。 → Handling Misconduct

★研究ネカトの科学的調査方法
研究ネカトの科学的調査方法を丁寧に解説している。 → Forensic Tools

★信頼研究行為の教育・促進の教材:研究ネカト防止のインタラクティヴ・ビデオ

  • ①「実験室(The Lab)」(英語、スペイン語、中国語)メインが3分25秒、その後、選択、選択、・・・。科学技術振興機構(JST)が日本語字幕を作成した → ココ(とてもおススメです)
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  • ②「研究病院(The Research Clinic)」(英語)。日本語字幕版はないtheclinicbanner2

★信頼研究行為の教育・促進の教材資料

★「研究公正性の研究」に研究費支援
「研究公正性の研究」(Research on Research Integrity:RRI)に対して、2001年から、全米(米国外も可)の大学・研究所に研究費を支援している。助成金受給者と採択課題 → Awards Data

★アシュアランス・プログラム(Assurance Program(確約プログラム)
NIH研究費を申請・受給している全米の大学・研究所(約4,500機関)は、研究公正局に、「研究ネカト対策がちゃんとしています」という「確約」をしなければならない。 → ココ

中身は2つある。①研究ネカトの告発に対処するシステムがまともなこと。②研究ネカトの年次報告書の提出(ANNUAL REPORT ON POSSIBLE RESEARCH MISCONDUCT)。

★研究公正官(Research Integrity Officer)
NIH研究費を申請・受給する大学・研究所には最低1人の研究公正官(Research Integrity Officer)の設置(兼任可)が義務付けられている。 → 研究公正官ハンドブック(ORI Handbook for Institutional Research Integrity Officers)研究公正官の責務(Research Integrity Officer Responsibilities)

●5.【組織構成、職員、職務】

所長室と2つの部門からなる(除・研究監督法律チーム部門/総合法律顧問部門)。

所長を含め総勢24人である。研究博士(Ph.D.)11人、法務博士(J.D.)1人、医師免許(MD)2人、公衆衛生学修士(MPH)3人、修士2人、獣医学士1人。学位は述べ人数で、2つの学位を所持している人は複数いる。局員の46%が研究博士(Ph.D.)である。

★ 所長室(Office of The Director)

● 所長:キャシー・パーティン(Kathy Partin、写真出典
Partin経歴:ミシガン大学 (University of Michigan) で歴史学の学士号、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校 (SUNY-Stony Brook) で微生物学の研究博士号(Ph.D.)を取得した。デューク大学、NIH でポスドクを経て、コロラド州立大学・神経科学教授になり、 同大学の研究担当副学長、研究公正官を経て、2015年12月末、研究公正局に所長として入局した。在職期間は約1 年, 6 か月 23 日 。

● スタッフ:3人。所長1人(研究博士)、公衆健康アドバイザー1人(公衆衛生学修士 :MPH、CPH)、事務補佐員1人。これでは、職務から考えてハードワークの印象である。
● 業務 → Office of the Director

★ 調査監査部門(Division of Investigative Oversight)

● 部門長:スーザン・ガーフィンケル(Susan Garfinkel、研究博士)
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経歴:ニューヨーク州立大学ビンガムトン校 (SUNY-Binghamton) で生物学の学士号、1989年にジョージ・ワシントン大学 (George Washington University)で遺伝学の博士号取得、Holland Laboratory でポスドク。2003年に研究公正局に健康科学者管理官(Health Scientist Adminstrators)として入局した。在職期間は約14年 。

● スタッフ:13人

  • 部門長1人(研究博士):上記
  • 科学者捜査官(Scientist-Investigators=健康科学者管理官Health Scientist Adminstrators)は6人(研究博士6人全員、獣医学士1人)
  • 事務補佐員4人
  • エキスパート2人(医師免許2人、研究博士1人):科学者捜査官と同等の業務

● 業務

山崎茂明の2011年の記述を修正引用すると以下のようである。

調査監査部門は、不正行為の調査を実際に行う部門であり、生命科学領域の研究内容を調査できる専門研究者から形成されている。

公衆衛生庁(PHS: Public Health Services)は健康福祉省(DHHS)に属し、生命科学研究を対象にして、毎年アメリカの2000以上の研究機関にたいし、3万件以上の研究助成を提供しており、助成額は300億ドルに及んでいる。

調査監査部門は、この公衆衛生庁によって助成された研究プロジェクトに関係する不正行為の告発に対応し、研究の公正さを監視する責任がある。(出典:山崎茂明:「研究公正局の新たな展開」、あいみっく、32、13-16、2011)

具体的には以下のようだ。参照:Division of Investigative Oversight

  1. NIH研究費の申請者/受給者の研究機関が行なった研究ネカトの調査、また、NIH研究員の研究ネカトの調査・評価・監視。
  2. NIH研究費の申請者/受給者の研究機関が行なった研究ネカトの調査報告書、また、NIH研究員の研究ネカトの調査報告書、監察総監室(Office of Inspector General)の研究ネカトの調査報告書、これらの調査報告書を審理し、研究ネカトを発見した場合は、研究ネカト者に対する行政処分案を作り、研究公正局・所長に提案する。
  3. 研究公正局の総合法律顧問部門(Office of the General Counsel:OGC)が研究ネカト事件を健康福祉省(HHS)・上訴委員会(Appeals Board)の行政法判事(Administrative Law Judge)提示するのだが、事前に研究公正局の総合法律顧問部門を支援する。
  4. 研究ネカトと申し立てられた研究者個人に対し、要求に応じて、健康福祉省(HHS)の政策および手続きについての情報を提供する。
  5. 研究ネカトの疑念や調査依頼をする個人・組織、つまり、研究ネカトを公益通報する個人・組織への助言と技術援助のプログラムを実行し、確立する。
  6. 公益通報者への報復の苦情に対処する規則遵守法(コンプライアンス・プログラム)を確立する。
  7. 研究ネカト事件の監視に加えて、公正教育部門(Division of Education & Integrity)の活動にも寄与し、次の部分を管理する。①迅速な対応技術援助プログラム。②公衆衛生庁(PHS)管理掲示板。③規則遵守法(コンプライアンス・プログラム)。④報復苦情の応答。

★ 公正教育部門(Division of Education & Integrity)

● 部門長:ゼー・ハマット(Zoë Hammatt、法務博士(J.D.)、 「医学の法と倫理」修士号(M.Phil))。
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経歴:米国ロサンゼルスのロヨラ・メリーマウント大学(Loyola Marymount University)で英文学の学士号、英国・グラスゴー大学で「医学の法と倫理」で修士号、ハワイ大学で法務博士(J.D.)を取得し、ハワイで法律事務所に勤務していた。 ハワイ大学の研究公正計画長・兼・研究公正官を経て、2014年6月2日、研究公正局・公正教育部門の部門長として入局した。在職期間は3 年, 1 か月 19 日。

● スタッフ:8人

  • 部門長1人(法務博士(J.D.)、 修士号(M.Phil)):上記
  • アシュアランス・プログラム・マネージャー(Assurance Program、確約プログラム)1人
  • 科学者捜査官(Scientist-Investigators=健康科学者管理官Health Scientist Adminstrators)は3人(研究博士2人、修士1人)
  • フェロー3人 (研究博士1人、公衆衛生学修士 2人)

● 業務

山崎茂明の2011年の記述によると以下のようである。

公正教育部門は、不正告発への対処手順、対処方針、規則などを発展させる責任があり、多くのガイドやモデル案を作成している。

不正行為の定義、不正行為調査の手順、不正行為を告発した申立人の保護、訴えられた被告発人の権利保護、必要な報告事項、控訴のための手順、不正行為への行政的な処罰、情報の公開など、幅広い内容を含んでいる。

この部門は、責任ある科学研究の重要性を普及させるために、大学、学会、専門団体などと協力し、会議やワークショップを企画している。不正行為を防止するための有効な方法は、厳しい行政措置や処罰にあるのではなく、むしろ教育活動にあると考えている。

多くの資料をホームページ上で公開し、著作権を設定せずに、自由な情報利用を推奨している。(出典:山崎茂明:「研究公正局の新たな展開」、あいみっく、32、13-16、2011)

具体的には以下のようだ。参照:Division of Education and Integrity

  1. 公衆衛生庁(PHS)の各局(OPDIVs)にコンサルタントし、公衆衛生庁内・庁外の研究者に信頼研究行為の指導、研究公正性の促進、研究ネカトの防止、研究ネカトの申し立てに大学・研究機関が適切に対処すること、の活動と計画の発展と実施。
  2. 研究公正の政策・手続き・規則の普及のおぜん立て。
  3. 健康福祉省(HHS)の研究公正性政策・手続きの政策分析・評価・研究をする。また、研究ネカト、研究公正性、研究ネカト防止に関する知識の拠点を構築する。
  4. 大学・研究機関のアシュアランス・プログラム(Assurance Program、確約プログラム)の評価・承認の管理。NIHの所内・所外の政策および手続きの承認の管理。
  5. 以下の活動
    Assurance Program:http://ori.hhs.gov/assurance-program
    Annual Report on Possible Research Misconduct
    Review of institutional policies
    RCR Resource Development Program
    ORI Conference and Workshop Program
    Research on Research Integrity Program
    ORI Intramural Research Program
    ORI web site
    ORI Newsletter
    ORI Annual Report
    ORI listservs

★ 研究監督法律チーム部門/総合法律顧問部門(Research Oversight Legal Team / Office of the General Counsel)

2016年6月21日現在、組織はあるが、スタッフの情報が削除されている。2014年の以下の情報を残す(2016年6月21日現在、正しいかどうか不明)。

● 部門長:クリスチャン・マーラー(Christian C. Mahler, 法務博士(J.D.))。

●スタッフ:5人

  • 部門長1人
  • 弁護士(Attorneys)4人(法務博士J.D.4人、研究博士2人)

● 業務

山崎茂明の2011年の記述によると以下のようである。

研究監督法律チーム/総合顧問部は、法学博士号取得者や弁護士資格を持った法律家から組織されている。研究公正局が行う調査活動に付随する法的問題への助言や解決を示し、法的な整備を行う役割であり、調査活動を支えている。(出典:山崎茂明:「研究公正局の新たな展開」、あいみっく、32、13-16、2011)

●6.【科学者捜査官の人生】

160703 KGrace-280x300[1]3人の科学者捜査官(健康科学者管理官)の人生が、2014年5月28日付けのScience Careers誌の記事「Susan Gaidos :Guardians of Science | Science Careers」に描かれている。

調査監督部門の部門長:スーザン・ガーフィンケル、科学者捜査官のクリステン・グレース(Kristen Grace 研究博士、医師免許:写真出典:同記事.)とシャラ・ケイバック(Shara Kabak、研究博士)である。

収入は2014年の公募に、年収$106,263 ~ $138,136(≒1,063万~1,381万円)とあった。少し低額だろうか?

●7.【白楽の感想】

《1》クリス・パスカル前々所長

白楽は、1996–2009年の14年間、所長を務めたクリス・パスカル(Chris B. Pascal)と在任中に少しお話ししたことがある。冗談を言う、なかなか面白い人だったが、2016年3月24日、66歳で亡くなった(CHRIS PASCAL Obituary)。合掌。

《2》デビッド・ライト前所長

クリス・パスカル所長(Chris B. Pascal)の後に就任したデビッド・ライト所長(David Wright)は、2年間勤めて、2014年2月、辞職した。政府官僚機構の無能さに頭にきての辞職だという(2014年3月13日、ジョスリン・カイザー(Jocelyn Kaiser)の記事:Top U.S. Scientific Misconduct Official Quits in Frustration With Bureaucracy)。

米国の政府官僚の無能さと聞いておかしかった。世界はどこでも、優秀な人もいるが、無能な人もいる、ということだろう。

《3》予算と人員

研究ネカトの告発で著名なポール・ブルックス(Paul Brookes)は、2014年3月14日発行の「Science Careers」で、研究公正局の問題点を指摘している。

「研究公正局(Office of Research Integrity)は1件の調査に3~4年かかる。これでは遅すぎる。研究公正局に予算と人員を増やすべきだ」(出典:Elisabeth Pain著、Paul Brookes: Surviving as an Outed Whistleblower | Science Careers)。

しかし、研究公正局にはスタッフが21人もいる。一方、民間の研究ネカト告発サイトの「パブピア(PubPeer)」や「撤回監視(リトラクション・ウオッチ:Retraction Watch)」は数人のスタッフで運営している。それなのに大盛況である。民間でできることがどうして政府でできないのだろうか?

同じビジネスモデルを導入するなり、ボランティア・チームを組織して協力してもらうなど、もっと工夫が必要ではないだろうか?

《4》研究公正官(Research Integrity Officer)

各大学・研究機関に1人の研究公正官(Research Integrity Officer)を置かせ、そのまとめ役を研究公正局がするスタイルは上手だと思う。

研究公正官は、全米の約4,500大学・研究所に各1人はいるので、4,500人はいる。

日本も研究公正官制度を導入するといい。その際、理系学部に科学文化学研究室を設置し、そこの教授に担当させる。このことで日本の研究規範は格段と上昇するだろう。

《5》統計データ

日本には研究者の事件の統計データがほとんどない。だから、何をどうしていいのかわからない。

例えば、「研究ネカトは増えているか、減っているか?」、誰もわからない。

また、「研究ネカト者は再犯率が高いのか、低いのか?」わからない。高いなら、研究者をやめてもらうことが重要だが、データがない。

さらにマズイことに、匿名の事件だと、研究ネカト者は容易に移籍でき、新しい大学・研究機関では、過去の事件歴がわからない。

マスメディアでの報道は匿名でも、国としては人物を特定しておくべきである。その場合、機密事項は政府機関が保持すべきだろう。

米国でも「研究ネカトは増えているか、減っているか?」、誰もわからないと、研究公正局の前所長・デビッド・ライト(David Wright)は言う。(出典:2014年4月4日のジョスリン・カイザー(Jocelyn Kaiser)の記事:Former U.S. Research Fraud Chief Speaks Out on Resignation, ‘Frustrations’ | Science/AAAS | News

質問(カイザー記者):研究ネカトは増えていますか? 研究ネカトが増えているから、論文撤回が増えているのですか?

答(デビッド・ライト):誰れも知らないと思う。1つの見方として、研究ネカトの実際の行為数は増えていないけど、検出技術とオンライン出版が増えたことで、研究ネカトを検出することが容易になったという意見はある。

【備考】
① 山崎茂明(2011):「研究公正局の新たな展開」、あいみっく、32、13-16、2011(保存版
② 白楽ロックビル(2011):『科学研究者の事件と倫理』、講談社、東京: ISBN 9784061531413
★旧版:2016年6月20日以前
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。