2026年6月16日(火)掲載 随時更新
研究不正疑惑の告発です。岐阜大学・大学院医学系研究科の古家 琢也・教授(泌尿器科)が、2014~2025年の12年間に出版した12論文は、「パブピア(PubPeer)」で、「画像重複」「表中の数値の重複」「表のデータ異常」などが指摘されています。適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.【告発とその後】
2.【不正疑惑】
3.【研究公正姿勢】
7.【白楽の感想】
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- 記述は敬称略。
- 白楽ブログの「5C 日本の研究不正告発 」の意図は、日本の研究者の研究不正(含・疑惑)を具体的に示し、該当する研究機関の調査・対処の実態を公表・情報共有することです。そのことで、日本の研究不正調査・対処の問題点を日本国民・メディア、及び研究機関・研究者が一緒に考え、日本の研究倫理体制をより良い方向に改善することです。
情報共有し改善策を考えるため、メールおよび文書は基本的に公表します。
●1.【告発とその後】
==260617 告発翌日:東海国立大学機構研究 → 白楽==
白楽ロックビル様
ご連絡ありがとうございました。
ご意向につき承知いたしました。
本日、昨日いただいたメールをそのまま機構の担当部署に報告いたします。
よろしくお願いいたします。
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弁護士法人錦総合法律事務所
弁護士 岡 田 香 世(Kayo Okada)
==260617 告発翌日:白楽 → 東海国立大学機構==
弁護士法人錦総合法律事務所
弁護士 岡田 香世 様
お世話になっております。白楽ロックビルです。
ご対応いただきありがとうございます。
本件は研究不正の可能性を含む「不適切な研究活動」の申立てでございますが、第三者の立場からは、実際に「研究不正」に該当するかどうかの判断はつきかねます。
また、「これ以上の情報提供ができない場合」の情報に関しては、現在のところ、「不適切な研究活動」と思える情報のすべてをお示ししたつもりです。
恐れ入りますが、昨日お送りしたメールの内容のまま、機構の担当部署へご報告いただけますと幸いです。
また、本件の告発はウェブ上で公表しておりますので、私の氏名およびメールアドレスを機構に開示していただいて問題ございません。
お手数をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
岐阜大学における研究公正の向上と高いレベルの規範が維持されることを願うばかりです。
白楽ロックビル
お茶の水女子大学 名誉教授
==260616 告発当日:東海国立大学機構研究 → 白楽==
白楽ロックビル様
東海国立大学機構研究不正行為申立て窓口を担当しております、弁護士の岡田香世と申します。
メール、拝見いたしました。
研究不正行為の申立ての御趣旨と承りましたが、できましたら下記ホームページでお願いしております通り、所定の書式にご記入の上、身分証の写しを添付してお送りいただけませんでしょうか。
調査対象者や不正行為の内容につきましては先にお送りいただいております資料の通りとしていただければ結構です。
また、本申立てについて、氏名、住所、連絡先の秘匿をご希望かどうかもお知らせください。東海国立大学機構のWEBサイト
もし、申立ての御趣旨ではあるがこれ以上の情報提供ができない場合や、申立ての趣旨ではなく情報提供の御趣旨である場合は、その旨を添えて機構の担当部署に報告いたしますので、お教え願います。
なお、その際も、ご連絡いただいたお名前、メールアドレスを機構に知らせてもいいかどうかについてお教え下さい。
ご不明な点はお尋ねください。
よろしくお願いいたします。
*―――――――――――――――――*
弁護士法人錦総合法律事務所
弁護士 岡 田 香 世(Kayo Okada)
==260616 研究不正疑惑 告発した==
錦総合法律事務所御中(岐阜大学の研究不正を申立てる窓口)
件名:研究不正疑惑の告発
研究者倫理の研究をしている白楽ロックビル(お茶の水女子大学名誉教授)と申します。
岐阜大学・大学院医学系研究科の古家 琢也・教授(泌尿器科)が、2014~2025年の12年間に出版した12論文は、「パブピア(PubPeer)」で、「画像重複」「表中の数値の重複」「表のデータ異常」などが指摘されています。適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。
なお、上記12論文以外の論文も調査して下さるようお願い申しあげます。
また、私へのメールにはメール送信者の姓名(つまり、担当者名)を記載してください。
詳しくは、以下の記事で説明しております。
古家 琢也 (Koie Takuya) (岐阜大学)
https://haklak.com/page_Takuya_Koie.html
よろしくお願い申し上げます。
白楽ロックビル
お茶の水女子大学名誉教授
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●2.【不正疑惑】
冗長になるのを避けるため、「研究不正疑惑」などの文言から「疑惑」を省いている箇所があります。省略されている箇所も、すべて「疑惑」を指しています。
=====【疑惑研究者】======
古家 琢也 (コイエ タクヤ、Koie Takuya):写真出典
所属と職位出典:KAKEN — 研究者をさがす | 古家 琢也 (60321965)
所属 (現在):2026年度: 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授
所属 (過去の研究課題情報に基づく):
2025年度: 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授
2018年度 – 2019年度: 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授
2015年度 – 2019年度: 弘前大学, 医学研究科, 准教授
2012年度 – 2015年度: 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授
2014年度: 弘前大学, 医学部附属病院, 講師
2009年度 – 2011年度: 弘前大学, 医学部附属病院, 講師
2008年度: 弘前大学, 医学部・附属病院, 講師
2006年度: 弘前大学, 医学部附属病院, 講師
他のサイト:
- ごあいさつ – 医療関係者へ|岐阜大学大学院医学系研究科 泌尿器科
- 古家 琢也 (Takuya Koie) – マイポータル – researchmap
- 古家 琢也 | 研究者情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
岐阜大学。写真 出典
=====【疑惑の全体像】======
2026年6月15日現在、古家 琢也は、パブメド(PubMed)論文を327論文を出版している。
その内、2014~2025年の12年間に出版した12論文に「パブピア(PubPeer)」のコメント がある。コメントの大半は論文の「画像重複」「表中の数値の重複」「表のデータ異常」などである。
スプレッドシートにまとめた表の一部を以下に示す。
古家 琢也は、2014~2015年の6論文(表の番号7~12)の第一著者で、うち5論文は連絡著者でもある。この6論文は、古家 琢也が弘前大学に所属していた時に出版した論文である。
続いて、2020~2025年の6論文(表の番号2~6と番号13)は古家 琢也が岐阜大学・教授として出版した論文で、6論文のうち4論文は連絡著者である。
第一著者、連絡著者、現在は教授、の3点から、古家 琢也を疑惑論文の代表者として挙げたが、不正行為疑惑の実行者は別人かもしれない。
不正行為疑惑は数種類ある。
「画像重複」は明瞭で、「表の番号2」の論文に見られた。本人も重複を認めている。
「表中の数値の重複」は、「表の番号5」の論文に見られた。本人も何も対応していない。
「表のデータ異常」は、本来あり得ない数値、数値の重複(コピペ疑惑)など、論文の信頼を損なうもので文部科学省が研究不正とするデータ捏造・改ざんの可能性がある。
以下、12報の疑惑論文のうち岐阜大学在職中の2021~2025年から2論文、弘前大学在職中の2014~2015年の論文から1論文、を選んで疑惑部分を示した。選んだ論文数は疑惑論文の25%(3/12=25%)である。従って、以下に示すに疑惑部分は、全体の1部分(2~3割程度)である。
岐阜大学・調査委員会には、以下に示す疑惑部分だけでなく、「パブピア(PubPeer)」が疑惑視している全12論文、さらに、「パブピア(PubPeer)」は指摘していないが、古家 琢也の類似の他論文も精査して下さるようお願いしたい。
=====【論文1】=====
スプレッドシートの番号2の論文である。
「2025年10月のSci Rep.」論文の書誌情報を以下に示す。
- Efficacy and safety of combination immunotherapy for treating advanced non-clear cell renal cell carcinoma: A multicenter retrospective study in Japan.
Iinuma K, Sano Y, Nishikawa K, Taniguchi T, Matsuyama A, Ozawa K, Ishida T, Tochigi K, Tamura M, Kubota Y, Akamatsu S, Inoue T, Koie T.
Sci Rep. 2025 Oct 10;15(1):35526. doi: 10.1038/s41598-025-19523-4.PMID: 41073604
古家 琢也(Koie T)は最後著者でかつ連絡著者である。所属は岐阜大学である。
研究助成金(論文から引用):This work was supported by Grants-in-Aid for Scientific Research from the Japan Society for the Promotion of Science (22K16816)
研究助成金の説明:
① 飯沼 光司(第一著者、岐阜大学, 医学部附属病院, 講師)が研究代表者で日本学術振興会から2022~2024年度の研究助成を受けた (Grant number: 22K16816)。4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)を使用した。
本論文は、上記研究助成金の研究成果として発表した唯一の学術論文である。
ーーー論文1の問題点概略ーーー
この論文のデータは5つの表と2つの図(カプランマイヤー曲線、Kaplan–Meierプロット)からなる。
図1は2つの子図(図1a・図1b)で構成され、図2は4つの子図(図2a・図2b・図2c・図2d)で構成されている。子図は全部、カプランマイヤー曲線である。この複数の子図に同じ図を使用していた。
論文には図1と図2しかないので、すべての図に問題があったことになる。
指摘に対し、古家 琢也は「図の作成時に間違えた」と主張し、訂正を依頼するために、学術誌に連絡を取ったとある。
さらに、古家 琢也は、この訂正を検討している過程で、別の「間違い」も見つけた。図1bのnccRCC 群の無進行生存期間の中央値が間違っていた。
なお、「これらの訂正は、研究結果や結論に影響を与えません(these corrections do not affect the results or conclusions of the study)」と述べている(出典https://pubpeer.com/publications/EE07DBE347F60C360E36CADADD1F95#3)。
すべての図(図1と図2しかないの両図)が「間違えた」図を掲載した原稿で査読され、採択された論文である。
すべての図の訂正を依頼しているが、学術誌は訂正を許可するか、許可しないで撤回するのかわからないが、論文の信頼度は極端に低い。
これほど主要なデータに「間違い」があったという意味は、他の箇所にも「間違い」があっただろうと容易に想像できる。事実、図1bのnccRCC 群の無進行生存期間の中央値を間違えたと古家 琢也が述べている。
つまり、「不適切な研究活動」があったと思われる。
ーーー論文1の①:重複画像ーーー
全く異なる患者群を表している図1a(以下の最初の図)と図2a(2番目の図)の曲線(Kaplan–Meierプロット)が同じだ、とAnonyx nugaxが指摘した。これはあり得ないほど異常である。出典:https://pubpeer.com/publications/EE07DBE347F60C360E36CADADD1F95#1
図1a

図2a
ーーー論文1の②:重複画像ーーー
図2cと図2dの曲線(Kaplan–Meierプロット)も同じだ、とEryngium venustumが指摘した。これもあり得ないほど異常である。出典:https://pubpeer.com/publications/EE07DBE347F60C360E36CADADD1F95#2


=====【論文2】=====
スプレッドシートの番号5の論文である。
「2022年12月のBiomedicines」論文の書誌情報を以下に示す。
- Efficacy and Safety of Cabozantinib in Patients with Advanced or Metastatic Renal Cell Carcinoma: A Multicenter Retrospective Cohort Study.
Iinuma K, Tomioka-Inagawa R, Kameyama K, Taniguchi T, Kawada K, Ishida T, Nagai S, Enomoto T, Ueda S, Kawase M, Takeuchi S, Kawase K, Kato D, Takai M, Nakane K, Koie T.
Biomedicines. 2022 Dec 7;10(12):3172. doi: 10.3390/biomedicines10123172.PMID: 36551927
古家 琢也(Koie T)は最後著者でかつ連絡著者である。所属は岐阜大学である。
研究助成金(論文から引用):This study received no external funding.
研究助成金の説明:外部助成金を受けていない。
ーーー論文2の問題点:「表中の数値の重複」ーーー
表3の単変量分析で、生物学的にも臨床的にも独立した2つの変数なのに、小数点以下まで完全に同じ数値(黄色で示した)だ、とAnonyx nugaxが指摘した。出典:https://pubpeer.com/publications/753461FBB1BB98150D8FD607B7A818

数値をコピーペースト(つまり、捏造)したと思われる。
2026年6月15日現在、著者らは、問題の指摘に対して、何も説明していない。論文は訂正も撤回もされていない。
=====【論文3】=====
スプレッドシートの番号7の論文である。
「2015年10月のInt J Clin Oncol.」論文の書誌情報を以下に示す。
- Neoadjuvant luteinizing-hormone-releasing hormone agonist plus low-dose estramustine phosphate improves prostate-specific antigen-free survival in high-risk prostate cancer patients: a propensity score-matched analysis.
Koie T, Mitsuzuka K, Yoneyama T, Narita S, Kawamura S, Kaiho Y, Tsuchiya N, Tochigi T, Habuchi T, Arai Y, Ohyama C, Yoneyama T, Tobisawa Y.
Int J Clin Oncol. 2015 Oct;20(5):1018-25. doi: 10.1007/s10147-015-0802-y. Epub 2015 Feb 15.PMID: 25681879
古家 琢也(Koie T)は第一著者でかつ連絡著者である。所属は弘前大学である。
ーーー論文3の問題点:「表のデータ異常」ーーー
この論文の表1、表2、図3、図4のデータが異常だと、Apiomerus apicalisが指摘した。出典:https://pubpeer.com/publications/CC7178EAF87B49A63F4575F157B14B#1
2026年6月15日現在、著者らは、問題の指摘に対して、何も説明していない。論文は訂正も撤回もされていない。
以下に、指摘された4点のうちの1点だけ、表2のデータ異常を例に示す。
ーーー論文3の①:「表のデータ異常」ーーー
表2は、前立腺がん治療における術前補助療法(Neoadjuvant LHRH + EMP)の効果を、手術のみ(RP alone)の場合と比較した病理学的病期(Pathological stage)のデータである。
各グループの患者数は210人だとある(n = 210)。しかし、表 2の術前補助療法(Neoadjuvant LHRH + EMP)の患者数を合計すると227 人(17+47+18+50+65+30+0=227)である。患者数が17人多い。
この表の「表のデータ異常」で、論文の信頼度は低い。P 値も正確でない。
●3.【研究公正姿勢】
「パブピア(PubPeer)」で指摘されている古家 琢也の12報の疑惑論文は、上述したように「画像重複」「表中の数値の重複」「表のデータ異常」など、数種類の問題を抱えている。
以下、研究公正意識が欠如していると思われる研究公正姿勢を考察した。
① (小さな)データ異常が多数
文部科学省は学術上の「間違い」を「研究不正ではない」としている。
学術上の「間違い」は、一般的に、「不注意による間違い」、「能力不足による間違い」、「誠実な間違い」(学説、解釈、方法論が後に間違っていたとされるケース)の3種類がある。
しかし、論文のどのような「間違い」でも、ヒトを死に至らしめたり、健康被害をもたらしたり、大きな社会的・経済的損害をもたらす場合があるだけでなく、学術記録を汚染し、学術体系を腐食し、研究者と研究を間違った方向に誘因してしまう。
「誠実な間違い」は致し方ないが、研究論文での「不注意による間違い」と「能力不足による間違い」は文部科学省の定義する「研究不正」ではなくても、研究者としては、してはならない「不適切な研究活動」である。
そして、「間違えた」研究者に大きな責任がある。
研究者は自分の「間違い」に真摯に対応し、陳謝および、訂正や撤回をすべきだし、大学・研究機関は所属研究者が「不適切な研究活動」をしないよう管理・監督する責任がある。
データが異常視された古家 琢也の12報の論文では、「研究不正」なのか「間違い」なのか、調査しないとわからないが、「不適切な研究活動」であることは確かである。
そして、次項②で述べるように、古家 琢也は12件のデータ異常の指摘に対し、わずか1件しか対応していない。
このままでは、同じ様な「不適切な研究活動」をし続けると思われ、追従する研究者も出てくるだろうから、告発に踏み切った。
② 指摘されても対応しない
研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、科学コミュニティに向かって公開し、その内容 について吟味・批判を受けることである。科学研究による人類共通の知的資産 の構築が健全に行われるには、研究活動に対する研究者の誠実さを前提とした、 研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である。(研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日文部科学大臣決定)の4頁)
データが異常視された12報の論文のうち「2025年10月のSci Rep.」論文だけ、古家 琢也は、データ異常の指摘に対し、学術誌に訂正を申し出ると述べている。
しかし、2026年6月15日現在、古家 琢也は、それ以外の11論文の不正疑惑の指摘に対して何も対応していない。
「2020年9月のInt Urol Nephrol」論文の問題点は、2020年11月に指摘されたが、5年7か月も放置している。
他の10論文は2026年4月6日以降に指摘されたが、既に約2か月も放置している。
通常、誠実な研究者なら、指摘後1週間以内に何らかの返事をすると思われる。約2か月の放置だが、5年7か月も放置した人なので、何らかの警告をしない限り、ほぼ無期限に放置すると予想される。
データが異常視された論文の多くは、がん患者の治療成績の論文である。データが異常なまま放置されているということは、がん患者の治療方針に不適切な影響を与えかねない状況が放置されていることになる。
この状況も、告発に踏み切った理由である。
引用した文部科学省のガイドラインは、「研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である」と述べているが、古家 琢也の場合、「チェックシステム」は機能していない。
保護責任者遺棄罪のような「不作為の罪」は、法的な保護義務や防止義務がある場合の犯罪である。研究者としてすべきことをしない「不作為」は犯罪ではないが、「不適切な研究活動」であることは確かだと思う。
●7.【白楽の感想】
《1》「不適切な研究活動」
白楽は長年、外国のネカト事件を解説してきたが、公的組織(例えば、米国の研究公正局や大学)が「調査の結果、コレコレの研究不正がありました」と発表した「事件」を扱うことが多い。
この場合、研究不正行為は明確である。
公的組織の発表ではないケースを、報道機関(例えば、新聞や米国の撤回監視サイト)がニュース記事や調査報道として報道する場合も、研究不正行為はかなり明確である。
ところが、ネカトハンター活動で誰も指摘していない疑惑を見つけた場合や、「パブピア(PubPeer)」が疑惑視しているケースでは、「研究不正」なのか「間違い」なのか、わからないことが多い。
わからないことが多いが、「不適切な研究活動」であることは確かだ。
今回のように、古家 琢也の「不適切な研究活動」の調査を求めたのは、公益と被告発者の被害を天秤にかけ、この「不適切な研究活動」を放置しておくと、学術上の問題が続き・拡大する公算が大きい、と判断したからである。つまり、公益を優先した。
実のところ、被告発者あるいは所属大学・研究機関が自主的に「適切な」対処をしてくれていたらと思う。しかし、経験上、そうする研究者や大学・研究機関は非常に少ない。
ネカトの法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」
ネカト調査の実態:「多くの大学は、自発的には調査しないし、告発者を攻撃する。不正行為を矮小化・隠蔽、調査結果を捻じ曲げ・隠蔽する。甘過ぎる処分や無処分、批判を無視する」
《2》「論文の結論は正しい」はトンチンカン
データの異常を指摘された時、指摘された箇所の異常を認め、訂正するとした上で、「論文の結論の正しさは、変わりません」と主張する研究者は多い。
なぜこのこのトンチンカンな主張をするのか、初期の頃、白楽は理解に苦しんだ。今でも時々、不思議に思う。
今回の古家 琢也も「これらの訂正は、研究結果や結論に影響を与えません(these corrections do not affect the results or conclusions of the study)」と述べている(出典https://pubpeer.com/publications/EE07DBE347F60C360E36CADADD1F95#3)。
研究不正を「車の運転」に例えると、「途中、信号無視、スピード違反をしたけど、目的地に到着できました。結論はOKなのだから、途中のことはどうでもいいでしょう」、と主張しているように受け取れる。
研究倫理では、結論の正否を問題にしていない。結論に至る証拠として示したデータ・図・表データに問題がありますと指摘している。それなのに、どうして指摘点以外の「結論」を持ち出すのか?
なお、論理的に考えて、結論に至る証拠として示したデータ・図・表に「間違い」があれば、どうして、同じ結論に至るのか?
データ・図・表に「間違い」があっても、結論は変わらないなら、そもそもそんなデータ・図・表は証拠にならないので、最初から示すな、と言いたい。
《3》東海国立大学機構の窓口
今回の研究不正疑惑を告発するために、岐阜大学(東海国立大学機構の1つ)の窓口を探した。すると、「申立者の人権を保護するために機構外部の弁護士事務所に設置しています」とあった(東海国立大学機構のWEBサイト)。
この機構外部の弁護士事務所が錦総合法律事務所である。
ところが、錦総合法律事務所の取扱業務には、「研究不正」「研究倫理」の文字はない。関連項目もない(参照:事務所紹介)。
なぜ、「研究不正」「研究倫理」を取り扱わない組織が「研究不正」告発の窓口なのか、かなり疑問に感じた。
「窓口」の役割は何なのだろう?
そもそも、窓口は、「研究不正」疑惑の内容の判断に関与するのか、関与しないのか?
少し話がずれるが、日本の諸大学・研究機関が設置する研究不正調査委員会の委員に弁護士がなることが多いので、弁護士が「研究不正」の調査に関与していると思える。
しかし、その弁護士はほぼ全員「研究不正」「研究倫理」の素人である。
しかも、「研究不正」「研究倫理」違反は学術界の規範がベースで、文部科学省などの省庁ガイドライン、大学・研究機関の規則、で運用されている。法律で規定されていない事項なので、「法律の専門家として依頼者の権利や利益を守る」弁護士が必須とは思えない。
なお、米国では「研究不正」「研究倫理」を専門的に扱う弁護士は著名人だけで数人いる。
調査委員会の問題点を指摘・批判する組織や個人が日本にはいないから、「米国に右ならえ」で、「研究不正」「研究倫理」の素人でも弁護士を委員にしているのだろう。
大学が不適切なことを平気でし、それを弁護士が平気でしている印象を受ける。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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