2018年8月7日掲載。
ワンポイント:中国出身。17年前の2001年12月10日(56歳?)、研究公正局は、テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校(UTHSCH:University of Texas Health Science Center at Houston)・助教授のシャオンに盗用とデータねつ造があったと発表した。締め出し期間が1年間と短期間だったためか、シャオンは同じ大学の同じポストで研究職を続けられ、その後、同大学で教授になった。研究公正局がクロと発表した研究者で研究職を続けられた少ない例。国民の損害額の総額(推定)は1億1500万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
モミアオ・シャオン、熊墨淼(Momiao Xiong、写真出典)は、中国・上海の復旦大学(ふくたんだいがく、Fudan University)で学士号取得後、中国の企業で約20年間働いた。1988年(43歳?)、米国に渡り、修士号・博士号取得、ポスドクを経て、1997年(52歳?)、米国のテキサス大学健康科学センター・ヒューストン校(UTHSCH:University of Texas Health Science Center at Houston)の助教授になった。医師ではない。専門は生物統計学(ヒト遺伝学、エピジェネティクス)である。
2001年12月10日(56歳?)、発覚の経費は不明だが、研究公正局は、シャオンに盗用とデータねつ造があったと発表した。締め出し期間として1年間を科した。
シャオンは盗用とデータねつ造を認めた。締め出し期間が1年間と短期間だったためか、同じ大学の同じポストで研究職を続けられ、その後、正教授になった。
2018年8月6日現在(73歳?)、テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校(UTHSCH:University of Texas Health Science Center at Houston)・教授に在職している。 → https://gsbs.uth.edu/faculty/faculty-directory/faculty-profiles.htm?id=1346437
テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校(UTHSCH:University of Texas Health Science Center at Houston)。写真出典:https://nndc.org/nndc-members/university-of-texas-houston/
- 国:米国
- 成長国:中国
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:米国のジョージア大学
- 男女:男性
- 生年月日:1954年9月29日
- 生年月日:不明。仮に1945年1月1日生まれとする。1963年に大学入学した時を18歳とした
- 現在の年齢:79 歳?
- 分野:生物統計学
- 最初の不正:2000年(55歳?)(推定)
- 発覚年:2000年(55歳?)(推定)
- 発覚時地位:テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校・助教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)はシャオンの研究室の上司(推定)
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校・調査委員会。②研究公正局
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- 不正:盗用とデータねつ造・改ざん
- 不正論文数:論文での不正ではなく研究費申請書での不正
- 盗用ページ率:不明
- 盗用文字率:不明
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分: NIHから 1年間の締め出し処分
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億1500万円。内訳 ↓
- ①研究者になるまで5千万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
- ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
- ③外部研究費。実際に受給していても、判明しないので0円とした。
- ④調査経費。第一次追及の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円、研究公正局など公的機関は1件200万円。
- ⑤裁判経費は2千万円。裁判ないので損害額は0円。
- ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文は0報なので損害額は0円。
- ⑦研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
- ⑧健康被害:不明なので損害額は0円とした。
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:不明。仮に1945年1月1日生まれとする。1963年に大学入学した時を18歳とした
- 1963-1968年(18-23歳?):中国の復旦大学(ふくたんだいがく、Fudan University)で学士号取得:計算機数学
- 1968年12月-1975年6月(23-30歳?):中国の鉄鋼会社の攀枝花鋼鉄(Panzhihua Steel Company)・技術助手、後に教育部門の主任/li>
- 1976年8月-1986年7月(31-41歳?):中国の江西省エネルギー局(Jiangxi Provincial Power Bureau, Nanchang)・コンピューター主任/li>
- 1988-1990年(43-45歳?):米国のジョージア大学(University of Georgia)で修士号取得:統計学
- 1990-1993年(45-48歳?):同大学で研究博士号(PhD)を取得:統計学
- 1993-1995年(48-50歳?):南カリフォルニア大学(University of Southern California)・ポスドク
- 1997-2007年(52-62歳?):テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校(UTHSCH:University of Texas Health Science Center at Houston)・助教授
- 2001年12月10日(56歳?):研究公正局がネカトでクロと発表。締め出し期間は1年間
- 2007年9月(62歳?):テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校(UTHSCH:University of Texas Health Science Center at Houston)・準教授
- 2011年9月(66歳?):同・正教授
- 2018年8月6日現在(73歳?):同・正教授:https://gsbs.uth.edu/faculty/faculty-directory/faculty-profiles.htm?id=1346437
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
2015年7月27-29日の国際会議「International Conference on Transcriptomics July 27-29, 2015 Orlando, FL, USA」の講演
演題:「Scientific Talk On: Integrative image and RNA-Seq data analysis」。
動画:「Momiao Xiong | USA | Transcriptomics 2015 | Conferenceseries LLC – YouTube」(英語)20分25秒。
Transcriptomics Conferenceが2016/05/20 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究公正局
2001年12月10日(56歳?)、研究公正局は、モミアオ・シャオン、(Momiao Xiong、写真出典)に文章盗用とデータねつ造があったと発表した。締め出し期間を1年間とした。
研究公正局は、NIH・国立医学総合研究所(NIGMS)の研究費申請書「R01 GM64353-1」・「ヒトの色素沈着および皮膚反応の遺伝学(Genetics of Human Pigmentation and Skin Response)」に文章盗用とデータねつ造・改ざんがあったと指摘した。シャオンは不正行為を認めている。
文章盗用は、他の研究者のNIH研究費申請書を審査した時、その研究費申請書の文書を自分の研究費申請書に盗用した。
データねつ造・改ざんは、色素沈着形質に影響を及ぼす遺伝子を統計的に評価する一連のシミュレーションを実施していなかったのに、実施したと記載した点である。また、その分析対象者は遺伝的に無関係の個人個人のデータだったが、大家族の人々のデータだと偽った点である。
つまり、ネカトは研究費申請書であって、出版論文ではない。
従って、身近の研究者以外、シャオンの不正行為を見つけることはできなかったハズだ。白楽は、研究室の上司がネカトを見つけて告発したと推察した。
★盗用、ねつ造・改ざんの具体例
上記したように、モミアオ・シャオン(Momiao Xiong)のネカトは研究費申請書であって、出版論文ではない。
それで、盗用、ねつ造・改ざんの具体例は、白楽には、上記以上はわからない。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
2018年8月6日現在、パブメド(PubMed)で、モミアオ・シャオン(Momiao Xiong)の論文を「Momiao Xiong [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2018年の17年間の101論文がヒットした。
「Xiong M[Author]」で検索すると、1982~2018年の37年間の743論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者の論文ではない論文が多いと思われる。
2018年8月6日現在、「Xiong M[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
省略
●7.【白楽の感想】
《1》詳細は不明
この事件の詳細は不明です。
2001年頃の事件は新聞記事になったような大きな事件を除いて詳細は不明である。17年も経過しているので当時の資料は簡単には見つからない。ましてや、インターネットは今ほど発達していなかったので、ネット上の情報はそもそも少なかった。
ネカト防止策は、この事件からは学べない。
ただ、中国で学士号取得後、中国の企業で約20年間働いたのち、米国に渡り、修士・博士・ポスドクを経て、52歳(?)で大学の助教授になったモミアオ・シャオン(Momiao Xiong)の人生は、平坦な道ではなかったろうと推察する。
その人生の中で、56歳(?)で盗用とデータねつ造と研究公正局から発表された。平坦ではなかった道が一層苦しくなったに違いない。それでも、現在、73歳(?)で現役の教授である。優れた人物なのだろう。
《2》履歴書の賞罰の「罰」
モミアオ・シャオン(Momiao Xiong)の履歴書はウェブ上にアップされている。 → ココ。
かなり詳細な履歴書だが、ネカトで1年間締め出し処分を受けたペナルティは記載されていない。
ネカトでクロだった場合、履歴書に記載しなくて良いのだろうか?
米国は置いといて、日本ではどうだろうか?
日本の履歴書の賞罰欄の「罰」に書くべき項目は以下のようだ。
基本的には『刑事罰』を書く項目だとされています。刑事罰とは、刑法犯を犯して“有罪判決を受けて科された罰”のことです。懲役、禁固刑、罰金刑などが含まれます。
一方、スピード違反や駐車違反、一次不停止といった「軽い交通違反」は、『行政罰』とされているので、賞罰欄に書く必要はありません。(2018年04月09日記事:履歴書の賞罰には何を書く?賞罰なしと書いて良い?賞罰の書き方を徹底解説! |【エン転職】)
ネカトで懲戒免職になっても、日本では履歴書の賞罰欄の「罰」に書く必要はない。
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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モミアオ・シャオン(Momiao Xiong)が卒業した中国の復旦大学(ふくたんだいがく、Fudan University)
●8.【主要情報源】
① 2001年12月10日、研究公正局の報告:NIH Guide: FINDINGS OF SCIENTIFIC MISCONDUCT
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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