アンドリュー・ウェイクフィールド (Andrew Wakefield) (英)

【概略】
アンドリュー・ウェイクフィールド (Andrew Jeremy Wakefield)は、英国の医師・生物医学研究者で、1998年に「新三種混合ワクチン(MMR vaccine)・予防接種で自閉症になる」という論文をランセット誌に発表した。

この論文は、データ「ねつ造」論文で、現在撤回されている。
141014 ウェイクフィールドt1larg.andrew.wakefield.gi[1]
写真:Retracted autism study an ‘elaborate fraud,’ British journal finds – CNN.com

2010年1月、英国の医事委員会(General Medical Council)は、ランセット誌論文の不正を指摘し、ウェイクフィールドの英国・医師免許を取り消した。

現在、ワクチンと自閉症の関連は否定されている。しかし、否定後も、論文を信じたい英国、フランス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの人々は新三種混合ワクチン(MMR vaccine)・予防接種を避けた。時を同じくして、多くの子供が麻疹(ましん、はしか)に感染するようになった。例えば、フランスでは、2007年はほぼ根絶状態だったが、2008年から2011年の間に2万人が罹患した。

現在でも、ウェイクフィールド信奉者は多い。また、ウェイクフィールド自身、2014年10月の現在も、負けずに戦っている。

そして、事態はさらに複雑な様相を呈している。

2014年8月22日、ウェイクフィールド説を間違いとした米国・CDC研究者の2004年の論文が、ねつ造だったと内部告発された。
*CDC:アメリカ疾病管理予防センター(アメリカしっぺいかんりよぼうセンター、Centers for Disease Control and Prevention)

  • 国:英国
  • 成長国:英国
  • 男女:男性
  • 生年月日:1957年
  • 現在の年齢:60 (+1)歳
  • 分野:消化器病学
  • 不正論文発表:1998年(40歳)
  • 発覚年:2004年(46歳)
  • 発覚時地位:英国・ロンドン北西部のロイヤル・フリー・ホスピタル・医師
  • 発覚:英国の『サンデイ・タイムズ』紙のブライアン・ディーア(Brian Deer)記者の記事
  • 調査:英国医事委員会(General Medical Council)。2008年7月~2010年1月。期間は1年7か月(2年半説もある)
  • 不正:データねつ造、利益相反
  • 不正論文数:1報
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 結末:辞職(2001年、ロイヤル・フリー・ホスピタル)、渡米(2001年、2004年説もある)、英国・医師免許取り消し(2010年1月)。本人は反ワクチン運動の英雄として現在も活躍

141014 brian-deer-f-full[1]不正を追及した『サンデイ・タイムズ』紙のブライアン・ディーア記者(写真出典:Brian Deer – briandeer.com

【日本の状況】

西川真らの1994年の論文を適当に引用すると、新三種混合ワクチン(MMR vaccine)・予防接種の日本での状況は以下のようだ。(西川真、他、「ワクチン接種後髄膜炎患者からのウイルス分離について」、新潟県衛生公害研究所年報 10、75-78、1994)

おたふくかぜ(Mumps ムンプス)は耳下腺の膨張を主症状とする小児の代表的疾患である。一度感染すると終生免疫を獲得し、再感染はほとんどないため、小児を対象に。予防の目的で1981年2月から任意接種のおたふくかぜワクチンが使用されるようになった。
1989年4月から、乾燥弱毒麻疹・おたふくかぜ・風疹混合ワクチン(Measles・Mumps・Rubella vaccine:MMR vaccine)が予防接種法に定められた麻疹・風疹ワクチンの定期接種時に、接種可能になり、3回の接種が1回で済むことから普及した。
しかし、実施後、副作用として無菌性髄膜炎が予想よりはるかに高率で発症することから、1993年4月27日以降、MMRは接種が中断され、現在に至っている。

1993年の「あじさい」Vol.2,No.5、『MMR ワクチン一時中止とその背景!』に以下の記述がある。

MMR ワクチンで問題になっているのはおたふくかぜワクチンで、無菌性髄膜炎の副作用が多数報告されました。
1989 年4 月に始まった定期接種で、無菌性髄膜炎の発生率は当初予想の数十万人に1 人からどんどん高くなりその年の内に2000 人に一人と急増しました。
その髄膜炎がワクチン(占部株)により起こっていることが1989 年7 月に山田らによって明らかになり益々ワクチンの安全性の問題がクローズアップされてきました。

副作用に関しては、日本の占部株は無菌性髄膜炎の発生率が高く、欧米で使用しているJeryl-Lynn株のワクチンははるかに低い。ということは、株の問題なのか、製造法の問題なのか?

日本の占部株も当初は安全だったハズだ。阪大微研株が1991年10月無許可で培養方法を変更していた可能性が高いと、後で判明している。

日本での問題は、無菌性髄膜炎であって、自閉症ではない。

【経歴】

  • 1957年(0歳):神経科医の父、家庭医の母のもとに生まれる。英国、バースで高校まで過ごす
  • 1981年(23歳):英国、聖マリー病院医科大学卒業。医師。
  • 1985年(27歳):英国、Royal College of Surgeonsのフェロー
  • 1986年(28歳):カナダ、トロント大学。小腸移植研究
  • 1989年(31歳):英国、ロイヤル・フリー・ホスピタル。肝臓移植研究
  • 1993年(35歳):麻疹ウイルスとクローン病(原因不明の消化器の炎症性疾患)の関係の研究開始
  • 1998年(40歳):後に大問題となる論文をランセット誌に発表
  • 2001年(43歳):英国、ロイヤル・フリー・ホスピタルを辞任し、米国へ(2004年説もある)
  • 2010年(52歳):英国の医事委員会(General Medical Council)が、論文不正と結論し、医師免許はく奪。米国の医師免許は持っていない
  • 2014年(56歳):テキサス州、オースチン近郊に妻・カーメルと4人の子供とともに居住。彼の信奉者に支えられている。例えば、米国の女優・ジェニー・マッカーシー(Jenny McCarthy)は、2002年生まれの息子エヴァン・ジョセフが2005年に自閉症であると診断され、自閉症を持つ子どもや家族のために積極的に活動している。

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女優・ジェニー・マッカーシー(Jenny McCarthy)、写真出典

【動画】ジェニー・マッカーシー(Jenny McCarthy)のテレビショー。「Autism Debate with Jenny McCarthy on ‘The Doctors’ (Part 1) 」、(英語)3分59秒、The Doctorsが2009/05/07 にアップロード

【不正発覚の経緯】
予防接種は伝染病の抑止に効果的で、コストパフォーマンスの高い方法である。国は、感染症の大規模拡大を防ぐ手段として人や家畜に用いることを義務化している。しかし、予防接種には低頻度だが副作用がある。低頻度とはいえ、当人にとっては重大事である。常に安全性が問題視されている。

一方、大規模な予防接種は医薬品企業の大きな収入源なので、効果と安全性に関する研究結果に研究費バイアスがかかりやすい傾向がある。

上述したように、日本では、1989 年以降、三種混合ワクチンの安全性が疑問視されていた。副作用として無菌性髄膜炎にかかることが報告されていた。

1998年2月28日 ウェイクフィールドは、共著者12人の論文をランセット誌に発表した。論文は、12人の子供の患者を研究し、「腸疾患」と「自閉症」と「三種混合ワクチン」が関連した新しい病気「自閉症的全腸炎(autistic enterocolitis)」の発見を報告した。後に論文は撤回され、「自閉症的全腸炎」の存在も否定された。
(Wakefield AJ, Murch SH, Anthony A, Linnell J, Casson DM, Malik M, Berelowitz M, Dhillon AP, Thomson MA, Harvey P, Valentine A, Davies SE, Walker-Smith JA (1998). “Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children”. The Lancet 351 (9103): 637–41. doi:10.1016/S0140-6736(97)11096-0. PMID 9500320.)

実は論文発表の前に記者会見をした。「新三種混合ワクチン(MMR vaccine)・予防接種で自閉症になる可能性がある。三種混合ではなく,単独型のワクチンに切り替えたほうが安全」は、センセーショナルだったので、英国では、すぐに論争になった。

2001年12月 当時のトニー・ブレア英国首相には2000年5月20日生まれの息子・レオがいた。野党議員が「あなたの息子・レオに新三種混合ワクチンを接種しましたか?」と質問した。首相は答えを拒否した。子供のプライバシー侵害だからだが、大衆はそう理解しなかった(The media’s MMR hoax – Bad Science)。

2004年 『サンデイ・タイムズ』紙のブライアン・ディーア記者がウェイクフィールドの利益相反を突き止めた。ウェイクフィールドは、1998年のランセット論文の前に、反ワクチン団体「Legal Aid Board」から反ワクチンの証拠を探すことで£55,000(当時の交換レートで、約880万円)を受け取っていた。この事実を論文で公表していなかったし、共著者にも伝えていなかった。

また、

ウェイクフィールドは,論文発表前年の1997年6月,単独型麻疹ワクチンの特許を申請,その使用が普及すれば莫大な財政的利得を得る立場にあったのである。(出典:李啓充(り・けいじゅう)、2011年7月4日の「週刊医学界新聞」「第201回」)

2004年 ランセット誌は1998年論文の「一部」を撤回した。12人の共著者の内10人が利益相反の事実を知り、論文撤回に同意したからである。

2009年 『サンデイ・タイムズ』紙のブライアン・ディーア記者がウェイクフィールドの1998年のランセット論文の不正を見つけた。12人の子供の患者は、反ワクチン団体の関係者で、患者の内8人、予防注射後、数日で問題が見られたとあるが、事実と合致する患者は1人だけだった。大半の患者は、予防注射「前」に、すでに、問題の傾向がみられていた。論文では「腸が異常になった」とあるが、病院の病理医は「腸は正常」と診断していた(MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism | The Sunday Times)。

また、李啓充の説明では、

(1)の自閉症の存在を見たとき,論文では「12例中9例に存在した」とされていたのに対し,実際の診療記録と照合したとき,自閉症は(診断が不確実な5例も含めて)6例でしか存在していなかった。また(2)の腸管炎症については,論文で11例に存在と記載されていたが,診療録上は3例しか存在しなかった。さらに,(3)ワクチン接種との時間的関係についても,「14日以内に症状を発現した症例」は,論文の8例に対して診療録上2例と,大きく食い違った。 (出典:李啓充(り・けいじゅう)、2011年7月18日の「週刊医学界新聞」「第202回」)

2010年 ランセット誌は1998年論文の「全部」を撤回した。

【撤回論文】
2014年10月10日現在、以下の1998年のランセット論文1報が撤回されている。

Wakefield AJ, Murch SH, Anthony A, Linnell J, Casson DM, Malik M, Berelowitz M, Dhillon AP, Thomson MA, Harvey P, Valentine A, Davies SE, Walker-Smith JA (1998). “Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children”. The Lancet 351 (9103): 637–41. doi:10.1016/S0140-6736(97)11096-0. PMID 9500320.

【事件の側面】
★ウェイクフィールドのファンが多数いる

李啓充が記述している。

ウェイクフィールドは,科学的にその仮説がほぼ完璧に葬り去られただけでなく,医師としての適性さえも否定され,医学界からも医療界からも「追放」されることとなったのだが,皮肉なことに,自閉症児の親の間では,逆に,これまで以上の支持を集めるようになった。「自閉症児のために,職や国を失ってまで医学界と闘う偉い医師」と,「英雄視」さえされるようになり,講演会などで,「私の身に何が起こったかなどどうでもいいのです。大切なのは,自閉症の子どもたちに何が起こっているかなのです」と発言するたびに,感動した親たちが目を潤ませる光景が繰り返されるようになったのである。

写真は「ウェイクフィールドの話を聞きなさい!」のプラカードを掲げるサポーター。
141014 apoyo-andrew-wakefield[1]
(出典:Confirman que el estudio que relacionaba vacunas con autismo es un fraude | Naukas)。

写真は2008年聴聞会に出席するウェイクフィールドと妻・カーメル。2人の歩く向こうに、2人を支援する多数のサポーターが写っている。
141014 news-graphics-2007-_640547a1-300x239[1]
(出典:» Allegations emerge that Andrew Wakefield “faked” the data in his Lancet paper.

ウェイクフィールドは、2011年、2012年に著書を出版している。著書はかなり称賛されている。2011年の著書の共著者は、上記で触れた米国の女優・ジェニー・マッカーシー(Jenny McCarthy)である。

  1. Callous Disregard: Autism and Vaccines–The Truth Behind a Tragedy by Andrew J. Wakefield and Jenny McCarthy (Jul 13, 2011)
  2. Waging War on the Autistic Child: The Arizona 5 and the Legacy of Baron von Munchausen by Andrew J. Wakefield (May 1, 2012)

『サンデイ・タイムズ』紙のブライアン・ディーア記者を攻撃する記事もある。 日本語版。英語版:Keeping Anderson Cooper Honest: Is Brian Deer The Fraud? – AGE OF AUTISM

著名ジャーナルが不正研究に対応できない
ランセット誌は権威と伝統のある著名な医学ジャーナルである。しかし、不正研究に対応できていない。

『ランセット』は、1998年に、MMRワクチンと自閉症との関係を示唆する内容の文書を刊行したとき、厳しい批評を受けた。2004年の2月に『ランセット』は同文書の一部撤回を発表した (Lancet 2004;363:750)。編集長のリチャード・ホートンは、同文書について、著者の一人のアンドリュー・ウェイクフールド氏 が『ランセット』に開示していなかった重大な利益相反(conflict of interest)があったために、「致命的な利益相反」があったと正式に言明した。そして2010年に論文全体を正式に撤回した。(ランセット – Wikipedia

論文の「一部」撤回が、1998年の論文刊行から6年後の2004年である。「全部」撤回は、さらに6年後の2010年である。1998年の発表から12年も経過していた。「厳しい批評を受けた」のに、どうして、すぐに対応しなかった(できなかった)のだろう。この間、ある意味、ランセット誌も不正研究に加担していたといえる。

【事件の急展開】
1998年論文以来ここ16年間、ウェイクフィールドが全面的に「悪い」とする流れだったが、2014年夏、意外な展開があった。

CDCが「予防接種と自閉症」は無関係というデータのねつ造

「予防接種と自閉症」に関係がないという論文は2004年、CDCの研究者が「Pediatrics」誌に発表していた。
*CDC:アメリカ疾病管理予防センター(アメリカしっぺいかんりよぼうセンター、Centers for Disease Control and Prevention)

Pediatrics. 2004 Feb;113(2):259-66.
Age at first measles-mumps-rubella vaccination in children with autism and school-matched control subjects: a population-based study in metropolitan atlanta.
DeStefano F, Bhasin TK, Thompson WW, Yeargin-Allsopp M, Boyle C.
National Immunization Program, Centers for Disease Control and Prevention, Atlanta, Georgia 30333, USA.

2014年8月22日、Bobby Deeが、長年の沈黙を破って、CDCの「Pediatrics」論文はねつ造論文だったと告発した。ねつ造部分は、アフリカ系アメリカ人では予防接種と自閉症は関係があったというデータを削除した点である。このねつ造を、CDCも認めた(CDC Whistleblower Emerges: Admits Coverup on Vaccine Link to Autism | Health Impact News)。

Bobby Deeは仮名で、すぐに、CDCに実在の上級研究者・ウィリアム・トンプソン(William W. Thompson)だと判明した。2004年「Pediatrics」誌論文の著者の1人でもある(上の論文の下線)
141014 william-thompson-cdc[1]

【動画】CDCのねつ造のニュース。ウェイクフィールドがインタビューに答えている。「Dr. Andrew Wakefield breaks silence on #CDCWhistleblower」、(英語)1時間13分31秒、NextNewsNetworkが2014/08/28 に公開

ウィリアム・トンプソンが内部告発した2014年8月22日の5日後に、フッカー(Hooker B)が2014年8月27日「Transl Neurodegener」誌にアフリカ系アメリカ人は予防接種すると自閉症になりやすいという数値を記載した論文を掲載した。

Hooker B: Measles-mumps-rubella vaccination timing and autism among young african american boys: a reanalysis of CDC data. Transl Neurodegener 2014, 3:16. PubMed Abstract | BioMed Central Full Text | PubMed Central Full Text

ところが、不思議なことに、1か月後、フッカー論文が撤回された。撤回申請は(2014年)9月26日、受諾は9月29日、撤回公表は10月3日。どうなっているのだろう? (①Translational Neurodegeneration | Full text | Retraction: Measles-mumps-rubella vaccination timing and autism among young African American boys: a reanalysis of CDC data、②CDC Whistleblower Emerges: Admits Coverup on Vaccine Link to Autism | Health Impact News、③A bad day for antivaccinationists: A possible retraction, and the “CDC whistleblower” William W. Thompson issues a statement – Respectful Insolence)。

「ワクチンと自閉症とウェイクフィールド」によれば以下のようだ(ワクチンと自閉症とウェイクフィールド – Togetterまとめ)。

Brian Hookerは反ワクチン活動の最近人気急上昇中のスターである。Simpson 大学の生物学准教授で自分のコンサル会社を運営していて、彼がワクチンのせいだと主張している自閉症の子どもがいる。各種反ワクチン活動に関わっている。情報公開法を利用してCDCに各種情報開示を求めてきた。CDCが自閉症とワクチンの関連が認められないとした有名な研究などをCDCがデータを不正操作したと主張している。
今回の「スキャンダル」はTranslational Neurodegenerationという聞いたことのない雑誌に論文が発表されたということに始まる。そしてYouTubeにCDCの高官がMMRワクチンが自閉症をおこしたという「真実」を隠したことを内部告発したと主張する動画が公開された。さらに木曜の夜にBrian Hookerが内部告発者はWilliam Thompson博士であると誇らしげに主張する動画がYouTubeに公開された。
(以下長い説明)
この騒ぎでWilliam Thompson博士が弁護士を介して声明を発表した
(2004年の論文に一部のデータが含まれていないということを批判したのであってワクチンが自閉症の原因だと言っているわけではない。データの取捨選択の透明性を確保すべきという話)

イヤ、なかなか、複雑というか、攻防戦が激しいというか、何を信じていいのやら・・・。

なお、「予防接種と自閉症」は無関係という論文は、ここでは省略したが、多数報告されている。しかし、それらに、さらに、もし、研究費バイアスやねつ造・改ざんがあったらと思うと(そういう指摘はありません。だから、仮にですが)、ウ~ン・・・。

【事件の深堀】

★マスコミの過激報道
ウェイクフィールドは2014年10月現在、負けずに戦っている。しかし、1998年のランセット論文のデータねつ造、利益相反は明確だろう。当時、40歳、病院の医師という身分からすれば、病院内の政治抗争は絡んでいないだろう。

「予防接種と自閉症の関係」なら、問題の根本は学問上な論争に思えるが、現実の騒動はそうなってこなかった。マスコミがウェイクフィールドを攻撃して大衆が騒ぐ。ウェイクフィールドの多くのサポーターが活発に活動している。トニー・ブレア首相を巻き込んで狂喜する。

研究者ではないが、1980年代にマスコミが追い回した三浦和義(2008年10月自殺)。2014年にマスコミが追い回した理研の笹井芳樹(2014年8月5日自殺)を思い出す。笹井芳樹は、きわめて優秀な現役の生物医学研究者でまだ52歳だった。

再度書くが、問題の根本は学問上な論争に思える。マスコミの「報道刑」をなんとかする術はないのだろうか? 大衆は、マスコミを信じ、自分も正義の一翼を担う心意気で、熱心に(面白がって?)バッシングする。

2014年9月19日、ウェイクフィールドはテキサス州の裁判所に英国の雑誌と新聞記者を名誉棄損で訴えていた。しかし、裁判所はそのこととテキサス州は何も関係がないと訴えを却下した。(Court: Andrew Wakefield, autism researcher, cannot sue in Texas | www.statesman.com

 裏で医薬品企業が動いている?
「予防接種と自閉症の関係」を否定する論文がたくさん出ている。それでも、ウェイクフィールドは、まだ、負けずに戦っている。事件の裏に何があるのだろう?

逆に、ウェイクフィールドの失脚を望む勢力はどこだろう? 「新三種混合ワクチン・予防接種で自閉症になる。三種混合ではなく,単独型のワクチンに切り替えたほうが安全」と主張したのだから、新三種混合ワクチンの開発した医薬品企業(メルク社)がウェイクフィールドの失脚を望むだろう。メルク(Merck)社が不当なことをしているのだろうか?

今回、そういう話は表面化していない。白楽は、調べていない。

【動画】

★ウェイクフィールドの講演。彼サイドの「新三種混合ワクチン・予防接種で自閉症になる」話。「Dr Andrew Wakefield tells his side of the story in the MMR Vaccine causes Autism debate」、(英語)1時間11分11秒、Muslims and the Worldが2013/05/29 に公開

★ウェイクフィールドの動画はたくさんある。サポーターが多く、活発な活動がうかがわれる。andrew wakefield – Google 検索

【白楽の感想】

《1》 科学界に自浄力がない
『サンデイ・タイムズ』紙のブライアン・ディーア記者がウェイクフィールドの不正を暴いたのだが、ナンカおかしい。新聞記者は研究上の不正行為をチェックするのが仕事ではない。一般的に、新聞記者は新聞を売るためにセンセーショナルに書く。それで、事実を脚色してしまう傾向がある。どうして、科学界が解明できなかったの? おかしい!

《2》 どうして?
ウェイクフィールドはどうして利益相反をしたのか? それは、金銭的に得だからだ。では、どうしてデータねつ造をしたのか? この場合、医学上のデータねつ造は、多数の人に危険だということを、容易に理解できるだろうに。

どうしてしたのだろう。

多分、40歳の彼は、半分過ぎた自分の人生でホームラン級の脚光を浴びたかった。人生の刺激が欲しかった。自分のパワー(社会的影響力)を確認したかったに違いない。両親が医師で自分も医師だ。医師として社会的な尊敬を集めていた。

データねつ造とはいえ、ねつ造部分そのものは重大事項に思えない。それに、1つの論文の結論に、たった12人の患者の結論に、英国社会が呼応し、世界が呼応したのも異常に思える。反論する論文は多数出版され、多数の患者を対象に「新三種混合ワクチン・予防接種で自閉症になる」のは否定されたのに、ウェイクフィールドの論文がどうしてそんなに大きな影響力を持ち続けたのか?

結論が間違っている論文は学術界ではゴマンとある。学者の主張が無視されることもゴマンとある。どうして、ウェイクフィールドの論文が、社会的大騒動を引き起こしたのか? 学問的正否とは別次元の問題が充満していたのだろう。ワクチン被害者に社会が冷たかったのだろう。

それにしても、データねつ造を指摘されても、ウェイクフィールドは悪びれるところがない。自分の信念に胸を張って生きている。前向きな人柄なのだろう。もちろん、こういう逆風の中でも、妻と4人の子供とともに生きていくしかない。それはとても大変だろう。そういう意味では、良い父親なのかもしれない。

妻・カーメルと一緒の写真
STN28WAKEFIELD_340834k[1]
(28 April 2013 Wakefield’s wife goes viral on the internet | The Sunday Times

【主要情報源】
① 李啓充(り・けいじゅう)、2011年7月4日の「週刊医学界新聞」「第201回」(保存版
② 李啓充(り・けいじゅう)、2011年7月18日の「週刊医学界新聞」「第202回」(保存版)
③ 李啓充(り・けいじゅう)、2011年8月1日の「週刊医学界新聞」「第203回」(保存版)
④ ウィキペディア Andrew Wakefield – Wikipedia, the free encyclopedia
⑤ ウィキペディア MMR vaccine controversy – Wikipedia, the free encyclopedia
⑥ シャロン・べグリー(サイエンス担当)、ニューズウィーク日本版2010年2月3日、「 「予防接種で自閉症になる」論文のデタラメ」(保存版)
⑦ 追記(2015年2月4日) 反ワクチン運動で2015年に麻疹大流行の兆し:Fraud’s long tail: Measles outbreak shows why it’s important to look downstream of retractions – Retraction Watch at Retraction Watch(保存版)

李啓充の記述(上記①②③)がとても良くできているので、そちらもお読みください。