平成の5大ネカト事件:第2位-第5位

2019年8月19日掲載、執筆者:世界変動展望 著者

ワンポイント:平成時代の5大ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)事件の第2位から第5位の事件を選んだ。各事件の内容はすでに詳細な記述が別途あるので、再記しなかった。ここでは、今後のネカト改善につながるように各事件への感想を主体に記述した。本稿がネカト改善に役立てば幸いである。

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目次(赤字をクリックすると内部リンク先に飛びます)
3.ディオバン事件(第2位)
4.藤井善隆氏の捏造世界記録(第3位)
5.STAP細胞事件(第4位)
6.東大医学系事件(第5位)
7.おわりに
コメント
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●3.【ディオバン事件(第2位)】

平成の5大ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)事件の第2位に、平成20年(2008年)に糾弾され始めたディオバン事件を選んだ。大手メディアの報道は、平成25年(2013年)3月28日の毎日新聞の記事が最初である。

★事件内容

ディオバン事件の内容については、以前、詳しく記載したのでそちらを参照していただきたい。https://web.archive.org/web/20150511220605/http://blog.goo.ne.jp/lemon-stoism/e/170ae144031fdce45b646e58b5f8b85e

冒頭部分を引用すると以下のようである。

ディオバン事件は2013年に発覚した日本最大の臨床研究不正事件で日本の臨床研究に対する信頼を大きく失墜させ、製薬会社と医師、病院、研究機関との癒着、臨床研究に対する制度の甘さ、日本高血圧学会の対応等が問題視された。

この事件はディオバン(一般名 バルサルタン)というノバルティス社が開発した看板商品である降圧剤の臨床研究を行ったJikei Heart Study(東京慈恵会医大、代表者 望月正武)、Kyoto Heart Study(京都府立医科大学、代表者 松原弘明)、SMART(滋賀医大、代表者 柏木厚典)、VART(千葉大学、代表者 小室一成)、Nagoya Heart Study(名古屋大学、代表者 室原豊明)の全てにノバルティスファーマ社社員の白橋伸雄が統計解析者として関与し、論文では大阪市立大学の肩書だけ示して利益相反を隠蔽した関連1関連2)。

また、 『赤い罠 ディオバン臨床研究不正事件』(桑島巖、2016年9月、日本医事新報社)や『偽りの薬 バルサルタン臨床試験疑惑を追う』(河内敏康、八田浩輔、2014年11月、毎日新聞社)の著書が上梓されている。 

★感想

ディオバン事件は製薬会社と医学界の癒着によって生じた社会悪ともいえる非常に悪質な事件で、被害額等からも甚大な損害が生じたと思います。

医学界が企業からの奨励金に大きく影響を受けている事や、成果や予算を求めて製薬会社にとって都合のよい成果を捏造してでも出そうとする研究者や医師の問題は、世間に伝えていく価値があると思います。

また、調査の過程で文部科学省・厚生労働省が調査に関わろうとせず、ほとんど研究機関に丸投げして、実体解明が進まず、任意調査の限界を示したという点でも重要な事件だったと思います。

 大学の任意調査の段階では、改ざんの実行犯とされた白橋氏が改ざんを否定したため、不正を認定できず、特捜の強制捜査及び刑事裁判ではじめて白橋氏の改ざんが認定されたというのは強制捜査権を持たない現在の調査制度では、被告発者にしらをきられると真相究明や改善ができないという点で非常に問題だと思います。

 改善点としては奨励金を公的資金に変えたり、中立公正な機関に強制捜査権を与えたり、省庁の体質改善が必要だと思います。

●4.【藤井善隆氏の捏造世界記録(第3位)】

平成の5大ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)事件の第3位に、藤井善隆氏の事件を選びました。藤井善隆氏のデータ捏造は、平成12年(2000年)に外国から最初に指摘されたが日本は無視し、日本で問題にしたのは12年後の平成24年(2012年)だった。

ウィキペディアによると、事件は以下のようだ。出典:藤井善隆 – Wikipedia

藤井 善隆(ふじい よしたか)は、日本の麻酔学者。2012年に、少なくとも172本の学術論文においてデータを捏造していたことが発覚し、ひとりの著者について撤回が必要になった学術論文の件数において、新記録を作ったものと考えられている

藤井は1987年に東海大学医学部医学科を卒業して、東京医科歯科大学医学研究科に進み、麻酔蘇生学を専攻した。1991年に、「Diaphragmatic Fatigue and its Recovery are Influenced by Cardiac Output(横隔膜疲労とその回復は心拍出量に影響される)」により東京医科歯科大学から医学博士の学位を取得した。藤井は、東京医科歯科大学、筑波大学、東邦大学など様々な研究機関で働いてきた。

藤井が捏造データの発表を始めたのは1993年であったようだ。藤井の不正行為に対する最初の告発は、2000年に『Anesthesia & Analgesia』誌の「編集者への手紙 (Letter to the editor)」欄に寄せられたピーター・クランケ (Peter Kranke)、クリスチャン・アプフェル (Christian Apfel) らの寄稿であった。

★感想

この事件は20年以上にわたって発表された170編以上の論文が捏造と判断され、たくさんいた共著者の全てが不正行為に関与していないと認定された不思議な事件として選んだ。

黒木先生の著書『研究不正 – 科学者の捏造、改竄、盗用』(黒木登志夫、 2016年4月、中公新書)でも言及されているが、二重盲検を使った大規模な臨床試験で指導者であった豊岡氏が気づかなかったり、他の共著者も捏造に気づかなかったという調査結果であり、異常な事態であったと思う。

また、2000年頃に海外から研究不正の通知があったにも関わらず、無視したり、調査をしなかった事が研究不正を拡大させる要因になってしまった。

例えば共著者の齋藤氏は調査報告書でギフトオーサーを自白して捏造責任を逃れたり、無視をして長期間調査をしなかったというのは、見立病院・弘前大事件や井上明久氏の事件で も起こった事だ。

不都合な事は無視する、関わらないで自然消滅するのを待つといった体質の問題、業績評価として論文数を重視する結果、大量の捏造論文が発生した事など重要な問題がある。なお、これは藤井氏の事件に限った事ではないと思う。

 私は研究不正の問題が重大である事などの啓発効果を通して、研究公正の問題の重要性を世間に主張することで改善の努力をしてきたが、多くの研究者や省庁、大学の本音は、不正問題に蓋をしておきたいと思っているのではないでしょうか。

 

●5.【STAP細胞事件(第4位)】

平成の5大ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)事件の第4位に、平成26年(2014年)に糾弾されはじめたSTAP細胞事件を選んだ。

ウィキペディアによると、事件の概略は次のようだ。出典:刺激惹起性多能性獲得細胞 – Wikipedia

2014年1月に小保方晴子(理化学研究所)と笹井芳樹(理化学研究所)らが、チャールズ・バカンティ(ハーバード・メディカルスクール)や若山照彦(山梨大学)と共同で発見したとして、論文2本を世界的な学術雑誌ネイチャー(1月30日付)に発表した。発表直後には、生物学の常識をくつがえす大発見とされ、小保方が若い女性研究者であることに注目した大々的な報道もあって世間から大いに注目された。

しかし、論文発表直後から様々な疑義や不正が指摘され、7月2日に著者らはネイチャーの2本の論文を撤回した。その後も検証実験を続けていた理化学研究所は、同年12月19日に「STAP現象の確認に至らなかった」と報告し、実験打ち切りを発表。同25日に「研究論文に関する調査委員会」によって提出された調査報告書は、STAP細胞・STAP幹細胞・FI幹細胞とされるサンプルはすべてES細胞の混入によって説明できるとし、STAP論文はほぼ全て否定されたと結論づけられた。

★感想

研究不正の問題としては第1位、第2位の事件の方が重大だと思いますが、平成5大事件なら この事件を扱わないわけにいかないでしょう。騒がれたという意味では日本最大の科学スキャンダルだと思います。

 大きな名声や予算の獲得のために画期的な万能細胞に多くの研究者が騙されてしまって悲惨な結果になってしまいました。

 実力や実績の乏しい若手研究者に対してチャンスを与えるためにユニットリーダーにしたのは画期的な成果を生む事もあるでしょうが、完全に裏目に出てしまった事や、あれほど著名な研究者がたくさんいたのに、間違いや捏造だらけの研究論文を修正することなく発表してしまった事などたくさんの問題がありました。

思えば、シェーン事件のバトログ博士やスペクター事件のラッカー博士など著名な研究者が共著者になっていたために、盲目的に近い形で研究成果を信じてしまったという悪い体質は長期間繰り返されています。

 韓国の人クローン胚ES細胞捏造事件の時もそうでしたが、被疑者が著名人だと擁護する人と批判する人の二手に分かれて論戦するような現象も、STAP細胞事件ではあったと思います。

結果として捏造だったという事も影響していますが、擁護する人や団体の中には小保方晴子氏の人柄や嘘をついているように見えないといった非科学的根拠で、まるで信者のように無条件の擁護をしている人たちもいました。小保方氏の擁護は現在も続いているのかもしれません。

この問題では余りに社会的影響が強すぎたために、第二次調査では小保方氏が実験ノートや生データを見せなかったにも関わらず捏造等が認定されなかった件がたくさんありました。

文科省ガイドラインなどで生データ等の不提示によって疑いを覆せない場合は、不正行為とみなされるというルールになっていたにも関わらず、裁判を恐れてルールを捻じ曲げた扱いをしたのは非常に問題があります。

おそらく調査委員になっていた弁護士の意見で、裁判での敗訴を回避するために確実な証拠があるものに限って不正行為を認定したのでしょうが、裁判での立証責任や証明の程度が研究不正の調査や裁定の国際標準と乖離していて、理不尽な結果になっている事も非常に大きな問題だと思います。

 井上明久総長の事件や子宮頸がんワクチン訴訟で告発側が敗訴したのも、このことに関係しているのではないかと思います。

理研が不正行為を隠蔽したり、論文を撤回するから調査をしないといった不公正な態度を示した事も、現在の研究機関は不正行為をとにかく扱わない方向で動いていて、自浄作用が働かない事を世間に示したと思います。

★改善策

改善点はこれまでもいろいろ述べられましたが、共著者で研究論文をきちんとチェックしたり、大御所の権威を頼るのではなく科学的な視点で、きちんと判断したり、研究者の実績や実力をきちんと判断して人事を行うなど、裁判の立証責任、証明度の改善など いろいろな課題があると思います。

 

●6.【東大医学系事件(第5位)】

平成の5大ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)事件の第5位に、平成28年(2016年)にOrdinary researchersが告発した東大医学系研究者の事件を選んだ。

ウィキペディアによると、事件の概略は次のようだ。出典:Ordinary researchers – Wikipedia

2016年8月14日付の告発文で、 東京大学の医学系教授が主催する4研究室の計11報の論文について告発を行った。告発文によると、東京大学、文部科学省、厚生労働省、JST、JSPS、AMED、内閣府、掲載学術誌の編集部、APRIN、日本分子生物学会、日本生化学会、マスコミ各社に告発文を送付したとされている。告発文は70ページ弱で、2003年から2015年の間にNature誌、Cell誌、The New England Journal of Medicine誌などの世界最高峰のジャーナルに掲載された論文の画像やグラフに不自然な点があることを具体的に指摘した。告発文には被告発者の実名が名指しされている。被告発者4名のうち3名は紫綬褒章受章者である。

この事件は多くの研究者が推測していると思いますが、東大医学系のモラルハザードによって黒を白にするとか、規則を無視した取扱いが常態的に行われた事件だと思います。

現在の研究機関が抱えている規則無視、黒を白にするといった非常に悪質な問題を示した例として選びました。

この件に限らず、井上明久元総長の事件、岡川梓氏(国立環境研究所)、伴金美氏(大阪大学名誉教授)らの事件、田畑泰彦氏(京都大学)らの事件など、同様のものはいくつもあります。

 

●7.【おわりに】

他にもたくさんありますが5つというと上記のものになります。

結局、日本で発覚した年を第1位-第5位の順で示すと、平成23年(2011年)、平成25年(2013年)、平成24年(2012年)、平成26年(2014年)、平成28年(2016年)の事件を選んだことになりました。

平成時代(1989年1月8日-2019年4月30日)の5大ネカト事件は、全部、平成20年代に発覚した事件で、平成時代の最初の3分の2の時期にはありませんでした。

日本全体の改善策として、何よりも研究不正の問題を真摯に扱う人や機関が一刻も早く必要だと思います。そのためには、追及者を保護するシステム、何らかの優遇措置などの対策も必要です。

また、拘束力のある規則の制定や第三者機関の設立など前から繰り返し主張している事を一刻もはやく実現して欲しいと思います。

世界変動展望 著者

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