2024年1月30日掲載
ワンポイント: レオナルド・ギルニタはルーマニアで生まれ育ち、スウェーデンのカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)・準教授になった。アダは妻で研究室員。柴野は東大・博士で、ギルニタのポスドク。ネカトハンターのクレア・フランシス(Clare Francis)がギルニタのネカトを指摘し、レオニッド・シュナイダーがカロリンスカ医科大学とスウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)に通報した。2023年12月、スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)はギルニタ夫妻、柴野ら11人をねつ造で有罪と結論した。有罪の基準は米国・研究公正局の基準とは異なり、ユニークである。なお、学術誌はスウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)の結論に従わず、間違いと認定し、論文訂正ですませ、論文を撤回していない。この対処は異常で、「学術誌のネカト調査不正」である。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita、ORCID iD:?、写真出典)は、ルーマニア生まれで、スウェーデンのカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)・準教授になった。医師免許を持っている。専門はがん学である。
2023年12月14日、スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)は、調査報告書(2023年12月11日付け)を発表し、以下の11人をネカトで有罪と結論した。
Sonja Cismas, Caitrin Crudden, Ada Girnita, Leonard Girnita, Daniela Nedeicu, Takashi Shibano, Dawei Song, Naida Suleymanova, Erjc Trocme, Claire Worrall, Huiyuan Zheng
研究室主宰者のレオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)と妻のアダ・ギルニタ(Ada Girnita)を主犯としたが、ネカト有罪者11人の中に、日本人ポスドクのタカシ・シバノ(Takashi Shibano、*柴野卓志、写真出典p7)もいた。
白楽記事では、レオナルド・ギルニタを中心に、タカシ・シバノもそれなりに記述した。
なお、タカシ・シバノに限り、以下、通常使う「名・姓」のカタカナではなく、日本人になじみやすい「姓・名」順の漢字である柴野卓志を使用する。その際、「姓・名」順を示す印である「*」印を省略した。
ギルニタの共著者11人の1人だった柴野卓志は有罪だったが、次の7人の共著者 Elisabeta Candrea, laraTrocoli Drakensjö, lulian Oprea, Stefan Seregard, Julianna Serly, Hongchang Shen, Radu Stefanescu は無罪なので、ギルニタの共著者全員が有罪だったわけではない。
「パブピア(PubPeer)」では、ギルニタの2003~2022年の20年間の22論文にコメントがあるが、スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)は最近の4論文のみ精査した。
スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)はその4論文をねつ造と結論したが、学術誌は画像提示の間違いとし、論文訂正ですませ、論文を撤回していない。「学術誌のネカト調査不正」事件でもある。
カロリンスカ医科大学(Karolinska Institute)。Pressfoto: Janos Kovacs。写真出典
★レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)を中心に記載
- 国:スウェーデン
- 成長国:ルーマニア
- 医師免許(MD)取得:ルーマニアのクラヨバ大学医学部
- 研究博士号(PhD)取得:カロリンスカ医科大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1975年1月1日、ルーマニア生まれとする。2002年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
- 現在の年齢:49 歳?
- 分野:がん学
- 不正論文発表:2003~2022年(28~47歳?)の20年間
- ネカト行為時の地位:米国のMDアンダーソンがんセンター・ポスドク。カロリンスカ医科大学・上級研究員、準教授
- 発覚年:2022年(47歳?)
- 発覚時地位:カロリンスカ医科大学・準教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者はクレア・フランシス(Clare Francis)。パブピア(PubPeer)で指摘
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)が調査したから
- 大学の透明性:調査していない(✖)。[大学以外が詳細をウェブ公表(⦿)、https://forbetterscience.files.wordpress.com/2023/12/beslut-3.2-22-0064_underskrivet.pdf]
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:1報撤回。「パブピア(PubPeer)」では22論文にコメントあり
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:柴野卓志(Takashi Shibano)、高橋 伸一郎(東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授)
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
★レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)
主な出典:Leonard Girnita | Karolinska Institutet、 Leonard Girnita | LinkedIn
- 生年月日:不明。仮に1975年1月1日、ルーマニア生まれとする。2002年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
- xxxx年(xx歳):ルーマニアのクラヨバ大学医学部(Faculty of Medicine of Craiova)で学士号取得:医学
- 1998年3月~2002年(23~27歳?):カロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)で研究博士号(PhD)を取得:腫瘍病理学
- 2002年(27歳?):米国のMDアンダーソンがんセンター(University of Texas MD Anderson Cancer Center)・ポスドク。ボスはジョージ・カリン(George A. Calin)
- 2003~2022年(28~47歳?):この20年間の22論文がネカト疑惑
- 2008年(33歳?):カロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)・上級研究員 (Docent)
- 2022年(47歳?):カロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)・準教授
- 2022年(47歳?):研究不正が発覚
- 2023年12月14日(48歳?):スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)がネカトでクロと結論
- 2024年1月24日(49歳?)現在:カロリンスカ医科大学・準教授職を維持
★柴野卓志(Takashi Shibano)
- 生年月日:不明。仮に1986年1月1日生まれとする。2005年に大学・学部を卒業した時を22歳とした
- 2005年(22歳?):新潟大学で学士号取得:生物学理学部は今
- 2008年(25歳?):東京大学大学院農学生命科学研究科・院生。KAKEN
- 2015年7月21日(32歳):東京大学大学院農学生命科学研究科で研究博士号(PhD)を取得:ボスは高橋 伸一郎。CiNii 博士論文
- 20xx年(xx歳):カロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)・ポスドク
- 2022年(39歳?):研究不正が発覚
- 2023年12月14日(40歳?):スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)がネカトでクロと結論
- 2024年1月24日(41歳?)現在:カロリンスカ医科大学・ポスドク職を維持
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
アダ・ギルニタ(Ada Girnita)のがん予防動画:「Så undviker du cancerformen som ökar mest. Sola säkert från hudcancer! – YouTube」(スウェーデン語?)6分12秒。
Karolinska Universitetssjukhuset(チャンネル登録者数 2870人)が2021/06/21に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究人生と妻のアダ・ギルニタ(Ada Girnita)
レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita、写真左出典)と妻のアダ・ギルニタ(Ada Girnita 、写真右)は、2人共、ルーマニア生まれ育ちで、夫のレオナルドは、スウェーデンのカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)・準教授になった。妻のアダは同じ研究室の上級研究員(Docent)である。
妻のアダ・ギルニタは黒色腫の専門家で、テレビやラジオのレギュラー出演者である。例えば、以下の動画の右側の女性。
★発覚の経緯
2022年4月(推定)、有名なネカトハンターであるクレア・フランシス(Clare Francis)がギルニタの論文のデータねつ造・改ざんをパブピア(PubPeer)で指摘した。
2022年5月、翌月、ドイツの有名なネカトハンターであるレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)がカロリンスカ医科大学(Karolinska Institutet)とNPOFにギルニタ事件を通報した。
NPOFの説明
NPOFは、スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF:Nämnden för prövning av oredlighet i forskning、英語で Swedish National Board for Assessment of Research Misconduct)だが、日本語のスウェーデン国家研究不正審査委員会は長いので、本記事ではNPOFを多用する。
NPOFは、2020年1月1日に教育研究省傘下の政府機関として新設された。年25件程度のネカト調査を行なっている。 → Nämnden för prövning av oredlighet i forskning
2022年9月、クレア・フランシスがNPOFに再度通報した。
NPOFは、ネカト調査を、ウプサラ大学(Uppsala University)の医学細胞生物学者であるマイケル・ウェルシュ教授(Michael Welsh、写真出典)に依頼した。
★調査結果
2023年12月14日、1年3か月の調査の後、スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)は調査報告書(2023年12月11日付け)を発表した。
以下はスウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)の調査報告書(2023年12月11日付け)の冒頭部分(出典:同)。全文(21ページ)は → https://forbetterscience.files.wordpress.com/2023/12/beslut-3.2-22-0064_underskrivet.pdf
「パブピア(PubPeer)」では、レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)の2003~2022年の20年間の22論文にコメントがあるが、NPOFはそのうちの最新の4論文だけを調査した。
- 論文番号1:「2022年1月のOncogene」論文
- 論文番号2:「2021年1月のCancer Res.」論文・・・柴野卓志が共著者の1人
- 論文番号3:「2012年12月のProc Natl Acad Sci U S A」論文
- 論文番号4:「2017年6月のOncogene」論文・・・高橋伸一郎が共著者の1人
調査の結果、論文の複数のデータにねつ造・改ざんが見つかった。また、元データが入手できなかったケース、データ再現が困難なケースも複数あった。それで、4論文全部が不適切で、論文の結論を信用できない、と結論した。
以下の11人の共著者をネカトで有罪とした。
Sonja Cismas, Caitrin Crudden, Ada Girnita, Leonard Girnita, Daniela Nedeicu, Takashi Shibano, Dawei Song, Naida Suleymanova, Erjc Trocme, Claire Worrall, Huiyuan Zheng
レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)と妻のアダ・ギルニタ(Ada Girnita)は研究室主宰者なので、研究室の論文の質を保証する特別重い責任がある、と指摘した。白楽記事では、用語としては少しそぐわないが、ギルニタ夫妻を主犯とした。
この11人のネカト有罪者の中に、日本人ポスドクの柴野卓志(Takashi Shibano)がいた。
ギルニタの共著者11人の1人だった柴野卓志は有罪だったが、次の7人の共著者 Elisabeta Candrea, laraTrocoli Drakensjö, lulian Oprea, Stefan Seregard, Julianna Serly, Hongchang Shen, Radu Stefanescu は無罪なので、ギルニタの共著者全員が有罪だったわけではない。
★珍しい基準だが正当な基準
スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)はギルニタ夫妻、柴野ら11人をねつ造・改ざんで有罪と結論したが、この基準は米国・研究公正局の基準とはかなり異なる。世界的には珍しいユニークな基準だが、白楽は、正当だと思った。
米国・研究公正局の基準は、データねつ造・改ざんを実際に実行した本人をネカト者としている。その論文の共著者たち、研究主宰者は無罪である。
NPOFの基準は、米国・研究公正局の基準とは大きく異なり、データねつ造・改ざんを実際に実行した本人を特定していない。実行者を特定する判定ではなく、関与した人すべてをネカト者として有罪とした。その上、研究主宰者に特に重い責任があるとした。
有罪とする考え方は以下のようである。
論文の基礎となるデータの収集と確認の作業に加わった人。論文内の図が正しいかどうかを確認する機会があった人。そして、その人たちが、収集データや論文内の図が正しいかどうかを判定する能力を持っていた場合、論文が掲載される前に論文に掲載した図・データのねつ造・改ざんに気付かなかった、そして、指摘・訂正しなかった、という点で、その人たちは、研究上の重大な過失を犯した。従って、ネカト有罪である。
★学術誌のネカト調査不正
【ねつ造・改ざんの具体例】でさらに詳しく述べるが、スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)はデータねつ造・改ざんとしたのに、論文を掲載した学術誌はその結論に従っていない。
学術誌は著者たちが画像を並べる際に「間違えた」とし、論文訂正ですませ、論文を撤回しなかった。
学術誌のこの対処は異常である。
学術誌のこの対処は、研究者にネカトを奨励する作用があり、かなり問題だと思う。白楽記事では「学術誌のネカト調査不正」事件とした。
★朱に交われば・・・その1
ギルニタの関係者にネカト者が複数人いる。類は友を呼ぶのか? 朱に交われば赤くなるのか?
レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)は、ネカト疑惑者のカリン・ダールマン=ライト(Karin Dahlman-Wright)と共著の論文がある。2024年1月29日現在、撤回されていない。
→ カリン・ダールマン=ライト(Karin Dahlman-Wright)(スウェーデン) | 白楽の研究者倫理
- Estrogen Receptor α Promotes Breast Cancer by Reprogramming Choline Metabolism.
Jia M, Andreassen T, Jensen L, Bathen TF, Sinha I, Gao H, Zhao C, Haldosen LA, Cao Y, Girnita L, Moestue SA, Dahlman-Wright K.
Cancer Res. 2016 Oct 1;76(19):5634-5646. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-15-2910. Epub 2016 Jul 25.
上記論文のデータ疑惑が、パブピアで指摘されている。以下の図の出典:https://pubpeer.com/publications/FE1B8CE34A5B26A1A2D49D21051038
なお、この「2016年10月のCancer Res.」論文は、カロリンスカ医科大学とスウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)が「ねつ造」としたにも関わらず、学術誌は論文を「訂正」で済ませた「学術誌のネカト調査不正」事件である。
★朱に交われば・・・その2
レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)は、ノーベル賞受賞者で疑惑論文を出版したロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)と以下の共著の論文がある。2024年1月29日現在、撤回されていない。
→ ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)(米)、マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)(英) ノーベル賞受賞者 | 白楽の研究者倫理
- {beta}-Arrestin is crucial for ubiquitination and down-regulation of the insulin-like growth factor-1 receptor by acting as adaptor for the MDM2 E3 ligase.
Girnita L, Shenoy SK, Sehat B, Vasilcanu R, Girnita A, Lefkowitz RJ, Larsson O.
J Biol Chem. 2005 Jul 1;280(26):24412-9. doi: 10.1074/jbc.M501129200. Epub 2005 May 3.
上記論文のデータ疑惑が、パブピアで指摘されている。以下の図の出典:https://pubpeer.com/publications/EFEA4874505D8683717D705176840D#
●【ねつ造・改ざんの具体例】
スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)が4論文を調査しネカトでクロとした。その4論文のネカト部分を見ていこう。
最初に断わっておくが、2024年1月29日現在、全4論文は撤回されていない。
★論文番号1:「2022年1月のOncogene」論文
「2022年1月のOncogene」論文の書誌情報を以下に示す。2024年1月29日現在、撤回されていない。
- IGF-1R is a molecular determinant for response to p53 reactivation therapy in conjunctival melanoma.
Song D, Cismas S, Crudden C, Trocme E, Worrall C, Suleymanova N, Lin T, Zheng H, Seregard S, Girnita A, Girnita L.
Oncogene. 2022 Jan;41(4):600-611. doi: 10.1038/s41388-021-02111-x. Epub 2021 Nov 17.
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/09163D1EDBA33669D448478CF554A2#
以下は図2B
NPOFは、図2Bにはねつ造画像が含まれていて、適切な研究慣行からの重大な逸脱だとした。
しかし、学術誌「Oncogene」はこれに同意せず、論文を撤回しなかった。2023年2月9日に論文訂正を公表した。 → Correction | Oncogene
★論文番号2:「2021年1月のCancer Res.」論文
「2021年1月のCancer Res.」論文の書誌情報を以下に示す。2024年1月29日現在、撤回されていない。
柴野卓志が共著者になっている。
- Inhibition of G Protein-Coupled Receptor Kinase 2 Promotes Unbiased Downregulation of IGF1 Receptor and Restrains Malignant Cell Growth.
Crudden C, Shibano T, Song D, Dragomir MP, Cismas S, Serly J, Nedelcu D, Fuentes-Mattei E, Tica A, Calin GA, Girnita A, Girnita L.
Cancer Res. 2021 Jan 15;81(2):501-514. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-20-1662. Epub 2020 Nov 6.
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/3ADC821509B0BF1418185DEA8F56ED#
★論文番号3:「2012年12月のProc Natl Acad Sci U S A」論文
「2012年12月のProc Natl Acad Sci U S A」論文の書誌情報を以下に示す。2024年1月29日現在、撤回されていない。
- β-Arrestin-biased agonism as the central mechanism of action for insulin-like growth factor 1 receptor-targeting antibodies in Ewing’s sarcoma.
Zheng H, Shen H, Oprea I, Worrall C, Stefanescu R, Girnita A, Girnita L.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Dec 11;109(50):20620-5. doi: 10.1073/pnas.1216348110. Epub 2012 Nov 27.
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/82C01DB72976289AA0602CE342B2E2#
★論文番号4:「2017年6月のOncogene」論文
「2017年6月のOncogene」論文の書誌情報を以下に示す。2024年1月29日現在、撤回されていない。
- Unbalancing p53/Mdm2/IGF-1R axis by Mdm2 activation restrains the IGF-1-dependent invasive phenotype of skin melanoma.
Worrall C, Suleymanova N, Crudden C, Trocoli Drakensjö I, Candrea E, Nedelcu D, Takahashi SI, Girnita L, Girnita A.
Oncogene. 2017 Jun 8;36(23):3274-3286. doi: 10.1038/onc.2016.472. Epub 2017 Jan 16.
高橋伸一郎が共著者になっている。
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/209AFC6A8D3CE0D93A392E9D53886E#
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
データベースに直接リンクしているので、記事を閲覧した時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えていると思います。
★パブメド(PubMed)
2024年1月29日現在、パブメド(PubMed)で、レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)の論文を「Leonard Girnita [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2024年の23年間の63論文がヒットした。
「Girnita L」で検索すると、1998~2024年の27年間の81論文がヒットした。
2024年1月29日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、「2012年1月のOncogene」論文・1論文が2023年2月xx日に撤回されていた。
なお、ギルニタの64論文の内、柴野卓志が共著者になっていたのは、2018~2023年の3論文だった。なお、る柴野卓志は共著者になっていなかった。
柴野卓志(Takashi Shibano)の論文を「Takashi Shibano [Author]」で検索すると、2007~2023年の7年間の11論文がヒットし、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2024年1月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでレオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)を「Leonard Girnita」で検索すると、 1論文が懸念表明、1論文が撤回されていた。
「2003年10月のOncogene」論文が2022年1月28日にデータねつ造・改ざんで懸念表明、「2011年6月のOncogene」論文が2022年12月9日に査読偽装とデータねつ造・改ざんで、撤回された。
柴野卓志は両論文とも共著者になっていなかった。
★パブピア(PubPeer)
2024年1月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)の論文のコメントを「authors:”Leonard Girnita”」で検索すると、2003~2022年に出版された22論文にコメントがあった。
22論文の内、柴野卓志が共著者になっているのは1論文・「2021年1月のCancer Res.」論文だけだった。
●7.【白楽の感想】
《1》珍しい基準だが正当
スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)は研究室を主宰するレオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)とアダ・ギルニタ(Ada Girnita、写真出典)に重い責任があるとしたが、柴野卓志(Takashi Shibano)を含め、他の9人の共著者も有罪とした。
スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)の結論を、本文の「珍しい基準だが正当な基準」に書いたが、重要なので繰り返す。
米国・研究公正局の基準は、データねつ造・改ざんを実際に実行した人をネカト者としている。その論文の共著者たち、そして、(上司であることが多い)研究主宰者は無罪である。
スウェーデン国家研究不正審査委員会(NPOF)の基準は、米国・研究公正局の基準とは大きく異なり、データねつ造・改ざんを実際に実行した人を特定していない。実行者を特定し処罰するのではなく、ネカトに関与したすべての研究者をネカト者として有罪とした。その上、研究主宰者に特に重い責任があるとした。
白楽の言葉で言うと、「受益者有責の原則」である。
つまり、発表した論文で利益を得る(得た)人は、その論文に問題があれば、責任があるということだ。
有責(有罪)者の範囲は以下のようである。
論文の基礎となるデータの収集と確認の作業に加わった人。論文内の図が正しいかどうかを確認する機会があった人。そして、その人たちが、収集データや論文内の図が正しいかどうかを判定する能力を持っていた場合、論文が掲載される前に論文に掲載した図・データのねつ造・改ざんに気付かなかった、そして、指摘・訂正しなかった、という点で、その人たちは、研究上の重大な過失を犯した。従って、ネカト有責(有罪)である。
米国・研究公正局の基準より、NPOFの基準の方が正当だと思う。
ただ、データねつ造・改ざんを実際に実行した人を特定すべきである。その人に最も重い責任がある。研究主宰者はデータを出した人を知っているので、容易に特定できるハズだ。
関与者全員を有罪にした時の問題は、内部告発をする人が激減することだ。告発すると自分も有罪になるからだ。
となると、ネカト行為が隠蔽される。発覚がますます遅れる。
これを防ぐためには、いわゆる司法取引と同じ方式を導入する。つまり、最初に内部告発した人の罪を軽減する。そうすれば、むしろ、内部告発は増えると思う。
《2》学術誌の問題
日本でネカト問題を考えると、問題はネカト者個人の行為をどうするかと考える。だから、研究倫理教育だの研修だのを実施する。
ただ、実際にネカトを告発してみるとすぐにわかるのだが、はるかに大きな問題は「大学のネカト対処怠慢・隠蔽」や「大学のネカト調査不正」である。
白楽も2回告発して大学の対処の異常さに直面し、大いにあきれ、重大な問題だと思っている。
日本で多数のネカト告発をしている世界変動展望のブログを読むと、何度も「大学のネカト対処怠慢・隠蔽」や「大学のネカト調査不正」を訴えている。
しかし、日本のメディアも倫理研究者も「大学のネカト対処怠慢・隠蔽」や「大学のネカト調査不正」を追求しない。不思議である。
そして、もう1つ厄介な「ネカト対処怠慢・隠蔽」や「ネカト調査不正」は学術誌である。
欧米では、「学術誌のネカト対処怠慢・隠蔽」や「学術誌のネカト調査不正」を追求する記事がかなりたくさんある。
しかし、日本では学術誌を問題視する声はほとんど聞こえてこない。学術誌は健全で真っ当に運営されていると信じているようだ。
思うに、日本の学術誌の地位がとても低いので、日本人研究者は「学術誌のネカト対処怠慢・隠蔽」や「学術誌のネカト調査不正」気がついていない、問題視していない。
同時に、外国の学術誌以上に、日本の学術誌の運営はイイカゲンである。日本人研究者は、このことも、問題視していないが、もっとチャント対処すべきである。大きく改善すべき点がたくさんある。
《3》ネカト者はネカト者を呼ぶ?
「類は友を呼ぶ」ので、「ネカト者はネカト者を呼ぶ」だろうか?
レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)は、論文の共著者にネカト者が多い。
事実として、「ネカト者はネカト者を呼ぶ」のか、誰かチャント、分析してくれないだろうか?
本文に書いたが、ギルニタは、疑惑論文を出版したカリン・ダールマン=ライト(Karin Dahlman-Wright)と共著の論文がある。
→ カリン・ダールマン=ライト(Karin Dahlman-Wright)(スウェーデン) | 白楽の研究者倫理
ノーベル賞受賞者で疑惑論文を出版したロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)と共著の論文もある。
→ ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)(米)、マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)(英) ノーベル賞受賞者 | 白楽の研究者倫理
本文に書いていないが、レオナルド・ギルニタ(Leonard Girnita)と妻のアダ・ギルニタ(Ada Girnita)は、2人共、ルーマニア生まれ育ちで、2人共、米国のMDアンダーソンがんセンター(University of Texas MD Anderson Cancer Center)のジョージ・カリン(George A. Calin)の研究室で研究していた。
白楽記事ではジョージ・カリン(George A. Calin)のネカトを解説していないが、カリンはパブピア(PubPeer)に30論文もコメントされているネカト疑惑者である。
カロリンスカ医科大学で指導を受けたオーレ・ラーソン教授(Olle Larsson)はレオナルド・ギルニタの81論文の内の43論文で共著者になっている。そのラーソン教授は、パブピア(PubPeer)で19論文.コメントされているネカト疑惑者である。ただ、この19論文中の15論文はレオナルド・ギルニタと共著である。ギルニタのネカト行為に巻き込まれただけかもしれないが、赤く染めた人かもしれない。
なお、NPOFが発表したクロ、シロのどちらにも、ラーソン教授は入っていない。
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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる
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●9.【主要情報源】
① 2022年5月31日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Croce begat Calin, and Calin begat Girnita… – For Better Science
② 2023年12月18日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Leonard and Ada Girnita guilty of research misconduct – For Better Science
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