2020年11月29日掲載
ワンポイント:コールマンはピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)・キャッツ経営学大学院(Katz Graduate School of Business)・準教授で、優秀な研究者との評判だった。しかし、ネカト論文を2015~2019年(32~36歳?)に4報出版した。2020年(37歳?)にネカトがバレ、論文は撤回され、大学を辞職した。大学は調査中と思われ、現在、無処分である。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ニコール・コールマン(Nicole Coleman、Nicole Verrochi Coleman、ORCID iD:http://orcid.org/0000-0001-5647-7279、写真出典)は、米国のピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)・キャッツ経営学大学院(Katz Graduate School of Business)・準教授で、専門は経営学(消費者行動学)だった。
ネカト論文を2015~2019年(32~36歳?)に4報出版した。
2020年(37歳?)、ネカトがバレ、論文は撤回、大学を辞職した。
2020年11月28日(37歳?)現在、大学は調査中と思われ、無処分である。
ピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)・キャッツ経営学大学院(Katz Graduate School of Business)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:米国
- 研究博士号(PhD)取得:ペンシルベニア大学
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1983年1月1日生まれとする。2005年に大学を卒業した時を22歳とした
- 現在の年齢:41 歳?
- 分野:経営学
- 最初の不正論文発表:2015年(32歳?)
- 不正論文発表:2015~2019年(32~36歳?)の4年間
- 発覚年:2020年(37歳?)
- 発覚時地位:ピッツバーグ大学・準教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明だが、共著者が学術誌に公益通報
- ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②ピッツバーグ大学・調査委員会(推定)
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査中(推定)
- 大学の透明性:調査中(推定)(ー)。
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:4報撤回
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
- 処分: なし
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:不明。仮に1983年1月1日生まれとする。2005年に大学を卒業した時を22歳とした
- 2005年(22歳?):ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)で学士号取得
- 2010年(27歳?):同大学(Kanpur)で研究博士号(PhD)を取得:経営科学および応用経済学
- 2010年9月(27歳?):ピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)・助教授、後に準教授
- 2014年(31歳?):第1子出産
- 2015~2019年(32~36歳?):後で撤回される4論文を出版
- 2017年(34歳?):第2子出産
- 2020年(37歳?):4論文が撤回
- 2020年(37歳?):ピッツバーグ大学がネカト調査を開始(推定)
- 2020年8月(37歳?):ピッツバーグ大学・準教授を辞職
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
ニコール・コールマンの紹介動画:「University of Pittsburgh – The Art of Business」(英語)1分26秒。
Awesome Filmsが2016年に公開。以下をクリック。
University of Pittsburgh – The Art of Business on Vimeo
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★データ異常と論文撤回
ニコール・コールマン(Nicole Coleman)は研究博士号(PhD)を取得すると直ぐにピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)・助教授に採用された優秀な研究者だった。
2020年(35歳?)(推定)、コールマンの共著者が論文のデータ異常に気がついた。データ異常の指摘に対してコールマンは納得のいく説明をしなかった。
2020年xx月(35歳?)、コールマンの共著者が学術誌・編集部に論文のデータ疑念を通報した。
2020年5月26日(35歳?)、共著者たちは学術誌・編集部に論文撤回を正式に依頼した。
共著者のアンドレア・モラレス(Andrea Morales、Andrea Ketcham、写真出典)は、「撤回公告に記述してあるように、コールマンがすべての生データファイルを持っていて、すべてのデータを分析しました」、と述べている。
「撤回監視(Retraction Watch)」の質問に、ピッツバーグ大学の研究公正官であるクレイグ・ウィルコックス教授(Craig Wilcox、写真出典)は、大学が調査中かどうか表明しなかったが、以下の回答をした。
「ピッツバーグ大学は研究公正を非常に真剣に扱っています。当大学の規則は、連邦法に準拠し、大学に申し立てられたネカト調査に関与する機密を保護することになっています。調査記録は、規制、契約上の義務、または法律によって要求される場合にのみ開示されます」。
つまり、「調査中なので」回答できません、ということのようだ。
2020年8月(37歳?)、コールマンはピッツバーグ大学・準教授を辞職した。
★論文出版と撤回公告:4報の内、3報を示す
(1)「2017年8月のJournal of Consumer Research」論文。2020年7月30日に撤回。
- Attention, Attitudes, and Action: When and Why Incidental Fear Increases Consumer Choice
Nicole Verrochi Coleman, Patti Williams, Andrea C Morales, Andrew Edward White
Journal of Consumer Research, Volume 44, Issue 2, August 2017, Pages 283–312, https://doi.org/10.1093/jcr/ucx036
Published: 23 January 2017
2020年10月号の撤回公告 → Retraction: Attention, Attitudes, and Action: When and Why Incidental Fear Increases Consumer Choice | Journal of Consumer Research | Oxford Academic
(2)「2018年3月のJournal of the Association for Consumer Research」論文。2020年6月9日に撤回。
- Connections to Brands That Help Others versus Help the Self: The Impact of Incidental Awe and Pride on Consumer Relationships with Social-Benefit and Luxury Brands
Patti Williams, Nicole Verrochi Coleman, Andrea C. Morales, and Ludovica Cesareo
Journal of the Association for Consumer Research 3(2):000-000
DOI: 10.1086/697083
Published: March 2018
2020年6月9日撤回公告 → Retraction
(3)「2019年6月のJournal of Consumer Research」論文を発表した。2020年7月3日に撤回。
- Identity Threats, Compensatory Consumption, and Working Memory Capacity: How Feeling Threatened Leads to Heightened Evaluations of Identity-Relevant Products
Nicole Verrochi Coleman, Patti Williams, Andrea C Morales
Journal of Consumer Research, Volume 46, Issue 1, June 2019, Pages 99–118, https://doi.org/10.1093/jcr/ucy060
Published: 06 July 2018
2020年7月3日撤回公告 → Retraction: Identity Threats, Compensatory Consumption, and Working Memory Capacity: How Feeling Threatened Leads to Heightened Evaluations of Identity-Relevant Products | Journal of Consumer Research | Oxford Academic
●【ねつ造・改ざんの具体例】
「撤回監視(Retraction Watch)」の質問に対して、ピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)は調査しているのかどうか明言していない。従って、当然のことながら、調査結果は公表されていない。
つまり、論文の何がどのようにねつ造・改ざんされたのか、公式発表がない。
経営学でのデータねつ造・改ざんはどんなものか、大いに参考になるのだが、全く分からない。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★論文数
2019年4月の履歴書によると、2009~2019年の10年間に9論文出版した。
2015年以降は、2015年に1報、2017年に1報、2018年に2報、2019年に2報である。
★撤回監視データベース
2020年11月28日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでニコール・コールマン(Nicole Coleman)を「Nicole Verrochi Coleman」で検索すると、4論文がヒットし、4論文が撤回されていた。
2015~2019年(32~36歳?)の4報が2020年に撤回された。
★パブピア(PubPeer)
2020年11月28日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ニコール・コールマン(Nicole Coleman)の論文のコメントを「Nicole Coleman」で検索すると、2論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》論文と出産
ニコール・コールマン(Nicole Coleman)はネカト論文を2015~2019年(32~36歳?)に4報出版した。
経歴を見ると、最初のネカト論文を出版した2015年(32歳?)の前年の2014年(31歳?)に第1子を出産している。第2子出産は第1子出産の3年後の2017年(34歳?)である。ネカト論文を出版した数年間と丁度重なる。
想像するに、第1子の面倒を見ながら、第2子出産と、私生活で超多忙でゴタゴタした時に論文をまとめ投稿したに違いない。
悲劇である。
米国では法的な産休があっても、研究者は研究を休めば業績が落ちる。だから、まともに産休を取らない(取れない)。
もちろん、私生活で超多忙でもネカトをしてはならないが、優秀は女性が、こんなことで学術界から消えていくのは、もったいない。
と推察したが、育児出産で多忙なためにコールマンはネカトに手を出したかどうかは、不明である。白楽が勝手に憶測しただけである。ヒョットすると、根っからのネカト者かもしれない。
《2》不明
コールマン事件では、コールマンの論文の何がどのようにねつ造・改ざんされたのか、わからない。
経営学でのデータねつ造・改ざん事件は多くはないので、ねつ造・改ざんを具体的に公表して欲しかった。
事例を共有することで、次のネカト対策に役立てられる。しかし、学術界・高等教育界は、事例を公表し、ネカト研究者に分析させ、次のネカト対策に役立てようという意識は、一般的には低い。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 2020年6月24日のレト・サプナル(Leto Sapunar)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Consumer research study is retracted for unexplained anomalies – Retraction Watch
② 2020年7月10日のレト・サプナル(Leto Sapunar)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Brand researchers have a second study retracted due to data “anomalies” – Retraction Watch
③ 2020年8月13日のレト・サプナル(Leto Sapunar)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Consumer researcher leaves Pitt after retractions for data anomalies – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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