ブライアン・ワンシンク(Brian Wansink)(米)

2018年1月10日掲載。

ワンポイント:コーネル大学(Cornell University)・教授で、栄養学(食品消費の行動心理学)では米国の第一人者。2007年、イグノーベル賞を受賞し、メディア出演も多い有名人である。2017年(56歳)、多数の論文に、自己盗用、データ重複使用、データ操作、不適切な統計処理などのクログレイが指摘された。少なくとも50論文に疑念があり、6論文が撤回され、13論文が訂正された。2017年4月、コーネル大学はネカトはなかったと発表したが、2018年1月9日現在、再調査をしている。ネカト・クログレイで失脚すると損害額の総額(推定)は6億9800万円。この事件は、「2017年ネカト世界ランキング」に記述した「「Scientist」誌の2017年の論文撤回上位10論文:2017年12月18日」の1つである。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ブライアン・ワンシンク(Brian Wansink、写真出典)は、米国のコーネル大学(Cornell University)・教授で、専門は栄養学(食品消費の行動心理学)である。食品消費の行動心理学では米国の第一人者で「食品のシャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes of Food)」と呼ばれている。100報以上の学術論文・書籍を出版するだけでなく、一般向けの有名な本(邦訳あり)も出版している。2007年イグノーベル賞を受賞した。テレビ番組の「オプラ」「60 ミニッツ」「レイチェル・レイ」に出演し、多数のメディアに露出する有名人である。

ワンシンク教授はコーネル大学に移籍する前のイリノイ大学・教授時代に、イリノイ大学に食品商標研究所(Food and Brand Lab)と消費者教育財団(Consumer Education Foundation)を設立した。その2つの組織から、食べもの消費行動に関する研究成果を学術界に、知識を一般社会に発信している。コーネル大学に移籍した時、それら2つの組織をコーネル大学に移した。

2017年(56歳)、自分のブログで「研究論文の出版が1つもできなかったデータセットを“救済”し、4つの論文を6か月で出版出版した院生」の記事を書いた。この記事が切っ掛けで、研究成果にクログレイ疑念が指摘された。

結局、数十報の論文に、自己盗用、データ重複使用、データ操作、不適切な統計処理というクログレイがあると指摘された。

2017年4月5日(56歳)、コーネル大学が調査し、ワンシンク教授にネカトはなかったと発表した。

2017年11月29日(57歳)、「BuzzFeed」記事は、ワンシンク教授の少なくとも50論文に疑念があり、4論文が撤回され、少なくとも8論文が訂正されたと報じた。

そして、コーネル大学は2回目の調査を開始した。

この事件は、「2017年ネカト世界ランキング」に記述した「「Scientist」誌の2017年の論文撤回上位10論文:2017年12月18日」の1つである。

コーネル大学(Cornell University)。写真出典By sach1tb – http://www.flickr.com/photos/sach1tb/274991658/, CC BY-SA 2.0, Link

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:スタンフォード大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1960年6月28日
  • 現在の年齢:57 歳
  • 分野:栄養学(食品消費の行動心理学)
  • 最初の不正論文発表: 1994年(34歳)
  • 発覚年:2017年(56歳)
  • 発覚時地位:コーネル大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は、オランダのライデン大学のティム・ファン・デル・ジー(Tim van der Zee)、米国のオムネス研究(Omnes Res)のヨルダン・アナヤ(Jordan Anaya)、オランダのフローニンゲン大学のニコラス・ブラウン(Nicholas J L Brown)の3人で、論文で指摘した。
  • ステップ2(メディア):「BuzzFeed」紙のステファニー・リー(Stephanie M. Lee)記者。「撤回監視(Retraction Watch)」、「パブピア(PubPeer)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①コーネル大学・調査委員会。1回目はシロと結論。②コーネル大学・調査委員会。2回目は現在調査中。③各学術誌・編集部
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:コーネル大学の1回目調査委員会の報告書はある。
  • 不正:自己盗用、データ重複使用、データ操作、不適切な統計処理。クログレイでネカトではない?
  • 不正論文数:約50論文に疑念があり、少なくとも6論文が撤回され、13論文が訂正
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 損害額:総額(推定)はネカト・クログレイで失脚すると、6億9800万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が27年間=5億4千万円。③院生の損害が1人1000万円で1人として、=1千万円。④外部研究費は多いと思うが、額は不明で、額は②に含めた。⑤調査経費(大学と学術誌出版局)が5千万円。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。4報撤回=800万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 結末:大学は調査中なので、辞職を含め処分なし。

●2.【経歴と経過】

  • 1960年6月28日:米国・アイオワ州で生まれる
  • 1982年(22歳):ウェイン州立大学(Wayne State College (Nebraska))で学士号取得
  • 1984年(24歳):ドライク大学(Drake University)で修士号取得:化学
  • 1990年(30歳):スタンフォード大学(Stanford University)で研究博士号(PhD)を取得:消費行動学
  • 1990–1994年(30–34歳):ダートマス大学・タック・ビジネススクール(Tuck School of Business at Dartmouth College)・教授
  • 1995–1997年(35–37歳):ペンシルバニア大学・ウォートン・スクール (Wharton School at the University of Pennsylvania)・教授
  • 1997–2005年(37–45歳):イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois at Urbana-Champaign)・教授
  • 1997年(37歳):イリノイ大学に食品商標研究所(Food and Brand Lab)を設立
  • 1999年(39歳):イリノイ大学に消費者教育財団(Consumer Education Foundation)を設立
  • 2005年(45歳):コーネル大学(Cornell University)・教授。食品商標研究所と消費者教育財団もコーネル大学に移転
  • 2007–2009年(47–49歳):コーネル大学を2年間休職し、農務省栄養政策促進センター所長(USDA’s Center for Nutrition Policy and Promotion
  • 2017年(56歳):研究成果にクログレイ疑念

●3.【動画】

【動画1】
事件を解説した動画だが、トークが主体で、英語が聞き取れないとつまらない。
「An Oral History of the Cornell Food and Brand Lab Scandal – YouTube」(英語)49分41秒。
2017/04/10 – アップロード元: Jordan Anaya

【動画2】
ワンシンク教授の栄養学(食品消費の行動心理学)の動画はたくさんある(事件ニュースではない)。ワンシンク教授がスーパーマーケットで食品を購入したり、お皿のサイズと盛るサラダの量を解説:「Food Rebel | Brian Wansink | Cornell University」(英語)2分11秒。
FoodForwardTVが2015/03/16 に公開

【動画3】
ワンシンク教授の栄養学(食品消費の行動心理学)の動画はたくさんある(事件ニュースではない)。「More tips from Dr. Wansink – NBC News」
2015年1月2日放映、(英語)1分54秒。

●4.【日本語の解説】

事件に対する日本語の解説は見つからなかった。

★2007年イグノーベル賞受賞

出典 → イグノーベル賞受賞者の一覧 – Wikipedia

栄養学賞:ブライアン・ワンシンク(コーネル大学)

被験者には内緒で自動的にスープを注ぎ足す底なしの皿を使い、人間の食欲の限界を調査したことに対し。

ワンシンクは「ヒトは如何に無意識にモノを食うか」ということを調査[70]し、その中で被験者に気づかれないようにスープを注ぎ足せるスープを「一杯」飲ませる実験を行った。
その結果、目の前に残っている食べ物や飲み物の量で食欲が影響されると結論付けた。

★ブライアン・ワンシンク(著)、中井京子(訳):『そのひとクチがブタのもと』(2007年3月)

原書:『Mindless Eating』(2006年10月17日)https://en.wikipedia.org/wiki/Mindless_Eating

以下は、この著書に対する書評である。

出典 → ココ(本の表紙も)、(保存版

原書『Mindless Eating』の表紙

2012年8月7日:りんどん

まるでゴムのような、ものすごく不味いポップコーンでさえ、大きな器に入れて出されると、小さな器に入れられた人よりも食べ過ぎてしまうらしい。

私たちは、見た目、容器、広告、行動、習慣、色々なものから、思いがけないほどの影響を受けている。それらの多くは、食べさせよう、もっと食べさせよう、としてくるのだから、これらの原理を知らずして“食べ過ぎを改める”なんて無謀だ。

2007年5月10日:atom

人が食べるのは空腹によるものだけではない。
肥満の原因は無意識のうちに余計に食べ過ぎてしまうことである。

この著作では人の食に対する意識・無意識をさまざまな実験により明らかにしていく。
 ひとり分の食事の分量はどれだけなのか
 ビュッフェで料理を取りすぎるのはなぜか
 塩分、糖分、油分の多い食品を好むのはなぜか
 野菜をたくさん食べるにはどうすればいいか
 料理の名前の付け方で味の印象が変わる?
科学ではなく行動学的なアプローチにより分析する。
これにより無意識に摂ってしまう食事を自然と健康的なものにするにはどうすればいいかが分かってくる。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★食品消費の行動心理学

https://dyson.cornell.edu/people/brian-wansink

ブライアン・ワンシンク教授(Brian Wansink)が研究している食品消費の行動心理学は軽い話なら面白い。

例えば、以下のような食品行動があるとワンシンク教授は結論している。

  • 男は女が一緒にいると多く食べる。
  • 有機とラベル表示があると美味しく感じる。
  • 大きなお皿(直径約30cm)から小さなお皿(直径約25cm)に変えると22%少なく食べる。
  • 低脂肪とラベル表示がある食品では、人々は結局、総カロリー量で16-23%多く食べる。
  • 人々は細長いコップに比べ低いコップに液体を28%多く注ぐ。
  • 食べ物に切れ目を入れておくと子供は行儀よく食べる。 → 出典:Cut Kids’ Food Into Bite-Sized Pieces for Good Behavior at Meals

https://lifehacker.com/cut-kids-food-into-bite-sized-pieces-for-good-behavior-1568593269

★事件の発端

事件は、些細なことから始まった。

2016年11月21日、ワンシンク教授は自分のブログサイト「より健康でより幸せ(Healthier & Happier)」に「決して”ノー”と言わなかった院生(The Grad Student Who Never Said “No”)」というタイトルの記事を書いた。現在はそのブログは削除されているが、保存してくれた人がいた → https://archive.is/C7LpN

記事は、古い実験のデータセットを再分析することに同意した短期滞在の院生に関するもので、物語をかいつまむと以下のようだ。

ワンシンク教授と彼の仲間の研究者は、イタリア料理のビュッフェレストランで1か月間、食品消費行動に関する実験を行ない、データを収集した。 ただ、残念ながら、そのデータを解析した結果は元の仮説を支持しなかった。 しかし、「私たちは多くの時間と自分のお金をつぎ込んだので、何か“救済”になるもの(つまり、論文出版)がなければならない」とワンシンク教授は短期滞在の院生に語った。

その短期滞在の院生は記事では特定されていないが、調べると、2013年9月1日~2014年3月31日の6か月間滞在したトルコからの留学生のオゲ・シージ(Özge Siğirci、写真出典https://foodpsychology.cornell.edu/about#toc-id-5)と思われる。

ワンシンク教授は、以前、同じデータセットの再分析を別のポスドクに依頼したが、ポスドクに分析を断られていた。ところが「決して”ノー”と言わなかった院生」のオゲ・シージは、再分析に熱心に取り組み、1つのデータセットから4つの論文を出版し、かつ、研究室に到着してから6か月以内に5報の論文原稿をまとめた。つまり、研究論文の出版が1つもできなかったデータセットを“救済”し、4つの論文を出版した。

ワンシンク教授は、院生のオゲ・シージは指導教員が提案したすべての研究アイデアをものにした。つまり、「指導教員の提案した研究アイデアに熱心に取り組むと、豊かな論文出版ができるよ」という教訓である。

しかし、ブログを読んだ読者は、ワンシンク教授らの論文は「ピーハッキング(p-hacking)」という不適切な統計処理をしたのではないかと疑った。

https://foodpsychology.cornell.edu/discoveries/color-your-plates-matters

★告発

2017年1月(56歳)、オランダのライデン大学のティム・ファン・デル・ジー(Tim van der Zee)、米国のオムネス研究(Omnes Res)のヨルダン・アナヤ(Jordan Anaya)、オランダのフローニンゲン大学のニコラス・ブラウン(Nicholas J L Brown)の3人が明確な懸念を論文として発表した。

ティム・ファン・デル・ジー(Tim van der Zee)https://www.universiteitleiden.nl/en/staffmembers/tim-van-der-zee#tab-1
ヨルダン・アナヤ(Jordan Anaya)https://nature.berkeley.edu/news/2009/05/passion-research-graduating-microbial-biology-senior-jordan-anaya-named-university
ニコラス・ブラウン(Nicholas J L Brown) https://twitter.com/steamtraen

彼らはワンシンク教授の5報の論文のうち4報を分析し、不可能な値や誤ったANOVA分析やp値など、合計150個の疑わしい数字を見つけた。
→ 2017年1月25日論文:Statistical heartburn: An attempt to digest four pizza publications from the Cornell Food and Brand Lab [PeerJ Preprints]

つまり、ワンシンク教授は、「ピーハッキング(p-hacking)」と呼ばれているクログレイの統計処理を行なって研究成果を得ていたと思われる。元データを分析しないとクログレイを証明できない。ワンシンク教授は、彼ら3人とのやり取りの途中から、他人が元データを見るのを拒否した。それで、彼ら3人の分析と推定である。

「ピーハッキング(p-hacking)」という統計処理はどういうものか、専修大学・人間科学部・岡田謙介が統計関連学会連合大会2016@金沢で発表したスライド11枚目を以下に引用しよう。

p-hacking (Simmons et al, 2011,PscychSci)

  • 心理学の研究論文における一般的な(当時)報告の基準を満たしつつ,p値を小さくする操作
  • 結果を見ながら参加者を少しずつ足して検定を繰り返し,有意になったところでとめる
  • 多くの説明変数・共変量を用いて分析を行い,有意になったものだけを報告する 
  • 行った条件や測定した変数の一部だけ報告 
  • 研究者の自由度(researchers’ degrees of freedom)が大きいことによる図の捏造などとは質的に異なるかもしれないが,科学的・社会的にみて問題のある研究慣習(QRPs)
    出典:http://www3.psy.senshu-u.ac.jp/~ken/jjsm2016.pdf
    Simmons et al, 2011,PscychSci 論文 → http://opim.wharton.upenn.edu/DPlab/papers/publishedPapers/Simmons_2011_False-Positive%20Psychology.pdf

ヨルダン・アナヤらは、ワンシンク教授の他の6論文にも間違いを見つけた。

2017年3月21日、3人のうちの1人であるオランダのライデン大学のティム・ファン・デル・ジー(Tim van der Zee)は自分のサイトで、自己盗用、データ重複使用、データ操作、不適切な統計処理の4つのクログレイについて、ワンシンク教授の論文を1つ1つ分析し、多数の論文にクログレイがあると指摘した。
→ The Wansink Dossier: An Overview – THE SKEPTICAL SCIENTIST、(保存版

さらに、新聞、パブピア、ウェブでワンシンク教授の論文へクログレイが強く指摘され、コーネル大学は調査委員会を設けて調査を始めた。

2017年4月5日(56歳)、コーネル大学は当初指摘されていたワンシンク教授の4報の論文について調査した結果、「間違い」はあったが、ネカトはなかったと発表した。なお、調査結果を詳述するレポートでもある「ワンシンク教授の説明」文書も公開した。
→ 2017年4月5日のコーネル大学記事:Cornell University Statement Regarding Questions About Professor Brian Wansink’s Research、(保存版
→ 2017年4月のワンシンク教授の説明:Research Statement April 2017 | Food and Brand Lab、(保存版

しかし、その後、当初指摘された4論文以外にも、ワンシンク教授の数十報の論文にクログレイがあると指摘されるようになった。

2017年11月29日の新聞は、ワンシンク教授の少なくとも50論文に疑念があり、4論文が撤回され、少なくとも8論文が訂正されたと報じている。そして、コーネル大学は2回目の調査を開始した。

2018年1月9日現在、コーネル大学は2回目の調査結果を発表していない。

https://www.buzzfeed.com/stephaniemlee/brian-wansink-cornell-smarter-lunchrooms-flawed-data?utm_term=.qa6aAnKAO#.ikdzkoVkW

【クログレイの具体例】

★アンケートの回答者はいつも770人

オランダのフローニンゲン大学のニコラス・ブラウン(Nicholas J L Brown)が最初に指摘した。
→ Nick Brown’s blog: Strange patterns in some results from the Food and Brand Lab

「BuzzFeed」のステファニー・リー(Stephanie M. Lee)記者がさらに分析し、記事にした。
→ 2017年11月23日:This Ivy League Scientist Did A Bunch Of Food Surveys And Somehow Got The Same Number Of Responses Each Time

ワンシンク教授は、2001年の論文で大豆食の健康について1002人、2003年の論文で家庭料理について2000人、2004年の論文で大豆食について1600人にアンケート用紙を配布した。

そして、驚いたことに、3件のアンケートでの回答者は全部770人だった。

こんな偶然ってあるだろうか? ありませんね。

そして、ワンシンク教授の「2004年のAmerican Dietetic Association」論文、「2006年のAppetite」論文でも、回答者数は770人なのだ。

さらに、ワンシンク教授は、2005年、2007年、2014年の論文で、770人の回答者を対象に、1回分の軽食パッケージにする利点の証拠を挙げていた。つまり、これら3論文も回答者数は770人なのだ。

例えば、「770人の北米人を対象としたアンケート調査の結果、回答者の57%が、これらの軽食パッケージに最大15%多く支払う」と書いていた。

合計すると8報の論文の別々のアンケート調査で、8回とも、回答者が770人って、どう考えても、偶然ではないでしょう。

https://futurefood2050.com/say-good-bye-to-willpower/

★自己盗用

2017年9月12日、ワンシンク教授の単著の「2015年のPsychology & Marketing」論文は、自分の単著の「2013年のChildhood Obesity」論文から、多量に逐語盗用していた、と指摘された。
→ CORRIGENDUM – – 2017 – Psychology & Marketing – Wiley Online Library

盗用論文:「2015年のPsychology & Marketing」論文
Wansink, B. (2015). Change their choice! Changing behavior using the CAN approach and activism research. Psychology & Marketing, 32, 486–500.
First published online: 20 April 2015
DOI: 10.1002/mar.20794

被盗用論文:「2013年のChildhood Obesity」論文
Wansink, B. (2013). Convenient, attractive, and normative: The CAN approach to making children slim by design. Childhood Obesity, 9(4)277278.

自己盗用した部分と量を具体的に以下に2例だけ示す。集計すると、1,376 単語も引用なしに自己盗用していたのである。

  • p. 487 “Even though … apple rather than the cookie” (90 words)
  • p. 487 “In 2009 … (Wansink, 2013)” (220 words).

この「2015年のPsychology & Marketing」論文は、撤回されず、訂正論文となった。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年1月9日現在、パブメド(PubMed)で、ブライアン・ワンシンク(Brian Wansink)の論文を「Brian Wansink [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2001~2017年の17年間の149論文がヒットした。

「Wansink B[Author]」で検索すると、2001~2017年の17年間の155論文がヒットした。

2018年1月9日現在、「Wansink B[Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、2論文が撤回されていた。

  1. How Traumatic Violence Permanently Changes Shopping Behavior.
    Sigirci O
    , Rockmore M, Wansink B.
    Front Psychol. 2016 Sep 6;7:1298. doi: 10.3389/fpsyg.2016.01298.
    eCollection 2016.
    Retraction in:
    Front Psychol. 2017 Nov 27;8:2140.
    PMID:27656152
  2. Can branding improve school lunches?
    Wansink B, Just DR, Payne CR.
    Arch Pediatr Adolesc Med. 2012 Oct;166(10):1-2. doi: 10.1001/archpediatrics.2012.999. No abstract available.
    Retraction in:
    JAMA Pediatr. 2017 Sep 21;:null. JAMA Pediatr. 2017 Dec 1;171(12 ):1230.
    PMID:22911396

2018年1月9日(57歳)現在、ワンシンク教授の少なくとも50論文に疑念があり、6論文が撤回され、13論文が訂正されている。

★パブピア(PubPeer)

2018年1月9日現在、「パブピア(PubPeer)」はブライアン・ワンシンク(Brian Wansink)の19論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》事件は未決着

http://www.weighthacker.com/tag/brian-wansink/

ブライアン・ワンシンク(Brian Wansink)の事件は、2018年1月9日現在、自己盗用、データ重複使用、データ操作、不適切な統計処理などのクログレイが指摘され、6論文が撤回され、13論文が訂正された。

2017年4月5日(56歳)にコーネル大学はワンシンク教授にネカトはなかったと発表したが、その後、クログレイがさらに指摘され、コーネル大学は2回目の調査をしている。

2018年1月9日現在、コーネル大学は2回目の調査結果を発表していない。

今後、コーネル大学はワンシンク教授をネカトでクロと結論し、解雇するかもしれない。

《2》早期発見・適切処分

ワンシンク教授のようにメディア出演が多い有名人は、ネカトやクログレイにかなり注意しなければならないのに、脇が甘い。

自己盗用、データ重複使用、データ操作、不適切な統計処理などの論文を発表すれば、そこにネカトやクログレイの証拠が示されている。多くの人が自由に不正を検証できる。証拠は隠滅できない。弁解もできない。

ただ、最初の不正論文は1994年(34歳)に発表されている。ワンシンク教授の少なくとも50論文に疑念があると2017年に指摘されたが、24年間もの長期間、指摘してこなかった状況も問題である。この責任はどこの誰にあるのか?

ワンシンク教授の提唱してきた食品消費の行動心理学での「食べ方の教訓」は、教訓の基礎となる科学データにねつ造・改ざんがあったとしても、すでに社会に根付いてしまった。つまり、根付いてしまった「食べ方の教訓」は、間違っている可能性がある(高い?)ということだ。

もっと早く、つまり、1994年(34歳)にワンシンク教授のネカト・クログレイを指摘していれば、悪影響はこんな広範にならなかったハズだ。

法則:「ネカトでは早期発見・適切処分が重要である」。

http://www.washington.edu/news/2013/10/08/profile-brian-wansink-slim-by-design-author-and-2013-hogness-lecturer/

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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Brian Wansink – Wikipedia
② 2017年2月2日以降の「撤回監視(Retraction Watch)」のブライアン・ワンシンク(Brian Wansink)記事群:You searched for Brian Wansink – Retraction Watch at Retraction Watch
③ ステファニー・リー(Stephanie M. Lee)記者の「BuzzFeed」記事群。BuzzFeed Search 。(1)2017年10月19日:Here’s How A Controversial Study About Kids And Cookies Turned Out To Be Wrong — And Wrong Again、(保存版)、(2)2017年11月23日:This Ivy League Scientist Did A Bunch Of Food Surveys And Somehow Got The Same Number Of Responses Each Time、(保存版)、(3)2017年11月29日:Cornell University Is Investigating This Controversial Research About Eating Behaviors、(保存版)、(4)2018年1月4日:Food Scientist Brian Wansink Is Getting Yet Another Paper Retracted, This Time For “Unreliable Data”(保存版)
④ 2017年4月7日のベス・スカレクキ(Beth Skwarecki)記者の「LifeHacker」記事:Some of Our Best Food Hacks May Be Wrong、(保存版)
⑤ 2018年1月9日現在、「パブピア(PubPeer)」はブライアン・ワンシンク(Brian Wansink)の19論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.
⑥ 2017年2月8日のジェシー・シンガル(Jesse Singal)記者の「Cut」記事:A Big Diet-Science Lab Has Been Publishing Shoddy Research — Science of Us、(保存版)
⑦ 2017年3月17日のトム・バートレット(Tom Bartlett)記者の「Chronicle of Higher Education」記事:Spoiled Science – The Chronicle of Higher Education、(保存版
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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