2021年8月26日掲載
ワンポイント:チョイは全南(チョンナム)大学(전남대학교、Chonnam National University)・教授である。パブピアがチョイの「2005年のNucleic Acids Res」論文のねつ造・改ざんを指摘した。結局、その論文を含め2005~2007年の4論文が2018~2019年(56歳)に撤回された。大学はネカト調査した気配がなく、チョイも室員も処分されていない。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ヒュンシク・チョイ(Hueng-Sik Choi、ORCID iD:?、写真出典)は、韓国の全南(チョンナム)大学(전남대학교、Chonnam National University)・教授で医師免許は所持していない。専門は内分泌学である。
2018年(56歳)、パブピアがチョイの「2005年のNucleic Acids Res」論文のねつ造・改ざん画像を指摘した。
結局、その論文を含め2005~2007年に出版した4論文が2018~2019年(56歳)に撤回された。
大学はネカト調査をした気配がなく、チョイも室員も処分されていない。
白楽の推定では、当時、院生だったユンヨン・パク(Yun-Yong Park)がネカト犯と思われるが、推定である。
2021年8月25日現在、ユンヨン・パクは、中央(チュンアン)大学・生命科学科(Department of Life Science, Chung-Ang University)・教授(?)である。
全南(チョンナム)大学(Chonnam National University)・テドク地区(Daedeok Campus)。出典:https://plus.cnu.ac.kr/html/en/sub01/sub01_010603.html
以下は全南(チョンナム)大学の紹介動画。出典:https://www.youtube.com/watch?v=ZTxTt5yt9rg
- 国:韓国
- 成長国:韓国
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:米国のラトガーズ大学
- 男女:男性
- 生年月日:1962年8月17日
- 現在の年齢:62 歳
- 分野:内分泌学
- 不正論文発表:2005~2007年(43~45歳)
- 発覚年:2018年(56歳)
- 発覚時地位:全南(チョンナム)大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)が「パブピア(PubPeer)」で指摘
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①全南(チョンナム)大学は調査していない?
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していない?
- 大学の透明性:調査していない(✖)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:4報撤回
- 時期:研究キャリアの中期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
- 1962年8月17日:韓国で生まれる
- 1981-1985年(18-22歳):韓国の慶熙(キョンヒ)大学(Kyung Hee University)で学士号取得:生物学
- 1985-1990年(22-27歳):米国のラトガーズ大学(Rutgers University)で研究博士号(PhD)を取得:細胞・発生生物学
- 1990-1995年(27-32歳):米国のハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・ポスドク
- 1996年(33歳):韓国の全南(チョンナム)大学(Chonnam National University)・インストラクター、後に、助教授、準教授、正教授
- 2018年12月(56歳):ネカトによる最初の論文撤回
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
研究紹介動画:「[전남대] 최흥식 교수_영상 – YouTube」(韓国語)3分22秒。
과학기술정보통신부が2015/09/24に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★経緯
2018年12月19日(56歳)、ヒュンシク・チョイ(최흥식、Hueng-Sik Choi、写真出典)の論文がはじめて撤回された。
「2005年のNucleic Acids Res」論文で、5日前に訂正した論文だった。
- An autoregulatory loop controlling orphan nuclear receptor DAX-1 gene expression by orphan nuclear receptor ERRgamma.
Park YY, Ahn SW, Kim HJ, Kim JM, Lee IK, Kang H, Choi HS.
Nucleic Acids Res. 2005 Nov 28;33(21):6756-68. doi: 10.1093/nar/gki976. Print 2005.
訂正・撤回は、パブピアの指摘に対応したものだった。
パブピアは図5D、図3B、図5Bの画像に重複使用があると指摘していた。
訂正・撤回は、13年前に出版した「2005年のNucleic Acids Res」論文の画像である。
13年前となると、一般的に、ネカトかどうかの検証は難しい。著者たちが、研究データをしっかり整理・保存している保証はない。
ただ、画像作成者が誰だか不明になるほど昔ではない。
以下順番に指摘箇所を見ていこう。
以下の図は、全部パブピアの図である → 出典:https://pubpeer.com/publications/60F70C185751A235880753DC184183
まず、図5Dの組織像。重複は明白だ。
図3B の画像は2回指摘されている。2画像を続けて示す。
図5Bの画像も2回指摘されている。2画像を続けて示す。
★計4論文が撤回
撤回監視データベースで調べると、ヒュンシク・チョイ(Hueng-Sik Choi)が2005~2007年に出版した4論文が2018~2019年に撤回されている。
上記した「2005年のNucleic Acids Res」論文を除く3論文は以下のとおりである。全部、画像のねつ造・改ざんが撤回理由である。
例えば、番号1の「2006年のJ Biol Chem.」論文の撤回理由は、図7Eの画像の重複使用である。
- Orphan nuclear receptor Nur77 induces zinc finger protein GIOT-1 gene expression, and GIOT-1 acts as a novel corepressor of orphan nuclear receptor SF-1 via recruitment of HDAC2.
Song KH, Park YY, Kee HJ, Hong CY, Lee YS, Ahn SW, Kim HJ, Lee K, Kook H, Lee IK, Choi HS.
J Biol Chem. 2006 Jun 9;281(23):15605-14. doi: 10.1074/jbc.M505937200. Epub 2006 Apr 4. - Distinct repressive properties of the mammalian and fish orphan nuclear receptors SHP and DAX-1.
Park YY, Teyssier C, Vanacker JM, Choi HS.
Mol Cells. 2007 Jun 30;23(3):331-9. - Polo-like kinase 2 gene expression is regulated by the orphan nuclear receptor estrogen receptor-related receptor gamma (ERRgamma).
Park YY, Kim SH, Kim YJ, Kim SY, Lee TH, Lee IK, Park SB, Choi HS.
Biochem Biophys Res Commun. 2007 Oct 12;362(1):107-113. doi: 10.1016/j.bbrc.2007.07.170. Epub 2007 Aug 8.
★チョイ教授
2021年8月25日現在、チョイ教授の最初の論文撤回(2018年12月19日)から2年8か月が経過した。
しかし、全南(チョンナム)大学はチョイ教授の4論文のネカト調査について何も発表していない。多分、ネカト調査をしていない。
チョイ教授は全南(チョンナム)大学の教授職を維持している。 → FACULTY & RESEARCH、(2021年8月25日保存版)
●【ねつ造・改ざんの具体例】
上記したので省略。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2021年8月25日現在、パブメド(PubMed)で、ヒュンシク・チョイ(Hueng-Sik Choi)の論文を「Hueng-Sik Choi [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2021年の20年間の175論文がヒットした。
「Choi HS」で検索すると、 2,465論文がヒットした。
2021年8月25日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、8論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2021年8月25日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでヒュンシク・チョイ(Hueng-Sik Choi)を「Choi, Hueng Sik」で検索すると、1論文が訂正、4論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2021年8月25日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ヒュンシク・チョイ(Hueng-Sik Choi)の論文のコメントを「Hueng-Sik Choi」で検索すると、10論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》ネカト調査
白楽が軽く調べただけで、ヒュンシク・チョイ教授(최흥식、Hueng-Sik Choi、写真出典)がネカト者ではなく、当時、院生だったユンヨン・パク(Yun-Yong Park)がネカト者と思える。
しかし、全南(チョンナム)大学はチョイ教授の4撤回論文のネカト調査について何も発表していない。多分、ネカト調査をしていない。
どうして、調査しないのだろうか?
チョイ教授は、どうして、沈黙を保っているのだろうか?
自分は無実なのに、ネカト犯と想定されている場合、本人は抗議するなり、ネカト犯の調査を依頼するなり、自分の潔白を主張する言動をすべきだと、白楽は、強く思う。
そのことで、さらなるネカトの拡大が防げる。また、信頼できる論文と信頼できない論文(いずれ撤回)の選別も進む。学術界の掃除ができ、少しキレイになる。
★ユンヨン・パク(Yun-Yong Park)
全南(チョンナム)大学はネカト調査をしていないようだが、ネカト論文を少し眺め、キーボードをたたくだけで、次のことがわかる。
上記したように、2005~2007年に出版した4論文が2018~2019年に撤回された。
4撤回論文のすべてで共著者になっているのは、チョイ教授ともう1人・ユンヨン・パク(Yun-Yong Park)だけである。パクは、内、3 撤回論文の第一著者である。
ネカト者はチョイ教授ではなく、パクだと思えるが、どうだろう?
全南(チョンナム)大学はネカト調査しないのだろうか?
なお、パクは全南(チョンナム)大学で博士号を取得後、米国に留学した。
その後、韓国に帰国し、ソウル峨山(アサン)病院(ASAN Medical Center)の助教授を経由し、2021年8月25日現在、中央(チュンアン)大学・生命科学科(Department of Life Science, Chung-Ang University)・教授(?)である。 → ①:Yun-Yong Park | LinkedIn、②: 2021年5月28日論文の著者所属
2021年8月25日現在、パクは83報の論文を出版している。そして、驚いたことに、「パブピア(PubPeer)」でパクの23論文に疑問符がついている。
パクはズルして出世した典型ではないのだろうか?
パクがネカト者でないなら、パク自身が「パブピア(PubPeer)」の疑念に答え、本人がチャンと疑念を晴らすべきだ。
不幸なことに、もし、ネカト者なら、パクの博士論文もネカト論文になり、博士号剥奪、中央(チュンアン)大学・解雇になるだろう。
全南(チョンナム)大学、ソウル峨山(アサン)病院、中央(チュンアン)大学が放置すると、韓国の不正は放置されたままである。
「パブピア(PubPeer)」が指摘したから、多数論文撤回者にはならないと思うが、放置すると、ユンヨン・パク(Yun-Yong Park)は多数論文撤回者の道を進むかもしれない。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 2019年12月23日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Endocrinology researcher in South Korea scores four retractions in a year – Retraction Watch
② 全南(チョンナム)大学・School of Biological Sciences and Technology の英語のサイト
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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